長期レビュー
三洋「匠純銅 おどり炊き ECJ-XP1000A」 最終回
三洋「匠純銅 おどり炊き ECJ-XP1000A」 |
3回にわたってお伝えしてきたレポートも今回で最終回。第1回では豪快に蒸気を上げながら炊飯するご飯の仕上がりを、第2回では、多彩な炊飯メニューや調理メニューをお届けしたが、今回は、保温性能と予約炊飯、メンテナンス性に加えて、すしやカレー用のご飯モードを使ってみた。
■家族の帰り時刻がまちまちなら、あつあつ保温で炊きたての味
保温モードは2種類あり、炊きたての熱々ごはんをいつでも食べられる「あつあつ保温」と、長時間保温向けの「量ピタ保温」がある。
「あつあつ保温」は、これまで紹介してきた炊飯器と同じで炊き立ての熱々ご飯を食べられるが、長時間保温には向かないモードだ。つまり大きな子供がいたり、共働きなどで家族の夕食の時間がマチマチになってしまう場合に使う保温。
対する「量ピタ保温」は、残っているご飯の量を検知して長時間保温するモードだ。あつあつに比べ低めの温度で保温し、残りご飯の量によってヒーターをコントロールし、残りご飯の乾燥を防いでくれる。夕食の残りご飯を明朝に食べる場合は「量ピタ保温」で一晩保温しておくといい。
写真は「量ピタ保温」で10時間放置しておた状態だが、若干水分が抜けてお米が小さくなっているようだが、おいしさは炊き立てとさほど変わらなかった。
「量ピタ保温」で10時間経過したもの | 匠炊きの後「量ピタ保温」で10時間経過したご飯粒 | 匠炊き直後のご飯粒 |
保温機能の使い分けの目安は、一晩越す場合や朝のご飯を夕食にもまわす場合は「量ピタ保温」、数時間の保温であれば「あつあつ保温」を利用するといいだろう。
■レシピブックのルーを使わない本格カレーを作ってみた
前回少し触れたが、添付されているカラーのレシピブックは、高級炊飯器だけあって本格的なメニューとなっている。中でも気になったのはカレーだ。
カレーを炊飯器で炊くというナンセンスなレシピではなく、カレーにピッタリのガーリック風味のサフランライスを炊飯器で炊き、カレーそのものは市販のルーをまったく使用せず、スパイスから作るというものだ。
まずはご飯作りからスタート。用意するのは、コンソメスープとにんにくを数かけ、色づけにサフランを使うとあったが、近所のスーパーにはそんな高級食材はなかったので、ターメリックで代用した。
これらに加え、オリーブオイルと色づけにターメリック(小さじ1杯程度)を用意 | たっぷりめのオリーブオイルでつぶしたにんにくを炒め、油に香りを移す | カリカリになったにんにくは引き上げる。うちではカレーのトッピング用に再利用した |
オリーブオイルににんにくの香りが移ったら、研いだお米をフライパンに入れ、半透明になるまで炒める。中華がゆを作るのと同じ要領だ。
ガーリックオイルで研いだお米を炒める | ご飯を釜に移しスープを加える。サフランの香りが気になる場合は、ターメリックのほうがいいかも | すし・カレーモードで炊飯。あれ? 30分しかかからないの! |
野菜や肉類、りんごにホールトマトなど |
すし・カレーモードの炊飯は、圧力をかけない炊飯でご飯も硬めに炊き上がる。ここに来てご飯を炊くより先に、カレーのルーを作るべきだったことに気づくが、あつあつ保温でリカバリーすることにした。
続いてレシピに掲載されていた、市販のルーを一切使わないカレーを作りだ。
用意する香辛料は、次の通りだ。5人分ともなると、香辛料のピンを半分ぐらい使うので、かなり高価なカレーと言えるだろう。
香辛料他 | 分量 |
ターメリック | 大さじ1 |
チリパウダー | 大さじ1 |
コリアンダー | 大さじ1 |
クミン | 大さじ1 |
カルダモン | 大さじ1 |
ナツメグ | 大さじ1 |
バター | 2かけ |
スープの素 | 大さじ1 |
花椒(中国山椒) | 小さじ1 |
ジンジャー | 小さじ1 |
塩 | 小さじ1 |
黒コショウ | 小さじ1 |
小麦粉(薄力粉) | 大さじ4 |
カレーといえばガラムマサラだと思っていたが、レシピにはこの名前は挙がっていなかったのがちょっと不思議。
まずはバターと小麦粉でルーを作る。
写真では鍋でやっているが、フライパンを使った方が便利。まずバターを溶かす | 小麦粉を入れダマにならないようにかき混ぜる | ルーの完成 |
