長期レビュー
パナソニック「ホームベーカリー SD-BM102」
ホームベーカリーでのパン作りもいよいよ後半に突入だ。ここまでくると本当に炊飯器感覚である。何にもしなくてすみませーんと言いたくなってしまうので、今回は何かする方向のパン作りである。ちなみに第1回でも触れているが、「SD-BM102」はピザ生地、餅、パスタ、うどんも作れる。そこでピザと餅とパスタにも挑戦してみた。
なお、前回までの記事も合わせてご覧いただきたい。こちらが1回目、2回目となっている。
■あの「メロンパン」をご自宅で!
これがメロンパンの“あの部分”になる材料 |
メロンパンを買うとき、表面の甘い“あの部分”が分厚いといいな、歯ごたえのある部分がたくさんあるといいなと思ったことはないだろうか。“あの部分”が思い切り堪能できるとしたらどうだろう。「SD-BM102」ならできるのだ。なにせ「メロン」なんてメニューがついているのだから。
実は“あの部分”はパン生地とは別に用意されたクッキー生地でできている。メロンパンの構造は、パン生地の上に途中で別途用意したクッキー生地を載せ、グラニュー糖をかけて焼いた、つまり2つの生地の2層構造だったのだ。
そんなわけで、まず作ったクッキー生地はラップにくるんで冷蔵庫に入れて15~20分寝かし、その間にパン生地部分を計量してパンケースに投入。メニューで「メロン」を選んでスタートボタンを押しておく。すると、クッキー生地を載せるまでのカウントダウンがスタートする。開始から55分後がクッキー生地を載せる時間なのだ。その10分前、つまり45分後には冷蔵庫からクッキー生地を取り出し、載せやすいように直径14~15cmに伸ばし、溶いた卵を塗ってスタンバイするという手順になっている。さすがにこればかりは全部お任せというわけにはいかないようだ。(10分前にはなんのブザーもならないので、注意が必要である)
先にクッキー生地を作る | 丸めて冷蔵庫で寝かせる | パン生地の材料を投入 |
作業時間になるとブザーで知らせてくれるので、ふたをあけてパン生地を中央に置き直し、用意しておいたクッキー生地を載せる。卵を塗った面を下にし、上からはグラニュー糖を適量ふりかける。必要に応じて爪楊枝などで深さ1mm以下の格子模様をつける。この間の作業を15分以内に終わらせるのだ。再び「スタート」を押せば再スタートするので、あとはできあがりを待つだけとなる。(15分経過しても自動的に再スタートする)
「メロン」モードを選んでスタート | 作業開始を知らせる10分前の表示 |
作業10分前になったら、クッキー生地を取り出して直径14~15cmにのばす。接着用に溶き卵を塗る | これがクッキー生地を載せる前のパン生地 |
できあがった手作りメロンパンは、中はモチモチ、外はサクサクだ。クッキー部分が分厚くてたまらない。中にレーズンを加えてさらにパワーアップしてやろうという野望を抱いてしまった。
2時間15分後、完成した人生初の自家製メロンパン。通常の食パンより仕上がりが早いせいか、あまり膨らんではいない | クッキー生地部分。ここだけ食べたい気分になる |
よく見ると、底に厚い部分が。載せたクッキー生地が落ちてしまったようだ。これもまたサプライズでおいしい | 【動画】自宅でメロンパンが製造できた歴史的瞬間!?(動画は別ウィンドウで開きます) |
■欲を出してレーズン入りのメロンパンに挑戦
「SD-BM102」のおかげで、外はサクサクのおいしいメロンパンができたが、通常のメロンパンに比べて高さがあるため、クッキー部分と一緒に食べられない部分が生じた。いつもあの生地を味わっていたいのにこれはちょっと残念だ。特に人に出すときはバランスが難しい。そこで、中にレーズンを加えて味わいの楽しみを増強しようと考えた。手順としてはメロンパンの工程にレーズンを追加した合わせ技。幸いメロンパンも具の自動投入に対応しているので安心だ。
試して見たところ、レーズンがないときより膨らみ方が足りなかった気がする。しかしその分メロンパン然とした雰囲気が増し、身がぎっしり詰まったようなもちもち感が出た。なによりメロンパンの醍醐味ともいう表面のクッキー部分が前回よりうまくいっている。
レーズン自動投入でレーズン入りのメロンパンに挑戦 | クッキー生地をかぶせ、好きなだけグラニュー糖を振り掛ける | 完成したレーズン入りのメロンパン |
パンの6面中5面がクッキー生地で覆われており分厚い。グラニュー糖をたっぷりふりかけているので、ザクザクした食感と甘さ、クッキー部分のサクサク感、パンのもちもち感、レーズンの甘さが一体となって素敵なハーモニーを奏でている。しかもほとんどはホームベーカリーがやってくれるのだ。いろんな意味でこんなにおいしいことはない。
所要時間も通常のパンより短く、2時間15分でできるところもいい。自分でメロンパンを作りたいと思っていた方にはお勧めだ。メロンパンとレーズンパンが好きな相手なら手土産としても喜ばれるに違いない。
割れた部分からクッキーだけつまみたくなる | レーズンの密度も高く、これならどこから食べてもなんらかの味が楽しめる |
■天然酵母の「生種」をつくる
