カデーニャ

面白ギアの宝庫「サンコー」の調達と開発のヒミツに迫る! 【キーマンズインタビュー】

 秋葉原には、他ではなかなか手に入らない、ちょっと変わったデジタルギアや雑貨を置く店がある。その代表格と言えるのが「サンコーレアモノショップ」だ。

 ごろ寝しながらノートパソコンを使うためのスタンドから、最近では人型の風船にシャツを着せて乾かす衣類乾燥機などを取り扱っている。

 今回は、取り扱っている商品の調達や開発についてどのような手順を踏んでいるのか、アイデア出しから決断、そして発売までを、「サンコーレアモノショップ」を運営するメーカーでもあるサンコー株式会社で、広報を担当する﨏(えき)晋介さんに伺った。

サンコー株式会社広報の﨏(えき)晋介さん

MP3プレイヤー搭載腕時計を皮切りにレアモノビジネスをスタート

 「サンコーレアモノショップ」が設立されたのは2003年のこと。PDAやパソコン周辺機器などのデジタルガジェットを扱う会社にいた社長が、「自分で見つけてきた面白いものを販売したい」と考えて創業したという。

 創業時の逸品と言えるのが、MP3プレイヤー搭載を搭載した腕時計。まだ音楽配信が本格的に始まる前、音楽CDをリッピングして持ち歩いていた時期だ。

 サンコーの商品は、自社で企画したオリジナル商品と、既存の製品を中国をはじめとするルートで調達して販売する商品の2通りがある。毎月10~12アイテムを展開するサンコー商品のうち、8割近くが既存商品の調達、残りの1~2アイテム程度がサンコーオリジナルの商品。オリジナル商品の割合は年々増えているという。

サンコーの取り扱い製品

 調達の方法は主に深センや中国で開催されている展示会。そこで面白いものを見つけては原価を確認し、日本で売れるかどうかという市場調査を行う。「例えばすでに同じような商品が安く販売されている場合は断念しますし、行けそうなら商品を取り寄せて、検査してから発注をかける、という流れですね」。

国内向けのカスタマイズや各種手続きはサンコーが担当

 日本で販売するためのカスタマイズはサンコーが行う。製品そのものの仕様はコストがかかるため変更しないが、本体カラーの追加・変更に加え、日本向けパッケージもサンコーの社内デザイナーが担当。工場へデータを送り、パッケージのデザインを変更してもらう。また、商品によってはコストの観点からもパッケージはそのままで販売することも多いという。

 海外製品の場合、日本で売るための手続きが必要になることも多いが、そうした諸手続もサンコーの役割だ。手続きによっては相手先から必要な資料もらって提出するだけ、という簡略化も可能だが、問題は「技適」に代表される無線認証などだ。

 たとえば、取り扱いたい商品にBluetoothによる通信機能が付いていた場合、国内で新たに技適の認証費用が乗ってくる。しかし、何万台という大量の仕入れであればともかく、数百単位の小さな取り扱い数では、商品に認証費用のコストは載せると単価がとても高くなってしまう。そのため、重要な機能でない場合は、販売の簡略化のためにあえて通信機能をオフにして販売することもあるという。

 最初に発売したMP3プレイヤーから15年近くが経過した現在では中国企業や工場との関係も深くなっており、いち早く商品を紹介してもらえたり、アイデアを出してもらえる関係があるという。それらがサンコーの取り扱う商品として店頭に並んでいるのだ。

調達に加えて近年はオリジナル商品の開発にも注力

 新しい商品を積極的に探し回り、また、優先的に紹介してもらうという信頼関係を構築しているサンコー。だが、それでもアイテム数は足りないという。それを補うべく強化しているのがオリジナルの商品だ。

 最初に開発したのが「仰向けごろ寝デスク」。名前の通り、寝転んだ状態でノートパソコンを操作できる机だ。これがヒット商品となり、「うつぶせ寝クッション」なども追加、改良やバリエーションの開発を進め、現在シリーズ8代目を発売するまでになっている。

最新の「超軽量折りたたみ式【仰向けゴロ寝デスク】」※現在は完売

 オリジナル商品の企画は社内のアイディアから。サンコーのコンセプトである『面白くて役に立つものを展開する』を実現するアイディアを、アルバイトを含めて約20人のスタッフがそれぞれ毎週2つ以上提案する、という社内ルールが設けられている。

 アイデアは既存の製品の改善点から全くの新しい製品まで何でもありで、会社のカラーにとらわれることもない。例えば麻雀が好きなスタッフが、「自動で点ピンが計算できる麻雀卓」を提案することもあったという。

 こうしたアイディアは社内の電子掲示板に掲載され、最終的には社長が採用・不採用の判断をする仕組みとなっている。また、アイディア賞のような評価もあるそうだ。

 現在サンコーが力を入れている家電製品の第一弾となる「アイロンいら~ず」も社内のアイディアから生まれた。「アイロンがけが面倒だというアイディアを、企画部が毎週行っている企画ミーティングで検討、その中で『内側から膨らませて乾かす』というアイデアが生まれました」。

アイロンを使わずシャツのしわを伸ばせる「アイロンいら~ず」

 なお、新商品はオリジナル製品だけでなく、すでに海外で販売されている製品を仕入れるというアイディアも提案できる。この場合は該当の商品に関するURLや写真に、提案者の思いを乗せて提案し、これを社内の新商品委員会が判断。委員会のGoサインが出ると調達に向けての市場調査が行われ、そこで問題がなければ調達を実行、販売がスタートする。

