長期レビュー

オムロン、タニタ、パナソニックのスマホ連携体組成計を使ってみた その3

~Androidと連携、結局どれが使いやすい?
by 小林 樹

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



 この長期レビューでは、オムロン、パナソニック、タニタの各社が今年発売した、スマートフォン連携モデルの体組成計を使ってきた。体組成計は、体重や体脂肪、筋肉量、骨量といった複数の生体情報を一度に測定できる健康家電だ。

オムロン「体重体組成計カラダスキャンHBF-215F」タニタ「体組成計 インナースキャン BC-505」パナソニック「体組成バランス計 EW-FA43」

 第1回ではオムロンの「カラダスキャン HBF-215F」、2回目ではパナソニックの「体組成バランス計 EW-FA43」とタニタの「インナースキャン BC-505」をレポートしたが、最終回となる今回は各製品の特徴比較と、スマートフォンと連携するメリット、家族で共有して使った感想をお伝えしたい。

その1は→コチラ

その2は→コチラ



メーカーオムロンタニタパナソニック
品名体重体組成計
カラダスキャン
HBF-215F
体組成計
インナースキャン
BC-505
体組成バランス計
EW-FA43
価格オープンプライス
購入場所Amazon.co.jp
購入価格5,384円15,267円7,280円

 

オムロンとパナソニックはNFC/FeliCa通信、タニタはBluetooth通信

パナソニック「体組成バランス計 EW-FA43」では、スマートフォンを体組成計にタッチして転送する

 スマートフォンと体組成計が連携する1番のメリットは、数値の記入する面倒な手間を省くことだ。毎日、計った体重を手書きや手入力で記録するのは面倒である。体組成計のように、測定項目が多ければなおさらだ。

 以前、測定項目を書き留めることで減量を目指すダイエット方法「レコーディングダイエット」をしたことがある。しかし、毎日書き込む手間が想像以上に面倒だとわかり、途中で投げ出してしまった。その点、スマートフォンでタッチするだけで記録できるのは、簡単だし、続けられる。

 ただし、同じようにスマートフォンでグラフ化して確認できる3製品でも、スマートフォンとの通信方式に違いがある。オムロンとパナソニックの2社がNFC/FeliCa通信を採用しているのに対し、タニタはBluetooth通信を採用しているのだ。

  使うにはまず、スマートフォンに各社が開発した専用アプリをインストールする。オムロンなら「からだグラフ」、タニタなら「a-Tanita」、パナソニックなら「パナソニックスマートアプリ」がこれに当たる。これらのアプリはいずれも「Androidスマートフォン用に開発されたアプリであり、iPhoneのiOSには対応していない。

 通信の際にはアプリを起動させ、NFC/FeliCa通信では、体組成計本体にスマートフォンをタッチする必要がある。一方タニタのBluetooth通信では、アプリを起動させておくだけで測定後にデータが自動で転送される。


メーカーオムロンタニタパナソニック
品名HBF-215FBC-505EW-FA43
通信方式NFC/FeliCa通信Bluetooth通信NFC/FeliCa通信
アプリ名「からだグラフ」
「朝晩ダイエットアプリ」
「リズムノート」
「a-Tanita」「パナソニックスマートアプリ」
アプリ対応端末Android 2.2 以上Android 2.1~2.3搭載
Bluetooth SPP対応機種
現在Android 4.0非対応
Android 2.3.3 以上
データ
保存場所
クラウドサービス
「ウェルネスリンク」
スマートフォン
本体
アプリ専用
クラウドサービス
PCから
データ確認

アプリの使い勝手を比較してみた

 スマートフォンと連携して管理するメリットには、測定データを入力する手間が省けることと同時に、わかりやすいグラフで変移を表示すること、個人データに基づいたアドバイスがもらえることも挙げられる。

 そこで各アプリのグラフの見やすさ、アドバイス機能の使いやすさ、ほか機器とのアプリの汎用性を独断でまとめてみた。


メーカーオムロンタニタパナソニック
グラフの見やすさ★★
シンプル
字は細かい

色使いが多く 文字が小さく 見づらい
★★★
カラフルで文字が太く 見やすい
アプリ内での他機器との連携★★★
血圧計、睡眠計、活動量計、婦人用体温計と連携

★★
活動量計と連携
アドバイス★★★
毎度コメントが現れる 体重計に乗る頻度が減ったり スマホのタッチを怠ると 注意される
無し★★★
計測の度にりんごやごぼうなど 果物や野菜に例えて本人の体型を指摘 してわかりやすい

 測定したデータは、オムロンでは「ウェルネスリンク」という同社独自のクラウドサービスに保存される。これにより、パソコンやiPhoneからも確認できる(ただしiPhoneでは一部のグラフは確認できない)。

