長期レビュー
日立「焼き蒸し調理 ヘルシーシェフ MRO-JV300」 その1
日立の過熱水蒸気オーブンレンジ「ヘルシーシェフ」(MRO-JV300)パールレッド |
我が家の電子レンジがついに壊れた。数ヶ月前から当初はスイッチがきかない、ターンテーブルが回らないといった状態だったが、ついに先日料理とは違う焦げ臭ささを感じで、こりゃマジでヤバイ! と慌てて買い替えた。
詳しくは後述するが、さまざまな条件をクリアし藤山家のレンジとしてふさわしい!と購入したのは、日立の過熱水蒸気オーブンレンジ「ヘルシーシェフ MRO-JV300」だ。
メーカー | 日立アプライアンス |
製品名 | 焼き蒸し調理 ヘルシーシェフ MRO-JV300 |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | ビックカメラ.com |
購入価格 | 57,400円 |
話題の過熱水蒸気機能(「現代家電の基礎用語 水で食品が焼ける“過熱水蒸気”とは」を参照)を搭載しており、近頃トンカツやステーキの脂を食べるのがきつくなってきた夫婦にピッタリ。しかも食べ盛りの高校生と中学生を抱えるウチでは、毎日子どもに持たせるお弁当作りにも使う必要もあり、庫内の広さは必須。また、小学5年生の娘はパンやクッキー作りが趣味なので、オーブン機能も重視――レンジに求められる性能はかなりハードルが高かったが、それをすべてクリアしたのが日立アプライアンスの「焼き蒸し調理 ヘルシーシェフ MRO-JV300」だ。
これから連載4回に渡って、機能や使い心地、便利機能やクセなどを紹介しつつ、色々な料理を作ってオーブンレンジで作ったほうがいいのか? それとも油でフライしたり、蒸し器で作ったほうがいいのか? そもそもどっちで作ったほうがおいしいのか? なども合わせてレビューしていこう。
■候補に残ったのは日立と東芝、頑丈さとメニュー数で日立に!
製品の詳細を説明する前に、まず我が家がなぜ焼き蒸し調理 ヘルシーシェフ MRO-JV300を選んだのかを説明しよう。我が家は、夫婦2人に三姉妹、そしておばあちゃんも同居する6人家族だ。
朝ごはんやお弁当作りは毎日奥さんが担当しているが、夕食は週3~4回は筆者が作る。また小中学生の娘たちは、学校から帰るとおやつを自分たちで作ったり、土日は昼ごはんも作ったりするので、家族全員が便利に使えるオーブンレンジが必要だ。そこで家族会議を行なって藤山家に求められる機能をリストアップしたところ、次のような条件となった。
・庫内の広さは今まで使っていた24L以上
・2段オーブンが必須
・今使っている棚(幅60cm、高さ40cm、奥行き50cm)の中に納まること
・小学生の子どもが使える(操作パネルが下部にある)
・過熱水蒸気機能を搭載
・色が可愛い
・予算は実売で7万円以下
これでかなり機種を絞り込めるハズ! と、Webサイトで検索してみたところ、シャープやパナソニック、日立に東芝と全メーカーにヒット! しかも各社に該当するモデルが数種類あり、リストは全部で15機種にもなった。レンジってそんなに種類あんのかよ! かくなる上は、土日に家電量販店めぐりをしてローラー作戦を決行だ。
パナソニックの「3つ星 ビストロ」(NE-R304)。女性陣からは、白と黒しかないからダメ! と。おいおい! そこかよ! って突っ込みたくなるが、言葉を呑む | シャープの「ヘルシオ」(AX-PX2)。設置スペースの横幅が足りない点に加え、タッチパネルが上部にあるので小学生の娘が使えないという理由で候補から脱落。筆者的には最有力候補だったが…… |
量販店でのチェックは、主に操作性と頑丈さ、そして設置サイズだ。その結果、すべてにおいて平均点的なパナソニックが、色が黒と白しかないという理由からまず脱落(笑)、続けてシャープが今使っている棚にまったく収まらないということで脱落した。
候補として残ったのは東芝の石釜ドームと日立のヘルシーシェフとなり、決着は操作性と頑丈さ対決となる。日立はスマートフォンと同じタッチパネル方式+メカニカルスイッチとなっており、メニューもタッチパネルで選べる点が気に入った。
東芝の「石窯ドーム」(ER-JD410)。奥さんの最有力候補だったが、タッチパネルがなかったため、最終候補から落ちる | 日立の「ヘルシーシェフ」(MRO-JV300)。容量33Lとかなり大きい割りにコンパクト。設置スペースも極小の上にタッチパネル式の操作性と頑丈さで最終決定。子どもたちは、東芝に比べてメニューの多さが気に入ったようだ。筆者には、日立だけの重量センサーという点がビビッ!とキタ |
家族会議で出た条件をすべて満たし、操作性や頑丈さも総合的に判断したところ、日立の過熱水蒸気オーブンレンジ「ヘルシーシェフ」(MRO-JV300)の赤いヤツ(パールレッド)となった。
■設置は背面・左右の隙間なしでOK!狭いキッチンには頼もしい!