「SD-BM102」ではこれまで使用してきた「ドライイースト」だけでなく、「天然酵母」の「生種」つくりから、自作した天然酵母を使ってのパン作りまで可能だ。天然酵母のパンは何がどう違うのか。食べてみないことにはわからない。そこでまず生種おこしに取り掛かることにした。
これまで使用してきた「ドライイースト」(日清製粉のスーパーカメリアドライイースト)は「乾燥させた酵母」。スーパーで手軽に手に入り、予備発酵が不要で、長期間保存でき、扱いも簡単だ。とにかく量さえ守れば失敗が少ない。よく食品添加物と勘違いして「体に悪い」と思う方もいるようだが、自然界にも存在するれっきとした酵母。栄養源の糖を分解する過程でアルコールと炭酸ガスを生成し、それが小麦粉のグルテン内で気泡となってパンを膨らませるのだ。
一方で「天然酵母」はいわば生もので、水を入れて24時間発酵させてから使用する(生種おこし)。しかも一度生種として発酵させた天然酵母は約1週間以内に使い切らなくてはいけない。あまり放置するとパンが膨らまなくなったり、すっぱいパンができてしまうなどなかなか難しいのだ。生地に混ぜたあとも発酵に時間がかかるため、パンが焼けるまでの所要時間も「ドライイースト」に比べて3時間ほど余分にかかる。その代わり、「天然酵母」で作ったパンは独特のもっちり感と風味が魅力となっている。
「SD-BM102」では発酵力が安定しているとして、小麦粉、米、麹を原料とした「ホシノ天然酵母パン種」の使用を推奨している。30gで約3回、50gで約4~5回分のパンが焼けるとか。注文したところ、届いた元種はパルメザンチーズのような状態で50gずつ小分けにされていた。付属の生種容器に所定の分量の水を入れ、使う分だけ元種を入れてよく混ぜた。
混ぜた生種容器を、羽をはずしたパンケースに入れてふたをし、「天然酵母」の「生種おこし」を選択。「スタート」したら24時間ひたすら待つ。生種おこしに成功すると、独特の酸味のあるアルコール臭がするのだ。甘酒を思い出すかもしれない。できた酵母は必要な分だけスプーンで計量して生地に加え、残りは冷蔵庫で保存する。
これが「ホシノ天然酵母パン種 | 60mlの水に30g分を溶かした | パンケースに入れ本体にセット。羽はつけない |
とにかく使えるようになるまで24時間かかるのと、焼き上がりに7時間を有するので、天然酵母パンを作りたいときは丸1日前から準備が必要という点を覚えておきたい。
【動画】できあがった生種から気泡が抜ける様子 | きっちり24時間かかる。中途半端な時間にはじめると後悔することも…… | できた「天然酵母」。このまますぐパンづくりに利用可能だ |
■予約で「天然酵母食パン」をつくる
生種入りの材料 |
パンケースに直接生種を入れ、その上から材料をいれて、いつものように水を回し入れる。「コース」で「天然酵母」を選び、「メニュー」で「食パン」を選択する。焼き上がり時刻をセットしてスタートだ。
7時間後、見事に膨らんだ「天然酵母食パン」と対面! 一発で成功してしまった。外はパリパリ、中はもっちりは本当だった。香りもいい。気のせいか、ドライイーストのパンより反発力があるような気もした。自家製のプレミアム感がさらに増してうれしい気分になった。
7時間後にこの通り! | 見事な膨らみ方だ | 天然酵母パンの切り口。とてもいい香りがする |
■「天然酵母レーズンパン」を作ろう
「天然酵母」の「レーズン あり」でスタートボタンを押す |
天然酵母パンの香りともっちり感が気に入ってしまったので、定番のレーズンを加えてバージョンアップを計ろうと考えた。なぜいつもレーズンなのかと聞かれたら「レーズンパンが好きだから」としかいいようがないのだが、手に入れやすく、扱いやすいからというのもある。
いつものように材料を用意してパンケースをセットし、レーズンも容器に入れておく。約7時間後、不思議なことに「ソフト食パン」のようにソフトで、皮に弾力のあるパンが完成した。皮の色が薄く、焼き色を「淡」にしたかと疑うような仕上がりだ。皮から柔らかいため、全体の弾力性はすさまじく、その切れ味から愛用し始めたパン切り包丁にさえ、ゴムマリのように反発し、切り口が曲がってしまうほど。
中がしっとりとしてもっちりとした食感なのは言うまでもない。レーズンの風味も活きて、何もつけなくてもおいしい。友人らに振る舞ってみたところ大好評で、「絶対パン屋が開けるよ!」と言われるほどだった。天然酵母のレーズンパン恐るべしである。
できあがった天然酵母レーズンパン | 想像していたより色が淡く、パン全体に弾力があった | 何もつけなくてもおいしい |
■パンだけじゃない! その1:ケーキを焼いてみよう
ケーキの材料 |
ここからはホームベーカリーのパン以外の機能にフォーカスしていこうと思う。まずはケーキだ。ベーキングパウダーを使ったケーキが1時間半で焼けるというのだ。もちろんオーブンやケーキ型は不要だ。
1cm角に切って常温に戻したバター、砂糖、牛乳、溶いた卵の順でパンケースに入れ、その上から薄力粉とベーキングパウダーを合わせてふるったものを入れる。あとはメニューで「ケーキ」を選んでスタート!
