【特別企画】

来年使いたい手帳 2013年版

by 編集部

 今年も残すところあと約1カ月となったが、来年の手帳はもうご用意されただろうか。既に、文具店や書店の店先には、おびただしい数の2013年の手帳が並んでいる。一見、どれも同じようにマンスリーとウィークリーが書かれているようだが、細かい部分の仕様にはかなり差がある。

 そこで今回は、編集部員とライターそれぞれが選んだイチオシの一冊を紹介したい。皆様が手帳を選ぶ際、参考になれば幸いだ。

モレスキン「プロジェクト プランナー」 by.藤原 大蔵

創元社「鉄道手帳」by.正藤 慶一

技術評論社「星空案内ダイヤリー 2013」by.小林 樹

「アクションプランナー」by.阿部 夏子

 



アコーディオン風に折りたたまれた年間スケジュール帳~モレスキン「プロジェクトプランナー」 by.藤原 大蔵

モレスキン「プロジェクトプランナー 2013年」

 これまで数多くの手帳を使った経験があるが、とうとう自分が望む条件を全て満たすスケジュール帳に巡り合ってしまった。その条件は5つ。「軽い」、「小さい」、「書きやすい」、「見やすい」、そして「美しい」だ。

 全ての条件を満たした手帳は、モレスキンの「プロジェクトプランナー」。スケジュール帳として特化した製品だが、一見なんの変哲もない、小型のプレーンな黒い手帳だ。


メーカーモレスキン
製品名プロジェクトプランナー 2013年
購入場所Amazon.co.jp
購入価格2,310円

 出会って最初に気に入った点は、「コンパクトで軽く、手に馴染む質感」だ。大きさは141×93×10mm(縦×横×厚み)の、ほぼパスポートサイズ。重さは89gと軽い。さらに、合成皮革に覆われたカバーは”モグラの革”のような質感が美しく、手にしっくりと馴染む。べたつかず、しかも手から滑り落ちにくい仕上げだ。

 それでも、よくある普通の黒い手帳に見えるが、開いてアッと驚く。なんと、手帳の背が綴じられていないのだ! 約2.3mの厚紙1枚が、アコーディオンのように折りたたまれ、1冊の手帳の姿を成しているのが、他とは大きく異なる。総ページ数は、折り目と折り目の間を1ページとして、表裏合わせて52ページとなる。

ほぼパスポートサイズのコンパクトな手帳は、軽く、モグラの革の風合いを持つカバーが手に馴染みやすい。カバンの中に入れても手帳が勝手に開かない「ゴムバンド」付きだ「プロジェクト プランナー]の中身は、なんとアコーディオン風。約2.3mの厚紙が折り畳まれて収まっているのだった! 片面26ページ分が一枚続きになっている

 肝心のスケジュール部は2種類。表裏でスケジュールのフォーマットが変わる。表は片面26ページを全て使って、まるまる1年分のスケジュールが管理できる。裏は、1ページにつき1カ月 というスタイル(計12頁)だ。「表は時間が関わる予定表」、「裏はイベントや固定イベント用」など、使い分けができる。

 さらに気に入ったのは、書き込みが楽な点だ。机の上にザッと広げれば、前後の月のスケジュールを確認しながら記入できるだけでなく、ページ同士の間も平らになるので、ページ際もストレスなく書き込める。また、折り畳んだ状態でも、見開きの位置が簡単に変えられるので、常に書きやすいポジションが選べるのも良い。

表面(写真上)は見開き2ページで30日分になる。1年分のスケジュールを片面全使って管理する。裏のスケジュールフォーマットは1ページにつき1カ月(全12頁)。残り14ページに、各国の国番号や時差、海外で使えるサイズ早見表などの情報が記される折り畳む位置を変えれば、見開きの位置も変わる。右利き左利きに関わらず、書き込みやすいポジションが簡単に選べるのがポイントだ机の上に広げれば、数カ月分のスケジュールを確認しながら予定が組める。紙が平らになるので、とても書き込み易い

 しっかりとした厚紙は書き心地も良く、乾いた指先でもページをめくるのがラク。広げた状態でもサッと纏められ、ゴムバンドで留めてしまえばバラバラにもならない。家の中はもちろん、軽いので、外出先へも気軽に持ち歩ける。

