日立アプライアンス、今年夏から日立ブランドの太陽光発電シテスムを展開

~国内家電シェアは2013年度29%を目指す

2015年までに大幅成長を見込む意欲的な計画

日立アプライアンスの山本晴樹社長

 日立アプライアンスの山本晴樹社長は、家電および空調事業において、2015年度に売上高6,550億円、海外売上高比率45%、営業利益率5.0%を目指す計画を明らかにした。

 これは、2012年6月14日に行なわれた「Hitachi IR Day 2012」において公表したもの。

 2011年度の売上高5,461億円、海外売上高比率32%、営業利益率1%の実績や、2012年度見通しの売上高5,600億円、海外売上高比率31%、営業利益率2.5%と比較しても、今後3年で大幅な成長を見込む意欲的な計画だ。

 山本社長は、「伸びる新興国市場と高まる省エネ指向を背景に、グローバル環境貢献企業としての役割を目指す。2013年度から2015年度まではグローバルでの高い成長が見込まれている。国内空調事業、白物家電事業において確固たるポジションを確立し、その上で、グローバル戦略を加速する」としたほか、「5%の営業利益率は、グローバル展開の加速によって達成していく考え。競合他社に比べても5%という利益率は満足できるものではなく、さらに高い目標に挑むことになる」などと語った。

 また、2012年度の計画では、家電事業の売上高が前年比6%増の2,700億円、空調事業では1%減の2,900億円を目指す。

2012年度の業績見通し。家電事業の売上高が前年比6%増の2,700億円、空調事業では1%減の2,900億円を目指す2015年までの業績見通し。売上高6,550億円、海外売上高比率45%、営業利益率5.0%を目指す

 「国内需要の着実な取り組み、海外の状況変化に対応したタイムリーな施策展開、コスト競争力強化の3つが大きなポイントになる。2012年度の売上高5,600億円、営業利益率2.5%を確実に達成し、成長路線への回帰を目指す。2010年度には2.2%の実績がある。原価低減活動を進めれば、2.5%は実力としてできるだろう」とした。

 日立アプライアンスは、日立グループの社会インフラ、生活インフラを担う企業で、エアコンなどの空調事業と、白物家電などの家電事業で構成。「家電と空調の日立アプライアンスをキャッチフレーズに、とくに生活ライフラインを担っている」(山本社長)としている。

 家電事業では、冷蔵庫、洗濯機、クリーナー、ジャー炊飯器、電子レンジ、空気清浄機などの白物家電製品、LED電球やLED照明器具、IHクッキングヒーター、エコキュートなどの環境新分野製品で展開。今年夏には、日立ブランドによる太陽光発電システムを投入する予定だ。

 また、空調事業では「白くまくん」などの家庭向けルームエアコンや、業務向けのパッケージエアコン、産業用途で利用される吸引式冷凍機などの大型冷熱製品で構成している。

日立アプライアンスの売上は47%が家電事業、53%を空調事業が占める家電事業で扱っている製品。冷蔵庫や洗濯機、クリーナー、ジャー炊飯器、電子レンジ、空気清浄機などの白物家電のほかLED電球やLED照明器具、IHクッキングヒーター、エコキュートなどの環境新分野製品も扱う空調事業では、家庭用のエアコンのほか、業務向けパッケージエアコン、産業用途で利用される吸引式冷凍機も扱う

 2011年度の日立アプライアンスの売上高の内訳は、家電事業の売上高は8%増の2,546億円で、構成比は47%。空調事業が前年比9%増の2,915億円で、構成比は53%。

 2011年度における日立アプライアンス全体の営業利益率は、前年度の1.9%から1.0%へと減少している。タイの洪水被害により、「戦略的位置づけにある」(山本社長)とする冷蔵庫用圧縮機工場が浸水した影響や、欧州市場での低迷や新興国での成長の減速による、海外事業の計画未達および収益力の低下で1.3ポイント減少。しかし、国内における省エネ商品への買い換え増加や、東日本大震災の復興需要による、国内売上高の拡大により、0.4ポイント回復させたという。

