藤本健のソーラーリポート

発電所長はつらいよ。台風、雑草……自然との果てなき戦い

「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)

 山梨県に第1号発電所、千葉県に第2号と第3号発電所を持つ発電所長として運営する毎日。傍から見れば、ただ放置しておけば発電して、その売電金額が入ってくるいい商売のように思えるだろうが、なかなかそうもいかないのが難しいところだ。

千葉の第3号発電所

 千葉の第3号発電所は今年2月に運用を開始したものの、いまだに業者側と揉めていて気が休まらないし、どの発電所も自然が相手なだけに、トラブルの連続なのだ。

出力大幅ダウンで様子のおかしい第3号発電所

 そんな中、その第3発電所の発電状況をモニターシステムを使って見ていたら、7月7日の朝から、出力が大幅にダウンしていた。おかしいと思って、隣の敷地で友人Aが運営している同規模のモニターを見ると通常通りに動いており、比較してみると筆者の発電所の出力は友人Aのちょうど1/3となっていたのだ。

 自宅からはクルマで2時間程度の場所であり、すぐに見に行くことができないため、設置業者であるH社の担当、Yさんに連絡したら、翌日すぐに行ってくれた、というところまでが前回の話

 現場報告によれば、モニターシステムであるエコめがねの出力が下がっているのは、エコめがね側のシステムトラブルだった、とのこと。具体的には各パワコンから、エコめがねのシステムへデータを送るケーブルが動物によって噛み切られ、9個あるパワコンのうち6個分が断線したというのである。ネコかカラスにやられたのでは……と電話口でYさんは言っていたが、メールで送られてきた写真がこれ。

見たところ動物に噛みちぎられているようだが……

 なんとも分からないが、歯形などを見る感じでは、ネズミではないかな、と思う。いずれにせよ、見かけ上の出力が1/3に下がっているのであって、売電そのものには問題はないから、安心してほしい、という連絡だったのだ。

 確かに、発電設備自体が故障して売電が1/3に下がっていたとしたら1日当たり5,000~7,000円程の損害となるが、そうでないなら、一安心だ。とはいえ、これを放置しておいていいという話でもない。

 そこで「すぐに工事せず、まず見積もりを出してほしい」とメールで連絡したところ、予想外にいい方向に話は進んでいった。まずはH社側が保険会社に問い合わせをしてくれ、これが保険の適用になるのかを聞いてくれた。残念ながら、これは発電システムそのものではなく、付属品もしくは付属配線の類であるため、免責事項に入るとのこと。

今回の被害は保険の適用外だった

 しかも、ねずみ食い、虫食いなどによる損害も免責事項であるため、今回は非適応ということだった。仕方ないので、なんとか自分で修理しようか……などとも考えていたのだが、その後の連絡で、今回は無償で修理をするとともに、今後動物にやられないように、隠蔽工事をしてくれると申し出てくれて、このときはすべて丸く収まったのである。

 ちなみに、実際にその修理工事が行なわれたのは7月16日で、その日からエコめがね上の出力も元に戻り、気持ち的にもすっきりした。

7月7日から16日まで、エコめがねの出力が1/3に落ちていた

 また、工事後のパワコン周りの写真もメールで送られてきて、キレイに修理されていることが確認できた。

隠蔽工事を施した後の様子
配線が直接齧られることはなくなったように見える

慣れない草刈り作業……雑草の生い茂る第2号発電所

 これでようやく落ち着いたかな……と思った4日後、千葉の第2発電所の隣の敷地で2つの発電所を運営しているSさんから久しぶりにメールが届いた。Sさんとはまだお会いしたことはなかったのだが、千葉県内に10カ所近い発電所を運営しているとのことで、メル友のようにときどき情報交換をしていた。

 その時の要件は、東京電力以外の電力会社への売電に切り替えることに関する相談であり、筆者の知っている情報などを返信していたのだが、せっかくなので近いうちに会ってみないか、という提案をしたのだ。