左右と背面の隙間は問題なし。棚板を1段上げるだけで24Lのレンジが33Lに変わっちゃうってのが驚きだ |
ネットで品物を注文したところで、うやむやにされていた条件が1つある。それは従来の棚高さが10cm足りないってこと。今まで24Lのオーブンレンジを使っていて、いきなり10L近く容量増の上、機能が豊富になって、それまでのスペースに収めるってのはちょっとムリがあったみたいだ。
でも日立のヘルシーシェフは「左右と背面を壁にピッタリつけても設置OK」というほかに類を見ないコンパクト設置設計。要は電子レンジの上に10cmの隙間さえあれば、左右も背面も壁や家具と密着させても設置できちゃうというのだ。結果、棚板を1段上げるだけというカンタンな工事ですんだ。他社製の同容量の製品だと、棚から作り直さなければならないところだったが、日立には感謝だ。
後日届いた製品がこちら。
白いセラミックトレイに、ホーロー製のオーブン用トレイ、右側が蒸し焼き料理用のトレイ、そして本体 |
白いものは電子レンジなどで使うトレイで、黒がオーブン用のトレイ。他の電子レンジで見かけないのは右側にある足の付いたトレイとフタだろう。コイツは、日立だけのスゴイ機能なので、詳細は後述しよう。
本体の上に乗っているのは、マニュアル+レシピブックと、カンタンな使い方マニュアル、そしてDVDだ。レシピを抜いた本体の説明だけでも90ページ近くあるので、マニュアルが苦手な人はDVDをサクッと見れば30分程度で概要が分かるようになっている。「DVD見てる時間もネーヨ!」という場合は、ペラペラの簡単な使い方マニュアルだけに目を通せばいい。
日立に限った話ではないが、レンジの多機能化が進み操作マニュアルは、どのメーカーも分厚くなっている。厚みは1cmほどで90ページ近くが本体の説明 | 設置方法から加熱のしくみ、簡単な使い方にお手入れ方法などが収録されたDVD。また30レシピの作り方や操作手順などが説明されているので、最初はこのDVDを見ながら見よう見まねで使ってみるといい | 基本的な操作方法がまとめられた6ページの簡易マニュアル |
タッチパネルは、メニューを選ぶボタンとしての機能だけではなく、さまざまなアドバイスをする情報表示パネルとしても機能する |
なにより本体の液晶タッチパネルには、レシピブックに掲載されているすぺてのメニューが登録されていて、たくさんあるどのトレイをドコにセットするかなど表示するほか、材料なども表示してくれる。さらに音声ガイドもあるので、ペラペラのマニュアルを読んだだけでも十分使えるのだ。
■レンジで生餃子も焼ける!レシピの数は怒涛の478!
過熱水蒸気オーブンレンジの登場以来、調理できる料理が増え機能も複雑化したので、時間や温度を指定する手動メニューに加え、あらかじめ本体に登録されているレシピを選ぶ自動メニューの充実化も進んでいる。
ユーザーにとっては、メニューを選びスタートボタンを押せば、あとはレンジ任せで待っているだけでいいので、非常に重宝する機能だ。しかもそのレンジの機能を最大限まで引き出せるよう、各社工夫がこらされている。
日立のヘルシーシェフも手動モード以外に数多くのレシピメニューボタンを備えているが、その数は「そんなにレシピがあるの!」と驚かされたシャープのヘルシオ最上位機種の351個を越え478個もある。ただこれはマニュアルに掲載されているレシピ数なのでバリエーションがあり、本体機能としてのメニューはシャープが299個、日立が371個となっている。
また、その中にはご飯の温めや下ごしらえといったものもあるので「メニュー数=できる料理の数」ではない。しかし毎日の夕食を電子レンジのメニューで片っ端から使っても、およそ1年ぶんあるのには驚かされる。
マニュアルに掲載されているレシピの一部。焼き物から焼き蒸し料理、蒸し物にフライ、スイーツまで。料理好きな人は、マニュアルのレシピを見ているだけでも楽しめる |
そんな数多いメニューの中でも、日立にしかできない、もしくは日立にアドバンテージがあるのは「焼き蒸し料理」だ。その代表各が生餃子の焼き蒸しや点心類の中華料理、塩釜焼きや北海道で有名な「さけのちゃんちゃん焼き」など。他社製レンジは、蒸し料理はできるものの「焼き」までできるレシピは少ないので、これらがメニュー数を大きく伸ばしているのだ。
