カデーニャ

住宅事情への挑戦! 自走式プロジェクター「Tipron」を畳部屋で使ってみる

 ※今回の記事は、カデーニャを運営していた株式会社Cerevoの製品レビューです

 最近は色々なIoT機器が増えていますが、住宅事情ゆえに導入を諦めざるを得ないケースもあると思います。例えばスマートロックは、玄関扉の内鍵の形状次第ではどうやっても取付不可。また、シーツのように敷いて使うタイプの睡眠時間計も、ベッドがそもそもない家ではまともに運用できないでしょう。

 そういった限界に今回はあえて挑戦。Cerevoが発売中のプロジェクター搭載型可変ホームロボット「Tipron」を、築50年・全部屋が畳敷きの和風家屋で運用してみました。

Tipron(税別229,800円)

 そもそもTipronは、ずばり言えば「自走式プロジェクター」。幅30×奥行き34×高さ42cm、重量9.5kgほどのサイズながら、底面の車輪で自走し、首が伸びるように変形してプロジェクターになるという、未来感バリバリの製品です。ができません。

Tipronは各所にカメラを搭載。特にこのメインカメラは、Wi-Fiセットアップ用QRコードの読み取りはもちろん、マニュアル移動時のオンボードカメラとしても機能します
Tipron操作アプリでマニュアル移動操作中の様子。本体で捉えた映像が表示されています

 229,800円という価格からしても、本来の用途は恐らく法人向けでしょう。小綺麗かつ広々としたミーティングルーム、そして観葉植物の影から颯爽とTipronが登場、めくるめくプレゼンの嵐、そして取引先とガッチリ握手……そんなシチュエーションが目に浮かぶようです。

 しかし最大の懸念は全部屋が畳の我が家で「Tipronが畳部屋で本当に自走できるのか?」。答えは……大丈夫でした! フローリングならそれこそ一面ツルッツルなのでなんの障害もありませんが、畳には「ヘリ(縁)」がつきもの。凸凹しているため、これを本当に乗り越えられるのか不安でしたが、結果、特に問題なかったようです。

 Tipronの底面を見てみると、それも納得。少なくとも直径7cm以上の大径ゴムタイヤが2本、そしてプラスチック製キャスター2本がついていて、これで自走するのですが、特にタイヤの方は相当ガッチリした作り。これなら畳のヘリ程度は十分乗り越えられるでしょう。

ご覧のように畳のヘリ程度なら移動にはまったく問題なし
Tipronの底面。少なくとも直径7cm以上、幅1.5cmのかなりガッチリしたタイヤがあります

 そしてTipron本体の充電は、ほぼ自動。壁際などに充電ステーションを固定しておくと、スマホアプリから「ドッキング」操作をすることで自動で移動します。端子を手で繋ぎ直す必要もありません。ただ、安定性を考慮してステーション自体をテープ止めしなければなりません。この点は畳部屋・フローリング部屋に関わらずなので、ご注意を。

 映写したい場所へTipronを移動させるには、最初はアプリからマニュアル操作するのが無難です(手で運んでもいいですけど)。前進・後退・左回転・右回転を組み合わせ、所定の場所へ移動させるのは、まさにラジコン感覚です。

 そして、いよいよ映像投写。アプリ上でアイコンをタップすると、Tipronがトランスフォームを開始! 42cmだった高さが一気に81cmに伸びる、本来のその勇姿を現します。

見よ! これがTriponトランスフォーム後の勇姿だ

 と張り切ってはみたものの、それ以上に大きな事実として「そもそも投写できるような場所がない」──。これだけはどうしようもありませんでした。43インチの液晶テレビを置くのにも苦労している我が家は、プロジェクターにぴったりな「フラットな壁」がまともになく、壁の色も鶯色というか茶色というか、実にビミョーな色づかいの壁(それだからこそギラつきがなくて落ち着けるんですが)。正直、プロジェクターには不向きです。

 これらを総合しますと、我が家でプロジェクターを有効に使えそうな場所は「ふすま」だけ。しかも下半分は扇やら和小物の柄がついているので上半分のみという、すさまじい縛りまで設定されることとなりました。いやはや。

スペース、壁の色などを考慮すると、我が家で投写ができそうなのはふすまくらいでした……

 さて映像投写の場所が決まったら、まず試したいのはYouTube動画の再生。Tipronアプリ内でYouTube動画を検索し、プレイリストに登録することで次々と連続再生できます。最近筆者はゲーム実況動画にハマっているので、これを環境ビデオ的に楽しむのがなかなかオツでした。もちろん、投影先がふすまでも全く問題なし(家の環境さえ許せばもっと大画面で見たかったですけど)。内蔵スピーカーがあるので音の再生もOKです。

 また、外部から映像をHDMI入力できますが、自走式プロジェクターという特性を考えると外部にケーブル接続するのはやや野暮ったい感もあります。そんな時はUSBメモリに動画を保存しておき、これをTipronに挿入して再生するのがオススメ。対応ファイル形式は3gp/mp4/ts/webm/mkvです。USBメモリからだとYouTubeのようなWi-Fi経由より再生が安定するようです。店頭でデモ動画をループ再生するようなシーンにも向いているかもしれません。

HDMIのほか、動画を保存したUSBメモリも映像ソースとして使えます

 ざっとTipronをご紹介しましたが、やはり利用環境をある程度選ぶのはたしかです。机の上や押し入れの中ではなく、自走させられる範囲の床面に常時置いておき、さらに充電場所も考慮する必要があります。一番快適に使えそうなのが「フローリングの広いリビング」でしょうか。それこそロボット掃除機の横にTipronを並べておくのが、イノベーター・アーリーアダプターの勲章となるかも!?

この記事は、2017年9月29日に「カデーニャ」で公開され、家電Watchへ移管されたものです。

森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのWebニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。主に「INTERNET Watch」「AV Watch」「ケータイ Watch」で、ネット、動画配信、携帯電話などの取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2017」「ウェアラブルビジネス調査報告書 2016」(インプレス総合研究所)。