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パナソニックと三洋電機の技術が融合した“史上最高傑作”の炊飯器

~東京・築地市場でPRイベントを開催

パナソニックと三洋2社の技術が融合した史上最高傑作の炊飯器

6月1日発売のIHジャー炊飯器「SR-SPX」シリーズ

 パナソニックは6月1日に発売するIHジャー炊飯器「SR-SPX103/108」のメディア向けPRイベントを20日、東京・築地市場で開催した。

 同製品はパナソニックが市場最高傑作と位置付ける製品で、同社のハイエンドモデルの炊飯器としては初めて圧力式炊飯を採用したのが特徴。

 圧力式炊飯とは、炊飯時に圧力をかけることで、ごはんの甘みや弾力を引き出す炊飯方式で、三洋電機が初めて採用したもの。一方、パナソニックでは、高温のスチームで米表面をコーティングして、甘みを閉じ込めるスチーム炊飯を強みとしてきた。2010年に三洋電機が統合してからも、ハイエンドモデルに圧力方式を搭載することなく、スチーム式とは別に圧力式の炊飯器を展開するに留めていた。

本体カラーは2色。写真はホワイト
ルージュブラック
「SR-SPX」シリーズで炊き上げたごはん

 新製品では、これまで別々の製品に搭載していたスチーム式と圧力式を1つの炊飯器に搭載。パナソニックでは、業界に先駆けてIH技術を搭載した炊飯器を発売するなど、炊飯器の開発に力を入れており、今回の製品はまさに2社の技術が融合したものだといえる。

パナソニックでは業界に先駆けてIH技術を搭載した炊飯器を1988年に発売
IH式は、従来のマイコン式と異なり釜全体が発熱する。かまどのような強火や火加減を実現できたという
キッチンアプライアンス事業部 炊飯器IH技術グループ 調理ソフトチーム チームリーダー 加古さおり氏

 パナソニックの炊飯器開発を20年来担当するキッチンアプライアンス事業部 炊飯器IH技術グループ 調理ソフトチーム チームリーダー 加古さおり氏は、製品発売までの苦労を次のように語る。

 「圧力炊飯を搭載せずに独自の炊飯方式をつらぬくという哲学は確かにあった。ただ、三洋電機の持つ素晴らしい技術は確かなものだったし、世の中の流れとしてモチモチとした食感が好まれるのであれば、その流れに反する訳にはいかない。2010年の統合以来、何度も試作を繰り返してようやく実現した、まさに史上最高傑作の製品」

買って終わりではない進化を続ける炊飯器

 同氏は、ごはんのおいしさを科学的に研究し、それを炊飯器に落とし込む炊飯器のソフト開発を担当。1つの炊飯器を開発するために年間3tもの米を使用するという。

 加古氏は、パナソニックが理想とするごはんについて「ごはんは水と米だけでできているか、炊き方によって全く味が変わる。日本人なら、多くの人が好みのごはんの味をもっているが、口に含んだときにまずおいしいと思ってもらえるようなごはんを理想としている。そこからそれぞれの好みに応じて調節してもらえればいい」と語る。

1つの炊飯器を開発するのに年間3tもの米を使用するという
ごはんは米と水だけでできているが、火加減によって味はいかようにも変化するという
パナソニックが理想とするのは、口に含んだときにまずおいしいと思ってもらえるようなごはんだという

 また最近の傾向として、米の銘柄の多様化を挙げる。

 「ひと昔前まではおいしい米と言えば、コシヒカリが一番に挙げられた。多くの農家ではコシヒカリに近い米を作ることを理想としていた。それが最近では、それぞれの地方の特色を活かした米に注目が集まっている。例えば、山形のつや姫という品種は、山形だけでなく県外でも作られるようになったし、今では西日本や四国でもつや姫を買うことができるようになった」

 新製品ではこの傾向を受けて、銘柄ごとに炊飯方式を変えられる機能を新たに搭載。同機能はAndroidスマートフォンを使って、米の銘柄を選択、おすすめの炊き方を自動で設定できるというもの。例えば、コシヒカリなら粘りを抑えてすっきりとした味に、きらら397であれば普通に炊くと、芯が残りやすくなるので、ふっくらと粘りのあるごはんに炊き上げるなど、同社がこれまで蓄積したデータベースによって最適な炊き方を選べるという。

 加古氏は、新機能について「これまでの炊飯器は買ったら終わりだったが、これからの炊飯器を購入後も進化を続ける」と話す。

日本全国の米の銘柄は300品種以上あるという
米の銘柄によって炊き方を提案する機能を新たに搭載。スマートフォンを用いることで、購入後も対応銘柄を増やすことができる

魚に合う“魚米”(うおまい)ごはん

山治の代表取締役社長 山崎康弘氏

 会場には、築地市場で仲卸を営む山治の代表取締役社長 山崎康弘氏も登壇。同氏は、大手仲卸を営業するだけでなく、築地市場仲卸組合「東卸」の役員などを歴任、築地公式認定資格「おさかなマイスター」の認定第一号を取得するなど、魚食文化を広めるために精力的に活動されている。

 山崎氏は今回のパナソニックとの取り組みについて「最初はどうして築地でやるのか、正直意味がわからなかった。しかし、新製品で炊いたごはんを口にした時に、ごはんのおいしさを実感。築地という場所は“うまい”を貪欲に集める場所なので、だったら何か協力したいとおもい、築地のPRの意味も込めて今回の協力を決めた」という。

 築地市場は、広さ23ヘクタール、1日2,200tの魚が毎日世界中から集まり、毎日18億もの売上を出す、まさに世界一の魚市場だという。同氏は仲卸という仕事に関して最も大切なのは「目利き」だと話す。「築地には毎日、一般のお客様からプロの方まで様々な方がいらっしゃるが、仲卸はまず食べて、見て、魚をおろしてみて、確認することが大事。プロのお客様は、欲しい魚があるかどうかと聞くのではなく、まず今日は何があるかを聞く。それはある意味仲卸を試している言葉でもある。そのとき一番おいしい、旬の魚をいつでも提案できるようにしておかなければならない」と語る。

 また、自らの仕事を「日本食の文化の一端を担っている」と説明。その意味でごはんと合う、合わないというのは非常に重要なことだという。

 「築地には“魚米(うおまい)”という造語がある。これは、本当においしい魚には本当においしいご飯がなくてはならないという意味で、魚と米の両方が揃って初めて“うまい”という言葉が出る。パナソニックの炊飯器で炊いたごはんを食べてみて、これは参ったな、このごはんにあうようなおいしい魚を我々も提供していかなければいけないんだと焦る気持ちもあった」と話した。

築地市場では魚米という造語が用いられるという
会場では山崎氏自らがセレクトした旬の魚が振る舞われた
新製品で炊き上げたごはんとともに海鮮丼としていただいた

 IHジャー炊飯器「SR-SPX103/108」の価格はオープンプライス。店頭予想価格は5合炊きの「SR-SPX103」が110,000円前後、1升炊きの「SR-SPX183」が115,000円前後。

阿部 夏子