家電製品ミニレビュー

無印良品「赤外線センサーオーブンレンジ」 後編

~揚げないとんかつや手作り豆腐も作れる
by 阿部 夏子
無印良品「赤外線センサーオーブンレンジ」

 前回は、製品の詳細や基本機能を紹介してきたが、後編では付属のレシピブックに掲載されている手作りパンや豆腐、揚げないとんかつなど、電子レンジを使った調理を紹介しよう。

 最近のオーブンレンジでもはや常識になっているのが、本体専用のレシピブックだ。レシピ専用の調理方法や、運転時間が記載されていたる。

 製品によっては、レシピブックが別冊で用意されていることもあるが、「赤外線センサーオーブンレンジ・21L M-E20B」では、説明書の後半に用意されている。その数、実に50レシピ以上なので、ちょっとした料理本並に充実したものとなっている。その中から今回は「ハンバーグ」「らくらくベーカリー プチパン」「手作り豆腐」「みそサンドとんかつ」「えびときのこのチリソース」の5レシピを実際に作ってみた。

中までしっかり火が通ったジューシーなハンバーグ

 まずはハンバーグを作ってみよう。これまでオーブンレンジでの調理経験がないので、今回はとにかくレシピに忠実に作った。といっても、ハンバーグの材料は合びき肉、玉ねぎ、パン粉、卵、牛乳、塩こしょう、バターとごく一般的なもの。

 最初に玉ねぎをみじん切りにしてバターと一緒に600Wで5分加熱したらあとは材料を混ぜ合わせて、成形、真ん中を少しくぼませるようにして、付属の角皿においてスイッチを入れるだけ。ハンバーグの種は普段自分で作るよりもやや柔らかい印象だ。

まずはみじん切りした玉ねぎとバターをレンジで加熱玉ねぎとそのほかの材料を混ぜて種を作ったら油を引いた角皿に載せる庫内の下段に角皿をセットしたら石釜メニューで20分加熱する

 M-E20Bでは、普通のオーブンモードとは別に、ハンバーグ・ピザ・パンを焼き上げる専用モードとして「石釜メニュー」を備えている。石釜風のオーブン機能というのは、M-E20BのOEM元でもある東芝のオーブンレンジの特徴で「高温で素早く表面を焼き上げ、食材の旨みを閉じこめる」ように仕上げることができるという。

 加熱時間は20分間だが、あらかじめ15分間ほど余熱をする必要がある。食材の準備をする前に余熱をスタートしておくと、待つことなくスムーズに工程を進められる。

 種が少々柔らかかったこともあって、焼きあがりは不安だったが味の方はバッチリ。しっかり中まで火が通ってジューシーな味わいだった。ただ、焼き目などはあまりない。焼き目が欲しいという人はあらかじめフライパンなどで焼き目だけを付けてから焼き上げるといいかもしれない。

焼きあがりの様子。種が柔らか目だったからか、一部が鉄板にくっついてしまっている最初は仕上がりに少々不安を感じたが、味は中まで火が通ってジューシーな仕上がりお皿に盛りつけたところ


初めてでも簡単に作れる「らくらくベーカリー プチパン」

 続いて挑戦したのは「らくらくベーカリー プチパン」だ。パン作りは難しいというイメージがあったが、掲載されていたレシピはとても簡単でおいしくできあがった。

 作り方は材料を順に混ぜ合わせていくだけ。途中で2回生地を発酵させるが、それもM-E20Bを使って簡単にできる。パンを作るというと、途中何度も生地を休ませたりして時間がかかるものだと思っていたが、M-E20Bを使うと発酵時間もあっという間だった。1回目も2回目の発酵もそれぞれ4分ほど。あいだに10分ほど生地を休ませる必要はあるが、焼き上げの時間(約25分)と合わせても1時間程度で粉からパンを作ることができた。

まずバターと牛乳を600Wで40~50秒加熱そこにドライイーストと強力粉を加えて生地を作る。この時の状態は水気が多く、手にべたべたとくっついてしまう生地をラップでつつんでそのまままずは1次発酵
1次発酵後の生地。4分程度の短時間でここまで生地がふくらんだ生地を8等分し、そのまま10分ほと休ませるその後に形作り。今回はソーセージを挟んだパンも作った

 材料も強力粉、ドライイースト、バター、牛乳、砂糖、塩、とごくシンプルで特別なものは何もいらない。説明書ではいくつかのアレンジ例も紹介されていたので、ソーセージをパン生地で包んだパンも一緒に作った。

 どちらも焼きあがりは完璧。私ってすごいかも――と思わず自画自賛してしまったほどだ。味は、ほんのり甘く、ふわふわとした優しい味。これならお子さんのおやつとしても喜ばれそうだ。

焼きあがり。見事な焼き色と、膨らみ加減に感動してしまったソーセージパンもおいしく仕上がった中もふわふわで、1時間で作ったパンとは思えない完成度

豆乳とにがりさえあればすぐにできる簡単手作り豆腐

 付属のレシピでヘルシー調理として紹介されていたのが「手作り豆腐」だ。作り方はこれまた簡単。豆乳と適量のにがりを泡立てないようにかきまぜたら、容器に移して後は加熱するだけ。加熱時間は8分30秒であっという間に完成だ。

 豆腐が手作りできるということは知っていたが、ここまで簡単だとは思わなかった。完成した豆腐は見た目はまるで茶碗蒸しのように、プルプルとしている。市販の豆腐に比べると、柔らかく、ムースのように食べられる。実は大の豆腐好きで週に3丁は豆腐を食べている私。レストランなどで手作りの温かい豆腐を食べたことはあるが、自宅でこれが食べられるなんて感激だ。リピート確実の一品になった。

