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ウェアラブル入門! 活動量計はどうやって選ぶ?

 最近何かと耳にする機会の増えた「ウェアラブル」。ウェアラブルデバイスとは、身につけるコンピュータを総称してそう呼ばれる。

 ひとくちにウェアラブルといってもその形状は様々で、リストバンド型、ヘッドマウント型など目的に応じたさまざまな形の機器が存在する。

歩けないほど注目を集めていた「第1回 ウェアラブルEXPO」

どのブースでも注目を集めていたヘッドマウント型デバイス

 ウェアラブルへの関心の高さは、今年第1回目が開催された「ウェアラブルEXPO」が如実に表していた。初日から混雑していたが、最終日は通路を歩くのが困難になるほどで、資料がなくなるブースが続出していたのだ。

 会場で多く見られたのはヘッドマウント型のデバイス。装着することで肉眼だけでは見えない情報を、視界に付加して行動や判断をサポートしてくれたり、実際には存在しない世界を体験したりできるほか、ジェスチャーコントロールによって情報を操作をすることもできる。街中で使いやすいとはいえないが、作業現場などのビジネスシーンでは役立つ場面が多そうだ。

 ほかにも衣類、繊維、サポーター、バッテリーなど、さまざまな形のウェアラブルデバイスが一同に会していた。身につけて動くことで発電するもの、測定した生体データをもとにコミュニケーションの促進につなげようとするもの、事故防止に活用するものなどバリエーションに富んでいる。身につけることでどんなことが可能になるのか、これからの未来が楽しみだ。

今、もっとも身近なウェアラブルデバイスは?

活動量計。左上から「fitbit flex」「NIKE FuelBand SE」「PULSENSE PS-500B」「SmartBand Talk」「ムーヴバンド2」「UP MOVE」「karadafit」

 このように多種多様なウェアラブルデバイスが存在するが、今簡単に手に入れられるものといえば、ずばり、リストバンド型を中心とした「活動量計」と「スマートウォッチ」だろう。すでにみなさんの周りでも、利用している人がチラホラいるのではないだろうか。

 「活動量計」は2010年頃から、健康管理に関心の高い米国で注目されはじめ、2014年には日本でも大きく取り上げられるようになった。加速度センサーなどを搭載しており、動きをとらえて活動量を測定する。最近では心拍センサーの搭載がトレンドとなっている。

 機能によっては数千円で買えるものもあるが、最新のものは2万円以上するなど幅広い。概ね1万円前後で売られており、ネット通販や家電量販店の専用コーナーで購入できる。ただし、製品の多くは米国で発売されてから、しばらくして日本版が登場するというパターンが多く、認知度はさほど高くはない。

スマートウォッチ 「SmartWatch 3」

 「スマートウォッチ」とは時計型のコンピュータのこと。最近ではGoogleが提供するAndroid WareをOSとした製品がよく登場しているが、4月にはAppleから「Apple Watch」もリリース予定となっている。

 さまざまなセンサーを備えており活動量計とよく似ているが、活動量計は活動量の測定がメイン。それに対してスマートウォッチは、活動量も測定できるが、それは機能の一部に過ぎない。必ずディスプレイを備えており、腕時計としてさまざまなウォッチフェイスを選んで使えるのはもちろんだが、スマートフォンと連携して通知を受け取ったり、メッセージに返信をしたりできる。ほかにも、独自のアプリを追加して機能を拡張することもできる。

 スマートウォッチは活動量計に比べてバッテリーの持ちは悪く、現在のところ、概ね1日1回は充電が必要だ。価格としては2万円台からだが、Apple Watchには100万円を超えるモデルもある。

 というわけで、ここではウェアラブルデバイスの入門編として、もっとも身近で手に入れやすい活動量計についてその特徴や選び方をお伝えしたい。

活動量計はどんなことができる? 歩数計との違いは?

 活動量計は、内蔵した加速度センサーなどにより、1日の歩数、移動距離、消費カロリー、活動時間、睡眠時間や眠りの深さを測定できる。歩く、走る、眠るといった活動や、運動の種類まで自動的に判別するものもある。

 活動量計は歩数計と混同されがちだが、その機能には大きな違いがある。歩数計も歩数や消費カロリー、移動距離を測定できるが、その対象は歩行しているときに限る。一方活動量計は、掃除、デスクワーク、自転車移動など、歩数を含む24時間の“活動全体”が測定される。

 測定されたデータは、Bluetoothで同期したスマートフォンの専用アプリに取り込めるところも活動量計のメリットだ。アプリは概ねiOS版、Android版の両方が用意されているが、中にはどちらか一方のものもある。

