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衝撃動画!! 1トンの鉄球をブチ込んでも壊れない「超強力な家」を可能にしたのは、技術とIoTの融合だった

 ここは滋賀県のパナソニックホームズ湖東工場。いわゆるパナホーム、パナソニック ホームズ社の新しいIoT住宅が発売されるということで取材に来た。というのは建前(笑)。パナソニックさんには悪いんだが、新製品の発表と同時に、実寸の家の破壊試験が見られると言うので、「ハニートラップ」にまんまと引っかかってみた!

大型クレーンを2台用意して、実際の構造体をぶっ壊す! このセンススゲーなー。往年のシティーハンターを思い出したよ!

万が一に備えて水や電気を自動的に備える家

 2019年にパナソニック ホームズが20~40代の既婚男女336名に対して、独自に行なった「防災の意識に関する調査結果」によれば、ここ数年の大型災害で防災や備えに対する意識は変化したか? という問いに対して、次のグラフのような結果が出た。

「近年発生した大規模災害で防災や備えの意識は変わりましたか?」という問いに対し、意識が高まったと答えた人が72%。当然と言えば当然だ

 2018年は、大阪・高槻で起こった震災、そして西日本を襲った集中豪雨、北海道で起こった広域大規模停電など、災いの年だったともいえる。また近々では熊本地震、また10年が過ぎようとしているが東日本大震災など、記憶に新しい大災害が起きた。

 さらに近い将来起こるだろうと予測されている、南海トラフ巨大地震では、東海から紀州、そして四国~九州東側にかけて大きな被害がでると予測されている。

南海トラフ巨大地震で被害が予測されているのが赤い部分(出典:2013年、地震調査研究推進本部 地震調査委員会)

 調査はさらに続く。「食料や飲料、非常用も持ち出し袋など災害への備えを行なっていますか?」という問いに対しては、80%も備えているという。何も用意していない筆者は、自分の危機意識の低さが恥ずかしくなった。

「非常用の食料や持出袋など災害への備えをしていますか?」という問に対する答え。持ち出し袋を用意している家庭が8割越えというのには驚いた

 しかし災害は、いつ発生するかわからない。今、防災に対する意識が高くても、それを持続するのは大変だ。そこで防災へのモチベーションついてもアンケートすると、「継続できる」と答えた人は30%を切る結果となった。つまり7割以上の人は、維持するのが難しいと感じているか、モチベーションの持続に疑問を感じているというわけだ。

「災害への備えを持続していくのは難しいと思いますか?」という質問に対して、維持できるとの回答は30%を切る。筆者は維持できなかった7割と同じ

 パナソニック ホームズが提案するのは、家そのものを改良したり、IoTを利用して防災意識のモチベーションを維持し続けるというアプローチだ。これを「防災持続力を備える家」と称している。

 たとえば断水なら、平均的な復旧日数の3日間で使う家族の飲料水が用意してあるほか、エコキュートなどで利用している水を手洗いやトイレに使えるという備えがある。

水道管の途中に配置し、常に新しい水を43リットル蓄えられる非常用貯水タンク。4人家族の3日分に相当
非常用貯水タンクのカットモデル。タンクの中は2重になっており、内側にシリコン製の水タンクがある。ステンレスタンクとシリコンタンクの外側に、自転車の空気入れなどを使いって加圧することで、断水時にも水に圧をかけ供給できる

 また停電したときの電源では、太陽光などで蓄電池に貯めた電気を使って、冷蔵庫の食品を最低限腐らせないように、またテレビなどの情報やスマホの充電などができる分だけの電力量を確保する、といった具合だ。

納戸兼防災関係をまとめて置くスペースも積極的に提案しているという。最下段は非常用の蓄電池

 その一方で、IoTを活かし災害予防や災害への注意を向けたり、住宅施設との連携を図るという。その中心となるが「HomeX」というシステムだ。ミニタブレットほどの端末が部屋に設置され、家の状態をモニターするほか、災害に必要な情報を表示したり、IoTホームとの連携を行なう。

