そこが知りたい家電の新技術

トップ会談からスタートした無印良品×バルミューダの空気清浄機

無印良品トップの強い思いから企画がスタート

 「バルミューダと仕事がしたい」

 全ては無印良品を展開する良品計画 代表取締役社長 金井政明氏の一言からスタートした。

 快適性をとことん追求した扇風機「GreenFan」や、独自の構造を採用した空気清浄機「AirEngine」などで知られる日本のベンチャー企業バルミューダと、今や世界的な日本ブランドとして知られる無印良品がタッグを組んだ「空気清浄機 MJ-AP1」が10月29日に発売になった。

無印良品の「空気清浄機 MJ-AP1」
本体背面。円筒形で、背面からフィルターを出し入れする
本体上部。周囲から吸い込んだ空気を上部から送風する

 金井氏がバルミューダに強い興味を持ったのは、既に構築された日本の家電業界にいきなりヒット製品を送り込んだ高い技術力とデザイン性、そして企業としての姿勢だったという。

 「日本にもこんな企業があったのか、なんとか一緒に仕事ができないか」

 金井氏は自らバルミューダの寺尾社長にアポイントを取った。良い物を作りたいという共通した想いがあった2人はすぐに意気投合し、空気清浄機を共同で作るという今回のプロジェクトがスタートした。

OEMではなく、あくまで共同開発

無印良品で生活家電の開発を担当する大伴 崇博氏(左)と、池内 端氏(右)

 無印良品を運営する良品計画生活雑貨部エレクトロニクスカテゴリーマネージャーの大伴 崇博氏は「先方も最初は、トップの思いだけで進んでいるのかと少し警戒をしていたようでした。しかし、私たち担当者の思いも同じであることを初めての実務担当者会談で熱い思いをお話しさせていただきました」

 同エレクトロニクスMDの池内 端氏は、「初めての実務担当者会談で、私たちは既にA41枚にまとめた空気清浄機の完成図を用意していきました。トップ会談の話を聞き、こちらのチームも無印良品の空気清浄機のあるべき姿を話し合い、完成図を描いていたのです。この完成図をバルミューダさんにお見せしたところ、社長も社長もなら、社員も社員だなあ。あんたら本気なんだね、わかりました技術提供という形でご協力しましょう。とプロジェクトが動き出しました。そこで、先方がこだわったのは、OEMにはしないということでした」

 OEMというのは、ほかの企業が作った製品のブランドだけを変えて発売するということ。製品開発や生産は全てOEM元の企業が担当することになる。しかし、今回の空気清浄機は違う。バルミューダは空気清浄機の設計だけを提供し、デザインや生産は無印良品が担当する。

 「商品を開発する場合、ふつうは完成図通りにはなかなか作ることはできません。しかし、今回の空気清浄機は、ほぼ完成図通りに仕上がっています。これは、完成図自体の精度が高かったこともありますが、なによりバルミューダさんのモノづくりへの執着すごかったです。様々な課題が発生しても、簡単には諦めず、常に革新することを前提に行動をされていました」(大伴 崇博氏)

機能美を追求したインテリアにマッチするデザイン

 内部に360°フィルターを備えたその構造は、バルミューダの空気清浄機AirEngineとよく似ているが、空気を上部に送り出すファンやフィルターの構造は違う。

 「上部のファンには、無印良品のデスクファンにも採用している二重反転構造のファン(デュアルカウンターファン)を使っています。デスクファンの場合は、空気を効率よく前に送ることが基本設計になっていますが、空気清浄機の場合は、浮遊物質を周囲から集め、フィルターに吸着させるため吸引力の強い下側のファンの設計と、きれいになった空気を大量に送り出し、強い循環気流を発生させる上側のファンを新規設計する必要がありました。この技術開発もバルミューダさんがモーターメーカーさんと共に開発を行なっています。」(池内 端氏)

 「フィルターについては、バルミューダは酵素を用いたフィルターを採用していますが、無印良品の空気清浄機では酵素フィルターを使っていません。消臭効果のある活性炭フィルターと、集じんフィルターを一緒にした一体型フィルターを採用しています」(大伴 崇博氏)

本体カットモデル
空気清浄機の構造設計はバルミューダが担当
360°集じん脱臭フィルター
ニオイセンサーとホコリセンサーを搭載する
無印良品のサーキュレーターなどにも採用している二重構造のファンを採用

 デザインも無印良品のチームが担当した。

「バルミューダの空気清浄機を初めて見たとき、360°全てから吸うというのは非常に効率的で、空気清浄機として理想の形だなと思いました。従来の空気清浄機って、板型のフィルターを何枚も重ねていたのに、それを丸くしたというのはこれまでない発想だな、と。無印良品でも、機能がデザインを体現するような機能美を追求しました。無印良品の製品は、生活に馴染むというのが前提になるので、突出しすぎないようにしながらも、空気を吸う製品であるというのはわかるようにしました」(池内 端氏)

インテリアと馴染みやすい主張しすぎないデザインを採用
操作部のアイコンには、バルミューダのAirEngineと同じ飛行機を採用

 設計、デザイン、生産と役割を分けたバルミューダと無印良品の新たな試みだが、1つだけ両製品に共通するものがある。それは操作ボタンのアイコンだ。バルミューダでは、フルパワー運転をジェットクリーニングモードとして、飛行機のアイコンを採用している。無印良品の空気清浄機にもそのアイコンが採用されているのだ。

 「このアイコンはこだわりを持って残しました。機能を体現するわかりやすいアイコンであることはもちろんなのですが、今回の共同開発の象徴としてお客様に気づいていただけたら嬉しいです」(池内 端氏)

良いエンジンがあれば、メーカー関係なく採用するのは当たり前

 デザインや販売経路などが違っていたとしても、内部構造や思想が同じ空気清浄機、ともすればライバル関係にもなりそうな気もする。

 「単なるビジネスパートナーとしてではなく、両社に良い物を作ろうという理念があったからこそ、実現した企画。寺尾社長は、バルミューダは無印良品にエンジンを提供するのだとおっしゃっていました。車メーカーでは、良いエンジンがあれば、メーカーを越え、同じ想いのある企業と組むことが稀にある。今回もそのようなことが起きた」(大伴 崇博氏)

 無印良品とバルミューダ、今後両社がどういう展開をするのか、現時点では未定だが、話を聞いていて、これで終わるはずがないと確信した。事実、無印良品ネットストアで先行発売された製品は3日間で完売している。

 大手家電メーカーではなく、生活雑貨も扱う無印良品と、“家電ベンチャー”のバルミューダが次にどんな家電を作るのか。楽しみにしているのは私だけではないはずだ。

(阿部 夏子)