カデーニャ
映像と音声を同時に伝送できる「HDMI」の仕組みから対応機器の開発まで
2018年7月20日 09:00
HDMI(えいちでぃーえむあい)とは、「High-Definition Multimedia Interface」の頭文字を取ったもので、映像および音声をデジタル信号で伝送するための標準規格。ソニー、東芝、パナソニック、日立製作所、シリコンイメージ、フィリップス、トムソンの7社によって策定された。
映像と音声を1本のケーブルで扱うことができ、著作権保護技術のHDCP、今後の普及が見込まれる高解像度の4K、8Kにも対応していることから、多くの家電製品で用いられている。
伝送距離は5m程度が推奨の距離となっており、それ以上の距離では信号が弱まるため長距離で映像や音声を伝送するシーンには適していない。そのため、映像調整用のイコライザーを内蔵することで信号強度を改善し、長距離化を図ったHDMIケーブルも存在する。イコライザー内蔵のものはアクティブタイプ、イコライザー非内蔵のものはパッシブタイプと呼ばれ、パッシブタイプはケーブルの向きという考え方がないのに対して、アクティブタイプの場合は出力側と入力側の向きが決まっている点も違いだ。
しかし、アクティブタイプでも利用できるのは数十m程度のため、100mを超えるような長距離でHDMI機器を利用する場合は、業務用で主に使われるSDI(Serial Digital Interface)へ変換するコンバータが用いられるほか、最近ではHDMIを光ファイバやイーサネットで中継することで距離を伸ばすケーブルも利用されている。
こうした変換や機器接続の際に重要となる要素がEDID(Extended Display Identification Data)だ。HDMIを搭載した機器では、製品名のほかにその機器が対応する解像度やフレームレートなどをEDIDと呼ばれるデータでやりとりする仕組みを持っており、HDMI対応の機器同士が接続する際はEDIDを確認することで最適な動作を行っている。PCやゲーム機などをディスプレイに接続した際、最適な解像度で表示されるのはこのためだ。
HDMIの映像を送出する側がsource、映像を受け取る側がsinkと呼ばれる。パソコンとディスプレイで言うと、映像を出力するパソコンがsource、パソコンの映像を受け取って最適な設定で表示するディスプレイがsinkだ。なお、EDIDはアナログ映像の時代から使われている規格であり、HDMI以外の映像伝送規格でも用いられている。
EDIDが正しくやりとりできている場合は問題がないが、一部にはHDMIの認証を受けていない機器なども存在し(低価格の機器によく見られる)、その場合はEDIDが誤っている、もしくはそもそも記録されていない場合などもあり、こうした機器を配線に組み込むと正しく映像が表示されないということもある。
また、長距離伝送で用いられるSDIはEDIDを持たないため、長距離の伝送においてHDMIをSDIに変換、さらにHDMIに戻すという構成の場合、HDMIのEDIDを読み込んで保存するエミュレータ機能がコンバータに必要となり、こうしたエミュレータ機能がないコンバータも映像が正しく表示されない。
このほかにも距離によって信号が減衰してEDIDが正しく伝送されないなど、外見からはわからないもののEDIDが正しく動作しているかはHDMI機器を構成する上で非常に重要なポイントだ。
正しいHDMI対応機器としてHDMIロゴの表示やHDMI対応を謳うためにはは認証の取得が必要。HDMIの認証を行うATC(Authorized Testing Center)によるテスト費用はHDMIのポートあたり50~150万円程度で、ポート数が増えれば増えるほど認証費用もかかる。なお、国内におけるATCは東京都のソニー2カ所、大阪のパナソニック1カ所の合計3カ所のみとなっている。
HDMI :: Manufacturer :: Authorized Test Centers
認証にはCTS(Compliance Test Spec)という仕様に基づいてATCと同等のプレテストを行い、問題をクリアしてからATCでの本番試験を行う。CTSは国内ではアリオンのような業者が行っているほか、中国や香港のラボに依頼することでより安価に実施することも可能だ。ATCでの本番試験は上記の費用が発生するほか、1回のみでやり直しができないめ、プレテストを事前に行っておくことは必須と言える。
また、プレテストの前に必要な機材を自前で用意してテストを行うことで、認証までのトータル費用を削減することもできる。機材はレンタルで利用することもできるほか、秋葉原の「DMM.make AKIBA」のようにHDMIテストを行う機材が用意されている施設も存在する。
HDMIの認証を取得しているメーカーはHDMI.orgのWebサイトに掲載されており、LiveShellシリーズなど多数のHDMI機器を開発・販売しているCerevoももちろんここに掲載されている。
HDMI :: Resources :: Adopters & Founders
逆に言うとここに掲載されていないメーカーはHDMI認証を正しく受けていないということにもなる。購入したHDMI機器が正しく動作しない、という場合は、このサイトを見て認証が正しいかどうかをチェックしてみるのもいいかもしれない。
この記事は、2017年11月21日に「カデーニャ」で公開され、家電Watchへ移管されたものです。 |