家電製品長期レビュー
パナソニック「SDーBM102」 最終回
最終回となる今回は、約1カ月間試用した感想の総集編だ。感じたポイントをQ&A形式にまとめてみた。また、ホームベーカリーライフに必要なアイテムもご紹介する。過去のレビューはこちらから→第1回、第2回、第3回。
■Q 初心者だけど、失敗しない?
説明書通りに計量すれば、まず失敗はないと考えてよい。かれこれ20回以上パンを焼いたが、膨らみ方が多少変わる程度で一度も失敗したことがなかった。(これ、ホント!)
ただし配合を変えたり、具材を加えてアレンジする場合は説明書の指示に従い、分量をを守るよう気をつけよう。また室温が急激に変わる時期は水の温度に気をつけよう。
材料の役割については取扱説明書にもイラスト入りで記載されているが、パナソニックの「ベーカリー倶楽部」も参考になるのでぜひご覧いただきたい。
焼き上がりの状態。パンがケースからこんもりと盛り上がっている | 使用する材料やその時のタイミングでふくらみ具合が抑えめな時もある | ただし、失敗は一度もなかった |
■Q 機械が作るパンはまずいんじゃないの?
機械が作るからまずいというのは誤解だ。筆者に限って言えば、自分の手で作るより間違いなく成功率も高く、おいしくできる(苦笑)
ただし自家製という“フィルター”でおいしく感じる可能性も捨てきれない。そこで「基本の食パン」を作って、ホームベーカリー経験者の知人に食べてもらったところ、素直においしいという感想をいただいた。「ホームベーカリーのパンは翌日になるとまずいという印象があったけど、もらったパンはおいしい。翌日もやわらかく、トーストしてみたらおいしかった。これまでのイメージが覆った!」という。この際だから余計な先入観は持たないほうがいいといえるのではないだろうか。
さくさくとした食感は焼きたてのパンの醍醐味だ |
筆者はまだ素手で触るのも難しいほど熱い焼きたてパンの側面を1cm程の厚みに切り取り、まずはそのまま食感を確認し、そのまま熱いうちにバターを塗って食べるのがお気に入りになった。トーストにはないできたての柔らかさと、耳のサクサクした歯触りが実に香ばしくおいしいのだ。これは焼きたてにナイフを入れられないと手に入れられない部分。自家製だからこそ味わえる醍醐味だ。
■Q 音はうるさくない?
これは筆者も使う前に気になった点だ。調理の時間、置き場所などにもよるが、轟音が鳴り響くようなものではないので、あまり気にならないのではないかと思われる。
聞こえてくるのは、練っている最中のモーター音と、生地がこねられる際の「パタパタパタパタ」という音、ドライイースト投入時の「ジー カタン ジー カタン ジー カタン」という音、具材を自動投入する際の「バタン」という音。この中で一番気になるとすればドライイースト投入時の音かもしれない。具材を自動投入する時の音もやや大きく、お世辞にも静かとは言い難いが、いずれもほんの一瞬で長時間続くわけではない。
どうしても気になるなら寝る前の「予約」を活用するといいだろう。「予約」ではあらかじめ練ってから待機する。最初の練り時間は20分程度。その後最大10時間(設定による)はねかしで待機する。起きているうちに最初の練りが終わるようにタイミングを計れば深夜も安心だろう。
■Q 食パンはお店で買った方が安くない?
