長期レビュー
東芝「大清快 UDRシリーズ RAS-281UDR」 最終回
東芝「大清快 UDRシリーズ RAS-281UDR」 |
第1回は洗濯物を乾かすランドリーモード、第2回は冷房の性能を独自の実験により検証してきた東芝 大清快UDRシリーズ。
最終回は、除湿と暖房性能を中心にお届けしていこう。「これからエアコンを買おう」という読者は、ぜひ暖房性能についても検討して欲しい。結論から言えば、UDRシリーズを選べば石油ファンヒーターは下取りに出してもかまわない。
そしてUDRシリーズに限らず、夏の暑さを「冷房」で乗り切るか? それとも「除湿」で凌ぐか? そのどちらか経済的なのか? といった疑問にもお答えする。
■夏の暑さ対策! 冷房・除湿どっちが経済的?
第2回目の実験で、卓上コンロでお湯を沸かせば、真夏の暑さを再現できることが分かった。そこで今回は、炊き出し用の鍋とヤカンを持ち出し、コンロ2台で「猛暑」の状態を作ってみた。
14畳の部屋は、鍋に入れた水4Lとヤカンの2Lで計6Lの湿気を蓄え込んだ計算だ。実験する前に、まずコッチにビックリ! 通販番組で水をたくさん吸い込む特殊な雑巾を宣伝していたが、空気ってそれより吸水力あるんじゃないか?
ただすべての水分が空気中に貯められたわけでなく、窓や鏡は「風呂場かっ!」というほどの曇り具合だ。
今度は炊き出し用の鍋を持ち込んで大量の湿気を放出! | 2時間後には、4Lの水も蒸発。暑っち~! | 湿度75%とはこういう状態。計測機器に悪影響が出そうで戦戦恐恐だ |
全部で4本のガスを使い、2時間かけて蒸発させたところ、できあがった猛暑の部屋は
室温37.5℃、湿度77%! どんだけ真夏だよ!
例によって気象庁の過去のデータを調べたところ、冷夏の昨年にはこんな日はなく、一昨年の2008年8月中旬(横浜)が、このような数値となっていた。パーフェクトな猛暑の完成だ!
さて猛暑を再現した部屋で実験するのは除湿機能。ご存知の通り、除湿機能は室温を保ったまま湿気のみを取り去る。暑い日でも湿気がなければカラッと気持ちがいいので、冷房せずに除湿だけする家庭も多いだろう。そこで気になるのが電気代だ。ただ除湿するだけの除湿機能と、冷房ではどちらが経済的なのか?
冷房機能は主に部屋を涼しくするが、副次効果として除湿もできる。かたや除湿機能は除湿だけ。単純に考えると、除湿機能の方が電気代がかからないのでは? という疑問を実験で明らかにしていこう。
実験1
約6Lの水を卓上コンロで蒸発させ、室温と湿度を上げる。実験開始は室温37.5℃、湿度77%で、熱源となるコンロと鍋、ヤカンは室外に撤去。エアコンは除湿モードで運転、設定湿度は40%とした。ただ除湿モードにも室温の設定が必要なので、ここでは28℃を指定。このときの外気は20.9℃。今日も過ごしやすい天気なのに、何やってるんだろう?俺。
なおこの実験は、一酸化炭素中毒になる危険性があるため、機器はすべてリモート操作で行なっています。しつこいですが、念のため。
第2回の記事では室温31℃、湿度70%の部屋を25℃まで涼しくする冷房運転(フルオート)を行なったところ、湿度はおよそ50%前後に調整していることが分かった。そこで今回は、除湿に重きを置き40%まで除湿することにした。
そして次のグラフが実験結果だ。
上段のグラフは、赤い線が床面から160cmの温度、オレンジが床面から5cmの温度となっている。先日の実験では床面から5cmのデータは取っていなかったが、熱気がかなり天井付近にこもっているのが分かるだろう。直射日光がなければ、猛暑でも横に寝転んでいればかなり冷を取れるようだ。
室温は実験開始からおよそ30分で、設定温度の28℃まで下がり湿度はおよそ50%になるが、まだ40%までにはおよばない。55分あたりまでフルパワーで運転をしているようだが、この状態で一度部屋に入ってみたところ、実験開始直後に比べたら天国のように涼しくなっていた。とはいえ湿度が目標値の40%になっていないため実験を継続。
湿度が45%になった55分ごろに、いったんパワーを10Wまで絞っているのが特徴的だ。おそらく除湿運転特有の挙動で、湿度が目標値に近づきかつ、室温が設定温度を下回ったので、一度パワーを落として、しばらく様子を見ているのだろう。その後、湿度が未だに高いことを感知すると、パワーを半分程度に絞って徐々に湿度を目標値まで下げている。