 とは言え、全52ページなので、連日分刻みのスケジュールをこなす人には心もとないかもしれない。しかし、1日に数件のイベントならば、「プロジェクト プランナー」で、十分に対応できるのではないだろうか。書くスペースが足りない場合に備え、巻末の拡張ポケットに手持ちの付箋を入れておくのもいいだろう。

 最後にもう一言加えたい事がある。2,000円を超える価格だが、モレスキンの製品は基本的に「ハンドメイド」。手にした瞬間から伝わる高い質感とぬくもり、道具としての美しさは、他の製品ではなかなか味わえない。高価でも十分に見合っていると感じる。

 とにかく、コンパクトで軽く手に馴染み、書きやすくて見やすいスケジュール帳をお探しの方に、是非とも手にして欲しい“逸品”だ。

・モレスキン
http://www.moleskine.co.jp/
・製品情報
http://www.moleskine.co.jp/Online-Shop/Various-Layout/2013-Soft-Project-Pocket-12M

 


“鉄っちゃん”な人はもちろん、“鉄予備軍”こそ使ってほしい ~創元社「鉄道手帳」 by 正藤 慶一

創元社「鉄道手帳 2013年版」。ちなみに監修を務めるのは、鉄道ライターの所澤秀樹氏

 今年は限られた一部の人のために作られた手帳、創元社の「鉄道手帳 2013年版」を紹介したい。


メーカー創元社
製品名鉄道手帳 2013年版
購入場所Amazon.co.jp
購入価格1,260円

 この手帳は名前の通り、鉄道情報が満載された手帳だ。しかし、ここで載っている情報は「地下鉄の出口一覧」のような便利な情報や、「全国おいしい駅弁一覧」などグルメな情報はない。完全に鉄道ファン向け、俗に言う“鉄”“鉄っちゃん”向けの手帳だ。

 その理由は、手帳を開いた数ページ目で分かる。4ページ目から22ページまで、全国または都市部の鉄道路線地図が載っているが、よく見ると貨物線や貨物ターミナル、信号所など、フツーに電車に乗るぶんにはまるで関係のない情報が記されている。

 東京で具体例を挙げれば、浜松町駅から川崎の臨海部を結ぶ「東海道貨物線」や、府中本町から横浜の鶴見へ向かう「武蔵野南線」など(名称はいずれも通称)。この路線には定期的な旅客列車は通っていないので、フツーの人が見ると「こんなとこに電車走ってるの?」と困惑するはず。しかし、“鉄”が見れば「よしよし、ちゃんと載っているな」と納得することだろう。時刻表ですら載っていない、ディープな情報を掲載するのが、この手帳のポイントだ。

 地図が終わると、月別の見開きカレンダーに、日別のメモ帳など、よくある手帳のような構成になっている。しかし、欄外には鉄道に関するイベントや豆知識、その日に起こった出来事など、鉄道に関する情報が豊富に記載されている。

まずページを開けると、全国の鉄道路線図が並ぶ。遠くから見ると、よくある鉄道路線図のように見えるしかしよく見ると、貨物線や貨物駅、信号所など、フツーの人が必要としない情報まで載っている。こうした情報に眉をひそめるか、「しっかりやってるな」と微笑むのがで、鉄道好きか否かが分かれる路線図の先には、月別のカレンダーに日別のスケジュールといった、手帳としてごく一般的なページが並ぶ。しかしよく見ると、その月に行なわれる鉄道イベントや豆知識など、鉄道に関する話題がしっかり書き込まれている

 圧巻は巻末約70ページに及ぶ「資料編」だ。鉄道や駅がそもそもどのように定義されているかという根本的な話から、全国の貨物列車の運行一覧、寝台列車の変遷から現在も運行中の寝台列車の解説といった、ディープな鉄道情報が並ぶ。

 個人的に最も感動したのが、資料編の「全国相互乗り入れ・片乗り入れ運転概況」だ。異なる鉄道会社の乗り入れがどのように行なわれているかを示すものだ が、車両がどこまで乗り入れているかについても述べられている。例えばJR九州と福岡市営地下鉄の場合、JR九州の103系車両も地下鉄に乗り入れている らしい。何てこった! この前福岡に行ったときにこの手帳を持っていけば、福岡の地下を走る103系が見られたのに! 303系に乗っただけで満足しちゃったよ!

