カデーニャ
非ガジェット女子が聞く、「ファーチャンぺー」ってなんのこと? 【キキテーニャ】
2018年6月4日 08:00
「ものづくりって何?」「そもそもハードウェアって?」という非ガジェット女子、レイナがインタビューをするコーナー、「キキテーニャ」。
今回は「カデーニャ」を運営する株式会社Cerevoの代表であり、少年のようなキラキラした眼でユニークな“ものづくり”に挑戦し続ける男、岩佐 琢磨さんを相手に、ものづくりとは切っても切れない「ファーチャンペー」について、全5回に渡りその秘密に迫る。
岩佐(敬称略):ものづくりの面白い話か。ファーチャンペーなんてどうでしょうか?
レイナ:ファーチャンぺー? 食べ物の名前ですか……?
岩佐:普通は聞いたことないですよね。ファーチャンペーは、中国深センの電気街です。漢字は華強北と書きます。中国語は「华强北」で、「フア・シャン・ペイ」ぐらいの発音ですかね。
レイナ:「华强北」全然読めませんね(笑)。
岩佐:秋葉原の30倍の規模なんです。とにかくビルの数が半端ない。おそらく世界最大の電気街でしょうね。
レイナ:すごそう! 写真ありますか?
岩佐:隠し撮りした写真がたくさんあるはず。
レイナ:隠し撮りって……。撮っちゃいけないんですか?
岩佐:わかんないっす(笑)。あまり英語が通じない場所なので撮っていい? とも言えず。表通りはきれいですが、裏は薄汚い感じです。
岩佐:8階建ての薄暗いビルに、幅150cmの机が1店舗みたいなイメージ。そんな店が何百とひしめきます。コミケに行ったことがあればイメージしやすいかも。
レイナ:コミケ行ったことないので、アメ横地下のアジア食品売り場をイメージしてます。
岩佐:若干近いですね。
ものづくりの街、ファーチャンペー
レイナ:ファーチャンペーでのコミュニケーションは中国語ですか?
岩佐:そうですね、簡単な英語は通じます。ワン、ツー、スリー程度。
レイナ:ワン、ツー、スリー(笑)。買い物には困らないですね。秋葉原と違うところは、どんなところですか?
岩佐:まず、秋葉原はB2C(※1)の街です。つまり、一般のお客さんが買い物にくるところ。でも、ファーチャンペーはB2B(※2)。つまり工場の人など、プロが買いに来るところ。そこが大きく違います。秋葉原にも電子部品を売っている店(秋月電子、千石電商など)がありますが。
※1:Business to Consumer(B2C): 相手が一般のお客さま向けのビジネス
※2:Business to Business(B2B): 相手が企業のビジネス
レイナ:中国の工場の購買の人が来るんですね。
岩佐:そうそう。秋葉原にくらべて電子工作、ものづくりという側面が強いのが特徴ですね。ファーチャンペイは工場の人が仕入れにくるので、秋葉原で1個単位、10個単位で売っている電子部品が最小ロット3,000個で売っていたりします。
レイナ:最小ロット3,000個! すごい量。
岩佐:10Kといった単位で売ってますよ(※K=1,000)。1個の部品が1mm四方だったりするので、3,000個でもでかいCDくらいです。
レイナ:細かすぎて無くしちゃいそう……。
岩佐: レイナさんには通じないかもしれないけれど、LP/LDサイズのリールもあります。(※LDとCD/DVDのサイズ比較はこちら)
レイナ:LD? はじめて知りました(笑)。みんな車で買い付けに来るんですか?
岩佐:部品が小さいから必ず車というわけでもないです。ただあの辺はタクシー文化がすごいんです。タクシー2時間乗っても3,000円程度ですからね。
レイナ:やす〜い! 東京でもそのくらいで乗れたらなあ。
岩佐:ファーチャンペーが東京だとしたら、工場があるのは埼玉なんです。工場にはだいたい車があって、専属のドライバーが何人もいるんです。
レイナ:日本と文化が全然違いますね。
岩佐:工場のまわりにはDidiもいっぱいいます。いわゆる白タク、UBERの中国版です。UBERの中国版Didiは時価総額1兆円超えているという噂の超絶企業です。
レイナ:Cerevoさんはファーチャンペーをどんな風に使っているんですか? どのくらいの頻度でどんな目的で買い付けに行くのかなど教えてください。
岩佐:弊社がファーチャンペーを利用する目的は大きくわけて3通りです。1つ目は、工場であれが足りないこれが足りない! という緊急事態が起きるとき。その時に工場の車かDidiを飛ばして部品を調達します。特殊な両面テープ1000枚緊急調達! みたいな。普段は備品メーカーから買うんですけどね。緊急だけではなくて、工場がAという機材を支給してくれよと言ってきた時に、ファーチャンペーで買ってこいよ、金はこっちが払うから! というやりとりもあります。
2つ目はAlibabaです。AlibabaというWebサイトがあるんですが、そこは中国中のものづくりの会社が、B2BのECビジネスをしているところ。日本のモノタロウの楽天版が近いかな。Alibabaに出店している店って、先程の言ったファーチャンペーの机150cm幅の個人商店だったりするんです。なので、Alibabaでモノ買うことが実はファーチャンペーの商店から買ってる、なんてことも結構ある。
岩佐:3つ目は、製品企画や経営企画のための勉強として使いますね。ファーチャンペーを覗き、中国コピー品文化に触れて、今どこまでチャイナコモディティ、ファーチャンペーコモディティになっているのかを定期的に知ることは結構大切なんです。技術的なコモディティだけではなくデザインや機構、質感や価格、その辺を見ます。
レイナ:なかなか奥が深いですね。次回は、ファーチャンペーの裏側を覗いちゃいましょう。
この記事は、2017年7月28日に「カデーニャ」で公開され、家電Watchへ移管されたものです。 |