 Sさんからも、すぐに二つ返事で、会いましょうとメールが届き、日程を調整した結果、8月4日に現地で初顔合わせし、その後ランチをすることになった。ただ、そのメールのやり取りの中、Sさんから「先日現地に行ったのですが、藤本さんの施設、昨年抜根したところあたりで、イネ科植物の丈がかなり伸びてしまってたようです。問題になる面積はごく限られてるので、落ち着いたら問題部分のみに丈夫な防草シート貼るのが一番楽かと思います」という連絡をもらったのだ。

うっそうと生い茂る植物に覆い隠されつつある発電所

 もともと、砂利を敷いて、ローラーをかけてあった土地なので、それほど草も生えないだろう……と思っていたのだが、昨年の設置工事前にはかなり草が生えてきてしまったため、少し大がかりに除草作業をした。冬に見たときは、キレイな状況だったのだが、やはり夏になって、草が生えてきたということなのだろうか……。まあ、8月4日に現地に行ったときに、少し草刈りでもしようか……なんて軽く考えていた。

 そして当日、クルマで現地についてみてビックリ。ちょっと草が生えているなんてどころではない。もうジャングルの中に発電所が埋もれている……というのに近い状況だったのだ。

 ただ、幸いなことに、ここの発電所は架台をかなり高くしてあり、一番下が1.2m程度。そのため、1m以上の草がいっぱい生えてはいたけれど、その時点では影の影響はそこまで甚大ではなかった。それに引き換え、Sさんの発電所側はほとんど草も生えておらず、とってもきれいな状況。

 比較的こまめに現地に来て雑草除去をしているのと同時に、やはりそちら側がもともと砂利の敷き方がよかったようで、買う場所を失敗したかな……と悔やんだりもしたのだ。ただ、いまさら後悔したところで仕方ないので、数時間かけて、草刈りを行ない、その場においては、なんとか太陽光パネルに影ができない程度にはすることができた。

 ただ慣れない草刈り作業で体はボロボロ。しかも真夏の炎天下で半袖で作業してしまったため、手は傷だらけで、日焼けで真っ赤に……。まさに素人による農作業というような感じだったわけだ。

草刈り後の第2発電所

 ところで、このときにSさんと初めて会ったわけだが、自分の想像していた人物像と違いすぎて、そこにも驚いた。発電所を10カ所も運営しているということだったし、メールはガラケーメールだったから、年配の方なのだろう……と予想していたのだが、筆者より1回り以上年下の30代。聞くところによれば、本業は薬剤師だけど、いろいろなビジネスに手を出しているのだとか……。

 役所勤めの経験もあることから、行政の利用の仕方から、シルバーセンターのような組織の利用法などもご存知で、とっても知識も豊富。実際、彼の設備はシルバーセンター的な小さな組織に依頼してメンテナンスを行なっているとのことで、そこを紹介してもらったりもした。今後の円滑な太陽光発電所運営のためにも、ぜひSさんとは仲良くしていきたいな……と思った次第だ。

予想外の台風、見るも無残な姿になった太陽光パネル

 その千葉の第2発電所の雑草除去をしたとはいえ、そのまま放置しておけば数週間で元の木阿弥になることは自明のこと。やはりSさんのアドバイス通りに、防草シートを張る必要があるな……と調べていたころ、関東に台風がやってくるというニュースが入ってきた。

 例年とは気圧配置が違うとかで、今年は関東直撃の台風がいくつか来たわけだが、その中でも大きかったのが死亡者1名、負傷者67名を出した台風9号だ。ニュースでは大騒ぎをしていたものの、自宅のある横浜は大したこともなく、ちょっと拍子抜けした気分でいた。ところが、深夜の台風も過ぎ去り、晴れの日となった22日の早朝に、携帯に電話がかかってきたのだ。

 登録の無い着信番号、聞き覚えのない電話の声の主は、先日行ったばかりの千葉の第2発電所の北側にあるお隣のお宅のIさん。設置工事前に挨拶に伺った際に渡した名刺をしっかり保存しておいてくれたようで、それを見て電話がかかってきたのである。

 そのIさんによると、昨夜の台風でIさん宅の桜の木が折れてしまい、筆者の太陽光パネルに当たってしまった、というのだ。折れた木を処分する前に、見てもらったほうがいいと思って電話をした、と言っているのだけれど、イマイチ状況がハッキリと見えてこない。が、よく聞いてみると、その倒木により、パネルが割れるとともに、架台も曲がってしまっているというから、尋常ではない。