HomeX端末。電力関係のみを司るHEMSとは異なり、住宅のIoTとインターネットを連携する

 たとえば台風が接近している場合は、気象情報をもとに自動的に雨戸を閉め、もしもの停電に備え蓄電池を充電モードする。万が一停電になれば、HEMSと連携して電源をバックアップ。もし災害になっても、人を安心させてくれる住宅というわけだ。

台風情報と連携し自宅のシャッターを自動的に閉じる。例えば、共働き夫婦が家に子どもを残していても安心できる

 また、人を安心させるパナソニック独自のサービスとして、被災時のお見舞い給付金の交付や、早期災害救援という同社の社員がいち早く駆け付け、生活再開を支援するサービスも行なっているという。

 こうしてパナソニックは、そこに住む家族を「IoT」と「家の備え」と「家族へのサポート(保障)」の三本柱で、安心・安全の住まいづくり(=防災力を持続する家)実現するという。

【答えられますか?防災意識チェック!】

  ・家族で必要な飲料水はどのぐらい?

   ⇒1人3リットル×復旧日数(3日)×人数

  ・備蓄している非常食の消費期限は?

 ・備蓄してある場所はどこ?

 ・キャンプ用品の収納場所は? 使い方は把握してる?

   ⇒キャンプ用品は災害時に便利だが、お父さんしか使い方を知らない場合が多い

  ・地震後のガスの復旧方法はご存じ?

 ・地震後の給湯器の復旧方法はご存じ?

   ⇒給湯器によっては地震で自動停止する製品もある

  ・避難場所は?

 ・家族との連絡手段は?

   ⇒携帯のキャリアやインターネットサービスなど、家族で予め決めておこう

住宅の強さを見極める実験の数々

 まず始めに行なったのは、風速46m/秒という巨大台風の体感。2018年の西日本豪雨では、京都や大阪で最大瞬間風速44m/秒を超える風雨が現れた。その爪痕は、今でも電車から見える、屋根にかけてある青いビニールシートでもわかるほどだ。パナソニック ホームズが誇る国内最大級の住宅試験場では、風速46m/秒を実演してくれた。あまりにも危険なので、実際に体験するのは社員の方。

2階建ての住宅が2棟、平屋が1棟入る住宅試験センターは日本最大規模
トラックほどはあろうかという巨大な送風機。一番下の四角い口から暴風が吹き出す

 トラック1台分はあろうかとい送風機は、家に均等に送風するため高さ6mほどある送風口と、疑似的に雨を降らすシャワーが設置されている。今回は一番下にある送風口のみを開くと、46m/秒の風が吹き出された。

 風速46m/秒はを時速に換算すると、時速166km/時。都心と成田空港を結ぶスカイライナーが160km/時、新幹線だと品川から新横浜あたりがだいたいこんなコ速度だろう。関西圏の人だと、新快速の最高時速が130km/時なので、あれより速い計算だ。

 100km/時というのは、高速道路を走る自動車の窓から手を少し出しただけで、一瞬にして手が後ろに流され、下手をすればケガをするほど。時速166kmの世界は猛烈だ。

徐々に強くなる風雨で前を直視できない。最大の46m/秒は、体を横にしていないと、吹き飛ばされるほどの暴風だ

 送風機のモーターが徐々に速く回り、大きな唸りを上げるごとに、人は立てなくなるどころか、後ろに押されていく。もちろん傘は役に立たず、反対へ裏返る、いわゆる「おちょこ」の状態になるどころか、裏返らずにそのまま骨が折れ、ビニールは引き裂かれていた。

ここまでボロボロになってしまった傘。台風のあと、街に傘が落ちてたりするが、ここまでのものは見かけない

 さらに大きな実験棟は、3軒の家が入るほどの施設で、ここでは「天井や外壁に設けられた赤外線電球が発する熱などに耐えられるか?」「大雨や高い湿度にさらされた場合どうなるのか?」「極寒の中での保温性」などを確かめられるという。ちなみにこの施設は、企業向けに貸し出しているそうなので、建設関係の方でご興味ある方は問い合わせてはいかがだろう?