およそ3時間にわたり除湿運転を行なったが、最終的には湿度41%、室温は設定温度より3.5℃低い24.5℃となった。
さて気になる電気代を冷房運転を見比べてみると……
累積の消費電力は、除湿運転(緑)と冷房運転(水色)の面積を比べれば分かる。数学が得意な場合は、グラフの瞬間を取って積分するといいだろう。ここではアバウトに見た目で比較してみると、冷房運転で除湿運転より電力を消費しているのは、15~45分の突き出した部分と、55分のわずかな部分のみ。この2つの領域の面積は、運転開始の除湿運転の消費電力にもおよばないことが分かる。
2つの実験条件は若干異なるが、65分以降の冷房では50Wに満たない超エコ運転を行なっているが、除湿の場合は200~250Wで運転しているので、そのぶん不経済というわけだ。
最初の疑問「夏の暑さ対策は、冷房・除湿どっちが経済的?」の答えは、湿度より室温を下げる
冷房運転の方が経済的ということになる。
これは東芝 大清快UDRシリーズに限った話ではなく、一般のエアコンも同様だと言える。その原因は、後述することにしよう。
■ドライアイス併用で冬場の部屋を再現! 今度は暖房実験だ!
6月なのに清々しい天気が続く中で、何かに執り憑かれたように猛暑の日をシミュレートしてきたが、今度は冬場の暖房実験をしてみよう! ええ、やりますとも家電Watchは! 本気でバカな実験を。
それにはまず部屋を冷やさなければならないが、予備実験としてエアコンをガンガンかけて寒くしてみても、なかなか20℃以下に下がらない。そこで考えたのが冷房とドライアイスの併用だ。マイナス196℃の液体窒素案も考えたが、1,000円/Lとリーズナブル? ながら、取り扱いの危険性と低温貯蔵容器が高いので断念。マイナス79℃ながら500円/kgで買えるドライアイスを10kg用意した。しかも幸いなことに、ご近所でドライアイスを小売してくれる工場があったので、搬送で溶けてしまうこともない!
10kgのドライアイスってかなり小さいもの。およそ30四方で高さは10cm程の大きさだ | 空気に触れる面を増やすためハンマーで細かく砕いて机の上に設置。こぼれ落ちる冷気を扇風機で部屋全体に送っている |
実験2
あらかじめ冷房とドライアイスで室温18.5℃、湿度52%にする。冷気は下に貯まってしまわないように、扇風機を併用して部屋全体を寒くした。暖房運転を開始するとともに扇風機は停止し、ドライアイスはそのまま部屋の中に置き、室温と湿度を観測。設定温度は27℃。これは9℃の部屋を18℃まで暖める場合を想定して、18.5℃の室温をプラス9℃している。
なおこの実験は、二酸化炭素中毒になる危険性があるため、機器はすべてリモート操作で行なっています。今回は危険な実験が多いなぁ。
実験結果は次の通りだ。
実験開始直後からフルパワーで暖房を始めたため、消費電力のピークは冷房の倍以上となる1,100Wをマーク。その結果15分も経たずに床上160cmの室温は、設定温度の27℃にまで達した。しかし床上5cmでは20.5℃と設定温度から6℃以上も乖離しているため、暖房運転は徐々にパワーを絞りつつ部屋全体を均一に暖めるように運転を続行しているようだ。
床上5cmの室温が23℃に達した35分以降は、パワーセーブしたエコ運転に切り替わり、70分を過ぎたところで10Wの超省エネ運転に移行。ここで床上160cmと5cmの気温差は2℃まで縮まり、以降は部屋の微妙な温度の低下を感知しながら、超省エネ運転とエコ運転を繰り返している。
エアコンの暖房機能は、なかなか部屋が暖まらないと言われているが、UDRは床上160cmの気温とはいえ15分も経たずに設定温度まで暖めることができる。いかにパワフルかが分かるだろう。さらに部屋全体が設定温度近くになった場合の、微妙な室温コントロール&省エネ運転は、東芝独自のデュアルコンプレッサの幅広いレンジを最大限利用している結果だ。
旧式のエアコンや、石油ファンヒーターなどを使っていると「アレ? 少し暑いな」「寒いな」と感じることがあるだろう。とくにツーバイフォーや高気密・高断熱住宅に住んでいる場合は顕著だ。これは設定した室温を保とうとするものの、ヒーター(冷房の場合も)のパワーが強すぎて、スイッチをON・OFFする間欠運転をするためだ。結果として、設定温度の上下に数℃の幅ができてしまう。
