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ゲリラ豪雨でわが家が停電! その時なにが必要だった?
2024年8月23日 08:05
7月27日の夕方、筆者が住む埼玉県上尾市一帯に突如として雷鳴が轟いた。地獄の門が開いたかのような稲妻と轟音が何度も何度も繰り返される。雷が落ちたと思われる爆音と大きな振動も何度かあった。
落雷の轟音が響き、2~3回の瞬停の後、電気が完全に落ちた。すぐに回復するだろうと高をくくっていたが、結局、わが家では17時半から20時頃まで2時間半にわたって停電していた。
停電で最も困ったのが蒸し暑さだ。それでなくても今年は日中35℃を超えるひどい猛暑。その中でエアコンが使えないのは地獄の一言だ。命にも関わる。さらにこの暑さで冷蔵庫の中身がとても心配。夏の停電をどう乗り越えればよいのか、今回の体験を通じて見えてきたことがある。
落雷した設備の状況で復旧時間が変化
停電は上尾市だけでなく、隣の桶川市、さいたま市にもおよび、合計5万戸以上に影響があった。しかし後日、町内会で聞いてみたところ、道路1本隔てた地域では2~3回の瞬停のみだったり、30分で復旧したりと状況がまちまち。
なぜこのような状況が起こるのか、東京電力エナジーパートナーに聞いてみたところ、「配電線を通じて電気をお届けしておりますが、落雷等により電力設備が損傷した場合は、この配電線が停電します。停電が発生した場合は、その原因となる設備の損傷箇所を特定し、損傷箇所を補修することで電気を復旧させています。しかし、復旧作業の最中に次の落雷等により別の箇所も損傷した場合には、こちらの損傷箇所も補修する必要があるため、復旧までに時間を要する場合がございます。これらのことから、停電が復旧するまでの時間は、設備の被害状況によって異なります」とのこと。
つまり、電柱や電線に落雷したことで、その配電線につながる一帯が停電になる。落雷した設備とは配電線が異なる家庭は停電が起きないし、変電所に近い地域は復旧が早く、複数の設備に落ちればそれだけ広範囲が停電になり復旧に時間がかかるということだ。
車で外出中だった娘夫婦の眼の前で電柱に落雷し、火花が飛んだ瞬間、街灯と信号機が一斉に消えたそうで、娘夫婦は近くの公園の駐車場にしばらく避難を余儀なくされたという。信号が落ちると危険なので、無理に運転せずに安全に車を駐車できるところで復旧まで待っていた娘夫婦の判断を褒めてやりたい。
それにしても、この悪天候の中、復旧作業にあたってくれる作業員の方々には頭が下がる思いだ。強烈な豪雨、雷もまだ鳴っている中で、少しでも早く復旧しようと努力してくれているのだ。「まだかよー。何やってんだよー」と悪態ついてごめんなさい。
スマホの電源は命綱
今回、長時間の停電を経験して、必要と感じたものがいくつかある。1つは、災害時の必需品としてよく言われているモバイルバッテリー。
停電後、東京電力のホームページで復旧状況を常にチェックしていた。リアルタイムに更新されており、自分が住む地域の停電戸数が刻一刻と減っていくのを見ていると、妙に安心したものだ。
X(旧Twitter)でも近隣の状況を確認したり、市役所のホームページで避難所を確認したり、娘夫婦と連絡を取り合ったりと、スマホはフル稼働だった。筆者は日常使い用に薄型タイプ2個を常に満充電にしているほか、バイクやサバゲーなどアウトドア趣味で使うために容量の大きいモバイルバッテリー3個、ファン付きウエア用2個も用意している。これで数日は持つので安心。
防災無線および市の広報ホームページで近くの市民体育館が避難所として開放されていることを知り、さらに、Xの情報ではわが家から歩いて5分のショッピングモールもオープンしていたことを知れたことは良かった。ショッピングモールも市民体育館も発電機を備えているので、明かりと冷房が動いていたようだ。
わが家は2時間で復旧したので利用しなかったが、これがさらに長時間に及んでいれば、市民体育館に避暑していたところ。実際、近隣の住民の多くは体育館とショッピングモールに暑さ避難していたようだ。スマホではこうした重要な情報がすぐに手に入るので、災害時には必須アイテムである。
ハンディファンも大活躍だった。日頃の通勤に使っているもので、筆者と妻で1台ずつ持っていたのは幸いだった。生暖かい空気を送るだけだが、無いよりはまし。冬の寒さは着込めば凌げるけど、夏の蒸し暑さは命にも関わるので、バッテリーで動くファンは必需品だと感じた。
明かりも重要。充電タイプ1つではいつまでバッテリーが持つか不安だったので、やはり電池タイプがあるとよい。明るいし、そのまま懐中電灯にも使えるので、トイレに行くときにも重宝した。筆者は山登りやキャンプも趣味としているので、ヘッドライトや小型の強力LEDライトも持っているので安心だった。
一番の懸念材料は冷蔵庫の中身
長時間の停電で一番の懸念材料が冷蔵庫だった。電源が切れてから冷気を何時間保てるのか不明だったので、停電中はハラハラしっぱなし。試しに手持ちのポータブル電源をつないでみたが、バッテリー容量256Wh(80,000mAh)の小容量では30分ですっからかん。あまり役に立たない。
なお、わが家の冷蔵庫は2018年製の470Lモデルで、定格消費電力は電動機78W/電熱器230W、実際には100~120W程度で推移。手持ちのポタ電はAC出力300Wだったので、電力供給としては十分だ。
