ニュース

日立の家電、ノジマ傘下で新たなスタート「製造業の手本に」

ノジマ、日立の家電事業を買収

家電量販大手のノジマは4月21日に、日立製作所が手がける家電事業の買収を発表した。両社は新たに共同出資による新会社を設立し、ノジマが80.1%を、日立製作所の家電事業子会社である日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS)が19.9%を出資する。新会社は、日立ブランドの家電製造からアフターサービスを継続して提供する。また、日立ブランドで展開している海外家電事業も統合し運営していく方針だ。なお、新会社の名称は未定。

「製造業の手本へ」ノジマ社長が語る「VAIO」に続く第2のプロダクト事業

2026年4月21日午後5時から都内で行なった会見で、ノジマの野島廣司社長は、「日立はすばらしい技術を持ち、すばらしい商品を作っている。だが、社会に対する伝え方がうまくない。ノジマが加わることで、少しは良くなるのではないか。より素晴らしい商品をつくり、日本の製造業の手本になれたらいいと考えている」と述べた。

ノジマ 代表執行役社長の野島廣司さん
「日本の製造業の手本になりたい」という野島社長

ノジマは2025年1月に、ソニーのPC事業としてスタートしたVAIOを、日本産業パートナーズ(JIP)から買収しており、今回の日立の家電事業は、それに続く、2つめのプロダクト事業となる。

「今回の話は、2025年夏ごろから始まった」とし「日立とのパートナーシップは、VAIO以上に楽しみにしてもらえる」とも述べた。

ノジマのグループ企業

また、日立製作所の網谷憲晴執行役専務は「変化の激しい家電事業を、中長期的に成長させるための前向きな決断である。日立ブランドの家電を長年ご愛顧いただいたお客様からの信頼と、数多くの意見が、日立のモノづくりを支え、製品を磨き続けてきた。お客様の声を現場で掴み、それを素早く製品に反映できるノジマの力と、日立が培ってきた日本のモノづくり、品質へのこだわりを融合できれば、家電事業は新たな成長ステージに入っていくことができる。深いお客様の理解と、日立のモノづくりを掛け合わせることで、これまで以上に、お客様に寄り添った製品を、将来に渡って届け続けることができる」と、新たな家電事業体制に期待を寄せた。

日立製作所 執行役専務 コネクティブインダストリーズセクターCEO兼アーバンソリューション&サービスビジネスユニットCEOの網谷憲晴さん

67年の時を経て販売店からパートナーへ

なお、ノジマは1959年に野島電気商会として創業した際、日立の地域家電販売店である日立チェーンストールだった経緯がある。67年間という歴史を経て、地域家電販売店が、家電メーカーを買収する、いわば下克上ともいえる状況になった。

ノジマは1959年に野島電気商会として創業した際、日立の地域家電販売店である日立チェーンストールだった

新会社に日立GLSが出資することについて野島社長は「日立ブランドを継続する上では、日立からの出資を得たいと思い、こちらからお願いした。VAIOも、ソニーから4.6%を出資してもらっている。今回は、海外事業も含まれており、19.9%の出資比率としてもらった。日立GLSは、日立の技術を活用したモノづくりを行なってきた。一緒になって新たな商品を作っていきたい」とした。

日立の網谷執行役専務も「円滑な事業移行を行ない、オペレーションを安定的に行ないながら、成長にシフトする部分は日立としても、しっかり見ておく必要がある。日立ブランドを使ってもらうという点でも、我々が一定の役割を果たさなくてはならない。品質向上などの部分でも協力していきたい。海外家電事業との連動性についても支援をしていく。そのために、19.9%の出資比率とした」と説明した。

新会社の社長人事などについては決定していないが、野島社長は「買収した企業のプロパーの人に社長になってもらうのが、ノジマのポリシーである。また、ノジマから送り込む役員も少ないところでは1人、多いところでも5人である。ノジマから多くの役員を送り込むことはない」と述べた。

