ダイキン、“空気”がテーマの体験型ショールーム「フーハ東京」を公開
ダイキンソリューションプラザ「フーハ東京」 |
ダイキン工業は、“空気”をテーマとした体験型ショールーム「ダイキンソリューションプラザ『フーハ東京』」を東京・新宿に12日8日にオープンする。
ここではフーハ東京の展示内容と、それに伴って報道陣向けに開催された発表会の模様を紹介する。■実験装置で空気を見える化。ぴちょんくんの3Dシアターも登場
ダイキン工業 代表取締役社長兼COO 十河政則氏 |
発表にあたったダイキン工業 代表取締役社長兼COOの十河政則氏は「ここで新しい空調機器ソリューションの提案をし、提案を通じて世の変化と客のニーズをつかむ場にしたい」と説明。 また、「都内の小学生や地域の人が、空気やエネルギーのコントロールについて学ぶ場として、また東京都が環境への取り組みを発信する場としても活用して欲 しいと語った。
フーハ東京は「住宅用」と「業務用」の2つのエリアに分かれる。住宅用エリアでは、エアコンや空気清浄機などの空調機器についてしくみや操作方法を、子供から大人まで学べるよう工夫されており、「空気の気づきゾーン/新商品紹介ゾーン/熱まるごとソリューションハウス」の3つのゾーンから成る。
まず、空気の気づきゾーンでは、普段目には見えない空気に意識を向けさせる。具体的には、雲を作って空気中の水分を視覚化したり、ホコリを立てて、空気のきれいさを見せる装置などが用意されている。さらに、ペダルを漕ぐと冷暖房のヒートポンプのしくみを体験できる装置もある。ほかにも、併設の3Dシアターでは、ダイキン工業のオリジナルキャラクター“ぴちょんくん”が登場する3D動画を観ることができる。
冷暖房のヒートポンプのしくみを体験する装置。ペダルを漕いだ力で、気体を液化したり、液体を気化する | ペダルを漕いだ力で発生した凝縮熱や気化熱によって、ハンドルの片側が熱く、片側が冷たくなる | 空気中の水分を視覚化する装置。ポンプをピストンすると、透明の球体の中に雲が発生する |
新商品紹介ゾーンでは、ダイキン工業のエアコン、空気清浄機、エコキュートなどの新製品を展示し、実際に使用できる。例えばエアコンでは、指定の位置に立つと、実際に暖房の風の暖かさを確認できた。
ルームエアコン | スイッチを入れるとすぐに暖かい風を出すエアコンの新製品を体感できる |
空気清浄機 | エコキュート |
熱まるごとソリューションハウスでは、住宅を再現した室内で、実際に空調機器や床暖房の効果を確認できる。例えば寝室を模した部屋では、テープが各所に吊り下げられており、エアコンや空気清浄機による空気の流れを見える化。リビングでは、サーモグラフィーカメラで床暖房のついた床を撮影し、温度を見える化している。
ひと通り回ると、子供にとっては空気やエネルギーのコントロールについて学べる場となり、大人にとっては空調機器への理解を深め、購入を検討する際に参考になる場だと感じた。
熱まるごとソリューションハウスの入り口 | 入り口脇には、タッチパネル方式でアンケートに答えると、ニーズに合わせて、最適な空調設備プランを提案する装置が設置されていた | 空調設備のプランは、紙に印刷された状態で出てくる |
エアコンや空気清浄機を設置した寝室。ひだ状のテープの揺れる方向で、空気の流れがわかる | 絨毯の上からでも床暖房の暖かさを体感できる | 床暖房の状態を、サーモグラフィーカメラで撮影し、そのままテレビの画面に映している |
このほか、業務用エリアでは、ビルや店舗、工場など、法人向けに最適な空調機器やソリューションを提案。ヒートポンプユニットを実機運転するブース、パネルを用いてプレゼンテーションを行なうブース、大型施設やビルなど、個別のニーズに合わせたソリューションを紹介するブースなどが用意されている。
納入事例が検索できるシステムも設置 | 入ってすぐに、ヒートポンプユニットの実機運転が目に付く |
