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「自身の睡眠を把握する重要性」とは? 睡眠コンサルタントが解説

より正確に睡眠を見える化する新機能「睡眠プロフィール」

ウェアラブルデバイスを手掛けるFitbitは14日、同社が提供開始した、ウェアラブルデバイス利用者向けの有料サービス
「Fitbit Premium」の新機能「睡眠プロフィール」に関するプレスセミナーを開催した。Fitbit APACの責任者、スティーブ・モーリーさん(Director APAC & Health Solutions International Fitbit at Google)が、「睡眠プロフィール」機能の概要を説明するとともに、睡眠コンサルタントの友野なおさんが、日本人の睡眠傾向や問題、睡眠の可視化の重要性について解説した。

30日間以上の長期データをもとに、睡眠をより正確に見える化

新機能「睡眠プロフィール」は、ユーザーの睡眠パターンを長期にわたり分析する機能で、ユーザーの睡眠の傾向を、動物のキャラクターに例えることで、その傾向を容易に理解できるというもの。動物キャラクターは、キリンやクマ、イルカなど6種類。アプリにキリンが表示されれば、ユーザーは質の高い睡眠に早く到達し、おおむね良い睡眠が取れていることが分かる。また例えばイルカが表示されたユーザーは、睡眠スケジュールが不規則で睡眠時間が短いため、夜の睡眠だけでは十分に疲労回復できていないことが分かる。こうした自身の睡眠を客観的に把握し、問題点を洗い出すのに役立てられるのが「睡眠プロフィール」だ。

「睡眠プロフィール」でクマが表示された場合は、「睡眠スケジュールが一定しています。他の多くの動物よりも早寝で、一度眠りに落ちたらすぐに熟睡できます。睡眠は長く安らかで、深い睡眠とレム睡眠が比較的長い傾向があります。ごく短時間の覚醒を除けば、眠りが大きく乱れることもなく、熟睡できるタイプです」ということ
同様にイルカが表示された場合は、「他の多くの動物より遅寝で、全体的な睡眠時間も短い傾向があります。睡眠スケジュールのばらつきが、その一因だと考えられます。熟睡に至るまでに少し時間がかかることが多く、深い睡眠とレム睡眠が短くなります。その結果、眠りが浅くなり、夜間に目が覚めやすい傾向があります。夜間の睡眠だけでは十分に疲労を回復できず、不足分を取り戻すために昼寝をすることがあります」ということ

「睡眠プロフィール」の利用には、Fitbitの「Sense」「Versa 3」「Versa 2」「Charge 5」「Luxe」「Inspire 2」が必須。そのうえで同社の有料プラン「Fitbit Premium」への登録が必要だ。同プランの利用料金は、月額640円または年額6,400円。なお、申し込みから90日間はトライアルで、各種機能が利用できる。

「睡眠プロフィール」は様々なFitbitのデバイスで利用可能。写真は「Fitbit Inspire 2(ブラック)」
「睡眠プロフィール」対応の一つ「Fitbit Sense(ルナホワイト/ソフトゴールド ステンレススチール)」

なお、従来もFitbitのアプリでは、睡眠時間はもちろん、「レム睡眠」や「浅い睡眠」、「深い睡眠」など、毎夜の睡眠段階を視覚化している。さらに睡眠時間や睡眠の質などをもとに、毎夜の睡眠を「睡眠スコア」として点数化して、表示している。睡眠中に得られる各データが意味することが分からなくても、自身の毎夜の睡眠が、どれくらい良かったのか悪かったのかが、誰でも分かるよう「スコア(点数)」で確認できるのだ。

そんな「睡眠スコア」と、今回の「睡眠プロフィール」との違いについて、モーリーさんは次のように説明した。

「『睡眠スコア』は、1日間の睡眠データしか見ていません。それに対して『睡眠プロフィール』は、30日間以上の長期間データを振り返ったうえでの結果を表示します。そのため、より正確な情報を提供できるんです」

Fitbit APACの責任者、スティーブ・モーリーさん
睡眠プロフィールを構成する4つの要素

睡眠の改善は、まず自分の睡眠を正確に把握することから

睡眠コンサルタントであり、SEA Trinity代表である友野なおさんは、「眠りを見える化する未来の健康を予約しよう」というテーマで、睡眠の見える化の重要性について語った。

