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HARUMI FLAGは住宅すぐ近くで水素発電 発生した熱で足湯に入れる
2023年12月13日 17:05
2020東京オリンピックの選手村跡地に建設が進められている商業/住宅複合施設「HARUMI FLAG(ハルミフラッグ)」。2024年1月より住宅エリアへの入居が始まるのに先駆けて、報道関係者向けに住宅エリアの竣工披露会が開催。居住スペースや共用施設などが見学できたほか、新たに導入されるパナソニックの純水素型燃料電池(PEFC)も公開された。
住宅の間近で水素発電、熱を足湯に有効活用
空から見ると街区が「大きな旗」のように見えるというHARUMI FLAG。2018年に名称が決定し、住宅エリアの販売が開始されている。分譲住宅(板状棟)や賃貸街区の入居開始は2024年1月より順次行なわれる。商業街区は2024年3月の開業を予定する。広さは約18haで、分譲街区の住居は4,145戸。
分譲住宅や賃貸住宅、シェアハウスやシニア住宅も合わせて人口約1万2,000人を見込んでおり、商業施設だけでなく小学校や中学校も整備。まさに一つの街となるこの場所は、本格的な水素インフラを備えた国内初の街にもなり、世界的に見ても例がないという。
海に面した「SEA VILLAGE」や、緑の豊かな「PARK VILLAGE」など複数の居住エリアがあるなかで、新たな試みが採用されたのは、計4カ所に6台ずつ連結設置されたパナソニック製の純水素型燃料電池。
HARUMI FLAGにはガスから水素を作る水素ステーションが設置されており、ここを走る「燃料電池バス」に使われているほか、一部が住宅用の燃料電池において発電に使われる。
住宅のすぐ近くに設置された5kWタイプの純水素型燃料電池は、6台連結で30kWの発電を行ない、4カ所合計で24台が稼働。さらに、都市ガスから(水素を取り出して)電気とお湯を作るエネファームが分譲街区の全住戸4,145戸に導入されるため、合わせると約3MWの水素発電を行なう形になる。
純水素型燃料電池で発電した電気は住宅部分の共用施設などに使用。発電時に発生した熱の有効活用として、住民が利用できる足湯の施設も「PARK VILLAGE」に導入された。発電に伴い発生した熱を貯湯タンク6台から合流させ、水で適温にして足湯のスペースへ出湯することで、発電時のエネルギーをムダなく活用する。
今回のように住宅のすぐそばで水素発電を実現したのも前例がないことだった。PARK VILLAGEの住宅窓から燃料電池までの距離は約4m(水平3m、垂直2.5m)。これはパナソニック製燃料電池が、稼働中の静音性の高さでも評価されたことによるものだという。水素発電では排気が発生しないことも、住宅すぐそばに発電所を実現できた理由の一つ。
通常は前述した水素ステーションからパイプラインを通って水素が送られる。停電時に備えて水素のボンベも備えている。
そのほかにも、「PORT VILLAGE」に設置した純水素型燃料電池で発生したお湯は、ペット用の足洗い場に活用される。
今回のように本格的な水素発電の仕組みが住宅に導入されたのは、開催決定まもない2014年の時点から、街づくりのコンセプトを三井不動産とパナソニックの間で話し合った成果だという。「10年後のエネルギー」を届けることを目指し、街づくりの初期の段階から両社が組んで計画を進めてきた。
住民にとっては電気代も気になるところだが、水素発電だから電気代が上がるということはなく、通常と同じような料金になる見込み。純水素型電池は、エネファームなどの機器と比べてまだ台数が少ないため設備としては高価なものの、今後普及していけば1台あたりのコストも下がっていくという。