家電製品ミニレビュー
無印良品「赤外線センサーオーブンレンジ」 前編
■最新多機能の電子レンジって本当に必要なの?
無印良品「赤外線センサーオーブンレンジ」 |
知人からもらいうけて騙し騙し使っていた古い電子レンジがついに壊れてしまったため、新しい製品を購入することにした。仕事柄、最新機能を搭載したオーブンレンジにどういうものがあるか、いくらぐらいするものなのかということには普通の主婦の方よりは詳しいはずだが、どうも食指が動かなかった。それは「多機能すぎるから」というのが一番の理由だ。
カロリーカットができるヘルシー調理やスチームを使った調理は確かに魅力的だ。でも、仕事をして自宅に帰ってからそれやるのか――と聞かれると、うーんと唸ってしまう。そもそも、15年以上前のオンボロ電子レンジを特に不満を感じずに使っていたくらいなのだから、それほど高機能なものが必要とも思わなかったのだ。
改めて最新の電子レンジを比べてみると、高級機と普及機の一番大きな違いは「スチーム調理」の有無だ。スチーム調理とは、文字通り蒸気を使った調理法で、電子レンジで蒸し料理ができるというもの。メーカーによっては蒸気を更に進化させて、食材の余分な油や塩分を取り除く機能なども搭載されている。
古い製品を長らく使っていた自身の感覚からいうと、電子レンジを調理機器とはとらえていない。温め直しや解凍に用いるあくまで補助的な役割をする家電製品だと思っていたのだ。そのため、さまざまな調理方法や、何百というレシピが搭載されている最新の製品を使いこなす自信がなかった。
そこで購入したのが今回から2回に渡ってご紹介する無印良品の「赤外線センサーオーブンレンジ・21L M-E20B」だ。
無印良品の家電製品は、「それほど高機能のものはいらないけど、ある程度のトレンドは抑えておきたい」という時には便利なのだ。というのも、そもそも無印良品では、そこを狙った“ものづくり”をしているからだ。詳細については、以前掲載した弊誌記事「無印良品のものづくり」をご覧いただきたいが、家電に関わる仕事をしている私から見てもそのラインナップは理にかなっている。
メーカー | 無印良品 |
製品名 | 赤外線センサーオーブンレンジ・21L M-E20B |
販売価格 | 26,800円 |
購入場所 | ネットストア |
たとえば、オーブンレンジにしても無印良品のラインナップは、2つだけ。今回の赤外線センサーオーブンレンジは、同社のラインナップの中では上のレベルの製品だ。下位機種となる「オーブンレンジ・16L M-E10C」は、庫内容量が16Lと小さいことと赤外線センサーが省略されていることが大きな違いとなる。
今回紹介するM-E20Bの基本機能を見てみると、赤外線センサーや仕上がりを重視した石釜風のオーブン機能など、ある程度のトレンドは抑えている。
私の場合、特に重視したのは、基本機能である温めと使いやすさだ。まず、温めに関して言えば、赤外線センサーの有無を重視した。赤外線センサーとは、食品が放射する赤外線の量を測定することで、食品の表面温度を検知するセンサーだ。食品の表面温度を見ながら加熱するので、食品の最初の温度や容器の重さなどの影響を受けずに、設定した温度に加熱することができるという。
旧式の電子レンジを使っていた私は、温め時間の設定には毎回てこずっていた――というより、適当だった。食品の種類や温度に関係なく、「とりあえずこのくらいだろう」という目安を自分で勝手に設定して使っていたため、コーヒーが爆発していたり、サランラップが破裂寸前になっていたり、お皿が熱くなりすぎていてやけどをしたりという失敗を数多くしていた。赤外線センサーを搭載していればその心配がない。
使いやすさに関しては、まず庫内がフラットなこと、そして扉が正面に開くこと、さらにダイヤル式の操作を採用しているものとした。さらにいうと、無印良品ならではのシンプルなデザインも気に入っている。
前置きが長くなってしまったが、さっそく製品の詳細を見ていこう。本体サイズは480×408×305mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は14kg。スチーム機能などが搭載されている最新のオーブンレンジに比べると重さは5kg以上軽く、本体サイズも小さめだ。我が家では木製のキャビネットに設置したが、その時も一人で設置できた。
本体を自宅のキャビネットに設置したところ。重量14kgで決して軽いとは言えないが設置は一人でできた | 本体側面 | 本体背面 |
庫内容量は21L。ターンテーブルなどはなくフラットな造りだ | 本体にはオーブン調理などで使用する角皿が付属する |
操作パネル部分。ボタンスイッチには日本語で説明が書いていあるのでわかりやすい |
操作は本体正面のボタンとダイヤルを組み合わせて行なう。ダイヤルは場面に応じて機能が変わるので最初はやや戸惑った。まずは、加熱メニューの選択をするとき、もう1つは時間の長さを設定する時に使う。
と、書くとどちらも使用頻度が高そうで混乱してしまうんじゃないか、と思うが、実際にはそんなことはない。というのも、赤外線センサーを搭載している電子レンジでは例外でない限り、時間の設定をする必要がないからだ。食品の温度を検知して運転時間は自動で制御される。例外というのはたとえば、冷凍食品を使う時に「600Wで2分30秒温めてください」などという指定がされている時や、料理本などで温め時間が指定されている時などだ。
