長期レビュー

象印マホービン「パンくらぶ BB-KW10-PH」その2

~「ホームメイドコース」であこがれのシナモンロールに挑戦
by すずまり

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



象印のホームベーカリー「パンくらぶ BB-KW10-PH」。今回は焼き加減とホームメイドコースに挑戦する

 9月に発売されたばかりの象印のホームベーカリー「パンくらぶ BB-KW10-PH」について、初回は基本の食パン「もちもち」をご紹介したが、2回目となる今回は、基本の食パンのチェックをさらに拡大。前半では、「ふんわり」「ソフト」「早焼き」の違いをご紹介するとともに、後半は「パンくらぶ」の最大の特徴でもある「ホームメイドコース」の調理例もご紹介する。

 ドライイーストと小麦を使った基本の食パンには、「もちもち」以外に「ふんわり」「ソフト」、調理時間が短縮できる「早焼き」といったメニューが独立して存在する。それぞれ材料の配合は微妙に異なっており、選択するコースも違う。もちろん、配合を変えれば味や食感も変わるので、今回は「ふんわり」「ソフト」「早焼き」のいずれも「もちもち」の配合にして、メニューの選択コースだけ変えるという焼き方もしてみた。

 また、さらに、「もちもち」の配合でパナソニックのホームベーカリーでも焼いてみた。すると、確かに「パンくらぶ」らしさが存在することが分かったのだ。

[1回目はこちら]

基本の食パン「ふんわり」は気泡が大きめ。トーストすればザクッした歯応えに

 まずは「ふんわり」モードで焼いてみた。レシピ集通りの配合で焼いてみたところ、おでこのような実に見事な膨らみ方をしてくれた。あら熱が取れたときに分かったのだが、膨らみの中には空気が入っていたようである。

 焼き時間は「もちもち」が3時間50分なのに対して、4時間10分。「ホームメイドコース」での設定を参考にすると、「もちもち」より最後の発酵時間が20分長く、コースそのものも「ふんわり」仕様になっているようだ。

メニュー番号2が「ふんわり」ドーム型の天井をもつパンが焼けたあら熱が取れると少々しぼんだ。一部中が空洞だったようだ

 できあがったパンは、焼きたて直後からふわふわとした軽い弾力で柔らかかった。冷めるとそれなりに引き締まるが、小麦粉の量が若干少ないせいか、内相の気泡も大きめで、触ってみると「もちもち」のパンより軽やかだ。

 レシピ集によれば、「ふんわり」はトーストしたときに軽い食感だという。焼いてみると確かにザクっとした歯応えで軽い。特にパンの頭に近い部分は中までドライで軽快だった。「もちもち」で焼いた食パンも同時にトーストしてみたところ、やはりザクザク感は「ふんわり」に軍配があがった。トーストしたてのザクザクしたワイルドな歯応えを楽しみたい方にはちょうどよいコースのようだ。

「ふんわり」(左)、「もちもち」(右)の内相を比較。「ふんわり」のほうが、気持ち気泡が大きい「ふんわり」の両サイドを押してみると、確かにふんわりしていた「もちもち」の両サイドを押してみると、「ふんわり」よりもしっかりした反発が感じられた
トーストしてみた。左が「ふんわり」。右が「もちもち」上に近い場所ほどザクザクした歯応え!ポテトサラダを挟んだところ、ワイルドな歯応えでおいしかった

 比較用に「もちもち」の配合で焼いてみたところ、トップがあふれ気味なほど膨らんでしまい、やはり中に空気が入っていた。レシピ集で、小麦粉と水が「もちもち」よりも少なかった理由は膨らみすぎを防ぐためのようだ。内相の気泡も大きめ。トーストするとやはり気持ちよいくらいの歯応えを感じた。