材料は無調整の豆乳とにがりだけ豆乳とにがりを泡立てないように優しく混ぜたら、耐熱容器に移すふんわりとラップをかけたら後は加熱するだけだ
できあがり。個別の容器に入っているため、見た目は茶碗蒸しのようだ。上にネギとしょうが、ごまをトッピングした中はふわふわのトロトロ。食欲のない朝でもこれなら食べられそう


揚げないとんかつも作れる

 油で揚げないからあげやとんかつと言えば、過熱水蒸気を使ったヘルシー調理を搭載したスチームオーブンレンジの代表的なレシピだ。今回M-E20Bを購入するにあたり、ヘルシー調理は特に重視しなかったのだが、レシピ集を眺めているとM-E20Bでも揚げないとんかつが作れるということが判明! さっそく作ってみた。

 オーブンレンジだけで加熱を仕上げるとんかつなのだから、レシピも普通のとんかつとは違うのかなと思っていたが、パン粉を付けるまでは普通のとんかつと変わらない。レシピでは味噌を肉の間に挟んだ「みそサンドとんかつ」が紹介されていたので、肉に味噌を挟んで、普通のとんかつを作る時と同様に、薄力粉、卵、パン粉の順番で衣を付けていく。次に角皿に市販のオーブンシートを敷いて、肉を置いたら上から大さじ2杯程度の油をまんべんなく振りかけるようにして、「ローカロリーフライ」メニューを選択。そのまま約28分加熱する。

豚のひれ肉(かたまり)を3cm程度の厚さに切って、中央に切れ目を入れる。そのあとしっかり肉をたたくのがポイントだ。肉の面積はたたく前の1.5倍ほどになる肉の切れ目の間に味噌とネギを混ぜたものを挟む小麦粉と卵、パン粉の順で付けたら角皿にセット。上から油を振りかける

 これで本当にできるのかな、と半信半疑だったが見た目は焦げ目が付いた「とんかつ」だった。ただ、味の方はやはり普通のとんかつとは別モノだ。間に挟んだネギ味噌が豚肉とからんでおいしい、味はおいしいけど、やっぱりとんかつではない。やっぱり油の量が決定的に違うからだろう、とんかつ特有のジューシーに欠ける。個人的には別に無理してとんかつにしなくても豚肉のグリルで良いんじゃないかと思ってしまった。

 ただ、病気などで揚げものは絶対に禁止されているという人にとっては、あると嬉しいメニューかもしれない。

焼きあがりパン粉にもうっすら焼き色がついて、見た目はしっかりとんかつだ中までしっかり火が通っていた。ネギ味噌がしっかりしみ込んでいるのでソースなどを付けずにこのまま食べられる

フライパンを使わずにエビチリを作る

 最後に作ったのは中華の定番エビチリだ。普通に作る場合、エビを下揚げしてそのあと更にソースと絡めるために炒めるので、かなり油の量が多くなる。M-E20Bに掲載されている「えびときのこのチリソース」で使う油の量は、大さじ1/2のごま油だけ。大幅にカロリーカットできる。

 作り方は背ワタを取ったエビに片栗粉、酒、塩で下味を付けておく。その間にシメジとネギ、チリソース(ごま油、ケチャップ、湯、片栗粉も混ぜる)をからませて、最後にエビも一緒によく混ぜる。あとは、耐熱容器に載せて、600Wのレンジで8分30秒加熱すればできあがりだ。

 ソースがしっかりと具材に絡んで、おいしくできあがった。実は、私が胃がもたれやすい性質で、揚げ物や中華を食べると必ずといっていいほど胃がもたれてしまう。それがM-E20Bのレシピで作ったチリソースやとんかつは大丈夫だった。やはり使用する油の量が圧倒的に違うのだろう。ただ、その分物足りなさを感じる人もいるようで、試食した家族は物足りなさを口にしていた。

加熱前の状態加熱するときはラップをふんわりとかけるようにする完成した「えびときのこのチリソース」。片栗粉をあらかじめ絡めておいたからなのか、意外にもしっかりと味がついていた。でも油の量が少ないので重たくなく、さっぱりと食べられる

 いわゆるヘルシー調理を作ったのは今回が初めてだったが、正直にいうと「味を取るのかカロリーを取るのか」というところになると思う。ただ注意したいのは、M-E20Bではヘルシー調理はあくまでおまけというところ。ヘルシー調理をウリにしているヘルシオなどとはそもそも、調理方法からして全く違う。カロリーを抑えた料理をしたいなら、多少価格が違っても、スチーム機能を搭載した機種を選んだほうがいいだろう。



 当初はその多機能さに使いこなせるかどうか不安を感じていたが、手作りパンや豆腐など、これまで自分とは縁がないだろうと思っていたレシピも、実際にやってみると思ったよりずっと簡単で、素直にまた作りたいという気持ちになった。

 ただ、フルタイムで仕事をしている私にとって、レシピブックを見ながらの調理というのはやっぱり毎日続けられることではない。M- E20Bを買って一番満足しているのは、やっぱり赤外線センサーを使っての温めや解凍などの基本機能。ダイヤル式のタイマーを回して、ターンテーブルが回転する旧式の電子レンジを使っている人は、そろそろ新しい製品に買い替えてみるのはいかがだろう。きっと感動できるはずだ。

前編/ 後編



2010年6月24日 00:00