日立、冷蔵庫の表示に誤り、公取委が排除命令

~断熱材にリサイクル素材を使用せず

表示に関して排除命令を受けた冷蔵庫「R-Y6000」

 公正取引委員会は、日立アプライアンスが9月より発売した冷蔵庫「栄養いきいき 真空チルドV」など9機種に関して、カタログやウェブサイトなどに掲載していた表示に、景品表示法に違反する内容があると発表。同社に対し排除命令を行なった。

 同社は昨年9~10月にかけて、冷蔵庫「栄養いきいき 真空チルドV」6機種と、「ビッグ&スリム60」3機種を発売した。しかし、本体内に搭載される断熱材に関する素材の表示が、実際とは異なる点があったため、今回の排除命令となった。日立では、年間消費電力量や省エネ基準達成率など、冷蔵庫自体の性能・機能には問題がないとしている。

 排除命令のポイントとなったのは以下の2点。1点目は「R-Y6000」に関するもの。R-Y6000では同社独自の断熱材「フレックス断熱材」を使用しているが、この断熱材の原材料に、廃棄された冷蔵庫からリサイクルした樹脂を用いている。これにより、製造時におけるCO2排出量を使用しない場合と比べて約48%削減したと、カタログやウェブサイトにて表示していた。しかし、リサイクル樹脂が実際には使用されたのは一部機種、また一部期間においてのみであり、さらに二酸化炭素の削減量も、表示された数値よりも小さかったという。

 2点目は、前述の9機種に関するもの。新聞広告やポスターにて「栄養いきいき 真空チルドV」「ビッグ&スリム60」の全機種にフレックス断熱材を使用し、さらに材料として冷蔵庫からリサイクルした樹脂を用いていると表示していたが、実際に採用されていたのは一部機種のみだったという。

 公取委では日立アプライアンスに対し、これらの表示が景品表示法に違反するとして排除命令を行ない、一般消費者に対してこの件を発表し、再発防止案の策定と今後は同様の表示を行なわないことを日立側に求めている。

 日立アプライアンスでは同社サイトにて、ユーザーに対して誤解を与えたことを謝罪し、カタログなどの確認体制およびコンプライアンス(法的遵守)体制を強化するとしている。さらに、今回の冷蔵庫9機種は、2008年度の「省エネ大賞」で「省エネルギーセンター会長賞」を受賞しているが、日立アプライアンスでは今回の排除命令を受け、同賞の取り下げを申し出ている。

 景品表示法は、一般消費者に対して実際よりも著しく優良であることを示し、不当に顧客を誘引することを、公正な競争を阻害するとして禁じている。


【表示において排除命令を受けた9機種】
商品名型番販売時期
栄養いきいき
真空チルドV
R-Y60002008年9月以降
R-Y5400
R-SF60YM2008年10月以降
R-SF54YM
R-SF50YM
R-SF45YM
ビッグ&スリム60R-S47YM
R-SF42YM
R-S42YM

冷蔵庫内にて使用された「フレックス真空断熱材」。カタログなどでは廃棄された冷蔵庫からリサイクルした樹脂を使用していると謳われていたが、実際は一部機種にのみ使用されていた(「R-Y6000」の製品発表会より)日立アプライアンスの冷蔵庫は2008年度の省エネ大賞を受賞したが、今回の排除命令を受け、辞退するという(写真は2月に行なわれた「ENEX2009」にて展示された「R-Y6000」)


(本誌:正藤 慶一)

2009年4月20日 17:20