「もちもち」の分量で焼いてみたところ、あふれてしまった小麦粉が多すぎだとすぐ分かるキメは粗めの仕上がりだった

「ソフト」モードはしっとりリッチな味わい

メニュー番号3が「ソフト」

 次はメニュー番号3の「ソフト」を見てみよう。「もちもち」がきめ細かくもっちりした歯応え、「ふんわり」はキメは多少粗めだが空気を含んで軽い仕上がりなのに対し、「ソフト」は全体的にやさしい焼き上がりで柔らかめ、というコースである。配合は、「もちもち」に比べてスキムミルクが2倍になり、バターが少々多めで、薄力粉が20g入る。所要時間は3時間40分。もちもちに比べ、最後の発酵が10分短いようだ。

 できあがる食パンの焼き色は気持ち薄めで、とくに上の部分が柔らかい。内相は充実しつつもしっとりしていて、ぷるんぷるんで驚いた。かみしめる程に甘さを感じるため、何も付けずにそのまま食べても満足感が得られる。スキムミルクとバターが多いので、味わいもかなりリッチ。これがしっとりした弾力につながっているのだろう。あくまでも個人的な好みだが、食べているうちに、このパンは6枚切りでこそ、そのよさが十分に発揮できるのではないかと感じた。

気持ち小ぶりで、天上の焼き色が優しい内相の状態右が「ソフト」、左は「ふんわり」。キメの違いは明らか

 比較用に「もちもち」の配合で焼いてみたところ、全体的にやさしい焼き色は変わらなかった。柔らかく弾力があり、食べるともちもちしている。しかし、しっとり感はレシピ通りの配合のほうが勝ると感じた。

「もちもち」の分量で焼いてみたところ、やはり柔らかい焼き色に内相の様子。やさしい「もちもち」コース本来の食感「もちもち」の分量で作った「ふんわり」(左)と「ソフト」(右)の比較。コース選択の違いが明らかに分かる

「早焼き」は4時間→2時間半でパンが焼ける。十分においしい

 パンを焼くには、準備も含めて約4時間ほどかかる。そこで用意されているのが2時間30分で焼き上がる「早焼き」コースだ。材料は「もちもち」の量に、ドライイーストが小1/2だけプラスされる。

 焼いてみたところ、膨らみ方は通常時間よりも少々少ないが、逆に食パンとしてのサイズでいえば、ちょうど良いくらいとも言える。しっとりしていて十分おいしいので、急いでいるときは重宝するコースだ。

 とはいえ、やはりじっくり時間をかけて発酵させた他のコースと比べると、ホームベーカリーで作る“リッチ感”はやや少なくなるよに感じられた。

メニュー番号4は、早く用意したいときに便利な「早焼き」コース2時間半で焼けたパン。他と比べると膨らみ方は若干少ないしっとりして弾力がある

番外編:「もちもち」の材料を、パナソニックのホームベーカリーで焼いてみると?

 ここまで来るとほとんど実験といった感じになってしまうが、作っているうちにどうしても気になったので、「もちもち」の材料を使って、パナソニックの「SD-BM102」で焼いてみた。 果たしてパナソニックでもホームベーカリーでも同じように焼けるのか? 

 パンケースの形が違うため、縦に長くなるが、実に美しい形のパンが焼けた。ミミもしっかりしている。食べてみても、いつも通りのおいしい食パンだが、「パンくらぶ」の「もちもち」より、軽い気がした。よほど意識して食べ比べないと分からないような、非常に微妙な違いと言われてしまえばそれまでなのだが、やはり「パンくらぶ」には「パンくらぶ」のおいしい焼き加減があるようだと感じた次第だ。

「もちもち」の配合で、パナソニックのホームベーカリーへりりしい姿で完成した食パン内相の様子

「ホームメイドコース」でシナモンロールを作ってみた

 ここからは、「パンくらぶ」の大いなる魅力、「ホームメイドコース」を試してみよう。

 同コースについては1回目でも紹介しているが、要はコネから焼き上げまでの各工程の所要時間を自由に設定できる機能だ。「コネ1」「ねかし」「コネ2」「手作業」「発酵1」「発酵2」「発酵3」「焼き」の順の8工程で時間を設定できるわけだが、コネは0~15分、ねかしは0~20分、発酵は各段階0~2時間、焼きは0~1時間10分まで指定できる。手作業は1時間またはOFFのいずれかで設定する。不要な工程は0分にすることで省略も可能だ。このため、発酵時間が異なるいろいろなパン作りが可能になるというわけである。

