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【CES2014】パナソニックが密かに公開したウエアラブルデバイスの狙い

ネックレス型と腕時計型をデモンストレーション

 米ラスベガスで開催された2014 International CESは、ウエアラブル機器が注目を集めたイベントとなった。

 パナソニックは、ウエアラブルタイプの4Kカメラを参考展示。パナソニックの津賀一宏社長は、「人間の記憶をどう残していくのかということに着目した提案。ウエアラブルのカメラによって人間の視覚により近い形での映像が撮影できるようになる」と位置づけた。

 だが、パナソニックは、これとは別のウエアラブルデバイスを、一部の関係者を対象に、限定的に公開する形で展示を行なっていた。

 「Oto-mate(オートメイト)」(仮称)と呼ばれるこのウエアラブルデバイスは、ペンダント型あるいは、腕時計型のもの。音声認識技術を活用することで、利用者の指示に従って、空調や照明、部屋の施錠などをコントロール。さらに、クラウドを通じて音声で必要な情報を検索するといった使い方が可能になる。Oto-mateのデモンストレーションを通じて、パナソニックが描くウエアラブルデバイスの世界を追ってみた。

パナニックがプレスカンファレンスで発表したウエアラブルタイプの4Kカメラ。公開したのはこれとはまったく別のウエアラブルデバイスだ
パナソニックが2014 International CESで公開したネックレス型ウエアラブルデバイス「Oto-mate」

音声で家電製品と会話ができるウエアラブルデバイス

 朝起きると、「おはよう」の声に反応して、自動的に窓のカーテンが開き、コーヒーを沸かしてくれる。

 首から下げたネックレス型のウエアラブルデバイス「Oto-Mate」のデモンストレーションが、2014 International CESの会場の一室で始まった。

 朝の日課でヨガをするユーザーは、テレビに話しかけると、テレビはその画像を表示すると返事しながら、様々なコンテンツの中からヨガの画像を検索。ユーザーは、それにあわせて、ヨガを体験することができる。

 そして出発の準備ができると、照明や暖房、そして部屋のロックまでを音声で制御できる。ユーザーは安心して出かけることができる。

 パナソニックが開発中のOto-mateは、ネックレス型のウエアラブルデバイスで、上部に小型の指向性マイクを埋め込み、人が発した音を集音する。これは同社のデジタルビデオカメラで採用している高音質ズームマイクといった集音技術や、風音キャンセラーといったノイズ除去技術を活用しており、周辺の雑音を除去し、人の声を認識することができる。

このように首からぶら下げて使用する
デバイスの上部にはマイクが付いている

 複数の人がこのウエアラブルデバイスをつけていると、それぞれが同時に言葉を発しても理解することが可能だ。試作品としては、腕時計型も用意しているが、現時点では、ネックレス型の方が人の発声を認識しやすいという。

 Oto-mateで集音した音声データは、ホームゲートウェイを通じて、テレビや冷蔵庫、洗濯機などの生活家電や情報機器に接続して制御。また、パナソニッククラウドに接続して、複数機器の一括制御や遠隔地からの制御、さらには、あいまい検索技術を活用した検索利用も可能になる。2015年には実用化を目指す。

腕時計型のデバイスも用意。これは腕時計に口を近づけて話す必要があるという
ホームゲートウェイを通じてパナソニッククラウドに接続する
それぞれにOto-mateを持っていれば複数の人の音声も認識する

 デモンストレーションでは、友人2人と一緒にテレビと会話をしながら、行きたいレストランを検索する様子をみせた。

 「近くのレストランを探して」という質問に対して、「どんな料理がいいですか」とテレビが応える。「アジアンレストランをお願い」というと、それに対応したレストランを紹介する。

 レストランの検索時には、料理のカテゴリー、価格帯、場所や距離などの条件を埋める形で、テレビが質問を行ない、それに回答することで適切なレストランを紹介する。「高い」、「近い」といったあいまいな言葉にも対応する。

 言語認識技術は、パナソニッククラウド上に設けた対話データベースを利用しており、現在、日本語と英語に対応。今後、対応言語を順次拡張するという。

音声だけで簡単に目的のレストランを検索できた
レストランの検索を裏で処理している様子。必要な項目を埋めていく
レストランを音声で検索するデモストレーション

 まずは、スマートハウスへの応用が中心となるが、部屋内だけの利用に留まらず、自動車の車内での利用、飛行機の中でのサービス、医療分野や介護分野などのライフケア領域でも利用したいとしている。

 ウエアラブル化したデバイスを身につけておくことで、ひとつのデバイスで、家庭や自動車、飛行機といった異なる場所でもパナソニッククラウドのサービスを利用でき、音声認識により機器を制御したり、サービスを受けられるようになるという。

 同社では、「家の中という静かな場所、あるいは自動車の車内では、音声を拾いやすいという点で、サービス化がしやすいといえよう。機内でも、飛行機特有の雑音を除く技術を活用しやすくなることから、利用提案はしやすくなるだろう」とした。

 そのほか、「個人を特定して音声を認識するには、身につけてもらうことが最適だが、今後は、スマートフォンなどへの採用も可能になる。また、将来的にはテレビなどにマイクを内蔵して、ひとつのマイクで複数の人を認識してもらうという形にも発展させたい」という。

 今後、マイクをはじめとしたパーツのさらなる小型化、音声対話データベースの強化などを行ない、住宅メーカーや自動車メーカー、航空会社などを対象に、BtoBによる提案を進め、2015年度中には、まずは日本で実用化を図りたいという。

 まだ実用化にはもう少し時間がかかるが、これがパナソニックが提案するウエアラブルデバイスのひとつの姿となる。

 パナソニックの津賀一宏社長は、「ウエアラブルデバイスは、パナソニックにとって非常に重要な分野である」とし、「ここで、パナソニックがどんなポジションを作れるのかといったことを、これから考えていく必要がある。ウエアラブルが発展すれば、人と空間がこれまで以上に協調し、人が空間の制御をできるようになる。そして、クラウドベースでコントロールできる世界が訪れる。ウエアラブルが暮らしを改善し、暮らしを豊かにすることになる。個人の負担を減らすという点でもウエアラブルは必要なものとなる」とコメントする。

 パナソニックが、このウエアラブルデバイスを、より広い人たちに対して公開する場を、新たに設定したときが、実用化に向けて大きな進化が始まったタイミングということになりそうだ。

大河原 克行