いよいよカレー作りの核心だ。まずは肉を炒めて焦げ目を付け、そこに野菜類を放り込みよく炒める。
カレー用の肉でも特売のステーキ肉でもOK | 肉に焦げ目が付いたら、にんじん、たまねぎ、じゃがいもを投入 | 野菜から少し水分が出るぐらい、よーく炒める |
野菜から水分がではじめたところで、水とホールトマト、香辛料を一気に入れる。この時点でだいぶカレーのいい香りが漂ってくる。レシピでは香辛料を炒めていなかったのでそのまま投入した。
水を適量入れる | ホールトマトを入れる | 香辛料を一気に投入 |
写真を見ていると、どれだけ辛いカレーができるんだ? と思うかも知れないが、小学生の娘が食べられるほど中辛の仕上がりになる。最後に小麦粉とバターで作ったルーを混ぜとろみ出し。あとは1時間も煮込めばご覧のようなカレーのできあがりだ。
1時間程度煮込むと、肉の食感も残ったカレーに仕上がる | ターメリックライスはご覧の通り |
自宅でも本格的なカレーが楽しめた |
本格的なカレーだったので、ご飯とルーを別にして、トマトの辛いスープも合わせてインド風にしてみた。奥には、ご飯を炊くときにつかったフライドガーリックが見える。いや~、捨てるのもったいなくて……
味は、市販のカレールーとはまったく違うインドカレーっぽい風味になった。ただ花椒の香りが強かったので、半分ぐらいで作ってもいいのかも知れない。少し辛さが足りないという場合は、一味唐辛子と黒コショウで辛味を調整するといいだろう。
ご飯の仕上がりは、パラリとほぐれる硬めの炊き上がりだが、コンソメの味がシッカリ入っていて、確かにカレーによく合う。ちなみにトマトの辛いスープは、トマトジュースにトマトピューレ、スープの素に水とチリパウダーを入れただけのもの。
■予約炊飯はお米を選ぶ
予約炊飯のタイマーは、他の炊飯器と同じで2つ用意されている。それ自体はまったく問題ないが、お米や炊飯メニューをかなり選ぶのが少し気になる。次の表を見れば明らかだが、第1回の炊飯メニューでも紹介した通り、この炊飯器は白米に特化されており、無洗米では充分に機能を発揮できないと言えるだろう。以下の表は、取扱説明書の情報をもとに、予約炊飯時の米の種類とモードの関係をまとめたものだ。
炊飯メニュ/お米の種類 | 白米 | 無洗米 | 玄米 | 発芽玄米 | 分づき米/胚芽米 | 雑穀 |
匠炊き | ○ | × | × | × | × | × |
四季炊き | ○ | × | × | × | × | × |
ふつう | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
かため | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
やわらか | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
おかゆ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
高速 | ○ | ○ | × | × | ○ | × |
炊込・おこわ | △ | △ | × | × | △ | × |
すし・カレー | ○ | ○ | × | × | ○ | × |
甘み | ○ | ○ | × | × | ○ | × |
もちもち | ○ | ○ | × | × | ○ | × |
なお炊き込みごはんとおこわは、表中で△となっている。これは機能的には予約炊飯可能となっているが、具材が痛んだり臭いが付くなどの理由から、予約炊飯はしないようにとのことだった。
■ヘルシーな玄米はちょっと硬めの炊き上がり
ネットを見ていたところ、玄米の炊き上がりも気になる人もいるようなので少し紹介しておこう。
以前にも玄米を炊いたことがあるが、プチプチとした触感を楽しめた玄米ご飯。この炊飯器の場合は、プチプチ感よりモチモチ感の強い触感で、仕上がりはやや硬めだ。白米と同様に炊き上がりでは、カニ穴ができおいしそうに炊き上がりとなっている。
かき回混ぜあとなのでカニ穴は写っていないが、炊き上がりの様子 | 玄米を炊くと、どうしてもソレにつられて魚系のヘルシーメニューになっちゃう |
炊飯時間はおよそ2時間と白米の倍の時間がかかるので、夕食の準備などでは注意しよう。
■圧力方式なのに手入れが簡単! 小さい部品もない!