指示通りに入れる | スタートすると、12分後に作業があるとのお知らせが | 12分後のケーキ生地 |
12分後に一度ピッピッとアラームがなって呼ばれる。容器の壁面についた粉をゴムべらで落とすのだとか。これを落とさないと表面がキレイにならないというので、必死にこそぎ落とす。上手に落とせたのかどうか分からないが、一通り粉を落としたら再びふたをして「スタート」ボタンを押す。あとは例によってお任せだ。
1時間半後、こんがり焼けたケーキが完成した。きめが細かく、バターの濃厚さを感じる。パウンドケーキのようにスライスして、生クリームやジャムなどをトッピングして食べるとおいしいだろう。今回はたまたまあずきがあったので一緒に食べてみたところ、あまりの濃厚さに2枚でお腹いっぱいになるほどだった。
パンケーキのまわりについた粉を落とす | 開始してから1時間半後、ケーキが完成 | そっと取り出してみるとこんな形 |
スライスしてみた | なにかトッピングしたほうがおいしさが増す | 【動画】生地作りの音 |
取扱説明書ではこのほかにもレモンケーキなども紹介されていた。ナッツなどを加えてアレンジすればさらにバリエーションが広がりそうだ。
■パンだけじゃない! その2:ピザ生地を作ってピザを焼いてみる
「SD-BM102」は、大抵のことがパンケース1つで事足りてしまうのだが、どうしても自分で好きにしたいという方のために生地を作るモードも用意されており、パン生地(ドライイースト、天然酵母)、パスタ生地、うどん生地が作れる。面倒ことは「SD-BM102」がやるので、あとは取り出して丸めるなり伸ばすなり好きにしてね! というわけ。
そこで、これまで散々パンを作ってきたので、ピザ生地を作ってみることにした。というのも、以前某社のオーブンのレビューをさせていただいた際、ピザ生地作りに失敗しているからだ。ボウルにお湯を入れて温めたが、イーストが上手く発酵せず全然膨らまなかったのだ。その経験から「下手なんだからホームベーカリーにやってもらえばいいじゃん?」と思うのは当然の流れである。
材料を入れて「SD-BM102」にピザ生地作りをお願いしてみた。メニューで「ピザ生地」を選んでスタートすると、なんと45分で生地完成! 発酵も完了している。取り出してみると全体がふんわりと柔らかい。この感触、前はなかった(苦笑)
パンづくりで培った要領のよさを発揮する | ピザ生地モードでスタート | 45分後のピザ生地 |
「SD-BM102」のおかげで生地づくりは成功を収めた! |
スケッパーで2等分し、まるめてふきんをかけ10~20分そのまま休ませた。あとは直径25cm程度に伸ばし、フォークで穴を開けたらお好みの具をトッピングしてオーブンで焼くのだ。
できあがったピザは少々不格好だが、生地ももっちりと膨らみ、食べ応えがあって大満足。もっと薄く、クリスピーな感じがよければ、生地を3等分するなどして量を減らせばよい。
そんなわけで「SD-BM102」のおかげでピザ生地作りの問題は解消した。あとはどうやって生地を上手にピザストーンに移すかだ。毎回形がぐちゃぐちゃになってしまうのよね……
スケッパーで2等分し、休ませる | 伸ばして具をのせてオーブンで焼く | こんがり焼けたピザ。やっぱり焼きすぎ? |
■パンだけじゃない! その3:パスタ生地に挑戦
基本的に生地を外に出してあれこれするというのは苦手なのだが、もしホームベーカリーでパスタ生地が作れるならば、おうちで生パスタなんて贅沢なことができるのかと思い、果敢に挑戦してみることにした。うどん生地ではなくパスタ生地を選んだ理由だが、「ピザも焼けたし、これでパスタも作れたら、パン、ピザ、パスタと来て、おもてなしとしては最強ではないか!?」と考えたから。
パスタの材料を用意する |