また「新会社では、雇用は維持する。ノジマは、買収したすべての企業でリストラは一度も行なっていない。占領軍という考え方でなく、社員の能力を引き出して、活躍する場を作っていく方針である。また、技術についても損なうことがなく、有効に活用していく」とし、ブランド、雇用、技術を維持する姿勢を示した。新会社には、国内で約4,000人、海外で約3,000人が移籍する見込みだ。

その上で野島社長は、「日本の製造業を輝かせ、変革させたいと考えている。経営自体は、製造業を出自とした企業と、販売からスタートした企業との違いは多少あるだろう。いままで買収した会社と同様に、話し合いをしながら進めていく」とし、「ノジマには、経営企画部がなく、予算がなく、数字は追わない文化がある。従業員への営業ノルマや、マニュアルもない。これは、明治時代や江戸時代の経営スタイルかもしれない。だが、販売現場と製造現場が輝くように現場主導のやり方を徹底していく。ノジマの考え方や文化を、製造業のなかに取り入れて、日本の製造業の手本になることを目指したい」と抱負を述べた。

なぜ日立は日本企業のノジマを選んだのか?

日本の家電事業が、海外企業へ売却されるケースが増えるなか、日立製作所が、家電事業の譲渡先に日本の企業であるノジマを選んだ理由について、日立の網谷執行役専務は次のように語った。

「結果として日本企業を選んだが、家電事業が成長するのに、最もいいポジションはどこかということを突き詰めて判断した結果である。日立製作所が培ってきた品質や、日本のモノづくりをどう続けていくのか、また、家電事業が引き続き成長するにはどうするかといったことを考えた場合に、お客様の声を一番身近で聞き、その声をいち早く製品に反映し、高い品質のものを提供しつづけることができるノジマがベストなパートナーであると判断した」

新体制でのブランド戦略

新会社では、日立ブランドでの家電事業を継続するとともに、これまでの取引先とも継続する姿勢をみせる。だが、家電量販店が親会社となるだけに、競合する家電量販店での取り扱いについては懸念される部分もある。実際、VAIOもノジマ傘下になって以降、一部の家電量販店では取扱量が減少するといった動きもあった。

野島社長は「新体制になっても、取引先との基本的な姿勢は変わらない。ただ、相手次第というところもある。すべての取引先に対して、最善を尽くして話し合いを行ない、モノづくりを進めていく」とした。

日立チェーンストールに対する機能も新会社が引き継ぐことになる。野島社長は「日立チェーンストールは、一生懸命努力している方が多い。価格だけではない売り方をしており、高齢化社会においては、重要な役割を担うことになると思っている。新会社の意図を丁寧に説明し、話を聞き、日立チェーンストールのお店に喜ばれるような戦略を進めていきたい」と述べた。

メーカーが販売価格を指定し、店頭で値引きが行なわれない「指定価格制度」をもとにした、日立チェーンストール向けの製品の開発を継続するほか、新たなモノづくりにも挑戦していく姿勢も示した。

ノジマでは、家電などを対象にしたプライベートブランド「ELSONIC(エルソニック)」がある。同ブランドについて野島社長は「これは、ボトムブランドとして用意したものである。また、日本のメーカーが撤退した領域の商品を作ることも視野に入れたものである」と位置づけ、「日立ブランドの家電はハイレベルの技術に裏づけられた価値を感じるお客様にフィットさせていきたい。これから相談をしながら、お客様や社会に認めてもらえる商品、日本人の志やマインドシェアを守ってくれるブランドイメージを維持したい」と語りつつ、「ニーズは十人十色である。ひとつのニーズに対応した商品なども活用しながら、ノジマではお客様のニーズにフィットする商品を提案してきた。どの商品も同じで、安いものを売るというような提案はしていない。この姿勢はこれからも継続していく」と述べた。

日立GLSはテレビ事業からは撤退しているが、野島社長は、「日本で家電量販店として初めて自社ブランドのテレビを販売したのがノジマである。サムスンからのOEMによって、ELSONICブランドで発売し、多くのテレビを販売した」と振り返りながら、「お客様のニーズがあれば作る。テレビも作らないわけではない。レコーダーもなくなりつつあるが、日本のメーカーが作らないものがあったら、作る可能性がある」とし、プライベートブランドなどでの展開を示唆した。