焼き蒸し料理が多い中華料理が大好きな家庭では、日立のヘルシーシェフが大活躍することだろう。
■日立だけのスゴイとこ!それが「はかって両面グリル皿」と「焼き蒸しふた」
日立のオーブンレンジのすばらしさは、やっぱり「はかって両面グリル」と「焼き蒸しふた」にある。使い始めの頃は、その便利さや素晴らしさがあまり伝わってこなかったが、これこそ怒涛の478レシピという数をたたき出す秘密兵器だったのだ。
両面グリル皿こそ、ヘルシーシェフで餃子が焼ける理由で、調理の幅を広げる新兵器なのだ | グリル皿の裏側にはゴムのようなシートが貼ってあり、電子レンジのマイクロウェーブに反応して熱を持つ。そのため普通のオーブンレンジでは不可能だった、上と下からの両面グリル機能を実現した |
足の付いた小さなトレイは、本体の電子レンジを機能させるとトレイの下が(マイクロウェーブ)で加熱するというものなのだ。つまり電子レンジで焼き料理ができちゃうトレイということ。最近テレビ通販などで、電子レンジで焼き魚ができる調理器具を1万円ぐらいで売っているが、それが付いてくるというワケ。
しかもこのトレイは足を伸ばすと、庫内の天井部分に近くでき、本体上部にはグリルヒーターが設置されているので、両面焼きができる。上からグリルヒーターで加熱、下から電子レンジでトレイの底を加熱するので、両面魚焼きグリルと同じだけ便利ってこと。
足伸ばして高くすると、両面グリルとなり上下から焼き料理ができる | 足を折って低くすると、スチームをトレイ内に取り込み蒸し焼き料理ができる。トレイは下から電子レンジで発熱させている | 蒸しふたをすると、蒸し料理や焼き蒸し料理ができる |
さらに焼き蒸しふたをすると蒸し料理もできる。ヘルシーシェフのテレビCMでは「生餃子が作れる電子レンジ」と訴えているが、これは他社製レンジでは、蒸しながら餃子の下の部分を焼くことができない(焼き蒸しできない)ためだ。つまり電子レンジで発熱するグリル皿がついている日立のヘルシーシェフだけが生餃子を調理できるってことに他ならない。
■今日は焼き餃子に決定!皮はパリもち、中はジューシー!
さて連載第1回目のレシピ紹介は、テレビCMで自慢している餃子を作ってみた。でもただ作っただけじゃ面白くない! だってそこには大きな疑問がある!「餃子をわざわざレンジで作る必然性があるのか!?」ってことだ。
ここではフライパンで作ったときの時間の違いや味、レンジで作る必然性を調べてみよう。
【オーブンレンジで餃子調理】21個22分
【フライパンで餃子調理】21個11分
フライパン(直径30cm)だと、レンジと同じ21個が同時に焼ける | 水を入れてまず蒸し工程。このあとフタをしている | 水分が飛んだら油をたらして焼き工程に入る |
【完成品試食対決!】
餃子の底が均一にキツネ色になっている左側のものがフライパンで焼いたもの。焼き目に縞模様ができている右側は、レンジで焼いたもの |
見た目においしそうなのは、フライパンの餃子(写真左側)だ。調理時間も11分とレンジの半分の時間で済んだ。
試食対決の結果は「油を使っていないレンジ製があっさりとしていておいしい」が2票、「ごま油が効いていておいしいとフライパン製」が3票となった。大きく異なるのは食感で、まとめると次のようになる。
調理器具 | 食感の違い |
レンジ | 皮の焼き面がフライパンに比べ硬め、蒸した面は逆に柔らかめに仕上がる。これも好みで票は分かれた。後日皮の薄い餃子で試してみたところ、フライパン同様の仕上がりになった。厚い皮は硬くなる傾向にあるので薄めの皮がオススメだ |
フライパン | 焼き面はパリパリ、蒸し面はモチモチの中華料理屋と同じ仕上がり |
味や食感については、レンジ・フライパンともに甲乙つけがたいといった感じで、レンジで作っても十分合格点と言えるだろう。
問題は、フライパンの倍の20分もかけてレンジで餃子を作る必然性だが、これは「レンジで料理するとスタートボタンを押すだけで、あとはレンジ任せにできるので、作業効率が格段にいい」という点が優れている。
2人暮らしであれば、餃子はレンジに任せて、その間に汁物やサラダなどを作る余裕が生まれる。なにせフライパンで作ると、蒸し工程で水分が飛んだかを目や耳で確かめ、その後油をたらして焼きに入らないといけないため、時間は11分と短いが、ガスレンジの前から離れられずに、結構あわただしい。
