【特別企画】

メーカーに聞く、最新空気清浄機のポイント:ダイキン工業編

~“新型インフルエンザ100%除去”ストリーマ技術の認知向上を狙う
by 大河原 克行




 新型インフルエンザの感染が世間を騒がせているなか、身近な感染防止策として「空気清浄機」が注目されている。そこで今回は、空気清浄機のメーカーに最新モデルの特徴とポイント、市場動向などについて話を伺った。



 ダイキン工業は、同社独自の除菌/脱臭技術「光速ストリーマ」を搭載した加湿空気清浄機「うるおい光クリエール」2機種と、同じく光速ストリーマ付きで、加湿/除湿/空気清浄機能を備えた「クリアフォース」1機種によって、年末商戦における空気清浄機事業を展開する。

ダイキン工業の加湿空気清浄機の最新モデル「うるおい光クリエール MCK75K」加湿/除湿/脱臭/集塵という、4つの機能を備えた“除加湿清浄機”の「クリアフォース MCZ65K-W」


“抜群の性能を誇る”――空気を本体内に吸い込んで除菌する「光速ストリーマ」

ダイキン工業 空調営業本部 営業企画部販促ソリューション提案担当 酒井茂孝課長

 ダイキン工業空調営業本部営業企画部販促ソリューション提案担当・酒井茂孝課長は、「ダイキンの最大の特徴は、ウイルスやカビ菌、アレル物質などを吸い込んで、『ストリーマ放電』技術によってしっかりと分解、除去すること。強力な酸化分解力を持つストリーマ技術は、熱エネルギーに置き換えると、10万℃にも匹敵する驚異の分解力を実現しており、これによって抜群の性能を誇る」と胸を張る。

 「ストリーマ放電」とはプラズマ放電の一種で、ストリーマ放電により放出した高速電子が空気中の窒素・酸素と結合、強力な活性種に変化することで、これらの活性種がウイルスや菌のタンパク質を酸化分解し、除去するというものだ。ストリーマ放電は高速電子の放電領域が広く、空気中の酸素や窒素が電子と衝突しやすいという。

 ダイキンの空気清浄機は、本体内にこのストリーマ放電のユニットを備えており、これを用いて除菌する点が特徴だ。他社の空気清浄機では、各社独自のイオンを室内に放出し、それによってウイルスやカビ、臭いを抑制するのが主流だが、ダイキンは本体内に吸い込んだ空気に対し、ストリーマを照射、これによってウイルスや菌を分解、除去する仕組みになっている。

 しかも、今年の新製品では、同じ筐体サイズながらもストリーマ放電を発生する針を4本から6本へと増やし、それにより、放電量を従来機種の37μAから、新製品では55.5μAへと、1.5倍に増やすことに成功した。酒井氏によれば、「ウイルスを分解・除去するスピードは従来の4時間から1時間へ約4倍の性能向上を実現。また、室内に浮遊するカビ菌を、約15分で除去できる」という。これに伴って、同社ではストリーマ放電技術の呼称を“光速ストリーマ”としている。

「光速ストリーマ」の装置は本体側面にある(写真はカットモデル。通常は外からは見えない)「光速ストリーマ」が放電している最中の拡大写真。青い光がストリーマ放電
ストリーマ放電により放出した高速電子が、空気中の窒素や酸素と衝突・合体することで、強力な活性種に変化。この活性種が、菌やウイルスを強力に分解するというストリーマ放電にて生成される活性種のうち、特に強力な分解力を持つのが励起窒素分子。オゾンの6倍、光触媒の表面で発生する水酸ラジカルの2.3倍だという新製品では、ストリーマユニットの電流値を37μAから55.5μAへアップ。これにより、ウイルスの分解・除去スピードが従来と比べて約4倍にアップした

 光速ストリーマは、これまでに鳥インフルエンザウイルスやノロウイルス、花粉、カビなどを不活性化する効果があることを実証。さらに9月15日には、新型インフルエンザウイルス(A型 H1N1)を4時間で100%分解、除去できることが、ベトナム国立衛生疫学研究所との共同実証で明らかになった。酒井氏は「新型インフルエンザを、100%分解・除去する効果が実証されたのは、世界では初めてのこと」としている。

 光速ストリーマユニットを中核に、ホコリをキャッチし、細菌やアレル物質を分解する「プレフィルター」、ホコリや花粉を帯電させ次のフィルターに送り出す「プラズマイオン化部」、帯電したフィルターでホコリや花粉を吸着する「静伝電集塵フィルター」、光触媒でニオイやウイルスを除去する「光触媒チタンアパタイト」、ホルムアルデヒドやニオイを分解する「光触媒&ストリーマ脱臭触媒」を経て、加湿構造部を通じてのちに、きれいな空気を部屋に排出するというのが、ダイキンの空気清浄機の基本的な構造だ。

今年9月には、新型インフルエンザウイルス(A型 H1N1)を4時間で100%分解・除去すると発表。同ウイルスで100%の効果を謳うのは業界で初(10月19日時点)ダイキンの空気清浄機の構造。ストリーマユニットを含む、全6層の機構で空気を清浄する


加湿・集塵フィルターは10年間購入不要。「ニオイとる~ぷ」が見送られた理由は?