譲渡価格は約1,100億円、事業移管に向けた「3つのステップ」

なお、新会社への事業移管は、3つのステップを踏むことになる。

最初のステップでは、日立GLSの家電事業を継承する新会社を、日立GLSが設立。また、日立GLSおよびトルコのArçelik A.S.(アルチェリク)が共同で設立し、日立ブランドの海外家電事業を展開してきたArçelik Hitachi Home Appliances B.V.(AHHA)に関しては、アルチェリクが保有するAHHAの60%の株式を、株式譲渡契約に基づいて権利を新会社に移転させる。またこの時点で、日立GLSが持つAHHAの40%の株式も新会社に譲渡する。

第2ステップでは、家電事業を新会社に移管するとともに、ノジマが資金調達の目的で設立した完全子会社である特別目的会社(SPC)を通じて、新会社の株式の80.1%を取得し、ノジマの連結対象会社とする。日立GLSがノジマに譲渡する株式の価格は約1,100億円としており、最終的な譲渡価格は調整後に決定する。

さらに、第3ステップでは、アルチェリクからAHHAの60%の株式を新会社が取得し、AHHAを100%子会社とする。

新会社への事業移管までの3ステップ
ノジマ連結の業績推移

これにより、日本国内と海外の家電事業の経営資源のすべてが新会社に統合する。2026年度中に一連の株式譲渡を完了させる予定だ。野島社長は、「当初は国内家電事業だけを対象に買収を考えていた。だが、結果的には海外家電事業も一緒に買収することになった」と経緯を説明。日立の網谷執行役専務は、「日本での財産だけでなく、グローバル全体でオペレーションをした方が、成長機会が得られる。最も成長できるための体制はなにかという議論のなかで決めていった」と述べた。

一方、日立GLSは、空調事業を継続し、日立製作所のアーバンソリューション&サービスビジネスユニットの中核事業に位置づけ、日立ビルシステムや日立パワーソリューションズとの連携により、「HMAX for Buildings」を展開するほか、データセンターの効率化などにも取り組むという。

なお、日立ブランドのルームエアコン「白くまくん」は、2025年8月までに、同事業を行なっていたジョンソンコントロールズとの現場主導であるジョンソンコントロールズ日立空調の株式を、独ボッシュグループに譲渡し、Bosch Home Comfort(BHC)が開発、製造を担当。日立GLSは販売およびサービスを担当している。今後、日立GLSが担っていた販売およびサービス機能は、新会社に引き継がれる。ルームエアコンにおける日立ブランドおよび白くまくんブランドを独ボッシュグループに提供する役割は、日立GLSが継続する。

一方、野島社長は、ノジマの基本戦略についても改めて説明。「ノジマの最大の特徴は、メーカーに忖度しないという点である。お客様の要望にあわせて販売する企業であり、押しつけた販売はしない。その姿勢を、日立ブランドの家電にも継承し、お客様のニーズにあわせたモノづくりをしていく」と述べた。

また、「ノジマは『デジタル一番星』を目指すことと、『全員経営理念』に取り組んでいることが特徴である。これまでにも多くの企業を買収してきたが、買収した事業は、VAIOを含めて、すべてで最高益を出している。買収した企業を立て直し、従業員が喜ぶとうれしくなる。取り組みたいのは、製造業を良くして、従業員を幸せにするということである。従業員が幸せになると、いい商品が作れる」などとした。

ノジマの全員経営理念
ノジマが目指す「デジタル一番星」

なお、会見のなかで野島社長は、2026年8月10日にVAIOが「世界初のPC」を発表する予定であることを明らかにした。「8月10日は、VAIOの日である。VAIOが世界初の製品を発売すれば、お客様に喜んでもらうことができ、必然的に会社が発展する」と述べるにとどめ、「世界初」の詳細については言及しなかった。