4~5人といったファミリーであれば、レンジで作れる20個の餃子だけでは足りないので、フライパンのアシストとしてレンジで餃子焼けるのは助かる。また上手くタイミングを合わせれば、家族全員が揃ってアツアツの餃子を楽しめるだろう。なにせフライパンだけでアツアツ餃子を食べようと思うと、誰か1人はキッチンに貼り付けて焼くヒトとなってしまうからだ。
【ショウロンポウは皮が溶けない】
今回は、もう1つヘルシーシェフ自慢の中華メニュー「小籠包」を作ってみた。電子レンジで作るとお皿に触れている底の皮が溶けて、肉汁が全部流れ出しちゃうこともあるが、ヘルシーシェフでは、過熱水蒸気オーブンで加熱するので、底の皮が破けずジューシーに仕上がる。
焼き蒸し料理メニューから小籠包を選ぶと、予熱ありの過熱水蒸気オーブンで調理する | 予熱が従来のレンジに比べて約半分の時間(この場合は5分)で終わってしまうのも特徴だが、詳細は後日。左上の緑のランプ「ECOシャッター」がその決め手だ | できあがりはご覧のとおり。底の皮が解けず、肉汁が詰まったままの状態のショウロンポウのできあがり! |
■いまどきのオーブンレンジ選びの購入ポイント
第1回のまとめは、これからオーブンレンジを買い換えようという人にアドバイスして締めることにしよう。
・スペック表での優劣はつけにくい
とくに男性読者の場合は、最高温度やワット数などのスペックで比較をする方も多いが、一概には比較できない。筆者も最初はカタログやWebを見比べてスペック一覧を作ろうとしたのだが、「最高温度は、運転開始から×分間」などという注意書きが多く、どれが一番なのかを判断するのは難しかった。ここは割り切って、同じ価格帯であればヒーターなどのスペックは同等として機種選びをすることをオススメする。
・食品の塩分や油分が気になる人、あっさりしたものが好きな人は過熱水蒸気機能付きがオススメ
詳細は連載で明らかにしていくが、ムリに過熱水蒸気機能付きの機種を選ぶ必要はない。ただし医者から塩分や油分を控えるように言われている人や、あっさりしたものが好きな人は、過熱水蒸気機能付きの機種を選ぶといい。
過熱水蒸気オーブンを使うと、油を使わないフライもできる。 |
・10年前の機種に比べると使いこなしは「手動で加熱温度や時間を決める」かではなく「適切なメニューを選べるか?」になっている
筆者宅のレンジのように10年前のものを使っている場合は、それまでの経験から手動で加熱温度と時間を調節していた人が多いことだろう。オートを使うとすれば、食品の温め程度だ。しかし過熱水蒸気付きレンジの登場以来、そのレンジを上手く使いこなせるかは、加熱温度や時間の設定ではなく、調理する料理にあったオートメニューを選ぶように切り替わっているようだ。
昔は手動運転の方が利用頻度が高かった | 高機能レンジでは、レシピから選ぶオートメニューの方が利用頻度が高い |
料理が趣味という人や、料理が苦手なのでレシピ通りに作りたいという人であれば、レシピ数やオートメニューの数の多さで製品選びをするといい。レンジは食品の温めと、オーブン、グリルで使うという場合は、レシピ数やオートメニュー数の多さにこだわる必要はないだろう。
・レンジの大きさに合わせて、前後左右に確保するスペースに注意
メーカーやモデルによって、確保するスペースがマチマチなので、必ずカタログなどで設置スペースのサイズを確認すること。
・多機能化によってマニュアルや操作が複雑化しているので、本体の操作ガイドやマニュアルの見易さなども使い勝手を左右する
とくに過熱水蒸気機能付きの機種は、給水の有無や使うトレイの種類やセットする段などの注意事項が多い。そのためこれらの指示を本体でガイドしてくれたり、マニュアルでひと目で分かるように工夫されている機種を選ぶといい。また日立のように簡単な使い方をDVDで教えてくれる機種も非常に助かる。
まったくマニュアルを読まずに使うと、レンジの機能の大半を使わずに終わることになるだろう。
さて第2回は、日立独自の重量センサーの良し悪しと、一番頻繁に使う電子レンジ機能を紹介していこう。
2012年4月18日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)