冷蔵庫メーカー各社は、停電時に冷えを保てる時間を「約2~3時間」としているが、隣町の知人は8時間ほど停電しても、冷凍庫の氷や肉、冷凍食品が溶けなかったという。冷蔵庫の性能、冷蔵庫の置かれている環境、内容物によって変わってくるのであまり参考にはならないだろう。
今回は2~3時間程度で復旧すると見て、とにかく冷蔵庫を開けずに冷気を閉じ込めることを心がけた。筆者は趣味で使うため(サバゲーとバイク)、日頃から冷凍室に強力保冷剤と凍らせたペットボトルを入れている。これにより、冷凍室に関しては明日まで冷気を保てるだろうと踏んでいた。
しかし、心配だったのが冷蔵室。チルドルームには刺し身や肉など腐りやすい食材があったはず。冷凍室の保冷剤を冷蔵室に入れようか、でもそうすると冷蔵室と冷凍室を開けることになるので冷気が逃げてしまう。どちらがよいのだろうと逡巡していた。
シャープに聞いてみたところ、「保冷剤を冷蔵室の一番上の棚に置いていただくと、効果的に庫内温度の上昇を抑えることができます。短時間で1度の開閉であれば、保冷剤を入れたほうが庫内の保冷効果は高いです。冷凍食品、凍らせた冷蔵冷凍兼用ペットボトルなども保冷剤として代用可能です」とのことだ。
冷凍室から保冷剤をサッと取り出して冷蔵室にサッと入れればよいと。一番よいのは、ゲリラ豪雨や台風、地震が来たらすぐに冷凍室から保冷剤を取り出し、冷蔵室に入れて停電に備えることだろう。
なお、冷蔵室は日頃から整理整頓し、7割程度の詰め込み量を目安にして冷気の通り道を作る。逆に冷凍室は食品を隙間なくきっちり詰めておくと、互いが冷やしあうため冷凍効率が上がるとしている。
マンションは水も止まるからトイレも使えない
水の備えも重要だ。わが家は一戸建てで、幸いにして断水は起きなかったが、マンション住まいの知人は断水したという。
屋上に貯水タンクがあるマンションでは、屋上まで水を持ち上げるための電動ポンプが動かなくなるため、水槽に溜めた水を使い切ってしまうと水が供給されなくなる。最近では加圧ポンプを使用し、貯水タンクがないマンションが増えているが、この場合は水を持ち上げる力が無くなるので停電即断水となる。ただ、自家発電を備えているマンションは断水にならずトイレも使える場合があるので、事前に確認しておこう。
わが家では断水しなかったが、さらに大規模な災害が起きて水道管が破損した場合はトイレも使えなくなるので、非常用簡易トイレは備えておくべきだと感じた。大規模地震の場合、マンション内の下水管がずれて汚水が下の階に溢れたなんていう話も聞く。防災トイレは必須アイテムだ。
なお、わが家にはエコキュートが備わっており、タンクに400Lのお湯が貯蔵されているため、非常時に生活用水として利用できるが、調理用や飲用としての水はやはり備蓄しておいたほうがよいと感じた。最近は防災用に保存期間の長い水が売っているので、落ち着いたら買っておこうと思う。
また、今回は食事時の停電だったが、数時間で復帰するだろうと高をくくっていたため、食に関しては心配していなかった。
わが家はオール電化のため停電になると調理ができなくなるが、例えガスコンロだとしても、エアコンが止まったこの蒸し暑さの中で火を使った料理はさらに地獄になるし、そもそも暗い中で火を扱うのは危険なので、電力が復旧したらカップラーメンでも食べようと軽く考えていたのだ。
ちなみに、筆者はアウトドアの趣味を持つので、カセットコンロだけでなくカセット式シングルバーナーも持っており、カセットガスも常備している。なので、調理することに不安はないが、アルファ米のように水だけで調理できたり、水すら必要としない非常食を常備しておけば、もしもの時に安心だと思った。
アウトドア趣味のおかげで、ある程度は災害に備えることができているが、今回の経験を通じて、高出力・大容量のポタ電があればさらに安心だと感じた。手持ちの小容量モデルではいざという時に心もとない。高出力・大容量モデルも用意すれば、冷蔵庫や冬場の暖房にも利用できる。小容量はスマホの充電や扇風機に使う。
前述したように、今回の停電は夫婦ともにハンディファンで乗り切ったが、停電が長時間にわたった場合は、扇風機のほうが風が当たる面積が大きく風力も強いのでより快適に過ごせるだろう。このように使い分けをするため、ポタ電は2台あったほうがよい。
さらに言えば、ソーラーパネルも備えておいたほうがよいだろう。今回は幸いにして数時間の停電で済んだが、これが大地震や台風の場合、停電が数日におよぶ可能性がある。その時、ポタ電を再充電できるソーラーパネルがあれば、より安心できる。
なお、停電時に筆者は仕事中だったが、UPS(無停電電源装置)を導入していたため、作業中のデータを保存して安全にデスクトップパソコンをシャットダウンすることができた。リモートワークが多い人はUPSの導入も検討したほうがよいだろう。もっとも、多くの人はノートパソコンを利用しているから必要ないかもしれない。
停電が起きてはじめて、我々の生活がいかに電気に頼っているのかが分かる。ゲリラ豪雨だけでなく、8月に入って地震と台風でも大規模な停電が起こった。今回の出来事により筆者は、停電は他人事ではなく身近にあると実感した。その時になって慌てないよう、日頃から準備しておくのが肝要だ。