試験センター内に住宅を持ち込んで、あらゆる温度や湿度下、そして風雨にさらされた時の試験を行なう

1トンの鉄球を何回かぶつけても構造体を守る「アタックフレーム」

 さらに場所を移して行なわれたのは、住宅の構造体(鉄骨の骨組み)へ、1トンの鉄球をぶつける実験だ。震度7の横揺れの地震に相当するという。

なんと大型クレーンが2機用意されていた!年末のテレビ番組の罰ゲームでしか見たことない光景だ

 ここで比較するのは、建物の強度を上げるために使われる耐震用フレーム。写真手前にある鉄棒がクロスしているのが、一般的な構造で「筋交い」や「ブレース」と呼ばれるもの。横から力を受けると、ブレースに力が伝わり、互いが引っ張り合って構造を守ろうとする。

 これに対して写真奥にある"Kの字"になったものは、「座屈拘束技術」というビルの耐震技術を戸建てに適用した「アタックフレーム」。筋交い同様に建物の要所に配置して、横からの力を「熱」に変換してフレームを歪ませることなく衝撃を吸収する。

手前のクロスが「筋交い」「ブレース」。奥のK字がパナソニック独自の「アタックフレーム」

 こんな予備知識を踏まえて、次のムービーを見ていただきたい。

1トンの鉄球を家に衝突させる実験

 一瞬のことなのでわかりにくいが、筋交いはそれ自体がゆがんだり曲がったりすることで衝撃を吸収するため、一度大きな衝撃を受けると、余震で大きな揺れが来た場合、本来の性能を発揮できず、建物が倒壊する恐れがある。

左が当たる直前、右が衝突中。筋交い側の構造が平行四辺形に歪んでいる
筋交いの塗装ははがれ、大きくゆがんでしまった。これではもう衝撃を吸収することはできない

 2枚の写真を見比べると、手前の筋交いの面は、平行四辺形に歪んでしまっているが、奥のアタックフレームはゆがみがない。

 秘密は、アタックフレームの斜めに配置されている、アタックダンパーと呼ばれるもの。ダンパーなので圧縮・引張し、その時の金属同士の摩擦や衝撃エネルギーを熱エネルギーに変えてしまうのだ。

 では2回目の実験を、スローモーションのムービーで見ていただこう。予備知識があれば、おおスゲー! となるはずだ。

1トンの鉄球を家に衝突させる実験(スロー)
アタックフレームの斜めの部分は、アタックダンパーと呼ばれ2つの鋼材を貼り合わせてできてる
アタックダンパーは2つの鋼材で構成され、1本はフレームに固定。もう1本は「コ」の字型のダンバーを覆っている。それにより衝撃時に2つの鋼材間で収縮・引張が発生し、衝撃のエネルギーを摩擦熱エネルギーとして変換・放出する

 こうしてアタックフレームは、それ自体は歪むことなく衝撃を吸収するので、大きな余震が繰り返し起こっても、本来の性能を保持したまま建物の強度を保持するのだ。

近い将来建物は一番デジタル化されたガジェットになる?

 IoTは、もはや家庭にもどんどん普及しつつある。今は「便利になる」という付加価値が目立つIoTだが、住宅や災害などの大きな視野で見ると「安心・安全に生きていける」というのが究極のテーマのように見えてくる。

将来のIoTは、「便利」という付加価値ではなく、「安心・安全」という本質を担うものになるだろう

 そして今回見学した家が、その代表例だ。あらゆる災害に備え何かあっても安心して生活できる装置や技術、そして家そのものが地震に強いという安心感と安全。それを統括し、ひとつのシステムにするIoT。

 身近な家電の進化も楽しみだが、近未来の家がどれだけ技術と情報で進化するのかが楽しみだ。

床から天井まで大きなガラス(開口部)に、リビングの大きな空間にある吹き抜けなど、ともすれば強度が弱くなる間取りでも、東日本大震災の1.8倍の揺れまで耐えられるという