これまでは強力粉主体だったが、パスタ生地だけはデュラムセモリナ粉を調達。レシピどおりに材料をパンケースに入れてスタートしてみた。もちろん羽根は「めん・もち羽根」を使用する。すると15分後には生地が完成。とはいえこれで終わりではなく、取り出したら丸めてラップでくるみ、冷蔵庫で約1時間寝かせるという作業が必要なのだ。
1時間後、冷蔵庫から取り出した生地をスケッパーで4等分し、約1mmの厚さになるまでめん棒で延ばしていった。グルテンの弾力に驚きながら根気よくぐいぐいと円形に伸ばす。伸ばせたら打ち粉(強力粉)をふんだんにまぶしながらクルクルと丸め、数mm幅にカット。3分ほど茹でたら手打ち(?)生パスタの完成だ。
厚さ1mmのつもりだったが、実際は2mm程度はあったようだ(苦笑) 茹でるとさらに膨らむため、ゆであがったパスタはかなり食べごたえのある厚みだったが、プリプリしていてなかなかのできだ。用意していたカルボナーラソースと絡めていただいた。
パンケースに「めん・もち羽根」をつけて、材料を入れる | 「うどん・パスタ」コースを選択。所要時間はわずか15分 | ミキシングが終わったパスタ生地 |
ラップにくるんで1時間冷蔵庫で寝かせたあと、スケッパーで4等分する | グルテンの弾力と戦いながら、生地を伸ばしていく | 丸めて包丁でカットする。レシピでは5mm程度とあるが、お好みで |
2食分をカットしてみた(おかわり用含む) | ゆでたての手作りパスタ! なんだかウキウキしてくる |
カルボナーラソースにからめる | 【動画】思い切って途中の様子をのぞき見してみた |
これならパスタマシンがなくても気軽に生パスタが楽しめる。カットする段階で隣の麺とくっついたり、全体が固まったりしがちなときは、先手先手で打ち粉を遠慮なく使うと失敗しにくい。3等分すると1人前としては満足のいく量になるようだ。
なお、残りの生地は、ラップに来るんで冷蔵庫で2~3日、麺の太さにカットすれば、冷凍庫で約1ヶ月は保存できるという。今後は粉の配分を調整しながら好みの歯ごたえを追求してみたい。その前にいかに薄くのばせるかが課題だが。
■パンだけじゃない! その4:お餅を作ってみる
ホームベーカリー「SD-BM102」の機能に迫る旅も、いよいよ終わりに近づいてきた。最後はお餅である。このマシンで唯一小麦粉を使わないメニューだ。
2合のもち米を用意し、洗って水切りすること30分。パンケースに180ccの水とともに移し変え、「もち」コースにセットした。50分後に一度ピッピッというアラームで呼ばれる。ここでふたを開けてくれというのだ。30分以内にふたを開けてすぐスタートボタンを押すと、10分で完成する。その間、目の前で餅がくるくると回転しながらこねられている様子が確認できる。
再びピッピッというアラームが鳴ったらすぐ餅を取り出し、好きな大きさにちぎって丸める。あとは自由なスタイルで食べればいいのだ。あんことともに食べて見るとおいしい! しっかりお餅である。所要時間はほぼ1時間。蒸し器も使わず、餅つき器も使わずに餅ができてしまった。パンケースのサイズを考えれば大量生産は無理だが、家族でつきたて餅を食べたいときに非常に便利だ。
もち米2合を洗って30分乾かす | パンケースに「めん・もち羽根」をつける | 水ともち米を入れる |
「もち」コースでスタート | 50分後の様子 | 60分後の様子 |
パンケースから取り出したできたて餅 | よーく見ても普通の餅だ | 適当な大きさに丸める |
羽根についた餅。パンケースには全然つかない | あんことともに食べてみた。食べながら「これってそばとご飯が作れないだけなんじゃないの?」と思った | 【動画】餅を作っている様子 |
これでホームベーカリー「SD-BM102」の主な機能による実践レポートはおしまい。最終回である次回は、総集編として「ホームベーカリーでパン作った」というと必ずと言っていいほど聞かれる点を中心に、これまでの使用感などをQ&A形式でまとめてお伝えしてみようと思う。
2009年4月21日 00:00