手帳の終盤は、マニアックな情報が並ぶ「資料編」。写真は異なる鉄道会社の乗り入れ区間と車両の運用範囲を表す図。改めて考えると、確かに中野~三鷹間で東葉高速鉄道の車両を見たことがないこちらは「全国貨物列車運行路線一覧」。貨物列車がどこをどのように走っているかについて興味のある人は、旅客列車以上に少ないだろうが、実は日本中を走り回って、我々の暮らしを影で支えているのだ手帳の表紙を裏返せば、このように地味なデザインに変わる。表紙の切符は取り外しも可能なので、「銭函駅」や「幸福駅」(廃駅になったけど)など、縁起物の駅名を入れても面白い

 ……こんなことを言ってウンウンと頷いてくれる人は限りなく少ないだろうが、普通の手帳として使えるうえ、鉄道の知識が増えることは間違いない。鉄道マニアの人にはお勧めなのは言うまでもないが、これから鉄道を深く楽しみたいと考えている“鉄予備軍”の方にこそ使っていただきたい。

・創元社
http://www.tsogen.co.jp/np/index.html
・鉄道手帳 2013年版
http://www.sogensha.co.jp/special/tetsudo/index.html

 


手帳を持って、夜空散策に出かけよう~技術評論社「星空案内ダイアリー」 by.小林 樹

技術評論社「星空案内ダイアリー 2013」

 2012年を振り返ってみると、空を見上げることが多かった。太陽が月の背後に隠れる金環日食をはじめ、いくつかの流星群など、肉眼でわかる天体ショーも観られた。また、火星探査機キュリオシティや、宇宙飛行士の星出彰彦さんの活躍にもワクワクした。

 そうこうするうちに“にわか星空ファン”となった私は、技術評論社の「星空案内ダイアリー 2013」を手に取った。初心者向けに、わかりやすく星空の眺め方が書かれている“読み物系”手帳だ。


メーカー技術評論社
製品名星空案内ダイアリー
購入場所Amazon.co.jp
購入価格1,239円

 「星空案内ダイアリー」の本体サイズは約112×156×14mm(幅×奥行き×厚さ)で、ちょうど文庫本と同じくらいの大きさだ。表紙には柔らかいビニールカバーが付属していて、ポストカードなどを挟めば表紙を替えられる。

 内容は、大きく分けてダイアリーと読み物に分かれる。ダイアリーは、月の満ち欠けが一覧できるマンスリーカレンダーと、日の出入り&月の出入りの時刻が記載されているウィークリーカレンダーが用意されている。

文庫サイズでコンパクト。ビニールカバー付きで屋外にも持ち歩きやすいマンスリーのページには月の満ち欠けが載っている。星空を見たければ、新月に近い日を選ぼうウィークリーのページには、当日の日の出入り&月の出入りの時刻と、星空の見どころなども記載されている

 読み物ページでは、「2013年の見逃せない天文イベント」コーナーが要チェックだ。これによると2013年の注目株は、「パンスターズ彗星」である。3月11日に太陽に最接近し、日本では3月下旬前後に肉眼で観測できるかもしれないという。肉眼級の彗星が観れるのは久しぶりとのことで、今から期待が高まる。

「2013年の見逃せない天文イベント」のページ。彗星や月食、珍しい星の配置などが紹介されている。肉眼で見えるもの中心なので、初心者には嬉しい星座についても書かれているが、占い系やスピリチュアル系ではなく、科学的な切り口から季節の星座を解説している。ビギナー向けの内容なので、本格的な天文ファンの方には地人書館の「天文手帳」のほうが読み応えがあるだろう「あこがれの南十字星を見に行こう! 」のページでは、沖縄やハワイ、シドニーの星空も図解しているので、旅行に持って行くのも良さそうだ