 アプリ内では、日、週、月、年といった単位で活動量の推移をチェックできる。利用開始時にユーザ登録ができるものはデータがサーバ側に保存されるので、デバイスや端末が変わっても、ログインしなおせば過去のデータも見ることができる。安い製品の中には保存先がスマートフォン内だけというものもあるので、長期的に管理したい場合は注意したいところ。

 睡眠測定が可能な製品で、バイブレーション対応ならぜひ活用したいのが“目覚まし”機能。指定した時刻の30分~1時間の間で、眠りが浅くなったタイミングをみて起こしてくれるのだ。眠りが浅いタイミングなので、無理矢理起こされたときの不快感も軽減しやすい。

 この手の機能はスマートフォンのアプリでも可能だが、大きな違いは、音ではなく振動で起こすこと。周りに迷惑をかけないので、家族とライフスタイルが違う方にはおすすめだ。

活動量計を使うメリット

Jawbone UP MOVEで測定された睡眠データ

 活動量計は、今の自分を知ることで、明日の自分をバージョンアップできるデバイスだと思っている。「歩数が分かってどうだというんだ?」という人もいるが、歩数はもっとも分かりやすい代表的な活動であり、その人の日々の過ごし方をストレートに反映しているものといえる。

 活動量(運動)、睡眠、食事はすべて相互に影響を及ぼすため、自分の活動量を知ることが、さらに自分を詳しく知る入口なのだ。

 実際に日々の過ごし方が見えてくると、とにかく意識が変わってくる。たとえば、自分の睡眠に無頓着だった人が自分の睡眠サイクルを見て、疲れが抜けない理由に気づき、どうすればいいのかと考え始めるといった具合だ。

 意識の変化はやがて数字の変化として現れてくるので、使うことがより楽しくなってくるのも活動量計の特徴。活動量計は単なる測定器であり、アプリはそのデータを表示するものに過ぎないが、結果的に明日の過ごし方が変わる可能性を秘めているのである。

 また、ほとんどの製品は最低でも日常生活防水が施されているので、水しぶきがかかる程度なら問題ない。中にはSmartBand Talkのように水泳にも耐える製品もある。

 睡眠サイクルを測定できるモデルには、日中の活動モードと睡眠モードの切り替えが必要なものが多い。寝る前にボタンを押す、叩くといった動作でモードを切り換え、起床時に再び切り換える。非常に眠いときは切り替え忘れてしまうことも多く、また起床時に解除し忘れて長時間寝ていたことになってしまったといったミスも生まれやすい。最近ではこのモード切替が不要なモデルも少しずつ登場しており、今後は標準的になると思われる。

スマホ連携で好きなときに同期できる

いつでも同期できる

 多くの活動量計がスマートフォンと連携している。データはいつ同期しても構わない。アプリを起動しただけで同期が開始するものと、ボタンなどを押すことで同期が始まるものとがある。タイミングに指定はないので、好きなときに同期すればよい。ただし、機器によってデータの保持期間が異なるので、1週間に1回は同期するようにしたい。

 あとは、表示されたデータを見て、日々の健康管理の参考にすればいい。おそらく使い始めは、結果を数値やグラフで見られるだけでも楽しいはず。慣れてくるとそれが意味するものを知りたくなってくる。

 継続を左右するのはこのあたり。何らかの結果が見えたり、対策が分かると継続しやすいが、見るだけでは飽きてしまうこともある。最近では、アドバイス機能に力を入れているサービスもある。生活習慣を改めたいが、詳しいことは分からないという場合は、そういう製品を選ぶと続けやすいだろう。

リストバンド型、クリップ型のつけ心地

 活動量計は、手首に巻きつけるリストバンド型のほかに、衣類に挟むクリップ型もある。ベルトやポケットにはさんで使うため、ほどんと違和感なく身につけていられる。外からも見えにくいので、気づかれたくない方、手首にはつけたくない方に向いている。

 ただし、ふとした動作でひっかけてしまい、気がついたら紛失という例は結構ある。また、洋服、特に下着につけていて、間違って一緒に洗濯してしまったという例はかなり多い。防水性の高い製品なら生還もするが、乾燥機にかけてしまうとアウトなので注意したいところ。ポケットにいれるタイプもほぼ同様だ。

 リストバンドタイプは、装着中に紛失する恐れはかなり低い。ディスプレイのついたものには時計を表示するものも多く、腕時計代わりに使うこともできるほか、スマートフォンと同期しなくても今の活動量を確認できるというメリットもある。

 だが、形状によってはバンド部分がキーボードタイピングの妨げになりやすいものもある。左右どちらの腕に装着するかどうかで数値も変わってしまうというデメリットも。装着するなら利き手ではないほうをオススメしたい。