まず友野さんは、「睡眠は非常に重要な役割がぎゅっと詰まっている生活習慣」なのだと語る。特に、睡眠力がイコール、免疫力そのものと言ってよいくらいに大事な習慣だという。

「昨今コロナで“免疫力”というキーワードが注目を集めていますが、睡眠を改善することで、免疫力を強化することができます。それは、体の免疫力だけでなく、心の免疫力も強化できると言われています。また、しっかりと7〜8時間の適切な睡眠時間がとれていると、日中の生産性が非常に上がるということも分かっています。逆に言うと、しっかりした睡眠時間がとれていないと、就業中に怪我をしてしまうリスクが、約1.6倍高くなる。また睡眠不足は、ネットサーフィンする時間が長くなったり、早期に退職をしやすくなるなど、そうした報告が海外から入っています」

そのほか、友野さんによれば、睡眠不足は子供でも広がってきているという。極端な事例では、4歳で睡眠障害になる子供もいるという。そして、よく眠る子供ほど成績が上がるということも分かっているという。

良い睡眠から得られる、様々な効果

続けて、友野さんが睡眠コンサルタントになるきっかけとなった、経験を話してくれた。睡眠コンサルタントになる前に、友野さんは重度のパニック障害やアトピーで悩まされていたという。そんな友野さんは、睡眠の知識が全くない状態で、手探りで睡眠の改善を試みた。改善後は、パニック障害やアトピーが治っただけでなく、体重が15kg減ったという。そのことが睡眠に関して学び、睡眠を研究するという今の道に進むきっかけとなった。

友野さんによれば、国内外の研究データからも「寝ると痩せる、寝ないと太る」ことが分かっているという。そのほか、睡眠時間と風邪の発症リスクについても、「睡眠が6時間以下の人は、7時間以上眠っている人よりも、風邪を引くリスクが約4倍高くなる」や「睡眠不足が続くと様々な病気や認知症、心の病気のリスクが上がる」ことが報告されているという。

「残念ながら、日本人の睡眠時間はOECDの調査でも、毎回、1番短いです。実際に、睡眠に悩んでいる日本人は、5人に1人います。高齢者に限れば、3人に1人の割合です。そして良い睡眠や健康につながる睡眠、ダイエットにつながる睡眠、生産性向上につながるような睡眠など、良い睡眠の定義って何と聞かれると、ほんとに一言でぎゅっとまとめると、睡眠の量と睡眠の質の掛け算なんです」

つまり、睡眠時間だけではなく、質も関係するということ。毎日8時間寝ていても朝からスッキリしない、毎日8時間眠っているはずなのに、朝起きられない人も、たくさんいるのだという。そして新型コロナが流行し始めた約2年前から、様々な理由で眠れなくなったという相談が、増えたという。

「その理由は大きく3つあると思っています。まずは、リモートワークが主流となったことで、朝起きる時間が一定ではなくなったことです。もう朝の打ち合わせギリギリまでゴロゴロしていられるので、なんなら顔の半分は化粧しなくてもいいということで、起きる時間がバラバラになった。そうなると、リモートワークだからいいか、と夜更かしをしやすくなる。さらに、家でずっと仕事をしていると、仕事が終わっても、今からオフです……私は休息モードです……ということが、皆さんできないんですよね」

「以前は職場を離れて家に帰ってきたら、そこからは自分の時間ということで、モードを切り替えられていたのに、リモートワークでは切り替えられなくなってしまった。ずっとパソコンを開いたままで、仕事のメールが届くと返信をしてしまう。なにかアイデアが浮かぶかもしれないので、ネットサーフィンしてしまう。ずっと、だらだらと仕事をしてしまうことが、生活のリズムの乱れにつながっているということが1点です」

新型コロナ禍で、睡眠問題が増えた理由

睡眠の質が落ちた原因の2つめの大きな理由が、リモートワークにより、光を浴びる機会が圧倒的に減ったことだという。通勤時間や、職場から外へランチへ出かける、打ち合わせへ行くために外を歩く、そうした時間がなくなった。