 「海外売上げ比率および営業利益率で計画に達しなかった。海外売上高は計画に比べて9%減。国内の好調分でも、海外の未達分をカバーできなかった」と説明した。

日立アプライアンスの2011年度業績。家電事業の売上高は8%増の2,546億円で構成比は47%、空調事業が前年比9%増の2,915億円で構成比は53%2011年は消費者の省エネ意識が向上し、空調や家電の国内売上は拡大した。一方、タイ洪水や欧州金融危機により海外売上は未達、冷蔵庫事業においては国内・海外ともに売上・利益が未達となった

 タイのロジャナ工業団地にある冷蔵庫圧縮機工場は、2011年10月10日~11月27日までの49日間に渡り浸水。最大水位は約2mにまで達し、被害総額は、建物および設備を含めて約67億円に達したという。

 排水終了後の11月28日から、ピーク時には1,110人が参加して復旧活動を開始。2012年1月25日から量産を開始し、3月末には全ラインが復旧。「現在、停止した期間の巻き返しに取り組んでいる」と報告した。

日立アプライアンスでは世界29カ所に拠点を設ける。そのうちタイでは昨年の洪水で大きな被害を受けたという大洪水の復旧状況。3月末からは全てのラインが復旧している

東南アジア、中東を中心に販売を拡大

 日立アプライアンスの中期的な事業戦略としては、基本方針として「地産地消」、「プレミアム戦略」を掲げ、グローバル事業の拡大継続、攻めのコスト戦略によるグローバル基盤の強化を加速。さらに、LED照明をはじめとする環境新分野の事業を加速させる姿勢を示した。

 「2011年度には東日本大震災、欧州の金融危機といった変化があった。その影響を受けて、省エネ製品の伸長や復興需要の拡大、LED照明や太陽光発電システム、EMS(Energy Management System)の普及が加速する一方、オール電化需要の低迷や海外における拡大スピードの減速などのマイナス要素がある。だが、オール電化需要や海外事業は、中長期的には回復すると見ている。中長期的な全体の方向性には変更がない」とした。

家電事業の基本方針は「地産地消」と「プレミアム戦略」を掲げる2011年の市場変化を受けながらも、オール電化需要や海外事業は、中長期的には回復するという見通し

 グローバル事業の拡大では、家電事業で9拠点、空調事業で全世界に20拠点の合計29拠点で展開している強みを生かすとした。

 家電事業においては、日本でシェアナンバーワンを狙った商品開発を行なうとともに、海外現地ニーズにあわせた商品戦略を展開。日立製作所の研究所からの全面的なバックアップを得て、最先端技術を活用するとともに、地産地消戦略、あるいはプレミアム戦略を推進するという。

 具体的には洗濯機のビッグドラムやインバーター技術、冷蔵庫の高効率冷凍サイクル技術などを活用。タイで42年間、中国で18年間という長年に渡り、拠点展開している実績を背景に、「日立のブランド力がある東南アジア、中東を中心に販売を拡大していく」とした。

 インドネシアやベトナムでの販売強化のほか、中東や北アフリカにおける大容量冷蔵庫の拡販、中国およびアジア主要都市でのプレミアム製品の販売ルートの拡大などのほか、洪水被害から全面復旧した冷蔵庫圧縮機において、高付加価値製品の生産拡大により、差異化を図る考えを示す一方「2015年度までに170億円の投資を行なう計画には変更がない」と語った。

2013年度の国内白物シェアは29%を目指す~広告には引き続き嵐を起用

国内の白物家電事業のシェアは、過去5年間順調に推移。今後2013年には29%のシェア獲得を目指す

 国内白物家電事業については、白物主要5品目(冷蔵庫、洗濯機、クリーナー、電子レンジ、ジャー炊飯器)において、過去5年間で9ポイントもシェアを引き上げ、26%のシェアになっていることを示しながら、2012年度には28%、2013年度には29%のシェア獲得を目指すしていることを明らかにし、「省エネと実感価値を提供することで、シェアを拡大していく。こうした国内での実績をグローバルに展開していく」とした。

