そこが知りたい家電の新技術
「キャニスター掃除機はいずれなくなる」~ルンバCEO Colin Angle氏
by 阿部 夏子(2014/11/12 07:00)
ルンバは、ロボットカンパニーだからこそ作れる製品
ロボット掃除機「ルンバ」などで知られる米国のiRobot(アイロボット)のCEO(最高経営責任者)のColin Angle氏(コリン・アングル)は、メディア関係者を対象とした座談会を10日、都内で開催した。
iRobotは、「実用的なロボット」を作ることをミッションとして掲げる、創業24年のロボットカンパニー。
「宇宙で活躍するようなロボットから、ロボットのビデオゲームまで色々なものを扱ってきた」という同社では、現在収益の9割を家庭向けロボットが占める。中でもロボット掃除機「ルンバ」の成長は著しく、Colin Angle氏は、ルンバの成長について「ロボットを作ることにフォーカスしているロボットカンパニーだからこそ、実現した」と話す。
「いわゆる家電メーカーは、既存の商品をどう自動化するかというアプローチをしているが、ロボットカンパニーはより野心的なアプローチをしている。ゴールとするのは、機能の追加ではなく、機能の置き換えであり、より魅力的な将来へのアプローチだ」
また、ロボット掃除機の勢いは、いずれキャニスター掃除機を超えると話す。
「実際、コード付きのキャニスター掃除機は充電式のスティッククリーナーやロボット掃除機に押されている。ある有名な家電メーカーのCEOは『将来的にロボットクリーナーがシェア第一の掃除機になるだろう』と語っていた」
他社の製品には負けない絶対の自信
最近は、ルンバ以外にも様々なロボット掃除機が発売されているが、Colin Angle氏はそれらに焦りの色は見せない。
例えば来年春の発売が発表されているDyson 360°eyeについては、「本体のサイズが高すぎるし、360°eyeでは床の上にあるゴミをみることはできない。ネーミングに皮肉を感じるくらいだ。ダイソンのような掃除機メーカーが、ロボット掃除機に参入してくることは、とてもいいことだと思うが、我々は20年間ロボットを作り続けている。その技術をダイソンが作ることは絶対にできない」と話す。
コミュニケーション機能を搭載したシャープのロボット家電「ココロボ」については、「ロボットのペットを開発することはあっても、ロボット掃除機にコミュニケーション機能を搭載することはありえない。コミュニケーションを主軸としたロボットならば、もっとかわいい見た目にするだろう」と話す。
しかし、実際ルンバに愛着を感じる人は多いという。
「コールセンターに電話をかけてきた女性に、『お宅のルンバは故障しているようだから、一度会社に製品を送ってください』と話したところ、『送ったらうちのスージーとは別のルンバを返してくるんでしょう? それは嫌。あなたたちがロボットのドクターを家によこすべきよ』という返事がきた。しかも、驚くことにそういうエピソードは少なくない」
他社の製品と比べて、ルンバが優れている点は? との質問には一言「Work」と答える。
「コード付きの普通の掃除機を使って、室内の掃除をするときのことを考えて欲しい。家具をどかしたり、カーペットを吸い込んでしまったり、色々なことをしなければならない。また、ゴミを発見したらそこの場所を掃除する、その時に必ずヘッドを往復させている。つまり、掃除をするというのは、とても大変な作業であり、ロボットが1回通り過ぎただけでは室内はきれいにならない。ルンバはそういったことまで考えて設計されている。例えば、毛足の長いカーペットを吸い込んでしまったら絡まらないようにブラシが逆回転するし、髪の毛がからまいようなブラシを採用している」
最近では、Googleの無人自走車にも採用されているSLAM(Simultaneous Localization And Mapping)という技術を利用したマッピングシステムを搭載したロボット掃除機も多いが、それらの技術をルンバに搭載する予定はないという。
「ルンバは、よくランダム走行といわれるが、決してランダムに走っているわけではなく、ゴミのある場所を探して動いている。マッピングシステムでは、システマティックにするあまり、ゴミがあってもそれらを無視してしまうというリスクがある。彼らは、システマティックに、短時間で掃除するということで、バッテリーが持たない、稼働時間が短いという短所を補っているだけだ。SLAMテクノロジーや、Visual SLAMテクノロジーの技術は我々も持っているが、掃除能力を損なわせることなく、それらの技術を搭載できるようになるまではルンバにSLAMを搭載する予定はない」