これは必ず聞かれる質問だ。ホームベーカリーは、素材にこだわったり、オリジナリティを追求したり、できたてが食べられるなどの多くのメリットがあるわけで、市販のパンも多彩なバリエーションが存在し、中には数百円なんてものもある。材料も購入する店のお値段次第だ。ゆえに何を基準に高いか安いかと判断するかは正直、難しい。
だが純粋なコストを把握しておくことは大事だ。そこであるスーパーで購入した材料から、「基本の食パン」の材料費を算出してみたので参考にしていただきたい。
<3月某日、近所の某スーパーマーケットにて>
カメリア強力粉 1kg 350円
天然水500ml 110円(買ったと仮定している)
砂糖 1kg 268円
塩 1kg 132円
雪印切れてるバター 10g×10個 225円
スキムミルク 225g 358円
ドライイースト 50g 270円
<基本の食パン 1斤分の材料費>
強力粉 250g → 87.50円
水 180cc → 39.60円
砂糖 17g(大2) → 4.59円
塩 5g(小1) → 0.66円
バター 10g → 22.5円
スキムミルク 6g(大1)→ 9.5円
ドライイースト 2.8g(小1)→ 15.12円
--------------------------------------
合計179.47円
さらにエコワットで電気代を測定したところ、所要時間4時間に対し、電気代は6円。合計で約185円という結果になった。
ちなみに、家庭で消費することを前提としているので、時給などの労働力は反映させていない。
■Q なんだかんだいって、やっぱり面倒臭くない?
これも必ず聞かれることだ(苦笑) 筆者も実際に試すまで、「自宅でパンが焼けるっていっても、準備大変なんでしょう? 面倒なんでしょう?」という先入観があった。実際試して見ると、「あれ? こんだけ?」と正直驚いたくらいだ。
面倒臭いかそうでないかは個人に差があるため、どこで線引きするのか非常に難しいが、1カ月使用してみたところ、感覚的に炊飯器でお米を炊くのとあまり変わらないというイメージを持った。ゆえに、お米をカップで計量し、といで水を入れるだけでも面倒臭くて嫌いという方なら、面倒くさく感じる可能性は高い。
逆に「その程度なら全然苦じゃない。できたてをみんなが喜んで食べてくれるのがうれしい!」という方なら、このホームベーカリーとは相性がいい可能性大。炊飯に比べて投入する材料は多いが、炊き込みご飯に置き換えてもいいかもしれない。
ただし、途中で生地を取り出して、形を変えて改めてオーブンで焼く、ピザを作るとなると自分で手を加え、管理する工程が増えるため、好きでなければ面倒臭いかもしれない。このあたりは好みだろう。
■Q 「SD-BM102」のここがナイス! ここが疑問……
1台で何役もこなせてしまう器用さもさることながら、パンを焼いている最中、本体を触っても、飛び退くほど熱くなっていないことに驚いた。もちろんそれなりに熱を持っているのだが、ヤケドするほどの熱さは感じない。これは安全性の面でもうれしい配慮だと思った。
洗い物が簡単なところもいい。普段パンを焼くだけなら、洗い物はパンケースと羽根だけ。羽根の根元についたパンも水につけておけばすぐ洗える。レーズン・ナッツ容器も着脱式なため洗いやすい。中の様子が見える窓がついているとさらに楽しさが増すと思う。
逆に改善を望みたい点は4つ。1つは付属のミトンの断熱性。付属しているのは非常に親切だが、できたてのパンケースをホールドし続けるには少々薄い気がした。
2つ目は、「メロン」モードで、作業10分前にもアラームを鳴らして欲しいということ。ブザーが鳴ってからの15分でも伸ばして卵を塗るくらいは余裕できるが、せっかくなので音で教えてくれると親切だろうと感じた。
3つ目は、パンケースの持ち手が邪魔になりやすいこと。慣れないうちはパンを出すときに羽から抜けずに苦労しがち。何度も振ってやっと出たと思ったら持ち手も下がり、ひっかかってパンがでないなんてことがあった。出す際に持ち手の存在が気にならないような固定ができるとうれしい。
4つ目としてイースト自動投入時の音がやや大きい点も記しておきたい。
■Q 持っていたい便利なアイテムは?
