家電Watch logo
記事検索
バックナンバー
【 2009/03/27 】
第40回:電動歯ブラシとは
[00:03]
【 2009/03/06 】
第39回:空気清浄機とは
[00:02]
【 2009/02/27 】
第38回:体組成計とは
[00:08]
【 2009/02/20 】
第37回:歩数計とは
[00:02]
【 2009/02/13 】
第36回:運動量を測る「メッツ/エクササイズ」とは
[00:02]
【 2009/02/06 】
第35回:除菌・消臭効果を謳う「イオン機能」とは
[13:23]
【 2009/01/30 】
第34回:省エネ性能カタログとは
[00:02]
【 2009/01/23 】
第33回:電動アシスト自転車とは
[00:02]
【 2009/01/16 】
第32回:温水洗浄便座とは
[00:04]
【 2009/01/09 】
第31回:燃料電池とは
[00:03]
【 2008/12/19 】
第30回:太陽電池とは
[00:06]
【 2008/12/12 】
第29回:充電池とは
[00:03]

第18回:水で食品が焼ける「過熱水蒸気」とは



300℃以上に加熱した水蒸気で調理

300℃以上の温度を出せる過熱水蒸気は、オーブンレンジでの調理に使われる(写真はシャープ「ヘルシオ AX-X1」
 過熱水蒸気とは、100℃以上に加熱した水蒸気のことを指します。家電業界では、この過熱水蒸気で食品を調理する「スチームオーブン」という商品ジャンルがありますが、ヒーターを使って焼く一般的なオーブンよりも、余計な油分・塩分を取り除く、失われがちな栄養素を維持しながら調理できるという利点があります。

 しかし、なぜ水蒸気で食品が焼けるのでしょうか。そのポイントとしてはまず、水蒸気は水とは違って温度が100℃以上になる性質が挙げられます。当たり前ですが、水を沸騰させ100℃になると、水蒸気に変化します。このときの水蒸気は100℃ですが、さらに水蒸気の分子を高速で摩擦することで、水蒸気の温度は100℃を越えます。

 スチームオーブンは、水蒸気のこの特性を活かし、300℃を超える温度の過熱水蒸気を庫内に充満させて、調理を行ないます。食品の温度が低い状態では、水蒸気が食品の表面で結露してしまうこともありますが、すぐに温度が100℃以上になって蒸発するため、食品が水っぽくなる心配はありません。

 また水蒸気は、乾いた空気と比べて大きな熱エネルギーを持っています。例えば、100℃を超える温度のドライサウナに入っても、サウナですからもちろん火傷しません。しかし、沸騰するやかんの口から吹き出す水蒸気に触れれば、火傷してしまいます。

 この強力な熱エネルギーを用いることで、約300℃以上の水蒸気なら、物を焦がしたり燃やすことも可能となります。つまり、水蒸気を使っていても、一般的なオーブンと同じようにオーブン料理ができるというわけです。

 この過熱水蒸気の熱エネルギーをオーブンの調理に利用する、という考え方で生まれたのが、2004年にシャープが発売した「ヘルシオ」です。他社製品でも過熱水蒸気を採用するオーブンはありますが、熱源として過熱水蒸気だけを搭載するのは「ヘルシオ」のみとなっています。そのため、ヘルシオのホームページやパンフレットでは、「スチームオーブン」ではなく「ウォーターオーブン」という名称が使われています。


水蒸気は白い煙のように見えるが、過熱水蒸気は無色透明。動画は水蒸気をさらに温めて、過熱水蒸気を生成しているところ 無色透明ではあるがかなりの高温。動画のように紙を焦がすこともできる

スチームオーブンには、水蒸気を発生するための水タンクが備えられている(写真はナショナル「3つ星ビストロ NE-W300」) 写真は「ヘルシオプロ AX-2000」で調理した「さつまいものチーズ焼き」。こげ目がついている

余分な油や塩を落とし、酸化による栄養の損失も防ぐ

 さて、過熱水蒸気を利用するオーブンの利点は、冒頭で挙げた通り、余分な油分・塩分を取り除き、栄養素を維持するという、健康面でのメリットがあります。

 まず油分ですが、300℃以上の過熱水蒸気が食品内部まで素早く温めることで、食品内部の油分が溶け、食品の外へ流れ出ます。塩分については、先ほど食品表面の温度が低い場合は食品表面で結露が発生すると述べましたが、その結露した水分によって、食品の塩分が溶け出します。水分は蒸発し塩分は結晶として食品表面に残りますが、その後、高温で溶け出した油といっしょにトレーに流れ落ちることになります。

 栄養素の維持については、調理時に庫内の空気や酸素がほぼ完全に庫外へ追い出され、庫内が過熱水蒸気で満たされることによって、調理時に起きやすい“酸化”が大幅に抑えられます。このため、酸化に弱いビタミンCやビタミンEを失うことなく調理できます。

 このように脱油・脱塩効果、酸化抑制効果が実現される、過熱水蒸気を利用するオーブンでは、一般的なオーブンよりもヘルシーに調理できると言われています。

 過熱水蒸気はこのほか、一般的なオーブンと違って、冷めた食材や冷凍食品の温め直しにも利用できます。ただし、過熱水蒸気を利用した温め直しは、電子レンジでの温め直しと違って、かなりの時間がかかってしまいます。そのため、当初は過熱水蒸気を利用した調理方法のみだったヘルシオも、利便性を高めるために、2代目から電子レンジ機能が盛り込まれるようになりました。他社でも、当初から過熱水蒸気のオーブン機能と電子レンジ機能を組み合わせたものがほとんどとなっています。


食品の中心まで熱を素早く伝えることで、余分な脂分が流出する(資料:シャープ) 「ヘルシオプロ AX-1000」で調理した鶏肉。脂分がトレーに落ちているのがわかる

加熱中は庫内にスチームが充満する(写真はシャープ「ヘルシオプロ AX-1000」) 水蒸気が内部に充満することで酸素が減り、酸化による栄養の損失を防ぐことができる(資料:シャープ) 初代ヘルシオでは電子レンジ機能が付いていなかったが、ユーザーからの要望から、第2世代以降はレンジ機能を搭載している



【過熱水蒸気】の、ここだけは押さえたいポイント

・食材の余分な油と塩分を取り除く、栄養価の損失を防ぐなど、健康面でのメリットが大きい
・温め直しもできるが、調理時間を優先するなら電子レンジ機能を使う方が早い

2008年9月18日 初版




URL
  現代家電の基礎用語 バックナンバー
  http://kaden.watch.impress.co.jp/cda/word_backnumber/

関連記事
そこが知りたい家電の新技術
シャープ ウォーターオーブン「ヘルシオPro」(2006/10/04)

家電製品レビュー
ナショナル「3つ星ビストロ NE-W300」(2007/11/30)



2008/09/18 00:00
平澤 寿康
1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。

- ページの先頭へ-

家電Watch ホームページ
Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.