加湿フィルターは10年間交換不要。保水しやすく脱離しやすい「ラッセル構造」を採用している
 さらに、加湿時に使用する水にもストリーマを当てて除菌する「キレイ水加湿」機能を採用。加湿フィルターには、水が浸からない円形のローター形状を採用するとともに、水分が捉えやすくかつ離れやすい「ラッセル構造(立体編物)」とすることで、10年間のフィルター交換を不要にした。

 加湿機能については、同社のエアコンで高い実績を持つ湿度コントロール技術を採用、のどや肌にちょうどいい高めの湿度に自動制御できる「のど・はだモード」を搭載する。また、0.3nmという細かい水粒子「E-moist」が肌にうるおいを与えるほか、加湿に使用する水をストリーマで除菌する「キレイ水加湿」機能も備わっている。

 一方、臭いなどを吸収する集塵フィルターでは、集塵有効面積を2倍に拡大することで効果を高め、1日に10本のタバコを吸っても、約2年間使えるという。

 「集塵フィルターは交換用も含め5枚を付属していることから、ほぼ商品寿命に達するといわれる10年間は追加購入不要で集塵フィルターを利用できる」(酒井課長)という配慮も、ダイキンならではのものだ。

 なお、うるおい光クリエールの従来機種では搭載されていた持ち運び可能な脱臭ユニット「ニオイとる~ぷ」は、今年は搭載されていない。

 「クリアフォースには高級機種という観点から、引き続きニオイとる~ぷを採用した。だが、空気清浄機の購入理由として必ずしもニオイとる~ぷが要素にあがっているわけではなかった。コスト削減の狙いから、今年の製品ではニオイとる~ぷの搭載を見送った」という。

集塵フィルターは2年間で交換も、本体内に交換用フィルターが用意されているため、10年間購入が不要持ち運びできる脱臭ユニット「ニオイとる~ぷ」(写真左)は、今回は採用が見送られた

病院や幼稚園など……光速ストリーマの業務用展開も視野に

「うるおい光クリエール」のパンフレット。黒バックに青い光をあしらったデザインで、光速ストリーマを強くアピール
 その一方で、ストリーマ放電技術の優位性に訴求展開を注力。これまでにはない、黒いバックに青い光をあしらったカタログや店頭POPを採用し、さらに「世界で唯一ストリーマ技術で有害微生物を分解・除去する空気清浄機」という、長めのキャッチコピーを使うことで、強い印象を与えることを狙った。

 「ストリーマ放電そのものの認知度がまだ低い。外にイオンを放出する空気清浄機が注目を集めているが、空気清浄機のなかにウイルスを吸い込んで分解、除去する強みをもっと訴求しなくてはらない」(酒井氏)

 ダイキンでは、光速ストリーマを同社基幹技術に位置づけ、空気清浄機以外の製品への展開のほか、今後は、デバイスとしての事業展開も図る姿勢を明らかにしている。すでにエアコン「うるるとさらら」の一部製品には、光速ストリーマが搭載されている。

光速ストリーマのロゴも新たに採用した
 また、「C3(シーキューブ)」と呼ばれる光速ストリーマのロゴマークを新たに用意。清潔な「クリーン」、ウイルスを分解する「クラッシュ」、吸着・分解・再生の繰り返しによって脱臭能力を維持する「サイクル」の3つの「C」の意味を持たせ、このロゴマークの普及にも取り組んでいく考えだ。

 酒井氏は「病院や幼稚園などウイルスに弱い人たちが集まるように場所での活用提案も積極化したい。今後は、業務用分野への取り組みも視野に入れていく必要がある」と、光速ストリーマ搭載製品の販路拡大にも意欲を見せている。


予約の時点で注文殺到――光速ストリーマの認知度と生産力の向上を目指す

カラーバリエーションとして、ホワイトに加えてピンクとブラウンを新採用。インテリアとしての要素も加わっている
 ダイキンが、空気清浄機の新製品を発表して以降、同製品の売れ行きは極めて好調だ。

 加湿機能搭載モデルが注目を集めるなか、この分野で定評があるダイキン製品への注目度が高まる一方、光速ストリーマ技術が、新型インフルエンザを4時間で100%分解、除去できることが実証されたことで、さらに注目を集めている。

 酒井氏によれば「発売約1か前となる8月6日から予約販売を開始したところ、発売前に当初予測の10倍近い注文が殺到。11月半ばまでの生産量がすでに予約だけで埋まってしまった。増産体制を図り、10月中旬には受注残を解消できるように努力している」という状況だ。

 本来は、光速ストリーマの訴求を図るために内部構造を見えるようにしたカットモデルを店頭に展示する予定だったが、「カットモデルを生産するには、実際の部品を組み込む必要がある。しかし、カットモデルに部品を回す余裕がなくなり、部品はすべて製品用にした」(酒井氏)というほどだ。

 今後1年間での出荷台数目標は、前年比2.5倍以上となる40万台。シェアは前年比倍増となる25%を目指すという。

 「いかに生産を拡大できるか。そしてストリーマ技術の認知度をいかに高めることができるかが、今年度の課題になる」(酒井氏)

 今年の製品では、ピンク色を追加するなど3色展開で、個室の利用提案にも余念がない。

 ストリーマ技術の強みを浸透させることができれば、ダイキンの空気清浄機の存在感はますます高まることになりそうだ。




2009年10月20日 00:00