カデーニャ

ものづくりの隠れた要!? 「箱作り」の面白さと難しさ【キキテーニャ】

 「ものづくりって何?」「そもそもハードウェアって?」という非ガジェット女子、レイナがインタビューをするコーナー「キキテーニャ」。今回は株式会社Cerevoの代表・岩佐さんが「ものづくりに欠かせない!」とこだわる「箱」についてのノウハウをお届けする。

ものづくりで大事なのは「箱」!

 レイナ前回は「ファーチャンペー」のお話ありがとうございました。今回はものづくりのどんなお話を聞かせてもらえるんでしょうか。

 岩佐:そうですね、では今回は「箱」の話をしましょうか。ものづくりというと製品に関心が集まりがちだけど、実は大事なのは箱なんですよ、箱!

 レイナ:箱、ですか……。製品が入っている箱のこと?

Cerevoの「1/8 タチコマ」のパッケージ

 岩佐:そうです。製品が中に入っている、いわゆる「パッケージ」ですね。製品の箱を「どんな箱にするのか、その箱をどうやって作るのか」というのは、ものづくりを考えるうえで非常に面白いし、難しいところなんです。

 レイナ:箱はわりとすぐ捨てちゃって、気にしたことないかも……。あ、でも高級な箱は何かにつかえるかもと思って、取って置くこともあります。

 岩佐:化粧品はおしゃれな箱、時計は高そうな箱と言った具合に、製品によって箱のデザインや種類は違います。あまり気がつかれにくいことですが、ものづくりをするハードウェアスタートアップの人はみんな、箱についてすごく悩んでいるんですよ。

 レイナ:製品の顔ですものね。

 岩佐:箱の種類を大まかにわけると2つです。1つは店頭で見かける箱ですね。家電量販店などでお客さんが手にするタイプの箱です。こういう製品の箱はデザインも凝っていて、手に取ったときに製品の魅力が伝わるように作られています。

もう1つは店頭であまり見ることのない箱。例えば通販で服を買ったときのように、店頭で見ることがほぼない、輸送が目的で作られる箱です。レイナさんがアクセサリーを買ったときの箱と、100円ショップで買った製品の箱って、デザインが全然違いますよね?

 レイナ:言われてみればたしかに! でも、箱って全体的にもっとシンプルにすればいいのに、と思います。

 岩佐:その通りなんですけど、そうもいかない理由があるんです。知名度が低いブランドの製品は、消費者はパッケージを見て買うことが多い。だから箱に情報が必要になるんです。iPhoneみたいなシンプルなデザインはアップルのように有名なメーカーだからできるデザインであって、知名度の低いメーカーがiPhoneのようなパッケージにしても売れないんですよ。

iPhone 7 Plusのパッケージ

 レイナ:そういうことなんですね。「水に濡れても落ちないマスカラ!!!」とか、いろいろな情報を与えないといけないんですね。

 岩佐:はい。なので、高級品やよく知られたものほどパッケージの文字が減ります。iPhoneやSK-IIもパッケージに文字があまり書いていないですよね。

ハードウェアスタートアップを悩ませる箱の素材選び

 岩佐:デザインだけでなく、どこで売るのかによっても箱の形は変わります。例えば家電量販店でよく見かける、フックに吊るす穴が空いているパッケージがありますよね。スマートフォンのケースとかイヤフォンなんかに使われている。あれは「ブリスターパッケージ」という箱の素材を使っていて、吊るす穴が空いていると同時に中身をそのまま見せられるようにしているんです。

 レイナ:確かに、ただの段ボールの箱は中身もわからないし味気ないですもんね。

 岩佐:そうなんです。製品や売り場、販売方法によって箱も変わるので、箱の素材と加工方法も悩みどころなんですよね。

 安い箱の例で言うと、先ほどのブリスターや、段ボールむき出しのものは数千個発注すれば1個あたり1ドル以下で作れます。Cerevoの製品で言うとMKZ4なんかがそうですね。

MKZ4のパッケージ

 また、塗装が入る分若干値段はあがりますが、「LiveShell PRO」の箱なんかも単価は抑えてあります。

LiveShell PROのパッケージ

 ブリスターの周りに紙のスリーブをつけたりすると、ここから数十円上がります。

REC-1はブリスターの周りに紙のスリーブ

 また、こういう段ボールをやめて、厚紙の上に化粧紙を貼ったりする箱がiPhoneがきっかけで家電製品でもよく使われるようになりました。弊社の製品だとHintなどがそうですね。Hintは箱が大きいということもあって、1個あたり5ドルくらいします。もちろんiPhoneのように小さな箱で、しかも一千万個作れば、化粧紙貼り箱でも1ドル前後まで下がるでしょうけれども。

Hintのパッケージ

 そしてさらに高級な箱になると、製品のように型を起こして金型で抜くので、初期費用が100万円くらいかかります。ただ、一度型を起こしてしまえばその後の単価は安くなりますね。GoProなんかがこのパターンですね。

 レイナ:おお、こんないろいろあるんですね。

 岩佐:ただし、高ければいいのかっていうとそうでもないのが難しいところ。例えば、化粧紙貼りの箱は折りたたむことができないので、組み立てた状態でしか輸送できないんです。箱屋さんから組み立て工場に送るときに箱だけでコンテナ一個分になっちゃう。普通の段ボールは、折りたためるので、安いし輸送コストもかからない。こういうコストの違いも、ハードウェアスタートアップを悩ませるポイントですね。

この記事は、2017年11月17日に「カデーニャ」で公開され、家電Watchへ移管されたものです。

Reina

非ガジェット女子。普段は哲学女子。nebulaを運営しています。