炊飯ごとに洗うパーツは、全部で2点。内釜と上ブタだ。
内釜のお手入れは他の炊飯器と大差ないが、注意すべきポイントがある。釜だけでも1.6kgとかなり重いため、釜を持って洗うと洗剤で手がすべり、シンクに落とすと変形の原因になりかねない。銅は金属の中でも柔らかい部類に入るので注意して欲しい。ステンレス製のシンクであれば、シンク自体が緩衝材になって大きく歪むということはないだろうが、タイルや陶器のオシャレなシンクは要注意だ。
すべてが.銅でできているわけではないが、銅はやわらかいので取り扱い注意! | 上ブタの取り外しは、ロックレバー1つで取り外せる | 流しまで持っていったら、さらに2つに分解し洗浄 |
圧力の制御機構は鉄球式だ。食べ終わったあと、スグに洗う場合は水を流すだけで簡単に汚れを落とせるが、完全に乾燥してしまうとなかなか洗いずらいので注意しよう。
また圧力弁を固定している樹脂と金属製のフタの間には、シリコンが挟まれている。このシリコンが柔らかいため、汚れが奥まで浸透してしまい少し落としにくかった。
一方、うまみをキャッチするパーツは、小さい銅色のお皿状のパーツ。多少凸凹があるが、スポンジが引っかかったりはしない。
水を流すだけで簡単に洗浄できる | こちらの洗浄も簡単 | 本体のフタはかるく濡れタオルでパッキンを中心に拭き取る |
炊飯器本体のフタもシンプルな構造になっており、ここからパーツを取り出して洗う必要はない。パッキン部分を濡れたタオルなどで軽くふき取り、凹んだ蒸気の通り道をサッとひと拭きすればいいだろう。
本体フタ上部にある蒸気排出口は、ほとんど汚れることはない。ここまでオネバが上がってきていない証拠だ。排気口ユニットを引っ張ると取り外しが可能で、流しに持って行きさらに2つに分解すると中の掃除も可能になっている。
上に持ち上げると簡単に外せる排気口 | 2つに分解して内部の洗浄もOK | 3週間使った後だが、まったく汚れは見られなかった |
このように圧力式炊飯器にしては、手入れが非常に簡単な機種といえるだろう。
■フィナーレはレシピにあった手まり寿司を作った!
先ほどはカレーを作ったが、おどり炊きのフィナーレはレシピブックに掲載されていた手まり寿司を作ってみた。炊飯モードは「すし・カレー」を使うが、カレーとは水の量が違うことに注意しよう。
炊飯時間は5合でおよそ30分 | 炊き上がりはこんな感じだ | ご飯粒を拡大すると粘りがないのがよく分かる |
炊き上がったご飯は、かなり硬めでシッカリとお米の粒が残っている。また粘りがほどんとないご飯粒になった。これを寿司桶に移して、熱々のうちに寿司酢をタップリ入れ、よく混ぜ合わせてからウチワで荒熱をとると、ぴかぴかの酢飯ができあがる。
寿司酢を混ぜてもやはり粘りは少なく、シャリの型抜きなどではなかなか一塊のシャリにならない。そこで今回は、サランラップを使ってギュッ!と絞ることにした。それでも食べるときには、ご飯がホロリとほぐれるほどだ。
あとは好みに応じで、ネタを乗せ手まり寿司の完成!
ウチワで荒熱を取るのは、よく寿司酸が混ざったあと | 寿司酢をよく吸ってピカピカになり、少し絞まったご飯粒になる | 白身魚には、レモンスライスを載せると一風変わったおいしさになる |
■ズバ抜けたおいしさで、ご飯好きなら文句なしにおすすめ
これまで3週間にわたって「サンヨー 元祖圧力IH おどり炊き ECJ-XP1000A」を紹介してきたが、無洗米を使うと極端に炊飯メニューに制限が出てきてしまうという点を考えると、白米をよりおいしく炊くことに特化した炊飯器と言えるだろう。そしてそのおいしさは、スバ抜けていると言っても過言ではない。
だんぜんご飯派で、毎日おいしいお米を食べたいという人であれば、多少高価ではあるが長く使い込むことで十分にモトが取れる。
さて年が明けた来年早々からは、象印の炊飯器をレビューしていきたい。すでに手元にあり何回か炊飯してみたが、こちらも特色が色々あるようだ。乞うご期待!
2009年12月21日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)