「我々は日中に十分な光を浴びることで、しっかりと眠れるというメカニズムを持っています。それが成立しなくなったということが、2点目に挙げられます」

そして最後に挙げられるのが、不安や心配ごとが増えたことだという。例えば新型コロナのように誰も経験したことがない事態に直面していることで、「いつ終わるんだろう」とか「自分の仕事がいつまで持つのか」、「自分に何か影響が及ばないか」、「家族や子供の将来は」といった不安が増えた。さらに追い打ちをかけるように、戦争のニュースが始まった。

「そういうニュースを見ると、また余計に不安になって眠れなくなります。こうしたメンタル的な要素も、新型コロナが2年前から始まって、我々は影響を受けていると言えます。そのため8時間の睡眠をしっかり取ろうと思っていたとしても、睡眠の質が下がってしまっているということが考えられます」

友野さんは、睡眠の改善には、生活のリズムを整えること、食べ物に気をつけること、メンタルケアを怠らないことなど、色々な方法があるという。でも、まずは自分の睡眠の現状を把握する、自分の眠りを客観的に知ることが重要だという。

「どんな眠りのパターンで、どんなふうな眠りの問題が起こっていて、どのぐらい毎日自分が眠れているのかなどを知らないことには、例えば睡眠のカンセリングに行っても説明ができません。逆に改善策がたくさんありすぎて、自分はどこから着手すればいいか分からない。最短で、良い眠りを叶えられる方法が見つけられません」

そして自分の睡眠を把握できると、まずは問題点が浮き彫りになるとする。

「何時間眠っていますか? と聞くと、皆さん実際よりもちょっと長い時間を言う傾向があります。でも実際に自分自身で記録を取ってみたり、Fitbitのようなデバイスを使って記録を後から振り返ってみると、思っていたよりも睡眠時間が足りていないことに気が付けたりします。あるいは女性であれば、ホルモンバランスが乱れやすいことがわかったりします。あるいは、会社であることが起こると、自分はなかなか眠れないんだとか、そういう眠りのパターンがすごくわかりやすく客観的に見えてきます。つまりトラブルシューティングがしやすくなるんです」

どこから改善すべきか、何の問題を解決したらいいのかがわかりやすくなるということ。また、理想的な睡眠時間には個人差があるのだという。その自分に合った睡眠時間は、日々の睡眠を記録し続けることで見つけやすくなるという。

睡眠を客観視できることが、睡眠の改善の第一歩

また記録をつけることで、レコーディングダイエットのような効果を期待できるともいう。レコーディングダイエットは、食べたものを記録していくことで、なぜか痩せていくというダイエット方法(あくまで期待できるというもの)。友野さんによれば、自分自身で食べたものを書き出すことで、自分が食べているものを客観視することだという。それを続けることがモチベーションになって、なるべく体に悪いもの、太りやすいものを食べないようにしようという気持ちになるなど、そうした作用から、レコーディングダイエットは痩せるという結果につながっていくのだという。友野さんは、睡眠も同じだと語る。

「睡眠も同様に、記録をし続けることで、もっといい睡眠が取れるようになろう。このくらいの睡眠が取れると、こんなに健康でいられるんだということが分かるので、モチベーションの維持につながりやすくなります」

そして、睡眠の記録のつけ方について友野さんは、話を続ける。友野さんの公式サイトでは、睡眠日誌のフォーマットが、無料でダウンロードできるという。だが、友野さんが言うには、こうした紙に自分で記録していくのは「すごくめんどうくさい」という。記録することがストレスになったり、プレッシャーになったり、負担になっては元も子もないという。

友野さんのサイトで無料ダウンロードできる「睡眠日誌」のフォーマット

そこで友野さんは、装着して眠るだけで全てを計測してくれて、翌朝に睡眠のレポートをまとめてくれる、Fitbitのようなデバイスをおすすめするという。

最後に友野さんは「睡眠の質は、心と体の健康の質そのもの」だと強調する。

「今、すごく心配になるニュースが増えてきています。そんななか、運動や食事だけでなく、心と体の健康の基盤となる、睡眠習慣という点に興味を持って、改善していっていただきたいなと思います」