長期レビュー
シャープ「プラズマクラスターエアコン B-SXシリーズ」その1

~まるで床暖房! “超大型ルーバー”で足元ポカポカのエアコン
by 藤山 哲人

 都市部において、冬の暖房の大きなウェイトを占めるエアコン。今シーズンもメーカー各社が競い合って、省エネ・高効率化を図ったさまざまなモデルを出している。しかしその中で、他社とはチョット違ったアプローチを見せているのがシャープのエアコンだ。

今回紹介する、シャープ「プラズマクラスターエアコン B-SXシリーズ」。200V仕様の14畳タイプのAY-B40SXを選んだ

 シャープの高級モデルのエアコンの一番の特徴は、風向きを変える羽根「ルーバー」が、超ビッグサイズなところだ。量販店のモックアップ(模型)では分かりづらいのだが、動いているところを見れば、一目瞭然。普通のエアコンとはまったくサイズが違う。このルーバーで、室内機から出てくる温風を抑え付け、足元に送風することで、エアコン暖房の弱点と言われる足元の寒さを減らす“足元ポカポカのエアコン暖房”ができるという触れ込みなのだ。

 でも、こんな形をしたエアコンは、これまで使ったことがない。そこで今回の長期レビューでは、シャープの最新式高級エアコン「B-SXシリーズ」を家に取り付けて、その効果のほどや暖房性能、省エネ性などを、数回に渡る連載で紹介していきたい。


メーカーシャープ
品名プラズマクラスターエアコン
製品名AY-B40SX
希望小売価格オープンプライス
実売価格258,000円

 

室内機のルーバーがデカっ! 室外機もデカっ! でもこれがポイント

 初回となる今日は、メインの特徴である大きなルーバーの効果を調査だ。というわけで、さっそく家に設置。ルーバーは大きいけれど、室内機本体はちゃーんと取り付けられた。厚みは従来器の1.5倍ほどあるが、これは自動清掃機能などが付いた高機能タイプということもあるだろう。高級モデルとしては、室内機のサイズは普通と言っていい。

10年前の従来器は、単純に冷暖房を行なうだけ。そのため奥行きが薄いB-SXシリーズも幅にピッタリ挟まるが、奥行きが厚め。自動お掃除機能をはじめとした各種機能を内蔵しているためだろう

 その一方で、サイズが並みじゃないのが室外機。これはデカイ!(笑)。幅は他社製とかわらないが、高と奥行きがかなりあるため、室外機の置くスペースを確保する必要がありそうだ。他社では、ダイキンの「うるるとさらら」シリーズが、室外機に加湿ユニットを備えているためにデカイと言われているが、B-SXシリーズの室外機は加湿ユニットなしでデカイのだ。10年前の従来機と比べてみると、高さで10cm、奥行きで5cmほど大きかった。

 しかし、ただ単にデカイわけじゃない。これは冷房時に空気中から熱を逃したり、暖房時に外気から熱を取り込む熱交換器が非常に大きいためだ。つまりそれだけ、パワフルで経済的というワケ。

 また室外機で特徴的なのは、大きなファンの形だ、通常は3~4枚の扇風機のようなファンだが、B-SXシリーズの室外機は「イヌワシとアホウドリの羽を模した」という2枚羽になっている。これにより、送風力を高めて、経済性をアップしているとのことだ。

左がシャープのB-SXシリーズ、右が10年前のエアコンの室外機。幅はともに80cmだが、高さはシャープのAY-B40SXが63cmに対し旧式は53cm奥行きは旧型は26cmに対し、シャープが31cmB-SXシリーズのファンは2枚羽で、イヌワシとアホウドリの羽の生体模倣をしたという、複雑なデザイン。これで従来の羽より20%も送風効率をアップしつつ、抵抗を減らしているという(写真は製品発表会より)


“超大型ルーバー”はまるで床暖房のような暖かさ!

