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パナソニック、献立立案・食材配達・下ごしらえ・調理までを省力・時短化する"食の「くらしアップデートサービス」" ~IoTオーブンレンジも発表
2019年9月19日 00:00
パナソニックは、2018年10月の「くらしアップデート」宣言の第1弾として"食の「くらしアップデートサービス」"を2019年10月から開始すると発表した。サービス内容は、新しいオーブンレンジ「三つ星ビストロ」を含む統合的なもので、献立立案・食材配達・調理の下ごしらえ・調理補助からなる。
この統合サービスにより、調理そのもの以外の作業で"名もなき家事"とされる、献立立案・食材の買い出し・調理の下ごしらえを時短・省力化し、結果的に、食事を含めた家族との団らんの時間を増やし、これら時間を楽しむ心の余裕をもつことを目指すという。
同社 アプライアンス社 副社長 キッチン空間事業部長の堂埜 茂氏は、本サービスについて「これまで、我々とお客様の接点というのは、製品の購入時が最大かつ唯一であり、それ以外の価値をお届けできない状態でした。また家電という製品の性質上、多くのお客様へ共通の価値、つまり同じ製品、同じ機能しか提供できませんでした。
この状態を打開し、お客様一人ひとりに寄り添い、みなさまそれぞれにぴったりな価値を継続的にお届けするということが、今回のサービスで目指したことです。製品である家電がアップデートする、サービスもアップデートすることで、お客様のくらしもアップデートしていきます。
また我々が続けてきた「キッチンポケット」という調理系のコミュニティサービスを軸にすることで、レシピ提供のほか、食材配送サービスやコミュニティによる困りごと解決など、お客様とのさまざまなタッチポイントが生まれます。
さらに、調理前の献立立案、食材の買い出し、調理の下ごしらえといった、"名もなき家事"と呼ばれる部分を大幅に短縮でき、これまでそこに割いていた時間や気持ちなどを、食事や団らんの時間へ使っていただけるようになります」と語った。
提案付きレシピ集「キッチンポケット」はコミュニティ機能も
レシピ提案などを行ない、今回のサービスの中核を担うのが、スマートフォン専用アプリ「キッチンポケット」。パナソニックが2014年から運営する、利用者数300万人の調理系コミュニテイサイトだが、9月下旬のアプリ公開時にリニューアルを行なうという。リニューアル後も、Webサイトは継続。
アプリの献立提案は、毎日、主菜1品・副菜2品の3品をレコメンド。提案されたメニューは、主菜・副菜それぞれを他のメニューと入れ替えるなどの編集が可能。メニューを1週間単位で決定すると、1週間分の必要食材を買い物リスト化する機能も備える。アプリリリース段階で、4カ月分の主菜を重複なしで有しており、今後もレシピを追加の予定だという。
このほかアプリでは、レシピを食材やメニュー、人気順や旬食材で検索できるほか、メニュー画面には、調理工程の動画もある。また気に入った料理を保存しておけるマイリスト機能、調理方法を質問できるコミュニティ機能なども備える。
同社初のコネクテッドレンジ「三つ星ビストロ」
今回発表された、庫内容量30Lのスチームオーブンレンジ「三つ星ビストロ NE-BS2600」は、同社初となるコネクテッドレンジ。価格はオープンプライスで、市場想定価格は180,000円(税抜)。
2.4GHz帯の無線LANを搭載し、「キッチンポケット」アプリと連携できる。アプリ上で選択したレシピを本機へ転送すれば、ボタン1つで調理が可能となる。転送したメニューは最大32個を保存でき、それ以上は転送が古いものから順に上書きされるという。
従来品同様に、高速0.1秒センシングや5段階パワーコントロールを有しており、これにより加熱ムラ、肉・魚の加熱しすぎを防げるとする。また片栗粉を使ったとろみ調理もダマなく仕上げられるという。
本体サイズは494×435×370mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約19.6kg。設定温度は、オーブンが70~300℃、発酵が30~65℃。庫内サイズは394×309×235mm(同)。消費電力は1.40kW/1.00kW/1.35kW/1.40kW(レンジ/スチーム/グリル/オーブン)。