 この機能を使って何を作ろうか迷いつつ、付属のレシピ集を開いていると、目に入ってきたのがシナモンロール。パナソニックのホームベーカリーでは、巨大なメロンパンを作って友達に驚かれたが、これも巨大な食パンサイズに仕上がるようだ。作るならユニークなほうがいい。

 作り方は、グラニュー糖とシナモン以外をパンケースに入れて本体にセットしたら、「ホームメイド」キーを押し、すべての工程にかかる時間をセットする(設定時間はレシピ集に記載されている)。手作業の開始はアラームでお知らせされるので、1時間内に取り出した生地を30分ねかし、30cm四方にのばして3/4まで牛乳を塗り、グラニュー糖とシナモンをふりかける。そのまま棒状に丸めて10等分し、羽根をはずしたパンケースにランダムに入れなおしたら、再スタートである。

シナモンロールの材料「ホームメイド」キーを押し、時間を設定する生地ができたら30分寝かせる
パンケースのハネは取り外しておくパン生地をのばし、牛乳を塗ったらグラニュー糖とシナモンを振りかける(本当は30cm四方にのばす)
生地を巻いたら10等分するカッとした生地をパンケースに戻したら、再び「スタート」キーを押す

 これが実にいい香りのするシナモンロールになるのだ。カットすると、内相でもシナモンがくるくると渦巻き状の模様を見せてくれる。粉砂糖でアイシングすれば、さらにゴージャスになり、商品みたいに見えるからなお楽しい。細かい作業はあるものの、短時間(合計2時間半)で食べられるのもうれしいポイントだ。見た目もかわいいのでプレゼント用や来客用にいいかもしれない。

焼き上がった初めてのシナモンロール1斤サイズはなかなかの迫力ハネを外した底の状態。グラニュー糖の影響でミミがはがれてしまったが、食パンならもっと綺麗に抜ける
縦にカットするとシナモンの模様が何度が試してシナモンロールっぽさを研究した結果、トップには横向きに載せる生地も必要と気づいた
シナモンロールらしい部分ができた。アイシングするとプレゼントにも活用できそうな出来映えに!渦巻きも綺麗に入った

 細かく設定というと面倒臭さを感じる方もいるかもしれないが、実際に作ってみると、特別に面倒なことをしている感覚はなかった。設定した時間で1度焼き上げると、設定が保存されるため、2回目以降は時間設定が不要となる。手作業時間は1時間も用意されているので、多少時間がかかっても気にならないところもいい。1時間以内に終わったら、「スタート」キーを押せばそこから残りの工程が消化されるため、手際よく作業すれば早く終えられる(1時間後に自動的に再スタートする)。通常の食パン作りに慣れたら、ぜひとも活用したいコースである。

パン型を作ってレーズン入りのシナモンロールに挑戦

 さらに、“アレンジのアレンジ”とでもいうべきパン作りに挑戦。以前ご紹介した「貝印のシリコーン製のパン型」の「ぷくぷくパン型」を使って、レーズン入りシナモンロールを作ってみよう。

 このパン型は、生地のアレンジ時間を利用して加工し、ハネを取り出したパンケースに入れるという製品。BB-KW10-PHに正式に対応しているわけではないが、自己責任で挑戦した。

 分量は先程の半分になるため、卵は使わず、配合はバター多めの基本の食パン「もちもち」を参考に、時間配分はシナモンロールのレシピのまま試した。レーズンは自動投入せず、手作業時間にグラニュー糖、レーズン、シナモンをふりかけ、ロール状に巻いてから4等分して容器に入れた。

 できあがったのが下の写真だ。

準備した生地を「ぷくぷくパン型」に入れて、パンケースごと本体にセットするレーズンがだいぶ飛び出してしまったようだが、「パンくらぶ」でも問題なく使えることが証明された発酵時間が長いせいか、よく膨らんでいる

 「ホームメイドコース」なら、このようなアイテムも活用できる。今回は私の“シナモンロール熱”のせいでこのようなアレンジになったが、材料や発酵時間や焼き時間を変えることで、さらに楽しみ方が広がるだろう。なお、発酵中にガス抜きをするためなのか、ハネが回る動作が必ず入るようだが、ハネはついていないので特に問題はなかった。

発酵時間を少し短くし、焼き時間を長くしてもいいかもしれない見た目と中身のユニークさを追求してみても楽しいだろう

餃子の皮も作れる!