個別に用意したいアイテム3点。パンクーラーは揚げ物用の網を代用。パンは比較サンプル用のフランスパン |
使いながら感じたのは、切れるパンきり包丁、粗熱をとるパンクーラー(もしくはケーキクーラー)、保存用ケース、断熱性の高いミトンは持っておきたいということだった。
パンクーラーは揚げ物やオーブンの網で代用できるし、プラスチックの保存用ケースは100円ショップでも購入できる。ミトンもオーブン料理で対応できるものがあるならそれでOKだ。しかし頻繁に作るなら、パン切り包丁だけはしっかりとしたものを買った方がいい。
筆者は最初100円ショップで買ったパン切り包丁を使っていた。100円で買えてラッキーだと思っていたのだが、切れ味の悪さに閉口。のこぎりのように押したり引いたりするはめになり、断面が波打ってまっすぐ切れないばかりか、パン全体をつぶしてしまうのだ。せっかく上手に焼けても、スライスしたパンの切り口が汚いと萎えてしまう。結局「ヴェルダン パンスライサー」(下村興業株式会社)を買うに至った。
Amazonで1,923円で購入した「ヴェルダン パンスライサー」 | 右は100円ショップで購入したパン切り包丁 |
上が「ヴェルダン パンスライサー」の刃。明らかに鋭利だ | 上が「ヴェルダン パンスライサー」、下が100円ショップ |
この切れ味はすばらしく、それまでのパン切り包丁はなんだったのかと思わされるほど。ゆっくり滑らせるだけで焼きたてのパンをカットできる。もはや必須アイテムだ。果実や野菜、チーズなどもカットできるというから、1本持っていて損はない。
ちなみに、パン切り包丁がない、もしくは今のパン切り包丁でなんとかしたいという方は、切る前にガスの炎で刃を少々熱してみて欲しい。真っ赤になるほど焼かなくても良い。熱くなる程度で十分だ。パンが切りやすくなり、くずが出にくくなると思う。ただし熱する際は柄の部分まで焼かないようにまたヤケドにも注意していただきたい。
揚げ物用の網で代用していたパンクーラーだが、楽天市場で本格的なケーキクーラーを購入(997円)。決め手はクラシックなデザイン! | 直径30cmなのでかなり大きい。上にあるのは「SD-BM102」で焼いたケーキ |
■絶対欲しい魔法の箱!
使い続けていると「なるほど! そうだよね!」と思える瞬間にであうことがある。いわゆる腑に落ちる瞬間だ。この瞬間から、猛烈に使用頻度が上がるというか、日常生活の中に溶け込んでくるのである。
「SD-BM102」は利用2回目にして「ホントに気楽に材料入れるだけなんだ!!」と分かったため、炊飯器の隣に置いておきたくなっていた。「明日はパンがいいな~、いやご飯かな~、でもジャム買ったからパンにしよう!」と寝る前に思ったら、そのまま仕込んでおけばよいのだ。ピザだって生地からできる。メロンパンまで作れる。これはすごく贅沢ではないだろうか。今回はちょっと失敗してしまったが、道具をそろえたらパスタだって再挑戦してみたい。夢は広がりまくりだ。迷っている方がいたら絶対お勧めできる製品である。
ピザを生地から作るのもホームベーカリーがあれば手軽にできる | レーズン入りのメロンパンなど自分の好みに合わせたオリジナルのパンが作れるというのも大きな魅力 |
最後に本当にあったお話を紹介しよう。今、知人の奥さんがパン教室に通っているという。ある日教室まで奥さんを迎えに行った知人は、教室に併設されているショールームを見ながら終わるのを待っていたそうな。そこにパナソニックの新しいホームベーカリーが展示されていたのだという(SD-BM102のことらしい)。
彼がしげしげと眺めていると、男性スタッフがやってきて説明を始めた。「これは私でも、そしてアナタでも、おいしいパンが失敗なく簡単に焼けるんですよ~!」へ~なるほど~すごいな~と思いつつも、ハッとした彼はこう言い返した。「じゃあ今うちのカミサンがやってることは無駄だってことですか!」
スタッフは絶句したという。パン教室に通ったことはないけれど、ある部分に関してはあながち間違いじゃないのかも……と思った筆者であった。
2009年4月28日 00:00