日本から中国と直接交渉。違う国ならではのトラブルも

 サンコーは社内にエンジニアを持たないため、オリジナル商品の開発も長年培ってきた工場とのやりとりが基本だ。商品企画部や調達部門、時には社長自らが現地とやりとりをする。「中国にある協力会社を通じて現地とのやりとりを仲介してもらったり、『この機構でできるのはどこの工場……』と工場をあたって、作り込んでいきますね」。

 中国とのやり取りは英語でのチャットが基本だ。とはいえ、お互いに自国の言語ではないこともあり、思うような意思疎通は難しい。なので、動画映像などを見せながら、ときにはサンプルを取り寄せて違う部分を指摘するということを繰り返す。品質管理のためにもサンプルをその都度チェックすることが重要となるという。

 サンプルができあがったら日本へ送って仕様を確認する。基本はこの繰り返しだが、製品化まではトラブルも多い。「こちらが要求していることを正確に理解してもらうのが、けっこう大変です。言語の違いもあり、日本人と中国人の考え方の違いもあり、さらには相手がエンジニアの思いも勝手に乗っけてきちゃうので、違うものが出て来ることがあります。完全に関係のない機能が付いてきて、コストも上がってというところがあるので、うまく伝えて、やり取りをすることが大事ですね」。

 トラブルの1つとして、中国とのやりとりではよくあるパターンの『サンプルだけは本当に性能がいい』というものがある。実際に発注すると、一段階、二段階下のクラスの製品が届くというわけだ。

 仕様が異なるなら全部作り直しになるかというと、そうとは限らないのがハードウェアの難しいところ。「本当なら全部やり直したいところですが、そうすると開発スケジュールも伸びますし、やり直しにコストがかかることもある。そうすると全部やり直しで突き返すよりも、問題となったところをこちらで手直ししたほうが早い、なんてこともあるんです」。

ECサイトのほか直営店でも製品を販売。サポートも自社で完結

 こうしてできあがった製品は、自社のECサイトに加えて自社の直営店で販売。直営店の歴史は古く、会社設立の3年後である2006年には設立、今年で11年目を迎えるという。かつては池袋に店舗を展開していた時期もあったが「客層が違った」との判断から、現在は秋葉原の2店舗に集中している。

 ECと店舗では売れ筋の製品も異なる。例えばディスプレイを固定するアームなどの製品は見た目のわかりやすさから店舗のほうが売れ行きがいいという。また、近年は海外からの旅行者が多く、店舗の売上も1割近くが外国人だという。サンコーでも英語ができるスタッフを用意するなど、こうした外国人客への対応も行っている。

 製品のサポートは自社の専属スタッフ2名が対応。メールに加えて電話でのサポート対応も行っている。基本的にはメールや電話で問い合わせの内容を確認し、一次回答で対応できない場合は実機を回収して動作確認を行う。不具合が確認できた場合は基本的に交換対応とするが、工業用内視鏡やマイクロスコープといった一部の業務用製品については修理対応も行っている。

 電話サポートはメディア露出にも大きな影響を受ける。自社製品がテレビで紹介されると、これまでサンコーがターゲットしていた層とは異なり、ガジェットに関する知識があまりない高齢者からの問い合わせが増える。その結果「microSDとは何なのか」「USBはどこから取ればいいのか」といった、製品そのものとは関係ない問い合わせも増えるため、サポートの対応工数も大幅に増えるという。

オリジナル商品ならではの「価格設定の難しさ」も

 こうしてオリジナル商品の開発を積極的に行っているサンコーだが、過去には失敗作もあった。そのひとつが「USB電動うちわ」だ。

 初代モデルは自分で組み立てるキットタイプの製品として3,980円で販売し、ある程度の実績を残した。次のモデルは購入してすぐに使えるよう、組み立て済みのモデルとして開発、アルミ削り出しを使って外観にもこだわったものの、思うように売上が伸びなかったという。

 「2世代目は5,980円で売り出したら全くダメでした。ネタな製品はサンキュッパなら買ってくれるけど、この値段ではダメだったみたいです。バルミューダのようなデザイン家電を目指していて、実際に風も優しくて気持ちよかったのですが、最終的には在庫を1980円で放出しました」。価格設定の難しさを示すエピソードだろう。

アルミ削り出しの2世代目「USB電動うちわ」

 他にはない、ちょっと面白く、あると便利な商品を数多く扱っているサンコーには、長く培った信頼関係と、中国とビジネスを行う上で重要なちょっとしたノウハウがある。これからも家電を中心としたオリジナル商品は続々と開発、販売を進めていくという。サンコーのこれからの展開から目が離せない。

この記事は、2017年10月25日に「カデーニャ」で公開され、家電Watchへ移管されたものです。

コヤマタカヒロ

フリーランスライター。1973年生まれ。学生時代より雑誌ライターとして活動を開始。PC、IT関連から家電製品全般までに造詣が深く、製品やビジネスを専門的ではなく一般の方がわかるように解説するスタンスで執筆活動を展開している。近年は、デジタルとアナログ、IT機器と家電が交差、融合するエリアを中心に取材活動を行なっている。雑誌やWebに連載多数。企業のアドバイザー活動なども行なっている。 Twitter:@takh0120