長期レビュー

パナソニック「モビエイト BE-ENHE78」 その2

~街乗りで分かった電動アシスト自転車の作法
by 滝田 勝紀

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



パナソニックサイクルテック「モビエイト BE-ENHE78」

 パナソニックサイクルテックの電動アシスト自転車「モビエイト BE-ENHE78」の長期レビューをお伝えしている。通勤仕様のギミックがあちこちにちりばめられたこのモデル。第1回目では、いきなり約12kmの距離を“通勤”してみた。

 2回目となる今回は、約1カ月間乗り続けることで分かったモビエイトの乗り方をずばりレクチャーしよう。いわゆる一般的なママチャリやスポーツバイクと、電動アシスト自転車の乗り方では大きな違いがある。アシスト機能が搭載されていることで、こんなところが便利、逆にこんなところには気をつけろなど、いわゆる“作法”的なことが、実はいっぱいある。

1回目は→コチラから


メーカーパナソニックサイクルテック
製品名モビエイトBE-ENHE78
希望小売価格145,000円

 

速く走るものではなく楽に走るもの

 まず電動アシスト自転車という乗り物の特性について知っておこう。電動アシスト自転車のアシスト機能はあくまで人力をサポートするものであるが、これは自転車を軽く走らせるものであり、速く走らせるものではない。自転車の速度が24km/h以上になってしまうと、たとえ、それが上り坂であっても、アシスト力はゼロとなってしまう。つまり、最高速を出すためのものではなく、あくまでも初速などをサポートするためのものなのだ。

スポーツバイクではあるが、普段着で気軽に乗れるのもモビエイトの良さだもちろんペダルも一般的な靴で漕げる。シューズとペダルを固定できるビンディングペダルも必要ない泥よけもついているので、水たまりや濡れている路面を走っても背中にはねない
サドルは長時間座ってもお尻がいたくならないスタンドも装備されているので街乗りに向いている

あらかじめスイッチを入れて、しっかり漕ぎ出す

 漕ぎ始める時に気をつけなければいけないのが、あらかじめスイッチを入れることと、漕ぎ出しの体勢だ。

 電動アシスト自転車の場合、普通の自転車と違って電源スイッチを入れる必要がある。スイッチは、止まった状態でないとONできない。ペダルをこいでいる状態でスイッチを入れようとしてもエラー表示になってしまう。

 また、漕ぎ始める時の体勢にも注意したい。よく街中で見かける片方のペダルに足を掛けて、もう片方の足で“けんけん”しながら漕ぎ出すいわゆる“けんけん乗り”などは危険だ。なぜなら、電動アシスト自転車の場合、ペダルに力が伝わり始めると同時に、モーターが駆動して、自転車が自分が予想するよりも速く動き出してしまうからだ。転倒などに繋がりかねないので、しっかりとサドルに座った状態で、片足を載せて、ゆっくりと漕ぎ出そう。

左上の黄色い電源ボタンを押す。アシストモードは▲の印で切り替えるモーターはフレームの下、ペダルの中心に存在。IPMブラシレスモーター搭載で定格出力はハイパワー250W。力強いアシストで坂道が快適に走行

アシストモードはシチュエーションによって使い分け

 次に紹介したいのは、ライド中のギアやモード変換についてだ。

 モビエイトでのギアは全部で8速。一般的に軽いギアから徐々に上げていくことが、余計なバッテリーの消耗も減らし、正しいとされている。が、モビエイトの場合、スタートの際、一番軽いギアである1速にしておく必要性はない。平地でスタートすると軽すぎるので、そのぶんひと漕ぎで進む距離が少なくなってしまうのだ。スタート時は、標準で5速、男性だったら6速でも十分だろう。

ギアは右に。電動アシストスイッチは右に。ハンドルはクロスバイクのフラットバーギアは全部で8速。手前にひねれば重くなり、逆に前方にひねれば軽くなる

 アシストモードは、「ロングモード」「オートマチックモード」「パワーモード」の3種類が用意されている。ロングモードはバッテリー消耗が少なく、最長約54km走れる分、スタート時、平地、上り坂、急な上り坂でのアシスト力は小さい。一方、パワーモードは最大でも40kmしか走れないものの、スタート時、平地、上り坂、急な上り坂のアシスト力は常にマックスだ。ちなみに一番アシストバランスがいいのは、スタート時、上り坂、急な上り坂のアシスト力が強く、平地はアシスト力が小さいオートマチックモードだ。

モビエイトには3種類のアシストモードが用意されている
グリーンのランプが点灯している時はエコナビがONになっている印。バッテリーのムダな消耗を防いでくれる

 モードは、走行中でも変更することができる。たとえば、通勤時、元気な朝はロングモードで、逆に仕事が終わった帰宅時は、疲れているのでパワーモードなど、アシストモードはシチュエーションや身体の状況によって使い分けたい。

 もう1つ、パナソニックならではの機能が自動で省エネしてくれる「エコナビ」機能だ。たとえば、ロングモードやオートマチックモードで走っている際に、下り坂などで、エコナビ機能が働き出す。エコナビ機能がONになることで、アシスト力が自動でOFFになり、バッテリーの無駄な消費を抑え、長距離走行をサポートしてくれる。

長く緩やか上り坂はほとんど平地と変わらない

 東京都内はアップダウンが多く、上り坂も多い。車で走っていると分からないが、国道などで長く緩やかな上り坂が続くような箇所も数多く見られる。一般的な自転車だと、たとえギアを少し軽くしたとしても、なんとなくペダルが重くなるのが分かるが、電動アシスト自転車の場合、モーターが自動でアシストしてくれるので、こういった上り坂はほとんど平地と変わらない感覚で漕ぎ続けることができ、疲労の蓄積もかなり軽減される。

