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パナソニック、自社工場で栽培の野菜で、オリジナル食品を開発中

 10月10日から12日まで、幕張メッセで「国際次世代農業EXPO」が開催された。IT農業や植物工場、ソーラーシェアリング、6次産業化など、農業を強くするための次世代技術や製品が一堂に集まる展示会だ。

 今年は西日本豪雨や記録的な猛暑で、野菜が高騰したのも記憶に新しい。近年のこうした自然災害は日本に限ったことではなく、世界中で異常気象が発生している。また、日本は少子化問題が話題になることが多いが、世界で見ると人口増加が大きな問題だ。現在の世界人口は約75億人だが、30年後には約95億人以上に達する見込みだという。さらに、温暖化や異常気象によって、毎年耕作地を失っている現状がある。人口増加によって食料需要が高まる一方で、食料の生産率は減少しており、農業従事者も減少している。

 このような問題解決に向けて、世界中で植物工場への関心が高まっており、年々その市場規模は拡大している。農業先進国といわれるオランダやイスラエルのニュースをご覧になった方も少なくないだろう。日本でも植物工場が増加しているが、その大半は赤字となっており、普及にはまだまだ時間がかかりそうだ。そんな状況のなか、食の課題解決に貢献しようと日本の市場を牽引しているのがパナソニックだ。さらに、植物工場で栽培した野菜を素材にした加工食品の開発にもチャレンジしている。その取り組みをご紹介したいと思う。

パナソニックのものづくり100年のノウハウをすべて投入

 日本の植物工場の大半は赤字経営となっている現状があるが、パナソニックは黒字化に向けたソリューションを提案している。植物工場で野菜を栽培するには、水・光・CO2・酸素・肥料・風・湿度・温度といった環境を最適にコントロールする技術が必要となる。また、植物工場を運営するには生産管理・品質管理・菌数管理・原価管理・工数削減などのノウハウも不可欠だ。

パナソニックは環境制御や設備設計技術、運営ノウハウなどすべてのノウハウを保有する

 植物工場などの工場も住宅を建てるのと同様に、それぞれに最適なメーカーに発注することが一般的だろう。しかし、何か不具合があったときに、素早い対応が難しいという側面もある。その点、パナソニックは工場建設から設備設置、栽培関連サポートまで、植物工場に必要なノウハウをすべて保有しているため、いつでも最適な対応が可能だ。そして、植物工場にはパナソニックが培ってきた100年の技術やノウハウが投入される。

植物工場にはパナソニックの100年の歴史で培った技術が投入されている

 植物工場ではLEDの光で野菜を栽培するが、パナソニックの場合は青色と赤色の2色の自社開発の専用LEDしか使わないという。緑色は花などには必要な光だが葉物野菜には不要で、エネルギーのムダになるため、青色と赤色のみにしているという。そして、青色で野菜を形成し、赤色で光合成を促し、その照射量で野菜の味まで作り分けることが可能だそうだ。

植物工場専用のLED
赤色と青色LEDの2色で野菜を栽培。赤色のほうが多くなっている

 例えば、一般的な家庭に向けては甘めの野菜にしたり、シェフやレストランなどの要望で肉や魚とのバランスを考慮したワイルドでパンチのある味にするなど、ニーズに合わせて作り分けているとのこと。また、腎臓病や腎不全、透析中の人に向けたカリウムを大幅にカットした低カリウムレタスなどの機能性野菜も販売しているという。

 パナソニックの植物工場提供では、こうした野菜の味や食感、栄養なども制御できる野菜のレシピまで提供し、安定した品質と生産を可能にするそうだ。植物工場と家電製品ではだいぶスケール感が違うが、まさに家電製品と同様にマニュアルを作って渡すイメージに近い印象がある。

“パナソニック”ブランドの加工食品などが誕生

 現在、パナソニックはオーガニックのドレッシングなどのオリジナル加工食品も開発している。もちろん、植物工場で栽培された野菜が素材だ。約2年前に青じそドレッシングを開発し、パナソニックの社内でテスト販売したところ約1万本も売れたそうだ。それから少しずつラインナップを増やしており、将来的には一般向けの販売も検討しているという。

パナソニックが開発した加工食品のラインナップ

 実は昨年末にインプレスの納会に試食コーナーが用意されて、いくつかのドレッシングでサラダなどを試食してみたが、とても濃厚でクオリティの高い仕上がりだった(記事はこちら)。今回の展示会では、さらに2種類のディップソースがラインナップに加わっていた。無添加のディップソースで、食パンやクラッカー、野菜スティックに塗ったり、タルタルソース代わりに使ったり、こちらも社内で好評だという。また、植物工場で栽培されたシソを使った化粧水なども展示されていた。

新たにラインナップに加わったディップソース。こちらバジルのマヨディップ
大葉のマヨディップ
植物工場で栽培されたシソを使った化粧水

 現時点では、ビネガーやソルト、レトルトカレー、化粧水はまだ試供品扱いだが、「青じそドレッシング」「えごまドレッシング」「バジルソース」「大葉ぽん酢」「バジルのマヨディップ」「大葉のマヨディップ」の6種類を社内販売している。これらはパナソニック社員なら購入できるそうなので、パナソニック勤務の友人や知人がいれば購入してもらって味わうこともできる。

ソルトは大葉、えごま、パクチー、バジルの4種類
ビネガーは青じそとバジルの2種類

 紹介した野菜や加工食品が、パナソニック製の調理家電で作った料理にアクセントをもたらし、家庭の食卓を彩る日はそう遠くはないだろう。