 国内の宣伝広告には、引き続き、アイドルグループの嵐を起用し、「日立はエコにたし算」をキャッチフレーズに展開していくという。

 「白物家電の家電の宣伝広告費は売上高の1%程度であり、他社に比べて少ない。しかし、このテレビCMは、日立らしくない、日立にしては珍しいと言われるが、大変好評である。カタログが無くなる動きなどをみると、日立ブランドの浸透では貢献できている」などと語った。

 また、空調事業のグローバル展開では、台湾で47年間、ブラジルで40年間、インドで13年間という拠点展開の実績などを背景に、新興国での事業を強化。家庭用、業務用、産業用をカバーする「総合空調化」によるシナジー効果や、製造、販売、サービスの「製販サ」の一貫体制を背景にした現地ニーズへの柔軟な対応によって、事業拡大を図る考えだ。

 インドでは、家庭用エアコンの競争力強化に加え、2012年6月からインド国内で生産を開始するパッケージエアコンの立ち上げを加速。ブラジルでは業務用製品の収益力強化、家庭用事業拡大に踏み出す考え。また、中国では在庫調整局面を注視して展開していくという。東南アジア市場では家庭用エアコンにおいて、インバーター機の拡大や家電販売と連携した販売力強化、欧州では、2012年4月に設立した製造、販売、サービスを統合した新会社により、シェア向上施策の推進やオペレーション強化、現地生産化の加速などに取り組むという。

 「空調事業においては、グローバル戦略の加速に向けて、2015年度までに240億円の投資を行なう」とした。

 国内の家庭向けエアコン需要に関しては、「昨年度までは節電需要もあり、高級品が中心に売れているが、ここにきて価格へもセンシティブになっている。昨年度ほど高級品が売れるという状況ではないだろう」などと語った。

 攻めのコスト戦略では、全社規模で推進しているHitachi Smart Transformation Projectによる取り組みを通じて、2015年度には売上高総コスト比率を4.0ポイント削減し、2011年度の99.0%から、2015年度には95.0%に低減。「グローバルポジション確立のために、聖域を設けずに改革を行ない、他社に負けないコスト構造を目指す」とした。

 生産コスト低減では、欧州およびブラジルにおいて、グローバルTSCM改革を推進。直接材コスト低減ではグローバルVECの推進やグローバル調達の推進、間接コストでは共通業務の集約化、シェアードサービスの活用に取り組む。「コスト低減活動については、専任役員を置き、プロジェクト体制で推進していく」という。

日立ブランドの太陽光発電システムを今夏より発売

 環境新分野の拡大では、白物家電における個別製品の省エネ化に加え、LED照明のラインアップ拡大、日立ブランドで展開する太陽光発電システムなどによる環境新分野事業の立ち上げに加え、インフラシステムグループとの連携強化や環境ビジネス機器事業部の新設によるEMSの事業化加速などを通じて、スマートシティやスマートビル、スマートハウス事業へと展開を広げていく姿勢を示した。

攻めのコスト戦略では、海外事業の徹底的なコスト低減を目指す環境新分野においては、LED照明のラインナップ拡大、日立ブランドの太陽光発電システムを今夏より発売

 「日立コンシューマ・マーケティングが展開している省エネ支援サービス『eco-pom-pa(エコポンパ)』にも、日立アプライアンスとして、さらに踏み込んだ取り組みをしていく」と語った。

 環境新分野においては、2011年度には386億円だった売上高を、2012年度には500億円に、2015年度には750億円に拡大させる計画も明らかにした。






(大河原 克行)

2012年6月15日 00:00