機能を簡単に説明すると、レンジ、オーブン、発酵、グリルだ。シンプルな機種を選んだつもりでも、調理方法はこれだけバラエティに富んでいる。運転メニューは、全部で25つ用意されている。これらのメニューはダイヤルで選択するか、パネルに備えられているワンタッチメニューキーでも選択できるようになっている。
■自動制御で温めがワンタッチ
1カ月ほど使った印象から先にいうと、やっぱり赤外線センサーってすごい。ごはんやおかずの温め直しや、冷凍ご飯の解凍など毎日使っているが、とにかく使い勝手が良い。日常生活の中で普通に温める場面では扉を開けて、スタートボタンを押す。これだけでOKだ。
もちろん、出力W数や、温め時間を設定することはできるが、日常生活の中で使うごはんのあたため直しや、前日の残りものの温め直しはこれだけで十分こと足りる。
M-E20Bでは、温めメニューとしてスピードとソフトの2種類を搭載している。「スピードあたため」は900Wで連続的に温めるモードで80℃を適温としている、「ソフトあたため」は、赤外線センサーで、食品温度に応じて出力数をコントロールして温めるモードで75℃を適温としている。
使用頻度が高い冷凍ご飯の解凍 | ラップが重なっている部分を下にして庫内中央に置く | 液晶画面には、その時の食品温度と設定温度が表示される |
温め後ごはん。ふっくらと仕上がった | 汁物や汁気のおおいおかずなどはソフト温めが向く。ソフト温めの設定温度は75℃で、スピード温めよりも低めに設定されている | ソフト温めであたためたマーボー豆腐。熱くなりすぎることもなくおいしく食べれる仕上がりになった |
ごはんや冷凍ごはんはスピードあたため、汁物やから揚げなど温めすぎると飛び散ってしまうようなものや、固くなってしまうものはソフトあたためが適している。ちなみにそれぞれのモードで適温と設定されている80℃・75℃の温度を変更することもできる。
■のみものは専用メニューで!
基本機能だけで、感動すら覚えてしまった私だが、調子に乗って失敗してしまったことがある。それが飲み物の温めだ。操作ボタンをよく見ればちゃんと「のみもの」のボタンがあるにも関わらず、いつものようにあたためボタンを押してスタートボタンを押してしまった。その結果、加熱しすぎたコーヒーが庫内に吹きこぼれてしまったのだ。
改めて、説明書をよく読むと「あたためではのみものは加熱できません」とちゃんと書いてあった。のみもの温めの設定では、適温が65℃で普通の温めより低く設定されているのだ。
庫内の状態はひどいことになってしまったが、こんなときでも庫内がフラットなのでお手入れが簡単にできる。いや、正直な話これがターンテーブルタイプの電子レンジだった場合、手入れは本当に手間がかかるのだ。まずターンテーブルを取り外し、下にこぼれたコーヒーをふき取って、ターンテーブルも別に洗って。この手間を省くと、汚れが堆積していって、電子レンジが開けてはいけないブラックボックスのようになる(という経験が実際にある)……
スピードあたためでマグカップに入ったコーヒーを温めたら庫内に吹きこぼれてしまった | 庫内はフラットなのでお手入れは簡単にできる |
また、正面開きの扉も横開きに比べると庫内が格段に見やすい。外の光がしっかり中まで入るので奥までしっかり確認できるのだ。
■解凍も自動制御で失敗なし
基本機能の中でも私が感動したのは、解凍機能だ。古い電子レンジの場合、肉や魚の重量に合わせて自分で時間を設定する必要があった。それがM-E20Bでは、重量も適温も運転時間も自動で制御してくれるので普通の温めと同じくらい簡単に、しかも失敗がなくできる。
解凍前の肉。安くなっているときに大量に購入して冷凍している。解凍するときはラップを外して発砲トレイのまま庫内にセットする | 生解凍のメニュー14番を選択してスイッチを入れるだけ。自分で運転時間を設定する必要はない | 運転中は食品の温度が表示される |
解凍後の肉。そのまま楽に炒めることができるくらいの柔らかさだ | こちらは厚みのある豚ロース。厚みのある肉でもしっかりムラなく解凍できた |
■茹で野菜専用のメニューも
電子レンジで調理はしないと書いたが、そんな私でも電子レンジで調理とした経験があるのが野菜の温めだ。じゃがいもや青野菜を短時間で柔らかくしてくれるので、時間を短縮したい時にとても便利に使える。M-E20Bでは、茹で野菜専用のメニューを備えている。ほうれん草やキャベツなどの「葉菜」とじゃがいもやかぼちゃなどの「根菜」の2種類があるが、今回はほうれん草で試してみた。
ほうれん草をあらかじめ水洗いして、葉と根の部分が交互になるように置いて、ラップでしっかりと包んだら準備完了。後は茹で野菜(葉菜)のメニュー番号12番をダイヤルで選択したらスタートボタンを押すだけだ。仕上がりまでの時間は約2分ほど。ほうれん草のサイズが大きかったこともあって葉っぱの方にやや加熱ムラが残ってしまった。ほうれん草はもともと生でも食べられるものなので、今回はそのまま食べたが、もちろん再加熱することもできる。
まずは生のほうれん草を水洗いする | 水分の残った状態で根っこと葉っぱの部分を交互に置くようにして、ラップで密閉する | 2分ほど加熱した後のほうれん草。葉っぱのほうにやや加熱ムラがある |
今回は、基本編として製品の詳細やあたため機能を中心にご紹介してきたが、レシピ集を改めてじっくり読んでみるとM-E20Bでは“揚げないとんかつ”や“手作り豆腐”など今話題のヘルシー調理にもどうやら対応しているようだ。明日は活用編として、古いタイプの電子レンジには搭載されていなかった自動調理機能を中心に紹介する。
2010年6月23日 00:00