 付属のレシピ集にあって驚いたのが「餃子の皮」である。餃子の皮が自分で作れたら、料理の楽しみがかなり増えそうだ。一度チャレンジしたいと思っていたこともあり、即試してみた。

 材料は薄力粉、熱湯、塩だけとシンプル。パンケースに薄力粉、熱湯(塩入り)を入れたら、本体にセット。「ホームメイド」キーを押したら、「コネ1」10分、「ねかし」10分、「コネ2」10分、残りはすべてOFFまたは0分にしてスタートする。30分後、生地を取り出し、ラップに包んで1時間冷蔵庫で寝かす。寝かし終えたら、生地を棒状にしてから40等分して、1枚ずつ伸ばして、用意しておいた具を包んで焼く。

 作った餃子を蒸し焼きにしてフライパンのフタを開けた瞬間、たいへん食べ応えのありそうな餃子が姿を現した。市販の皮を使った普段の餃子とは違い、肉厚なのだ。皮は自分で伸ばすため丸く均一にとはいかず、むしろ分厚くなるが、どうやらそれがいいようだ。

用意するものは、薄力粉、塩、熱湯、あとは「パンくらぶ」パンケースに薄力粉、熱湯(塩入り)の順に入れ、「ホームメイドコース」で時間をセットコネあがった餃子の皮の生地
ラップして1時間冷蔵庫で寝かせる直径2~3cmの棒状にして40等分するカットした生地をのばす。厚みをコントロールできるというメリットも
いびつな形も含め、自家製の餃子の皮ができあがった用意しておいた具をつつんでいく作りたての皮なので、のばせば広がるほど柔らかい。包む作業は手早いほうがいい

 今回は鶏肉を使ったさっぱり系の餃子にしてみたが、ほおばると皮の弾力と具のうま味をボリュームたっぷり。これには大満足である。豚挽肉で作ったら、さらにジューシーさが加わってビールを開けずにはいられなくなるだろう。何か包んで焼きたいと思ったら、薄力粉と塩とお湯さえあればいいのだから、これはうれしい。

完成した餃子。皮から手作りしたのは初めてだ見るからに市販の皮とは厚みが違うと感じる実際に破いてみると、2mmくらいはありそうだった。これが弾力と食べ応えにつながっている
具が足りずに皮が余ってしまったが、片栗粉をまぶして冷蔵保存した余った餃子は一旦冷凍してからスープの具として野菜とともに煮込んてみだ。皮に厚みがあるため、もちもち感はそのままに、ガッツリ食べられる具となった

 コネに必要な時間は全体で20分だが、普段は比較的静かなパンくらぶ本体が、ガタガタ音を立てて振動していた。

 自分で作るとなると、20分こね続けるのは力がいる。しかも40枚分伸ばしていくわけだから、おいしい食事のためとは思いつつも、取りかかり始めるのには気合いもいりそうである。そんなとき、生地までは自動でお任せできるというのはかなり便利。「ホームメイドコース」は、パンはもちろん、他にも何らかの「こねる」作業だけ任せたい時など、かなり活用できそうだ。


 以上、基本の食パンのバリエーションと、「ホームメイドコース」の調理例をご紹介したが、いかがだろうか。ホームベーカリービギナーは基本の食パンをメインに楽しみ、慣れてきて、もっと作りたいという欲求がでてきたところで「ホームメイドコース」で幅を広げれば、よりホームベーカリーが長く楽しめそうだ。

 次回は、手打ちそばやジャムなど、そのほかの調理事例をご紹介したい。



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2012年10月16日 00:00