毎日充電するものから半年使えるものまで、バッテリー持ちはさまざま

 バッテリー持ちについては、ほぼ毎日充電したほうがいいものから、1回の電池交換で半年近く使い続けられるものまで千差万別だ。一般的にUSBケーブルで充電するタイプで10日前後、ボタン電池で駆動するものは数カ月は利用できる。ただし、表示部の有無や搭載されている機能によって差があるため、必ず確認しよう。

 ほとんどのデバイスは、バッテリーがなくなる前にスマートフォンで通知してくれるが、中には同期したときだけ画面に表示するものもあり、気がついたときにはバッテリー切れを起こしていることも多々ある。こまめに同期して、残量をチェックしたいところ。

 デバイスの多くは専用の充電器を必要とするので注意が必要だ。1週間を超える旅行や出張でも使う場合は、忘れずに携帯するようにしよう。

 なお、SmartBand TalkはmicroUSB端子を備えるため、USBケーブルの直挿しが可能。FuelBand SEは本体にUSB端子を内蔵しているため、パソコンに直接挿して充電することもできる。

気になる耐久性……洗濯や紛失には注意!

 毎日身につけるものなので、耐久性も気になるところ。本体の素材はシリコン製がほとんど。毎日使い続けているうちにかなり使用感が出てくる。特に白などの明るい色は汚れでくすみやすく、またシミが目立ちやすいので注意したい。リストバンドなど、人の目に触れる部分で長期間使い続けることを考えると、結果的に黒系の選択が無難。

 また、毎日使うため、破損や紛失の危険とも隣り合わせだ。筆者はこれまで、クリップの先端が外れて装着できなくなったことが2回、バンドと本体の接合部が剥がれて交換になったことが1回、いつのまにか紛失したのが1回といった経験をしている。このほか間違って洗濯してしまたことが2回ある。そのときは運良く生還したが、その後紛失してしまった。

 複数のデバイス上での出来事とはいえ、知人からも壊れたという話はよく耳にする。大きな課題の1つだろう。

女性でも使いやすい機種は?

 現在発売中のあれもこれも、正直にいえば、女性の視点からはいまいち身につけたいと思えないデザインかもしれない。しかし機能的にはむしろ女性に積極的に使って欲しい。日中活動的であることは質のよい眠りに繋がり、よい眠りは健康的な美しさに通じるからである。

 たとえばエプソンのPULSENSE「PS-500B」なら、常時脈拍測定が可能なため、脂肪を燃焼しやすい運動量になっているかがリアルタイムでわかる。つまり、積極的なウォーキングのみならず、日常の活動をエクササイズに変えられる可能性があるのだ。

 心も肌も磨きたいなら、今後発売予定のJawbone「UP3」が最適だろう。肌の再生も、余裕のある心も、すべては良質な睡眠が握っている。UP3なら、自分の眠りの実体がこれまで以上に詳しく掴める可能性がある。アプリ「UP」はアドバイスも豊富なので、参考になること間違いなしである。

 ただ活動量だけを見るのはつまらない、遊び心が欲しいという方には、SmartBand Talkのアプリ「Lifelog」がぴったりだろう。活動量のデータだけでなく、その日1日どこに行き、何をしたのかを、時間ごとに振り返ることができる。スマートフォンで撮影した写真やライフブックマークと呼ばれるメモも確認できるので、思い出をまるごと残せる。

 アプリが楽しければ継続しやすいので、大がかりなダイエットではなくても、活動的であることがシェイプアップに繋がる可能性は十分考えられるだろう。

実際に買うならコレ! 最新機種をチェック

 では、実際に購入しやすいおすすめ製品をピックアップしていこう。

Fitbit「Fitbit Zip/One/Flex」(実勢価格:約6,000円~11,300円)

 米国でも代表的なブランドFitbit。軽く、製品によって装着方法が選べる。FlexはUSB充電のリストバンド型、OneとZipはクリップ型だが、OneはUSB充電、Zipはボタン電池で駆動する。

 それぞれ測定できる項目に微妙な違いがあり、もっとも多いのがOneで、登った階数も測定可能。Flexは登った階数は測定しないが、リストバンドがいいという方向け。Zipは登った階数や睡眠は計れないが、数カ月持つバッテリー持続力がポイント。

 今後は心拍センサーを内蔵したリストバンド型の製品も登場予定。

左からFlex、One、Zip
アプリの画面。同期するデバイス毎に表示項目は変わる

製品情報
https://www.fitbit.com/jp/

エプソン「PULSENSE PS-500B」(実勢価格:約20,900円)

 ディスプレイと脈拍センサーを備えており、時計をみる感覚で脈拍数が常にチェックできる。心拍ゾーンをLEDや振動でも知らせてくれるので、効果的な運動ペースの維持などに活用できる。活動量計の中では、ランナーが使ってもおかしくないタイプ。