一般の自転車では途中から立ち漕ぎしたくなるような、緩やかで長い上り坂は、ロングモードでも座ったまま十分上れてしまう
こんなに急な坂道でも、パワーモードなら全力でアシストしてくれる

 ただ、上り坂ももちろん存在する。そういった場所では、迷わずアシストモードをパワーモードにすることをオススメする。電動アシスト自転車は普通の自転車より車重が重い分、上り坂でのスピードロスが大きいからだ。

 モビエイトの場合、スポーツバイクとしての性能も高いので、平地であれば、たとえバッテリーが切れた状態であっても一般の自転車、もしくはそれ以上に軽快に走れる。ただ、上り坂になるとペダルに重みが一気に伝わってくる。

10km30分ぐらいで走るのがちょうどいい

電動アシスト自転車はエコにもなる。たとえば100km走行した際のCO2排出量は乗用車の約1/34

 電動アシスト自転車の利点というのは、短い距離を走るよりも、やはり長距離の方が感じられる。だからといって、いきなり長距離ライドに挑戦するのはおすすめできない。ふだん自転車に乗り馴れていない人が、急に長い距離を走り過ぎると、疲労も大きく、その後の仕事などに支障が出かねない。

 また、時速24km/h以上の高速で走ると、自転車がアシストしてくれなくなるので、それ以下で走ることがオススメだ。通勤に使うなら時速20km/hぐらいがちょうどいいだろう。少し汗ばむぐらいで、大きな疲労感もなく、ちょうどいいペースだ。なお、モビエイトの最長距離は約54kmだが、それはアシスト力が弱めのロングモードであることもお忘れなく。

 通勤仕様で使うとしても、遠くの会社まで直接行くのではなく、最寄りの駅の駐輪場まで自宅と往復しかしないという人も多いはず。往復で2~3km距離を繰り返し走る場合、バッテリーはなかなか減らない。多少の自然放電もあるので、1カ月丸々バッテリーが持つということはないが、2km程度のチョイ乗りなら充電は半月に1回程度でも大丈夫だろう。

バッテリーは走っている時はロックされている。キーを回すと簡単に外せる充電も専用充電台に載せるだけ。ボタンを押せばバッテリー残量も表示される

自動ONのライトや大きめのカゴが便利

 乗っていて便利さを実感したのが、センサー感知で自動ONするフロントライト。たとえば昼間などに暗いトンネルを通る際にも自動でONになる。もちろん、手動でON/OFFを切り替えることも可能だ。一方、後方のライトは赤く点滅。後方から来る車などからも見やすく、太陽光で自動的に充電されるのも嬉しい。

前方のフロントLEDは全部で6連夜の道路を眩しほどに照らすほか、遠くからでも自転車の存在を確認しやすい後方のソーラーオートテールも自動点滅。太陽光で充電するから省エネ。暗くなると自動点滅を開始

 また、一般的なカゴよりもワイドなカゴも良い。ビジネスバックがスッポリと横に入り、専用のベルトで留められるので、安心だ。仮に多少重いバッグを入れても、ハンドルのグリップが太く、しっかりと握れるので、ふらつきも少ない。もちろん、通勤用のバッグだけでなく、スーパーなどの買い物袋も入れられる。ただし、幅が広い分、奥行きは狭いので、ママチャリタイプのカゴに比べると、収納量は劣る。気になる人は一度実際の製品をチェックした方が良いだろう。

奥行きが狭く、幅が広い仕様のカゴ。これは通勤時にビジネスバッグを入れることを想定したもので、モビエイトならではの仕様だバックをしっかりとホールドするベルトもついているので、急な段差などでもバックが跳ねてカゴから落ちるなんてことはない

車重は重くサイズも大きめなので持ち運びは注意

 せっかく購入した電動アシスト自転車。普通の自転車に比べてかなり高額なので、外の自転車置き場に止めずに、部屋に持ち込んだり、マンションの共用廊下などに止めておきたいという人も多いはず。モビエイトの場合、まず注意したいのが、マンションなどの場合、エレベーターに入るかどうか。モビエイトは巡航速度をキープするため700×32Cの大きめのタイヤを履いている関係もあり、ややサイズが大きい。さらに重量も23.5kgと一般的な自転車よりも重いので、持ち運ぶ場合には注意が必要だ。

 都内では自転車の盗難も多いため、多少無理をしても部屋に運びたいという気持ちもわかるが、パナソニックサイクルテックの担当者によると、電動アシスト自転車は本体重量が重いことや、充電の必要性があることなどから普通の自転車に比べて盗難が少ないという。さらに、パナソニックサイクルテックでは、万が一の盗難被害に備え、全ての車両を対象に3年間の盗難補償優遇制度を用意する。盗難された際、充電器を除いた本体希望小売価格の3割の価格で同一車両または、同等の車種が購入できるというものだ。

車重は23.5kgとさすがに男性でも運ぶには重い。軽くて、サビに強く、高強度と高耐食性を兼ね備えたフレームを採用不正解除され難い両面ディンプルキーを採用。差し込む向きも気にせず解錠できる(キー3個付)。後輪サークル錠とバッテリーロックのキーが共通に

 もちろん、これだけで不安が解消されるというわけではないが、無理をして室内の機器を壊してしまったり、身体を痛めてしまっては元も子もない。購入の際には普段どこに置いて置くかというのもあらかじめ決めておいた方がいいだろう。その際はエレベーターなど搬入経路の確認も忘れずに!

 今回は、電動アシスト自転車の乗り方について細かいことをいろいろと紹介してきたが、最終回の次回は、筆者が長年辛酸をなめ続けていた因縁の坂「ランド坂」を克服するまでの記録をお届けしよう。



その1 /  その2  / その3




2012年5月21日 00:00