上段はデュアルコンプレッサを活かした室温の微妙な制御を行なうUDRシリーズ。下段は旧型のエアコンや石油ファンヒーターなどの温度制御。スイッチをON・OFFしたり微妙な制御ができず、設定温度にブレ幅が生じる |
東芝の大清快UDRシリーズは、デュアルコンプレッサを搭載しているため、運転直後はパワフルに、設定温度になった場合はコンプレッサをシングル運転に切り替えて微調整が可能。そのため「暑いな」「寒いな」と感じないほど、室温を一定に保つことができる。
また送風の向きを切り替える上下ルーバーにも工夫がされている。冷房運転の場合は、冷気が体に直接当たらないように上向きになるが、暖房運転の場合はこれが180度回転して足元を暖めるようになっているのだ。
写真は左から、冷房時(上向き)、収納時、暖房時(下向き)となっていて、上下のルーバーが180度回転する |
また左右への送風は、2系統で独立して動く左右ルーバーがあるので、左右や中央だけでなく、部屋全体を暖め(涼しくし)たり、スポット的に送風をすることも可能となっている。
右側に送風している状態 | 左右のルーバーを別方向に向けることでワイドに送風も可能 |
■ヒートポンプ式だからパワフルなのに石油ファンヒーターより経済的!
これから夏が来るというのに、暖房の話が続いて申し訳ない! でも夏の次には必ず冬が来るので、エアコン購入の際はぜひ冬のことも考えて欲しい。
大清快UDRシリーズには、暖房機能にも省エネの代表格である「ヒートポンプ方式」が採用されている。冷房運転すると室内に涼しい空気が送られるが、室外機の前に立つと外気より暑い熱風が吹き出てくるのを感じたことがあるだろう。ヒートポンプ方式とは、これをちょうど逆転させたものだ。つまり冷房では熱気を室外に出し冷風を室内に送っているが、暖房では熱気を室内に送り、冷気を室外に出すのだ。
冷房時は、エアコン本体の熱交換器で液体ガスと気化させて熱を奪う。 |
暖房時は、エアコン本体の熱交換器に気体ガスを送り、高圧をかけることで液化させ熱を発生する |
この様子が、屋外の熱を室内に吸い上げているような感じなので「ヒートポンプ」というわけだ。「屋外の熱って、外は寒いじゃないか!」と異論もあるだろう。でもそれは人間にとって寒いだけで、熱エネルギーは外気0℃であっても十分にある。すべての分子の運動が止まるのはマイナス273℃の絶対零度で、これ以上物質が冷えることはない。つまり熱エネルギーもゼロということだ。でも水も凍る外気0℃であっても、絶対零度から見れば273℃も熱を持っていることになる。ヒートポンプは、この熱エネルギーを吸い上げて暖房の熱源にしているのだ。
なんだかタヌキにだまされているような感じだが、ヒートポン方式はエネルギー効率の非常に高い暖房方式なのだ。そしてなにより経済的。洗濯機の乾燥機能が電熱線方式からヒートポンプ方式にシフトしつつあるが、これは省エネ&経済的という裏づけがあるからこそなのだ。
どれだけ経済的なのか? という点について言及すると、これまた1本の記事になってしまうので、詳しくは「エアコンの光熱費は暖房器具の中で一番安い」を参照して欲しい。
除湿運転時には、半分の熱交換器を冷やし、もう半分を暖めて室温を制御する。このため消費電力が多くなる |
数年前までは18L、1,000円を割っていた灯油だが、ここ数年ガソリン同様に高騰していて、今年の冬も1,000円を切りそうにない。おそらく記事を読むと、これを機に冬の暖房をエアコンに切り替えたくなるはずだ。
そして先の除湿実験で消費電力が多かった理由がここにある。除湿はエアコン本体にある熱交換器の半分を冷やし、もう半分を暖めて運転しているためだ。湿気を取るのは冷やした熱交換器の役割。この空気をそのまま部屋に送風してしまうと、部屋の温度が下がってしまうため、暖めていたもう半分の熱交換器を通し空気を暖めてから送風する。このため冷房よりも電気を食ってしまうのだ。
■石油ファンヒータに負けていた弱点を克服! ダッシュ暖房
なんだか東芝 大清快UDRシリーズを褒めまくった記事になってしまい、読者には「東芝からお金入ってるんでない?」と思われそうなのだが、イイものはイイのでしょうがない。ライターさんによっては、悪いところを一生懸命に見つけて「~は改善の余地があるので今後も見守りたい」なーんて結ぶ人もいる。しかし大局(大雑把?)を見る筆者としては、悪いところ見つけるより、締め切りを守るのに必死なのである!
