長期レビュー
象印マホービン「パンくらぶ BB-KW10-PH」その1
象印「パンくらぶ BB-KW10-PH」 |
パナソニックのホームベーカリー「SD-BM102」を皮切りに、バゲットが焼けるティファールの「ホーム&バゲット」、炊飯に用いるお米からパンが焼けてしまうホームベーカリー「GOPAN ライスブレッドクッカー SD-RBM1000」と、これまで3台のホームベーカリーを使わせていただいた。
「SD-BM102」にはホームベーカリーで焼くパンのおいしさを教えられ、ホームベーカリーに傾倒するきっかけを作ってもらった。「ホーム&バゲット」では、ホームベーカリーの中でバゲットが焼けるという常識を覆すおもしろさを体験。「GOPAN」では、お米でパンが焼ける衝撃と、その想像を超えたおいしさが経験できた。ホームベーカリーなんてどれも似たり寄ったりでは、と思っていたが、それは大間違いであった。
4台目として出会ったのは、象印の「パンくらぶ BB-KW10-PH」(以下、パンくらぶ)だ。豊富なパンメニューに加えて、日本そばやケーキなど100種類のレシピを搭載したホームベーカリーだ。9月に発売されたばかりの新製品を、今日から3週に渡って紹介する。
メーカー | 象印マホービン |
製品名 | 自動ホームベーカリー パンくらぶ BB-KW10-PH |
希望小売価格 | 39,900円 |
購入店舗 | Yodobashi.com |
購入価格 | 18,600円 |
■パンの変化が見える窓付き。操作はシンプルで使いやすい
パンくらぶの正面 |
「パンくらぶ」は、1斤分の食パンが焼けるホームベーカリー。サイズは225×290×335mm(幅×奥行き×高さ)だが、ボディがパステルピンクのためか、やわらかなフォルムと相まってコンパクトかつかわいい。重さも約6.0kgあるのだが、明るい外観のおかげで重量感はまったく感じられない。
本体のほかに、調理の中心となるパンケースと、コネに欠かせないハネが1つ、レーズンなどを投入するための具入れ容器、計量カップ2個、計量スプーン1本、取扱説明書、おすすめメニューが100種類掲載されたカラーレシピブックが1冊付属する。ハネは1種類のみで、ミトンは付属しないなど、全体の構成も非常にスッキリしている。管理すべきパーツが少なくて済むというのはうれしい。
側面 | 背面。コードリール付きでケーブルもしっかり収納できる | 斜めから見た状態 |
ふたを開けた状態 | パンケースを取り外した状態 | 本体以外パッケージ内容は、パンケース、計量カップ2個、計量スプーン1本、ハネ1つ、具入れ容器。付属品は控えめだ |
「具入れ容器」をつけた状態で上から見た状態。ふたに窓がついているため、調理時の様子がわかる |
ぱっと見て気がつくのは、本体のふたに窓がついているところ。発酵中は曇って一時的に見えなくなるが、コネから焼き上がりまで全工程を目視できるのだ。
個人的に、ホームベーカリーを使い始めた当初、必ずといっていいほどやってしまうのがハネのつけ忘れ。翌朝フタを開けたら……というときは、ショックでどこに怒りをぶつけていいか分からないほど。しかし本製品なら窓がついているので、しっかり回転しているかどうか確認できる。
ふた上部に窓があるためか、液晶パネルや操作キーは本体手前にある。液晶には選択中のメニューとメニュー番号、現在時刻、焼き色、できあがり時刻、調理中の工程を表示する。
操作部。ボタンは大きくはっきりしていて見やすい | 実際の表示例。今どの工程にあるか、液晶画面に表示してくれると同時に、焼き上がり時間や、焼き上がりまでの残り時間も教えてくれる |
ホームベーカリーは、アレンジさえしなければ、材料を入れたら完成するまで放置という使用法が多い。なので、今どの工程か確認する、という機能は一見無駄に思える。しかし、古いドライイースト(または冷蔵保存し忘れ)を使ったら膨らまなかった、なんてことも起こったりするので、問題が起きているなら早期発見がいい。中の様子と現在の工程を確認することで、「よしよし。しっかり発酵しているな」など、滞りなく進行している安心感が得られるというわけだ。
液晶の周りには「とりけし」キー、「メニュー」キー、「焼き色」キー、「ホームメイド」キー、ホームメイドランプ、「スタート」キー、スタートランプ、「時刻合わせ」キー、「予約」キー、予約ランプが配置されている。いずれのボタンも大きく分かりやすいだけでなく、直感的に操作できる。
スタートボタン押下時には「おおスザンナ」、できあがり時「アビニョンの橋で」が鳴り、具入れ時はブザーで通知する。また、調理途中にふたをあけると、ハネが自動的に停止する。
具入れ容器 | 具入れ容器は簡単に取り外せる | 具入れ容器のふたを開けた状態。この中にレーズンなどを入れておく |
パンケースとハネ。この2つですべての作業をまかなう | メモリが10ml単位の計量カップと、専用の計量スプーン。計量カップは天然酵母の発酵にも用いる | 計量スプーンの大すりきり1杯が約14ml、小すりきり1杯は約4.5ml。市販の計量スプーンとは異なる。水、小麦粉、バター以外はこのスプーンがあれば計量できる |
レシピブックと取扱説明書 | フルカラーのレシピブックには、おいしそうな写真が豊富に掲載されている |
ボタン操作のようす(約1分半) |
■豊富な食パンメニューと、調理時間を自由に調節できる“マニュアルモード”を搭載
本体にメニュー番号が表示されているのでわかりやすい |