ウェルネスリンクをパソコンから確認したところ。血圧計と体組成計のデータが一緒に確認できる

 一方で、タニタとパナソニックのアプリは、今のところほかのウェブサービスとは連携していない。タニタの場合、測定したデータは本体のアプリのローカルに保存されるため、圏外にいる時でもデータを確認できる。パナソニックの場合は、アプリ専用のクラウドサービスに保存されるため、パソコンなどのほかの機器や、圏外の場所にいる時には、測定したデータを確認できない。

スマホとの連携機能を存分に満喫できるのはオムロン

オムロンの血圧計も「からだグラフ」で連携させて、一括管理している

 今回3機種を使い比べてみると、一番気に入ったのは、オムロンの体組成計およびアプリだ。「からだグラフ」というアプリでは、体組成計のほかに、血圧計や睡眠計、活動量計、婦人用体温計などと連携できる。実際に血圧計と連携させたところ、1つのアプリで一括して管理できるのがとても便利だったので、次は睡眠計も導入してウェルネスリンクと併せて連携させたいと思っている。先に述べている通り、測定データをパソコンやiPhoneからも確認できるのも良い。アプリではこのほか、目的に合わせて選べる「朝晩ダイエットアプリ」や「リズムノート」も用意されていて、きめ細かいサービスを展開している。

「からだグラフ」の体重表示。シンプルだ測定記録を表示したところ
私は朝晩2回体重を測る「朝晩ダイエットアプリ」を利用している。朝の体重から夜の体重を予測して、その予測値をオーバーしなければその日のダイエットは「成功」となる。夜の体重計測後にタッチすると、その日の「成功」および「失敗」した人数がリアルタイムで表示される。面白いのは、金曜や土曜といった飲み会や外食が多いとおぼしき日は、「失敗」した人数のほうが多かったことスマートフォンを横にすると、横長の画面でデータの変遷を確認できる

 これだけ多くの測定項目をグラフ化したり、結果を記録するのは、手入力ではまず無理である。機器やアプリを複数使いこなして、自分の生体情報をデータ化するのは、慣れると結構楽しい。

 そしてオムロン「HBF-215F」には、もう1つ便利な点がある。1台のスマートフォンを体組成計にタッチすれば、そのスマートフォンで記録しているアカウントだけでなく、同じ体組成計を使用しているほかのユーザーのデータも、一緒にウェルネスリンクのクラウド上に同期するのである。その際、あらかじめほかのユーザーもウェルネスリンクに登録してあることが必要だが、我が家のように、親子でそれぞれスマートフォンと連携させて使っている場合、どちらか1人がタッチすれば済む。タニタやパナソニックの製品では、スマートフォンでタッチしてもその本人のデータしか転送できないので、それに比べるとずっと便利だ。

スマホ初心者にはパナソニックがオススメ

 一方で母は、パナソニックが気に入ったという。理由は、スマートフォンのアプリ内でデータ管理が完結するわかりやすさ。母はスマートフォンを使いこなすだけで精一杯で、パソコンなどほかのデバイスからはデータを確認しない。逆に言えば、そういったスマートフォン初心者の人にもわかりやすいように作られているのが、パナソニックのスマートアプリなのだと思う。

 具体的には、データ転送後に毎回、「ごぼう」や「りんご」といった果物や野菜になぞらえて、本人の体型をスマートフォン上に表示する。これがモチベーションを高めると好評だった。アプリ内のグラフもカラフルで見やすく、女性が親しみやすいデザインだ。

私は体脂肪や内臓脂肪やBMIが低い「ごぼうタイプ」といつも表示される。要するに運動不足で体力がないと指摘されている中年太りしてしまった母は「りんごタイプ」の肥満と痛烈に批判され、ショックだったのかウォーキングなどの運動を始めた約1カ月後、毎朝のウォーキングの成果が現れた。BMIが下がり、今度は「桃タイプ」と表示されるように。本人は今後もウォーキングを続けたいと話している見やすいグラフ表示

 また、ダイエット仲間と励ましあう機能も用意している。詳しくは前回触れているが、「友達リンク」機能によって、登録した友人の測定データを確認することができる。親子で測定データを確認して、「今日、計測忘れているよ」などと指摘し合える。

親子でお互いのデータを確認して励ましあうように母のデータを閲覧できる。健康になるため、恥をしのんでお互いのデータを晒し合っている

 パナソニックのアプリは、活動量計としか連携しないので、色々な機器と連携させて使いこなしたい自分には物足りないのだが、逆に母には使いやすく、わかりやすいという結果になった。

 タニタについては、せっかくBluetooth通信で素早く簡単にデータ転送できるのに、アプリが見辛いのが残念だった。測定したデータをただ一覧できるだけで、アドバイスもないし、ほかの機器との連携もない。しかも、最新機種に対応しないまま、アプリのアップデートがされておらず、寂しい状況だ。

