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太陽光発電システムは天候によるトラブルも多く監視することが重要
(2014/11/17 14:13)
クラウド型の太陽光発電見える化サービス「エコめがね」を展開するNTTスマイルエナジーがサービス開始から3年が経過したのを機に、同社の事業戦略について記者発表を行なった。ここでは同社代表取締役の谷口裕昭氏が、これまでのクラウドデータ分析から見えてきた、太陽光発電のウィークポイントや分散型太陽光発電の特性を紹介するとともに、再生可能エネルギーの買取り中断問題についてもコメントした。
NTTスマイルエナジーの中核ビジネスである「エコめがね」は太陽光発電の出力の電流を計測するPVセンサを通じてクラウドサーバーにデータを蓄積し、パソコンやスマートフォンで状況を確認できるようにするサービス。ユーザー自身が確認できると同時に、施工販売会社もチェックできるようにすることで、販売後の故障を検知し保守メンテナンスの効率化を図ることができるようにするもの。ビジネス開始当初は個人住宅への設置が中心で余剰買取り制度に対応したシステムであったが、固定価格買取り制度スタート後は、全量買取り向けのサービスもスタートさせ、現在、ユーザーの件数ベースではほぼ同じ数だが、出力ベースでは全量買い取りのユーザーが圧倒的となっている。
エコめがねで発電異常の早期検知
一般的に太陽光発電は、「メンテナンスフリーで設置後は、そのまま放置しておいて大丈夫」というイメージが強く、エコめがねのような監視装置を設置していないユーザーが8割程度だという。ところが、これまでのエコめがねを搭載する全量設備における発電停止検知の割合を見ると、非常に高いことが判明した、というのだ。実際、今年7月では全設備のうち3.9%が、8月には5.1%ものトラブルが起きていたというのだ。たとえば7月の状況を見ると、梅雨前線の活動が激しかった7月3日には、1日で80件のトラブルが起きるなど、かなり深刻な事態なのだ。
もっとも、そのほとんどは太陽電池パネル自体の故障というわけではない。落雷による停電などでパワコンが停止したケースや、カエルなどの生き物が感電してブレーカーを切断するケース、また高温でパワコンが停止したケースなどであるが、いずれにせよこれらのトラブルによって発電がストップして、売電できなくなってしまうのだ。そしてこうしたトラブルが起きた場合、自動復旧させることができないため、人が、現場に行ってブレーカーを上げるなどの対応が必要になる。
「エコめがねのアラートメールなどによって発電異常の早期検知ができたが、監視装置を導入していないために、長期間トラブルに気づかないユーザーもかなり多いはず」と谷口氏は危惧する。
接続保留などの問題は折り込み済み。影響は少ない
ところで、9月25日から九州電力が再生可能エネルギーの接続保留をし、その後、東北電力や四国電力なども同様の措置をとっていることが大きな問題となっているが、各電力会社が接続保留する最大の理由はエネルギー供給の安定性が低いという点だ。この点について、谷口氏も「1つの設備だけを見ると、日々発電量は変わるし、天候によっても急変するので不安定である」と認める。ところが、エコめがねでの発電データを元に「西日本エリア」のようにまとめてみると、状況は大きく変わるというのだ。具体的な比較データを見てみても、「西日本エリア全体で見ると非常に安定的であり、十分予測可能な電源といえる」と谷口氏は指摘する。
NTTスマイルエナジーは、この3年間でエコめがねのユーザーを確実に増やしてきており、この11月現在、余剰買取り、全量買取りを合わせて300MW、約1万件にまで成長。とはいえ接続保留の問題が立ちふさがる中、この先も順調に伸ばしていけるのだろうか。
「この1カ月はやや混乱している状況ですが、もともとFITでのプレミアムを付けるのは3年と決まっていたので、来年度以降の全量買取りの案件が減ることは織り込み済みでした。今後はパートナー各社も住宅での余剰買取りへシフトをすると言われているので、問題の影響は少ないと考えています」(谷口氏)
また同社では今年4月から、「ご縁ソーラープロジェクト」と題し、自らが太陽光発電事業者となり、総額10億円の投資を行なうことを発表している。これはさまざまな理由から現在未稼働となっている設備を全国から買い集めて発電を行なっていこうというものだ。すでにある程度が稼働開始しており、今後、年度内に約60基の設備の構築を予定しているのだが、これらの物件はすべて既に接続が認められているものであり、接続保留の対象外であるため、ここにも影響がないとのことだった。
NTTスマイルエナジーでは今後、より安定した設備の稼働を実現できるようにすると同時に、蓄電池連携や発電制御、電力流通といった分野にも対応することで、再生可能エネルギーの価値の最大化を図っていく。