 電話、メール、スケジュールの通知機能もある。脈拍と加速度センサーで動きをとらえるため、睡眠時のモード切替は不要。睡眠グラフでは脈拍の変動も分かる。就寝中の脈拍の変化を見るのは非常に興味深い。

PULSENSE PS-500B。現在の脈拍数から自分の状態を知ることができる
アプリでは脈拍数の変動とともに活動量を見ることができる

製品情報
http://www.epson.jp/products/pulsense/ps500b/

ソニーモバイル「SmartBand Talk SWR30」(実勢価格:約17,150円)

 音声コマンドが使え、電話に応答できるなど、スマートウォッチ的な使い方も可能な多機能なデバイス。スマートフォンから専用アプリの追加・削除が可能で、今回紹介する中では、唯一機能を自分でカスタマイズできる。

 また電子ペーパーのディスプレイを搭載しているため、スマートフォンからの通知を文字で受け取れ、通知内容が分かる。防水性能も備えているので水泳にも使える。睡眠測定はモード切替が不要なので便利。

SmartBand Talk SWR30
活動量だけでなく、スマートフォンを使ったさまざまな行動も記録され、天候とともにアニメーションで再生できる。この演出は他にはない

製品情報
http://www.sonymobile.co.jp/product/smartwear/swr30/

Jawbone「UP24/UP MOVE」(実勢価格:約11,800円/5,645円)

 リストバンド型で目覚まし付きがいいなら「UP24」、目覚ましはないがバッテリーが数カ月持ちクリップ型がいいなら「MOVE」と選べる。アプリは睡眠のグラフが非常に見やすく、健康に関するアドバイスがかなり豊富なのが大きな特長。

 特に自分の睡眠サイクルをチェックしたい方にはおすすめ。活動と睡眠のモード切り替えは必要だが、ボタンの長押しなのでやりやすい。

 今後はバイオインピーダンス法を用いた心拍センサー搭載モデル「UP3」が登場予定。小型化が図られ、眠りの深さに関する情報が2段階から3段階になるなど、睡眠測定にも力をいれている。

左からUP24、MOVE。MOVEは本体を入れ換えることでリストバンドにもなる
専用アプリの「UP」。記録したデータをもとにしたアドバイスが得られる。画面スクロールで当日の情報が見られるほか、共有しあっている友達の活動もわかる

製品情報
https://jawbone.com/

NTTドコモ「ムーヴバンド2」(実勢価格:約5,400円)

 ムーヴバンド2はNTTドコモから発売されているが、活動量の測定だけなら、キャリアフリーで使える。歩数、移動距離、消費カロリーのほか、睡眠サイクルもわかる。

 ドコモの契約者でspモードのを契約しているユーザは、月額300円(税抜)の「からだの時計」も利用できる。生活習慣の改善に役立つグラフが利用できるだけでなく、運動やリラックスにも活用できるコンテンツも提供されている。最近ではアドバイス機能にも力が入っており、栄養に関する情報や健康的に過ごすための情報などが得られる。24時間年中無休の電話相談窓口も用意されている。

ムーヴバンド2
無料アプリ「わたしムーヴ」。タイムラインになっており、画面をスクロールすると睡眠のグラフなどが見られる

製品情報
http://www.d-healthcare.co.jp/products/moveband2/

エムティーアイ「karadafit」(実勢価格:約2,980円)

 ルナルナでおなじみのエムティーアイによる活動量計。数ある活動量計の中でも、唯一女性を意識した製品。ポケット、クリップ、ゴムバンドと、気分や服装に合わせて3種類の装着方法が選べる。特に髪に着けられる活動量計は他になく、シュシュの中に紛れさせれば目立たないため、ポケットもなくクリップしてもシルエットが、というときに便利。

 バッテリーは数カ月持ち、水泳にも耐える防水性能。睡眠は入力式だがデータは細かく、またアプリ内で睡眠の専門医のアドバイスなどのコンテンツも豊富に読めるなど、睡眠改善にも力を入れている。

3つの装着方法から選べる「karadafit」
専用アプリ。各項目をタップすると、さらに細かい情報が得られる

製品情報
http://www.pc.karadafit.jp/

自分にあったウェアラブルデバイスを見つけるコツ

 ウェアラブルデバイスを購入するときは、知りたいことが測定できるか、装着方法が合っているか、接続先のスマートフォン用のアプリは用意されているか、バッテリーの持続時間や防水性能などが自分のライフスタイルにあっているか、価格、デザイン、以上7つのバランスを考えて絞り込もう。使ってみると、必ずなんらかの発見や気づきが得られるはずだ。

すずまり