ニュース
隈研吾デザイン、55万円のシャープ空気清浄機
2024年9月27日 17:08
シャープは、隈研吾建築都市設計事務所(KKAA)とのコラボで、外装に本物の木材を使用した家具のような佇まいのプラズマクラスター空気清浄機「FU-90KK」を、10月21日に発売する。価格は550,000円。
空気浄化技術「プラズマクラスター」を搭載したほか、キレイな空気を4方向に放出できる風路を新開発。花粉やアレル物質、ウイルス、菌などを捕集する静電HEPAフィルター、2つの脱臭機構でさまざまな臭いに対応するダブル脱臭フィルターと合わせ、40畳(66m2)まで対応する。なお、静電HEPAフィルターとダブル脱臭フィルターは、10年間交換不要。
風量は「強/中/静音」の3段階で調節可能で、8畳の空間の場合の清浄時間は7分。
また、ホコリ/ニオイ/温度/湿度のセンサーを内蔵。無線LAN(Wi-Fi)でアプリと連携させれば、空気情報をモニタリングできるほか、消耗品の状況が把握できたり、遠隔操作も可能になる。
本体サイズは374×374×656mm(幅×奥行き×高さ)で、重さは約14kg。消費電力は4.7〜51W。運転音は20〜50dB。
「家具のレベルを超えた製品ができた」(隈研吾)
プラズマクラスター空気清浄機「FU-90KK」は、隈研吾建築都市設計事務所(以下:KKAA)のデザイン監修により、製品が完成したという。そのコラボレーションは、どう進められていったのかをシャープの担当者が述べている。
まずシャープがベースとなる機種を提示。それに対して、KKAAからいくつかのデザインを提案した。提案に際しては「この部分はこういうこだわりがある」、または「この部分はこういうふうにしたい」といった内容が含まれていたという。デザイン案をもとに、両者が協議を重ねつつ、また岡崎木材工業の協力を仰ぎながら製品化は進められたという。
そのデザインについては、隙間から自然と風が吹き出てくるような印象を与える縦格子が採用された。これは、日本の伝統的な建具である簾虫籠(すむしこ)をベースにデザインしたという。隈研吾さんは、木を採用したことについて、次のように語る。
「木には、空間の雰囲気を変える力があります。例えば優しくするとか柔らかくするとか、木があるだけで変わるんです」(隈さん)
さらに木の縦格子は、一見すると均等に並んでいるようだが、斜めから見た時に、それぞれの面が強調され過ぎないよう、細かな角度が付けられている。これに関して、隈研吾さんは次のように解説する。
「縦格子については、色々と試してみました。均等に揃えてみたり、ランダムに並べたり、ピッチを変えてみたりと。試してみて分かったのは、揃え過ぎてしまうと全体が1つの塊のように見えてしまい重たく見えちゃうんですね。それをどこまで軽くできるかっていうので、この(製品版)の角度になりました」(隈さん)
また、なぜ軽い印象にこだわったかと言えば……
「和のデザインは、空間に置いた時の(印象の)軽さというのがベースになっています。あまり重すぎると空間の邪魔になるから、それを軽くするんです」(隈さん)
縦格子については、高級家具などで用いられることの多いホワイトオーク(ブナ科コナラ節の落葉広葉樹)を採用。これが岡崎木材工業の熟練の木工職人の手で加工され、1本1本丹念に組み上げられている。
天板については、木目方向を変えた突板6層構造としている。開発段階では、無垢材から厚さ6mmに削り出したものも考えられていたが、高温と低温を繰り返す環境試験を実施した結果、過酷な環境下では反りと割れが発生したという。そこで天板については、無垢材の採用が難しいと判明。最終的に、0.6mmの薄い突板を積層させたものを採用することになった。
隈研吾さんは、デザインを提示した当初は「本当にこんな家電製品ができるんだろうか?」と懐疑的だったという。だが、思った以上の物が実現できたことに驚いていた。
「これは家電ではなく家具だという方もいますけれど、わたしは家具を超えていると思っています。日本にはタンスなどを作る指物師という方がいますが、ヨーロッパの家具職人とはレベルの異なる、非常に繊細な物を作れるんですね。(今回の新製品は)その指物師の技術レベルに行けたなぁというふうに思っています」
同機は550,000円という価格設定だが、こうした技術が注ぎ込まれていることを考えれば、決して高くはないともいう。現在、販売が想定されているのはホテルなどだが、同社のサイト経由で個人でも購入が可能だ。