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花王、毛細血管を可視化してスキンケアに活用する新技術 個人に合った健康提案も

今回の研究成果は、千葉大学フロンティア医工学センター羽石秀昭教授との共同研究を応用したもので、10月24日、国際光工学会(SPIE)が発行する学術誌「Journal of Biomedical Optics」に掲載された

花王は、同社の解析科学研究所・ヘルス&ウェルネス研究所が、広視野で多数の皮膚毛細血管を撮影し、深層学習を用いて毛細血管の数や面積を算出する技術を開発したと、12月7日に発表した。

同社はこの技術を用いて、実際の肌における毛細血管の個人差や部位差、刺激への応答性の違いを確認できたとしている。今後、肌や肌にあらわれる健康状態の把握、毛細血管の反応を考慮した製品の開発・提案への期待がかかる。

花王は、皮膚毛細血管の状態は生活習慣や疾患により変わることから、その評価が肌や全身の健康状態の把握に利用できるのではと考え、研究を進めてきた。

今回、広い視野と、微細な構造を捉えられる解像度を両立し、一度に多数の皮膚毛細血管を撮影できる装置の開発に取り組み、さらに得られた画像から皮膚毛細血管を検出し定量化する解析方法も検討したという。

具体的には4K画質(3,840×2,160画素)よりも高画素数の(4,000×3,000画素)のカメラに最適なレンズや照明を組み合わせ、広い視野と高解像度を両立したデバイスを開発。デバイス本体は、肌に押し当てて撮影しやすいよう、ハンドヘルド型を採用した。

さらに、動画で同じ場所を撮影し、その画像を重ね合わせることで血流の軌跡から毛細血管領域がつながった画像を得ることをめざした。

皮膚毛細血管を観察できるデバイスを開発
開発したデバイスで撮影した皮膚毛細血管画像の例

深層学習を用いて、画像から毛髪やシミなどを不要な要素として区別し、膨大な数の毛細血管を自動的に検出する人工知能を作成。1,000本以上の毛細血管の数や面積を自動的に算出、定量化を可能にしたとする。

手動で毛細血管領域を白く塗った画像と深層学習による自動抽出画像を比較した結果、毛細血管を検出できていることが確認できたとする

開発したデバイスで4名の前腕内側部を撮影し毛細血管数を算出した結果、同じ人でも数cm離れた場所では値が異なること、部位ごとの平均値は人によって異なることがわかったという。

また、テープで4名の前腕内側部7カ所で角層を数回剥離し、軽微な炎症に似た状態を作った前後を比較すると、毛細血管の数や面積が変化すること、その変化は人により異なることが確認できたとする。

同社はこの結果について「同じ環境変化に対する血流の応答が人によって異なる可能性を示しており、同じ刺激で肌状態が悪化・改善する人の違いや、スキンケアの効果の違いなどの理解につながると考えます」としている。

毛細血管の数や面積が変化すること、その変化は人により異なることが確認できたという

同社は今後さらに、この技術を用いて、人や部位ごとの皮膚毛細血管を評価し、肌や健康状態、製品使用後の変化との関係を調べることで、最適なスキンケアやヘルスケアを提案することなどを考えているという。