 読み物ページではほかに、「3大流星群を見よう! 」「星座を見つけよう」などの解説ページや、「星空をもっと楽しむ天文グッズ」として双眼鏡や望遠鏡の選び方が解説されている。また、コンパクトデジタルカメラを使った星空や月面の撮影方法も掲載されているので、来年は星をただ眺めるだけでなく、デジカメで撮影にもチャレンジしたいと思う。

 都市部では、星空は街のネオンにかき消され、なかなか目にする機会が少ない。星空が見たくなったら、私は車で山へ登る。月が満月に近い状態だと、月明かりが楽しめる。月が新月に近ければ、たくさんの星を眺められる。月齢も、この手帳でチェックできるので、お目当ての夜空を見に行くのもいいだろう。

 「星空案内ダイヤリー」は、天文ビギナー向けの手帳である。皆様も、都会のネオンに疲れたら、たまにはこんな手帳を片手に夜空を見上げてみてはいかがだろうか。

・技術評論社
http://gihyo.jp/book
・製品情報
http://gihyo.jp/book/2012/978-4-7741-5160

 


有効な時間活用に”自分を予約する手帳”「アクションプランナー」by 阿部 夏子

「アクションプランナー 2013年」デザイン57種類から選べる。今回は個性的なパイソンタイプを選択

 私が2012年の手帳として選んだのは実業家・評論家と様々な顔を持つ佐々木かをりさんがプロデュースする「アクションプランナー」だ。正直、日々のスケジュール管理はスマートフォンで行なっているので、手帳にはスケジュール管理とは別の役割を求めている。例えば、自分が今考えていることや仕事のアイディアを書き留めたりということだ。


製品名アクションプランナー
希望小売価格3,500円
購入場所ロフト
購入価格3,500円

 アクションプランナーもスケジュール管理とは別の別の使い方を提唱している。いわく「自分を予約する手帳」だ。ページの仕様にも工夫がある。見開き1週間で、月曜始まりとなっているため、仕事のスケジュールが立てやすい。時間軸が上から下に流れる「バーチカルタイプ」を採用しており、朝6時から夜11時30分まで30分単位で区切りがあるので、時間単位での予定を書き込みやすい。時間管理を細かく書くことで毎日の自分の行動を自分で決めるという。

実業家・評論家の佐々木かをりさんがプロデュースする人気シリーズだ見開き一週間のバーチカルタイプを採用。朝6時から夜11時30分まで30分単位で区切りがあるので、時間単位での予定を書き込みやすい

 最初は、「それって普通の手帳と何が違うの」と思っていた。確かに予定や行動を書き込むという意味では一緒だ。しかし、アクションプランナーでは、案件だけでなく、その予定にかかる時間を書き込んでいくのだ。例えば、11時からの発表会取材の予定が入っているとする。今までの手帳では「11時から発表会」とだけ書き込んでいたが、アクションプランナーでは、その発表会にかかる時間を書き込む。会場までの移動時間、発表会終了後の取材時間、会社までの道のり、それらを考えていくと、その予定にかかる時間は10時から13時となる。それから記事の執筆に3時間、会議が17時からで終わるのが18時と書き込んでいくと、自ずと空き時間がわかり、時間を有効に使おうと意識をし始めるようになる。忙しさにかまけて毎日時間に追われているように思っていたが、実は時間の使い方が下手だったのかも知れない。

 アクションプランナーは何も仕事や人との待ちあわせなどの予定だけを書き込むわけではない。休日の家事の時間や、ヨガに行く時間など、書き込むことで頭の中が整理されて、「この日はこんなに時間があるから、あれもできるな」という思いつきにつながる。

予定を“面”で書き込んで行く。1つの案件にかかる時間を具体的に書き込むため、空き時間などがわかりやすい仕事や人との約束はもちろん、週末のジムに行く時間や家事をする時間を書き込むことで、1日を有効に使えるページ下には点線を切り取って使う栞が設けられている。毎日開くものなので、目的のページがすぐにわかるというのは便利

 毎年この時期になると「気がついたら今年もあっという間に終わりだ」となんだか、呆然とした気持ちになるが、そうならないための時間活用ツールとして、試してみてはいかがだろうか。

・アクションプランナー
http://www.actionplanner.jp/specification/







2012年11月26日 00:00