さてここまでUDRシリーズの暖房機能を見てきたが、石油ファンヒーターと見比べると、性能的にはほぼ互角。いやそれ以上の暖房器具といえるだろう。
・部屋が暖まるまでの時間:ほぼ互角
・省エネ性:UDRに軍配
・室温の一定性:UDRの圧勝
・室内の空気:燃料を燃やさないUDRの圧勝
唯一エアコンが石油ファンヒーターにかなわないのが、温風が出るまでの時間だ。
寒い朝、なんとか布団を抜け出して、石油ファンヒーターのスイッチをONにしたあの喜び。チチチチ! ボォゥッ! という音と共に、すぐに温風が吹き出し、温泉にも似た極楽を味わったことがあるだろう。かたやエアコンは……設定温度をMAXにしても、なかなか温風が吹き出さずもどかしい思いをする。ただタイマーをセットすればいい話だが、切タイマーはよく使っても、入タイマーってなぜか使われないんだな……
石油ファンヒーターの優位性は、スイッチを押すとすぐ温風が出てくるだけとなったが…… |
しかしUDRは、東芝独自のデュアルコンプレッサでこれを克服してしまった。それが朝夜のダッシュ暖房機能だ。
エアコン暖房で温風がすぐに出ない原因は、冷え切った熱交換器を暖めているため。熱交換器が温まるまで、送風はしない。これがもどかしさの原因になっている。自動車の暖房と同じである。
しかしUDRに搭載されている朝・夜ダッシュ暖房を使うと、あらかじめ熱交換器を予熱をするので、電源を入れると1分で40℃の温風が吹き出す。石油ファンヒーターでも「クイック点火モード」などで予熱しない場合は、1分ぐらい待たされるので、機能は互角と言っていいだろう。
ダッシュ暖房のしくみは、次のようになっている。
イラストは朝7時と夜19時にダッシュ暖房を指定した場合。指定時間の1時間前になると、外気が10℃未満、もしくは室温が15℃未満かをエアコンが調べ、予熱が必要となればパワーをセーブした状態で熱交換器を暖める。これは他メーカーにはできない芸当だ。
なぜなら予熱するのに大きなコンプレッサを動かしていては、省エネも何もあったモンじゃない。つまりデュアルコンプレッサのなせる技だ。予熱に必要な電力は、およそ290W、電気代に換算すると6.4円。先の暖房実験のグラフを見れば分かるとおり、エコ運転中の消費電力だ。この電気代を高いと見るか安いと見るかは、温風が吹き出すまでの3~5分を待つだけの忍耐力にかかってくるだろう。
こうして熱交換器をあらかじめ暖めているので、朝7時に起きたらすぐに温風がでてくるというワケだ。また土日の朝や会議で帰りが遅くなってしまった場合なども安心。指定時間から2時間後まで予熱運転が継続されるので、帰りが遅れても温風がすぐに吹き出してくる。
あらかじめ朝と夜ダッシュ暖房の時刻を設定しておく | あとは「ダッシュ」ボタンを押すだけで、モード設定と解除ができる |
またタイマーと違いその都度時刻をセットする必要はなく、あらかじめ朝と夜の時刻を指定しておけば、あとはダッシュ暖房をするかしないかをボタン1つで切り替えられる。
このようにエアコンの暖房機能の最大の弱点だった「温風がすぐに出てこない」という点も克服したUDRシリーズは、冬場の石油ファンヒーターを退役させてしまうほどだろう。
これまで3回に渡ってお伝えした東芝 大清快UDRシリーズだが、そのパワフルさや省エネ性能から、ツーバイフォー住宅や高気密・高断熱住宅にお住まいのファミリーに強くお勧めしたいエアコンだ。消費電力などが表示されるため、カーテンやドアを閉めたりして、家族一団となって省エネを実践・体感でき、電気代の請求が楽しみになるだろう。
またアパートやワンルームマンション暮らしの独身世帯には、パワフルさや省エネ以上に、暖房機能が役立つだろう。朝夜ダッシュ暖房で身も心も寒い冬場を乗り切れるだけでなく、独身世帯にありがちな、年中ファンヒーターが鎮座しているスペースを有効に使えるようになる。それが東芝の大清快UDRシリーズだ。
2010年6月14日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)