「a-tanita」のグラフ。とてもシンプルで、あくまで測定データを記録するグラフ、という印象。ユーザーへのアドバイスなど細かいサービスは設けていない測定データは上下左右にスクロールして確認するのだが、これが結構見にくい

見やすさはパナソニックが1番

 次に、本体の使い勝手についても触れておこう。スペック上は大差ない3製品だが、使い勝手でもっとも差が出たのが視認性だ。

 液晶画面は、パナソニックがダントツで見やすい。3製品の中で唯一バックライトを搭載しており、暗い脱衣所でも測定値が確認できる。液晶はカラー表示なのもわかりやすい。

 また、液晶画面のサイズは大きい順に、パナソニック、オムロン、タニタとなっている。

オムロンは、画面と文字は比較的大きいが、コントラストが低い印象を受けるタニタは、画面と文字が小さいパナソニックはバックライト搭載で暗い場所でも結果が見やすい
オムロンに乗ったところ。コントラストが低いパナソニックに乗ったところ。バックライトで明るい

測定項目には各社独自の指標を持つ

 体重や体脂肪、基礎代謝といった項目は、各社の体組成計で共通して計測できるが、それぞれ独自の測定項目も用意している。

パナソニックでは「皮下脂肪率」を表示する

 例えばパナソニックの「皮下脂肪率」。体脂肪には、皮下脂肪と内臓脂肪があり、パナソニックは「体脂肪率」と共に、「皮下脂肪率」や「内臓脂肪レベル」も算出する。判定は、「低い/標準/高い」の3段階から行なう。

 筋肉については、タニタでは「筋肉量」、パナソニックでは「筋肉レベル」という言葉で確認できる。また骨量については、オムロンでは「骨格筋率」、タニタでは「推定骨量」、パナソニックでは「骨レベル」という指標で表示される。

 ほかに独自項目として、パナソニックでは姿勢や体を支える筋力の目安となる「体幹バランス年齢」、タニタでは「体水分率」を測定できる。

パナソニック「体幹バランス年齢」タニタ「体水分率」。体水分率は、体重に占める体水分の割合で、血液、リンパ液、細胞外液、細胞内液などを指すという。適正範囲は、男性が約55~65%、女性が45~60%

 タニタの体水分率は、高齢の祖母には大変ありがたい測定項目だった。体の水分が低下すると、高齢者は血管が詰まりやすくなり、大きな病気を引き起こす恐れがあるという。実際に祖母が体重計に乗ったところ、体水分率が35%程度しかなく、一般的な女性の理想値を10%以上下回っていたことがわかった。祖母は「結構お茶を飲んでるつもりだったのに」と話していたが、体水分率は自覚しにくい項目だと思う。体組成計で客観的なデータを得るのは大切だ。

 このように、各社さまざまな独自の測定項目を用意しているので、測定項目から体組成計を選ぶのも1つの手だろう。


メーカーオムロンタニタパナソニック
体脂肪率
皮下脂肪率--
内臓脂肪レベル
基礎代謝(kcal/日)
BMI
筋肉量--
筋肉レベル--
骨格筋率-
推定骨量(kg)--
体年齢(才)
体幹バランス年齢--
体水分率--

タニタは操作がボタン式。ほかの2社の製品はタッチ式

 アウトドア好きの弟(24歳)が気に入ったのは、パナソニックとタニタだった。弟は本体のみ使用して、スマートフォンとは連携させていないのだが、パナソニックの体組成計は、最新の測定値と共に、画面の隅に前回の測定値を表示できるのが良いという。スマートフォンと連携させない限り、前回値は液晶画面上で確認するよりほかない。またタニタは、とにかく機能がシンプルで、測定時間も早い。操作がボタン式のため、ユーザー登録番号を押せばすぐに測定できるわかりやすさも気に入ったと話していた。

 これらの結果から、スマホ連携をフルに楽しむならオムロン、ダイエット中の人にはパナソニック、高齢者やシンプルな操作を求める人にはタニタをオススメしたい。

身体のコンディションを数値化する大切さ

自分の体をデータ化して管理する楽しさを味わった

 こうして体組成計に毎日乗る生活を続けていると、日々の測定値に波があることに気づく。これがきっと体のリズムというものだろう。体組成計の客観的アドバイスにも耳を傾けつつ、実際にどんな数値の時に、自分が心地良く過ごせるのか、目安を知ることは重要だと思った。

 体組成計を選ぶ基準は、スマートフォンとの連携、本体の測定項目や見やすさ、ダイエットの目的などに様々だ。なかでもスマートフォンとの連携機能は、まだまだこれから進化する可能性があると思う。各社の今後の新製品に、期待したい。




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2012年11月28日 00:00