担当者によれば、本機のWi-Fi接続率目標は5割以上、月次販売目標数は1,000台を目指すという。
食材配達では、ヨシケイと連携
食材配達および調理の下処理については、食材宅配やミールキット分野のパイオニアである「ヨシケイ」と連携。創業44年で、50万ものアクティブ世帯へ対する食材配達の実績がある。同社との連携により、食材の買い出しや、食材のカット、下ごしらえなどを大幅に時短できるようになる。
提携メニューの注文は、10月21日週から開始される。同社の既存宅配メニューのうち、食材をパッケージ化したミールキット「プチママ」、下処理済みの半調理品でビストロで最終調理だけをすればよい「コレdo!」の一部メニューから、注文が可能となるという。
今回の連携について、ヨシケイの本部にあたるヨシケイ開発 取締役・池田 沙織氏は「"名もなき家事"という課題を解決したいというパナソニックさんに共感し、今回連携させていただきました。ともに社会課題を解決していけたらと思っています」と語った。
食材の価格はメニューにより異なるが、半調理品「コレdo!」の茶碗蒸しが6つ入りで1,320円、ハンバーグ5個入りで1,080円。茶碗蒸しを試食したが、エビや干し椎茸、銀杏まで入った本格的なもので、ビストロで調理したとのことだが、"す"も立たず、なめらかな仕上がりだった。
パナソニックは「くらしアップデート業」を営む会社
パナソニックは、2018年に100周年を記念して行なったイベント「CROSS-VALUE INNOVATIONS FORUM 2018」で、代表取締役社長・津賀 一宏氏による基調講演内にて「パナソニックというのは、くらしアップデート業を営む会社である」と位置付けた。
これは、同氏が社長就任後に、パナソニックがさまざまな事業を展開しているために同社のアイデンティティが見えにくくなり、「パナソニックという会社は何者なのか」という自問自答を続けた結果、導きだした答え。「人々の暮らしをより良くしたい」という思いから出た、同社の次の100年の目標でもある。
今回リリースされたサービスは、この「くらしアップデート」を具現化したものだからこそ、その名に「くらしアップデート」を冠するという。
家電はネットにつなげることが目的ではない
また堂埜氏は、コネクテッド調理家電の発表が他社と比べて遅かった点については、以下のようにコメントした。
「家電製品に無線LANを搭載させること自体は、難しいことではありません。ですが我々は、単に製品をネットワークにつなぐだけでは意味がないと考えています。
ネットワークにつなげることで、お客様へどんな価値を提供できるか。お客様一人ひとり暮らしが豊かになるような価値を提供できて初めて、つなげることが意味を持ちます。我々がこれまでコネクテッド調理家電を発表してこなかったのは、つなげることで提供できる価値について、いろいろな議論と検討を重ねてきたからです。
幸い我々には、2014年にリリースした『キッチンポケット』という食のプラットフォームサイトがありました。5年の運営実績により、ユーザーやレシピも集まり、これだけで十分価値のあるものになったと思っています。
そしてこのキッチンポケットを軸にオーブンレンジと連携させ、また今回はヨシケイ様という強力なパートナーも得たことで、コネクトする価値を"調理作業と時間を短縮し、結果的に、家族との食事や団らんの時間を大切にできる"という形で、お客様に提供できるのではないかと考えています」
またコネクテッド調理家電の今後の展開については「アプライアンス社 前社長の本間(哲朗氏)が、"2021年までには、おおかたの家電はIoT化する"と言っており、そこから特に変更はありません。
ここ数年行なってきた議論の結果、お客様に価値を届けられると最初に判断したのがオーブンレンジでしたが、冷蔵庫の中の食材は献立立案において大変大きな意味を持ちますから、次は冷蔵庫でしょうか。冷蔵庫内の食材登録作業は、ユーザー入力やカメラとは異なる方法を現在模索しています。
またIHクッキングヒーターも親和性が高い製品なのではなないかと思います。オーブンレンジとIHのそれぞれで、2品が同時に完成するように調理したいといった需要もあります。
やはりただ、全ての調理家電をコネクトするのが本当に良いかは、まだ検討中です。我々のなかで、つなげる必要はないと結論づけた家電については、コネクトせずに続けていくものも出てくるかもしれません」とした。