倒木がパネルに直撃している

 とはいえ、その日も取材の仕事などが入っていて、すぐに見に行くこともできないし、見に行けば直せるというわけでもない。まずは設置業者であるエコスタイルに連絡をしようと思ったが、朝7時では、まだ電話もつながらないので、担当者に状況をメールで伝えた。

 すると朝9時すぎには電話で連絡をくれ、午前中には工事担当者が現地に駆けつけてくれることになったのだ。こうやってすぐに動いてくれるのは本当に心強いところ。そして、午後に報告とともに送られてきた写真がこれ。まさに見るも無残な姿になっていた。

下から見たところ。倒木の重みでパネルだけでなく、架台も破損している

 報告によると割れたパネルは4枚。架台も完全に曲がってしまっているので、このままではマズイだろうとのこと。ただ、これだけバキバキに割れても、割れているのは表面のガラスのみで、シリコン側はそれほど影響はなく、電圧・電流を見ても問題なく発電はされている、というのだ。

 修理のために、モノの手配はするけれど、パネルなどが届くのに多少時間がかかるので、そこは了承してほしいという。そこは、もちろん待っているしかないが、気になるのはそこにかかるコスト。これで何十万円、何百万円も飛んでいくとしたら一大事。お隣のIさんに請求できるのか、やはり自己負担になるのか……などと考えていたが、エコスタイルからは「台風による倒木なので、まず問題なく保険が適用になると思います」との連絡。こちらがいったん負担してからの保険で補てんという形ではなく、まったく出費することなく修理できるだろうとのことで、一安心した。

 その後、エコめがねの状況を見ても、確かに普段と変わりはない。もし、お隣のIさんから連絡がなかったら、その次に行くまでまったく気づかなかったかもしれないと思うと、ちゃんと挨拶しておいてよかったな……と胸をなでおろした次第だ。

台風による倒木なので保険適用対象とのことだ
パネル表面もひどい有様だが、この状態でも発電はできている
エコめがねで発電量を見ても、特に異常はみられない

パネルはキレイに復元。工事中の発電も問題なし

 それからしばらくして、9月6日の朝に修理工事をしてくれる、という連絡が入った。工事当日は、作業終了直後に到着。現地で説明を受けたが、ここで見たときには、もうすっかりキレイに修理が終わっており、パッと見ではどこを修理したかも分からないほど。

修理が終わったパネル

 ただ、よく見てみると、ホコリのないピカピカのパネルが4枚あるので、これが新しいパネルであることが分かる。また、その修理のために1時間程度、パワコンのブレーカーを落としたが、ほかは運転したまま工事したとのことで、エコめがねのモニターを見ても、発電にはほとんど影響がなかったようだ。

 その後は11月に入っても、大事件は起こっていないが、これまでの状況を見ると、いつ何がおこってもおかしくない状況であり、毎日が臨戦態勢。第3発電所の業者とのこじれた関係もなんとかクリアしたいところだし、第2発電所への防草シートの設置もこれからだ。

無事なパネルは稼動状態で工事したためか、発電量に異常はみられない

いざというときに備えて電気工事士の資格を取得

 筆者としては、これらの発電所のメンテナンスは基本的には業者にお願いしたいところだが、いざとなったら自分でもメンテナンスができるようにと、先日、第二種電気工事士の資格を取得したところだ。

 正直に言うと、この試験には昨年秋に受験しており、その時は一次試験は合格したけれど、電気工事を行う二次の実技試験で落ちてしまった。すべて独学での学習ではあったが、一次試験免除となる今年になんとかリベンジを、ということで夏に二次試験を受けなおした結果、なんとか合格できたのである。

 できればこの資格を活用するようなことがなく、順調に発電をし続けてくれると嬉しいのだが……。3つの発電所を運営する発電所長はなかなか大変なのである。

自分でもある程度メンテナンスができるように、第二種電気工事士を取得した
第二種電気工事士免状

藤本 健