パネルを用いたプレゼンテーションが可能。設備の困り事と、課題を解決するヒントを提示し、来訪者の潜在ニーズをあぶり出すという | 奥には商談室を設けている |
フーハ東京の所在地は、東京都新宿区西東京2-4-1 新宿NSビル1階。開館時間は10時から18時で、入館は17時30分まで。休館日は毎週水曜日、年末年始、夏季休業。入館料金は無料。
■空調機器事業から、給湯から換気まで提案するソリューション事業へ
なお、フーハ東京のオープンに伴い、同社の国内空調事業への取り組みに関する発表会が報道陣向けに開催された。
同社では今後5年間の経営計画として、“フュージョン15(フィフティーン)”をスタートしている。2010年度における、同社のグローバル市場での売上高は約1兆円。このうち国内空調市場は4割近い3,600億円を占める。同社では2015年までに、グローバル市場で2兆円超、国内空調市場では、現在の約1.5倍となる5,500億円の売上高を目標に掲げる。
空調事業は、世界で約15兆規模にのぼる産業。このうち、日本国内の空調事業は1.9兆円規模 | 同社の売上における日本市場の割合はここ5年で減っているが、売上事態は約262億円増加している | 国内は成熟市場。同社の国内でのエアコンのシェアは20%弱で安定している |
ダイキン工業 執行役員空調営業本部長 坪内俊貴氏 |
その一方、国内の空調市場は、競合8社がひしめく成熟市場であることも指摘。ダイキン工業 執行役員空調営業本部長 坪内俊貴氏は「今後国内で売上を伸ばす上で、事業領域の拡大が欠かせない。冷暖房の個別売りだけでなく、調湿、給湯、換気、熱全体のコントロールといった周辺事業に乗り出し、顧客のニーズに対応したHVACソリューション事業を展開していく」と話す。成熟した日本市場では、消費者の目も厳しい。この国内市場で技術を磨くことが、グローバル市場でのさらなる発展へと繋がると見込む。
HVACとは、Heating(給湯・暖房)、Ventilation(換気)、Air Conditioning(空調)を意味する。同社のHYACソリューション事業とは、節電ニーズに応えるため、空調、換気、給湯、暖房を一括して提案するソリューションビジネスを示す。具体的には、太陽光発電とエコキュートなどの給湯システムの組み合わせによって、電力とランニングコストの低減を図ったり、エアコンとエコキュートに電気の見える化システムを導入して節電に繋げたりと、製品を組み合わせてパッケージメニューとして提案するという。同社では、省エネ、熱回収、室内空気清浄(IAQ)技術などをコア技術として位置づけ、空調機器で培った強みを活かすとしている。
業務用の空調機器では、大規模ビルや、中小の店舗やビル、冷凍倉庫などの用途に応じて、それぞれソリューションを展開している | 空調機器事業から、HVACソリューション事業へとシフトしていくという | HVACソリューション事業を展開するステップ |
省エネや快適性で他社製品と差別化 | 目的や設置環境などのニーズに合わせた提案を行なう | 太陽光発電やエコキュートなどの給湯システムを、パッケージメニューとして組み合わせて提案する |
また、東日本大震災を機とした電力問題を背景とし、節電や省エネ面で空調機器への期待は高い。同社では昨日、住宅用太陽光発電システムの自社ブランドを展開することを発表。電力の安定供給という課題に根本的に取り組むため、「創エネ・蓄エネ」事業へ参入し、将来的には燃料電池や蓄電池の分野への参入を目指すという。
これらのHVACソリューション事業と、創エネ・蓄エネ事業を合わせたシステムを、同社では「『熱まるごと』ソリューション」と命名している。ヒートポンプによる熱回収・熱の移動を核とし、創った熱を逃さずに、必要な場所へと配分する“熱ネットワークシステム”の構築が可能となるという。
「熱まるごと」ソリューション | HVACソリューション事業を展開するにあたり、販売網も再編する |
(小林 樹)
2011年12月7日 16:56