 さて、話をもう一度室内機に戻し、本製品の最大の特徴に触れよう。シャープの高級エアコンの室内機で最も特徴的なのは、送風口のカバーに付いている“超大型ルーバー”だ。

 一般的なエアコンのルーバーと言えば、奥行き5cm程度の薄い羽根になっているものが多い。シャープのB-SXシリーズは、正面から見て下半分がすべてルーバーになっている。暖房時はこの大型ルーバーが上がり、温風を床に向ける。冷房時はその逆で、ルーバーは下がり、冷風を壁に向けて、人に直接当たらないように部屋全体を涼しくするのだ。

一見すると送風口のカバーに見えるが、電源を入れると大きく開き、カバー自体が超大型のルーバーになる暖房時(下向きの気流)はルーバーの上部が固定され、支柱(リンク)が本体上部から押し上げる
冷房時(上向きの気流)はルーバー下部が固定され、リンクが本体下部から引き上げる形になる一般的なエアコンのルーバーは、このように小さいルーバーが採用されている
暖房時のパネルの動き。パネルが下方向に風を向けるように動く

冷房時はその逆で、上方向に風を向けるようにパネルが動く

 仕組みは分かったが、この超大型のルーバーは、エアコン暖房の弱点と言える足元の温かさをどれだけ快適にしてくれるのだろうか? ここで、ルーバーが小さい10年前のエアコンと、気流がどう違うかを比較してみた。

 ちなみにこの古いエアコンは、今回取り付けたシャープのエアコンと同じ部屋、同じ場所に取り付けていたもの。交換する前に、予めデータを取っていたのだ。

小さいルーバーのエアコンは、2.5m先でやっと床に温風がたどり着く。届いた風は、空気で冷やされてしまうので温風が冷たくなってしまっているB-SXシリーズは、大型ルーバーでおよそ半分の1.2m程度で床に温風が届く。到達距離が短いため、空気であまり冷えず届く温風も温かい

 パイプに取り付けた紐の動きから見ると、小さいルーバーではエアコンからおよそ2.5m先で床に温風が届いている。一方、シャープのB-SXシリーズは、およそ半分の1mチョイで床に届いているのが分かるだろう。確かに足元からポカポカと温かいワケだ。

 それを証明してくれたのは、偶然尋ねてきた友人。部屋に入るやいなや「うわっ!足元暖ったけー! コレ床暖房?」と驚いていた。


ルーバーが小さい機種とどれだけ暖房効果に違いがある?

 体感では足元の暖かさを感じたが、実際の部屋の温度はどのぐらいになるのだろうか? これについても、ほかのエアコンとの比較で見てみよう。

測定環境はこちらの通り。パソコンに接続できる0.1℃単位で測れる温度計がなかったので、普通の温度を1分ごとにインターバル撮影。温度計は部屋の中央に設置して、床から1cmの場所(足元)と床から150cm(頭)の温度を測った

 しかし、先ほど比較したような10年前のエアコンを引き合いに出せば、高級機種でなくとも新製品の方が良い結果になるのは当たり前。そこで、部屋は違うが同じ12畳間で、2年前の他社製高級エアコンを運転し、温度のデータを比べてみた。運転モードはともに省エネ重視の自動運転で、設定温度は22℃、室温は部屋のほぼ中央で床上1cmと150cmの2カ所で測った。測定環境については、左の写真を見てほしい。

 2年前のハイエンドモデルは、小さいルーバーを備えたものだ。しかし12畳間の中央で温度を測定すると、温風が足元に届くらしく、運転開始から12分ほどすると、足元の温度が12℃から20℃まで上昇した。

 しかしそれを過ぎると徐々に足元の温度が下がっていき、2時間後には頭の辺りは21℃とほぼ設定値の温度になったが、足元は16℃と5℃の差が開いた。

 温度変化のグラフ(下段)を見ると、頭と足元の温度差は最大で5℃、最小で3℃程度となり、エアコン暖房の弱点である足元は少し肌寒さを感じる。


2010年製の他社高級モデルのエアコンのグラフ。緑色が高さ150cm、赤が高さ1cmの温度を示している。運転開始直後は足元が非常に暖かいが、その後は頭と足元の温度差が大きくなっている。ちなみにこのエアコンは、小さいルーバーを採用している

 一方シャープのB-SXシリーズは、足元の温度が特徴的だ。運転開始直後から頭と足元の温度の差はかなり小さい。ただ、運転開始40分~1時間15分の35分間は、部屋全体の温度を暖めることに注力するためか、徐々に頭と足元の温度差が大きくなり、最大5℃まで開く。しかしそれを過ぎると、今度は足元を集中的に暖めるようになり、1時間半の時点では頭と足元の温度が同じになるという結果を見せた。

