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オムロン、より自由な発想で事業創出する新会社「オムロン サイニックエックス」を設立
2018年4月26日 00:00
オムロンは、社会的な課題を解決するサービスや商品を生み出すために、より自由な発想で事業を創出する研究会社「オムロン サイニックエックス」を設立し、4月26日に本格始動することを発表した。2020年度をゴールとするオムロングループの中期経営計画「VG2.0」で掲げる、売上高1兆円、営業利益1,000億円の達成を始め、2020年以降の成長をけん引する技術、新規事業創出の加速を目指すという。
社会的課題を解決するための“近未来デザイン”を創出する、戦略拠点として設立された新会社。オムロンが考える近未来デザインとは、課題を解決するための単なるアイディアのことではなく、ビジネスモデルや技術戦略、知財戦略までを統合的に描き、具体的な事業アーキテクチャにまで落とし込むことを意味するという。
「ヘルスケア」、「モビリティ」、「FA(ファクトリーオートメーション)」、「エネルギーマネジメント」の4ドメインを中心に、各領域の社会的課題を考え、それらを解決する具体的な近未来デザインを創り出すことを目的とした、研究会社と位置づける。
独立した会社にすることで、オムロン本社の影響を受けず、より自由な考え方で創造活動ができるとする。失敗したらやめればいい、と軽いフットワークで、絶えずチャレンジすることに価値を見出す。
創業者のDNAを受け継ぎ、未来の社会を予測して社会的課題を解決
1933年に設立されたオムロンは、当時から世界初の商品やサービスを提供してきた。その中で、オムロンが飛躍した分岐点は1960年代の“3大プロジェクト”にあるという。
1つは、1964年の東京オリンピック、乗用車増加を背景に起きた、交通渋滞という社会的課題を解決するために生まれた、「全自動感応式電子信号機」。2つめは、阪急電鉄から、新設する北千里駅の自動化を進めたいというニーズで生まれた、「無人駅システム」。そして3つめは、クレジットカードの使用を拡大する「オンラインキャッシュディスペンサ」事業。
これらは今となっては当たり前のサービスや事業であるが、創業者である立石一真は、これで世の中を変えていこうという思いで研究所を設立したとする。
オムロン 執行役員専務・CTO 兼 技術・知財本部長 兼 イノベーション推進本部長 宮田 喜一郎は、オムロンが手がける事業、およびオムロン サイニックエックスの設立について次のように語った。
「3大プロジェクトが利益を出し始めたのは、スタートから10年後でした。しかし、重要なのはすぐに利益を出すことではなく、ソーシャルニーズを想像することです。ソーシャルニーズを自ら考え、社会を変えていこうというのが基本ポリシーで、創業者から受け継がれてきた我々のDNAです。現代にもさまざまな社会的課題があり、それらを解決するために、具体的な事業にまで落とし込んだ“近未来デザイン”を考えるのが、オムロン サイニックエックスです」
サイニックとは、オムロン創業者の立石一真が1970年に発表した名称。「社会のニーズを先取りした経営をするためには、未来の社会を予測する必要がある」との考えから、提唱された未来予測論のことを指す。
さらに、オムロン サイニックエックスでは、大学や社外研究機関との共同研究も行なうという。センサーデータやロボティクスなどを研究する、最先端領域のトップ人材を外部から広く登用し、オープンイノベーションで徹底議論することで、近未来デザインを生み出す。
創出された近未来デザインは、オムロン全社のイノベーションプラットフォームである「イノベーション推進本部(IXI)」が受け取って形にしていき、事業検証を行なったうえで実行に移すという。
「動と静」をテーマにしたオフィスで、クリエイティブな空間を実現
オムロン サイニックエックスは、オフィスを東京・本郷三丁目に構え、「動と静」をテーマにフロアを展開する。
「動」のスペースでは、広いミーティングスペースを設け、椅子もあえて不安定なものを置いている。これは、グラグラとした椅子は脳に刺激を与え、よりアイディアが生まれやすくなる効果があるためだという。
「静」のスペースには社員のデスクを設置。仕切りがホワイトボードになっており、思いついたアイディアはすぐに書き込める。また、「動」スペースが暖かみのある照明だったのに対し、「静」スペースは青白い光の電球を採用。だが、自らのスペースの照明は自由に変更OKで、好みの明かりで作業を進められる。
同社は今後、AI・ロボティクス・近未来デザインを担う人材の採用・育成にも注力。イノベーション創出力向上にむけて技術経営を強化し、事業を通じた社会的課題の解決に取り組んでいくとしている。