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シャープ、一定温度をキープする「蓄冷材」を応用したトップアスリート向け製品を開発
2019年9月13日 17:32
シャープは9月13日、同社の社内ベンチャー「TEKION LAB」の「蓄冷材」を応用した新規商品の開発が完了したと発表した。
スポーツ分野で実績を持つウィンゲートおよびデサントジャパンと3社で共同開発した「TEKION暑熱対策グローブ」、ウィンゲートと2社で共同開発した「TEKIONアイスラリーBOX」の2製品について、2020年春の発売をめざし実証実験に取り組んでいるという。
液晶テレビの技術からうまれた独蓄冷材
TEKION LABは、シャープがテレビやパソコンの液晶研究で培った技術をベースに開発した「蓄冷材」を活用した製品の開発に力を入れている。この蓄冷材は、「-24℃~+28℃の温度領域の特定の温度で蓄冷できる」という点が特徴。特定の温度をキープするので、冷やし過ぎることがない。TEKION LABは2017年に、石井酒造が限定醸造した日本酒とセットで蓄冷材を活用した日本酒専用の保冷バッグをクラウドファウンディングサービス「MAKUAKE」でプロジェクトを実行し、3,000本を完売した。
現在同社が開発中なのが「TEKION暑熱対策グローブ」と「TEKIONアイスラリーBOX」だ。
熱中症対策には手のひらを冷やすことが効果的
「TEKION暑熱対策グローブ」は、専用グローブの内側のポケットに12℃の蓄冷材を装着した暑熱対策グッズだ。ヒトの皮膚温度は17℃以下になると痛みを感じるが、12℃の蓄冷材はグローブに装着することで、20℃に保たれるため、冷たすぎず、かつ快適に深部体温の上昇を抑制するのだという。
競技スポーツのトレーニングなどに関わるウィンゲート代表取締役の遠山 健太氏は、
「手のひらを適切な温度で冷やすと深部体温の上昇を抑制するという実験結果がでています。運動前に冷却することで夏場の暑熱対策に効果があります。しかし、氷などで冷やしすぎると血管が収縮し血液が体に巡らず、効果が十分に発揮できないといわれています。このグローブを使えば、ずっと握っていなくてもよいので快適にトレーニングができるので使いやすいと思います」と話す。
コールドスプレーなどを使った冷却の場合は、痛みや炎症の軽減が目的だが、本グローブの使用は、深部体温の上昇を下げることが目的なので、用途が異なる。
「冷却して深部体温の上昇を抑えると、ゴルフの飛距離が伸びるなど、実際にパフォーマンスが向上したという報告もあります」と遠山氏はいう。
デサントジャパン 第1部門デサントマーケティング部小林 俊夫部長は「本製品はアスリートだけでなく、夏場スポーツ観戦している観客、夏場の通勤通学時、屋外レジャーなどの利用も期待しています」とする。
フワフワ、シャリシャリした不思議な口当たり「アイスラリー」
もう1つ紹介されたのは「TEKIONアイスラリーBOX」。「アイスラリー」は、小さな氷の粒が液体に混ざっている流動性のあるシャーベット状の飲み物のこと。体内で氷の粒が融ける際に大量の熱を奪うため、冷蔵庫などで冷やした飲料よりも効果的に体を冷やせるとする。「TEKIONアイスラリーBOX」は、-11℃の蓄冷材を内蔵したクーラー容器でボトル飲料を約4時間冷やすことにより冷蔵庫がない環境でも「アイスラリー」がつくれるというもの。現在、セレッソ大阪や東北楽天ゴールデンイーグルスといったプロスポーツチームで実証実験中だ。