 その後は、足元の温度が下がると足元を暖めるという運転を繰り返し、その温度差は4℃から1℃となっている。その間、超大型ルーバーと吹き出し口にある小さな補助のルーバーと連携し、微妙に気流を上下に振っていることも確認できた。

シャープ「B-SXシリーズ」シリーズの、途中で頭と床の温度差が大きくなる時もあったが、1時間半を過ぎると、温度差が小さくなる。バランス良く温めているようだ
運転開始直後のルーバー。温風はほぼ真下に向けて送られる部屋の温度が安定したときのルーバー。若干ルーバーが上を向き、部屋の遠くまで温風を送っている

 先ほどは体感的に足元が暖かいと感じたが、実際の温度の推移もコレを裏付けることになった。確かに実験中も、シャープのB-SXシリーズは足元からポカポカと温かかった!


夏の冷房時にもパネルが活躍。ヒトに冷気を当てない“斜め上”の気流

 暖房では足元をポカポカと暖めてくれる超大型ルーバーだが、夏の冷房時には、冷気を体に直接当てず部屋を均一に涼しくしてくれるらしい。

 ここで冷房時の気流を、暖房と同じように比較したのが次の写真だ。

小さいルーバーのエアコンで、ルーバーを一番上を向かせた状態。冷気は斜め下方向に流れるため、ヒトの体に直接当たることになるB-SXシリーズは、なんと斜め上方向に向かって冷気が流れている。これは小さいルーバー機では、まずできない気流だ。これによりヒトの体に冷気が直接当たることなく、部屋全体を涼しくする

 小さいルーバーを使っている10年前の従来器の気流は、暖房時よりは部屋の上部を流れているが、2mほど離れた場所では冷風が頭や体に直接当たるほど低くなってしまっている。しかしシャープのB-SXシリーズは、大型ルーバーにより斜め上方向に冷気が流れ2m離れても頭にすら冷気が当たらないようになっている。これは小さいルーバー機ではまずできない芸当だ。しかも夏は天井付近に暖かい空気が溜まるので、シーリングファンのように部屋の空気全体をかき回す効果も期待できる。

 暑い夏には弱いが、冷房が体に直接当たると体調が悪くなるというヒトにはピッタリだろう。なにせ天井に向かって冷気を送るエアコンは、筆者の知る限りほかにない。もちろん「直接冷気に当たりたい」という時もあるだろうが、その際は風向を手動で切り替え、暖房のように真下に冷気を向ければ良い。

 ちなみに、暖房運転の後に、冷房運転も挑戦してみたが、できなかった。エアコンは外気の温度もセンサーで感知して制御するため、このところの寒波で冷房運転に切り替えても、送風のみだった。ともかく、この大きなパネルは、冬だけではなく夏にも機能してくれるようだ。

大型ルーバーの内側は冷気が直接当たるため、露付きで水のしずくが落ちないように、凹凸のある断熱材が全面に貼られている

 気流から少し話が反れるが、この大型ルーバーには冷房時に機能する「なるほど!」なアイディアも仕込まれている。それが次の写真にある、ルーバー内側の凸凹だ。この凸凹はウレタン素材でできており、ルーバーの断熱材として機能する。今回施工してくれたシャープのサービスマンさんによれば「もし断熱材を貼っていないと、ルーバーに冷気が当たり結露し水滴が床に落ちてしまうため、このようにルーバーの裏側すべてに断熱材を貼っている」と言うことだ。


次回は「寒くならない霜取り運転」と「パワフル暖房」を検証するぞ!

 シャープのB-SXシリーズは、超大型ルーバーの活躍により、触れ込み通り本当に足元がポカポカと温かいことが分かった。その温かさは、ホットカーペットや床暖房を思わせるほどだ。また夏の冷房時には、小さいルーバーを搭載した機種では難しい、天井を這うように冷気を部屋全体に送れるということも分かった。

 連載2回目の次回は、霜取り運転について見ていくことにしよう。なんでも、B-SXシリーズは、室外機の霜を取る除霜運転中も寒くならないらしい。「関東では霜取り運転なんて無縁」なんて筆者も思っていたが、ビデオカメラを設置して撮影していたら、我が家でもびっしり霜が着いて驚いた! 

 また、例年冷え込みが厳しい2月という時期に合わせて、省エネ運転ではなく、パワフルな暖房運転がどれだけできるかについての検証もしてみよう。





2012年2月1日 00:00