デザイン面ではライトな雰囲気を醸しつつも、調理モードはかなり充実している。食パンメニュー9種類、パン生地メニュー5種類、めん生地メニュー3種類、スイーツメニュー2種類、その他1種類、合計20メニューがプリセットされており、操作部にある「メニュー」キーで簡単に選べるようになっている。このプリセットメニューで、残りご飯を使ったご飯入りパンや、グルテン入りの米粉を配合した米粉パンも可能だ。蒸しパンやお餅には対応していないが、パスタ、うどん、そばといった麺の生地も作れる。
基本となるドライイーストで作る食パンは、焼き色の濃さが「ふつう」と「うすい」の2段階で変えられる。さらに、食感に応じて「もちもち」「ふんわり」「ソフト」の3種類に焼き分けるモードが用意されているのも見逃せないポイントだ。いずれも材料の配合に多少の変化をつけるのだが、試してみた結果を先に言ってしまうと、同じ配合でも選択したモードによって焼き上がりが変わるようだ。
最大の特徴が「ホームメイドコース」の存在。これは、コネから焼き上げまでの各工程の時間を自由にアレンジできる機能となる。
たとえば、基本の食パンの「もちもち」コースの時間を「ホームメイドコース」に置き換えると、「コネ1」12分、「ねかし」10分、「コネ2」10分、「手作業」OFF、「発酵1」1時間8分、「発酵2」20分、「発酵3」1時間、「焼き」50分の合計3時間50分となる。この8項目の時間が自由に変えられるのがホームメイドコース。言わば“マニュアルモード”である。
特にアレンジパンを作りたいときは「手作業」時間が大切になる。筆者が所有しているパナソニックの「SD-BM102」ではメロンパンが作れるが、これはコネのあとにクッキー生地を乗せる時間をあらかじめ固定されていたメニューだった。
ホームメイドコースは、この作業時間を任意で設定できるだけでなく、もっとよくこねる、発酵時間を短めにする、といった設定をすることで、より自分好みのオリジナルパンが作れるのだ。実は、メロンパンを作っていたときに「もっと自由に変えられないのかな?」と思っていたのだが、ホームメイドコースはまさにそれが実現されたのだ。
アレンジパンを作らないにしても、ハネによってパンに大きな穴ができるのを避けたい場合は、「ホームメイドコース」の「手作業」時間を若干挟むことで、一旦生地を取り出してハネを外し、再び生地を戻して大きな穴のない食パンを焼く、といったこともできる。それだけでもかなり便利といえる。
このほか、1時間の保温機能も搭載されている。“ホームベーカリー道”を追求できる仕様といっても過言ではないだろう。
「ホームメイドコース」で試しに「もちもち」コースの時間を設定してみているところ(約1分) |
■基本の食パン「もちもち」は、本当にもちもちしている!
食パンの材料。付属の計量カップと計量スプーンのほか、デジタルスケールがあると便利 |
柔らかい佇まいと、豊富なメニュー、便利なホームメイドコースという魅力をもった「パンくらぶ」だが、やはりもっとも基本的な魅力は、焼けるパンのおいしさである。3年前にパナソニックの「SD-BM102」で焼いた食パンを食べたとき、そのおいしさに「これは絶対に手に入れなければならない調理家電だ」と思った。しかし、「パンくらぶ」の食パンも負けてはいない。あくまでも筆者の環境においてだが、もしかしたらその上を行っているかもしれないと感じた。
まずはメニュー番号「1」としてプリセットされている「もちもち」コースで焼いてみた。すると、本当に弾力とボリュームがあって、もちもちとしたおいしい食パンが焼けた。
「パンくらぶ」ではドライイーストを入れる専用ケースは存在しないので、パンケースに最初に水をいれ、強力粉を入れたら、砂糖、塩、スキムミルク、バターを入れる。ドライイーストは水にいきなり触れないよう最後に入れる。あとは本体にセットし、スタートボタンを押すだけだ。焼き上げまでに必要な時間は3時間50分。現れたのは美しい形に膨らんだ、見事な食パンだった。パンケースからの取り出しも非常にスムーズだ。
作る前には、必ずハネの確認を! | 材料は、レシピに書かれている順に入れれば問題ないが、水、強力粉を入れてから、最後にドライイースト、と覚えてもOK | メニューの上矢印を押して「1」を選択したら、スタートキーを押す |
完成した食パン | 見事な形と焼き色 | ハネでできた穴。パンケースからも取り出しやすい |
粗熱が取れたところでカットしてみる |
8枚にカットした状態で軽く折り曲げると、ぼよよーんと反発してくるほどの弾力と、8枚切りとは思えないしっとり感、ボリューム感がある。噛んでみると甘みも感じられ、歯と歯の間でもちっとした反発があるのだ。これが「もちもち」のゆえんだろう。もちろん「パンくらぶ」の基本の食パンの材料は、ほかのホームベーカリーとは微妙に異なるに違いない。パンは砂糖、バター、スキムミルクが増えれば柔らかくなるし、材料の分量、気温、水温によって、膨らみ方も変わって来るが、つまりは「パンくらぶ」に最適な配合とベストな調理環境が提供された結果なのだ。
この食パンは冷めてからでも何もつけずにおいしく食べられる。メニュー番号「1」でこの仕上がりなのに、さらに「ふんわり」や「ソフト」などのバリエーションがつけられ、いずれもその名の通りの仕上がりを見せてくれる。その先にはさらに「ホームメイドコース」の存在もある。「パンくらぶ」は、食パン好きなら見逃すわけにはいかないホームベーカリーなのである。
内相の様子 | ハネに残るパンも最小限 |
基本の食パン「もちもち」が焼けるまで。中の生地が変化していくのがよく分かる |
次回は、「もちもち」以外のコースについて、実際の調理例をご紹介していこう。
2012年10月10日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)