【特別企画】

メーカーに聞く、最新空気清浄機のポイント:パナソニック編

~“基幹技術”ナノイー製品群でシェア拡大を目指す
by 大河原 克行



 新型インフルエンザの感染が世間を騒がせているなか、身近な感染防止策として「空気清浄機」が注目されている。そこで今回は、空気清浄機のメーカーに最新モデルの特徴とポイント、市場動向などについて話を伺った。
 


ウイルスにも美容にも効果の「ナノイー」を徹底的に訴求

パナソニックの空気清浄機では、ナノイー機能を前面に打ち出しているのが特徴。写真は最上位モデルの「うるおいエアーリッチ F-VXE65」
 パナソニックが2009年度下期に向けて投入した空気清浄機は、「うるおいエアーリッチ F-VXE65」をはじめ、同社独自のナノイー機能を例年以上に前面に打ち出しているのが特徴だ。

 パナソニックの独自技術である「ナノイー」は、水に高電圧をかけることで生成する、水に包まれた5~20nm(ナノメートル。1nmは0.000001mm)の微細なイオン。マイナスイオンに比べて、水分量は1,000倍と多く、寿命も約6倍と長いという。マイナスイオンでは、空気中に多い酸素や窒素と結合するため、イオンがウイルスには届きにくいが、ナノイーは酸素や窒素とは結合せずにウイルスに届くことから、ウイルスの無力化のほか、除菌、アレル物質の抑制や脱臭に効果があるという。

 実際、ナノイーによる効果は、ウイルスの抑制や、アレル物質/浮遊カビ菌/カビ菌/付着臭の除菌/脱臭効果などが、各種調査機関によって実証されている。今年5月には、北里環境化学センターの実証実験により、約3畳(10平方m)の空間に浮遊する菌を180分で99.9%除去する効果が確認できたという。

 さらに、弱酸性であるナノイーは、肌を保湿することができ、キメが整ったうるおいのある肌とする美容効果にも優れているという。

空気清浄機内部には、ナノイーの発生装置が組み込まれているナノイーとは、同社独自の水に包まれた微細なイオン通常の空気イオンと比べ長寿命のため、リビングの隅まで届き、除菌や美肌効果があるという

最新モデルでは、ナノイーを放出するだけの単独運転を搭載(写真はF-VXE65の操作パネル)
 空気清浄機の新モデルでは、新たにワンボタンでナノイー単独で運転できる「ナノイーモード」が搭載された。パナソニックのアプライアンス・ウェルネスマーケティング本部商品グループ空質商品チームリーダーの田中聡氏は、ナノイーモードを「(F-VXE65では)運転音が26dbと低騒音であることから、就寝中に利用したり、11Wという低消費電力によって、外出時にも動作させることができるといった使い方も可能になる」と解説。広範囲に飛散し、細菌・ウイルスに対し効果的にはたらき、人にやさしく、ナノ単位のイオンであるために繊維の奥までしっかり浸透するという。

 パナソニックは、今年の商戦ではナノイーの効果を徹底的に訴求する考えだ。

 なお、ナノイーの新型インフルエンザへの対応については、記事執筆時点において「現段階ではまだ検証ができていない。マーケティング部門からも、早期の実証について要請している段階にある」(田中氏)としている。


市場の変化に合わせ、加湿機能付きモデルを主軸に


F-VXE65の機能を解説する、パナソニック アプライアンス・ウェルネスマーケティング本部 商品グループ 空質商品チームリーダーの田中聡氏
 2009年度の年末商戦は、「F-VXE65」を軸にした加湿空気清浄機で3モデルを用意。さらに、気流ロボットで最適集塵を実現する「エアーリッチ F-PXE5」などの空気清浄機3モデルで展開することになる。

 とくに力を注ぐのが加湿空気清浄機だ。これまでは、冬場は加湿空気清浄機が高い人気を誇る一方で、春にかけては加湿機能がない標準モデルが主軸となっていた。だが、加湿をすることが風邪予防に効くことなどが広く浸透してきたことも影響し、年間を通じて、加湿機能モデルが人気を博すようになり、市場の変化を捉えたものだ。

 「パナソニックとしては、年間を通じて加湿機能搭載モデルを主軸に置くのは初めてのことになる。上位モデルでは、最大加湿量を600ml/hとし、加湿能力をこれまで以上に高めている」(田中氏)

 新製品では、フュージョン素材を採用した加湿フィルターを新たに採用。立体構造の空間層に多量も水を保持し、通気性の高さを利用して素早く水を気化。メンテナンスは月1回の押し洗いで済むようになり、10年間のフィルター交換不要も実現している。

加湿フィルターには、表面がワッフル状になったフュージョン素材を採用。月1回の押し洗いで、10年間フィルター交換が不要だという回転式のディスクにセットして使用する

前面が開くメガキャッチャーで強力吸引

新機能の「メガキャッチャー」。床上30cmのハウスダストを強力に吸引する
 一方、デザインを大幅に変更することで実現した新機能の「メガキャッチャー」も、パナソニック独自のものといえる。

 これは、ハウスダスト発見センサーおよびニオイセンサーと連動して、本体前面の「ビッグパネル」が自動的に開き、汚れやニオイを吸い取るのが特徴。最大開口時の下吸い込み風量は、従来モデルに比べて、約2.5倍に拡大したという。

 「ビックバネルがせり出して、上方へ動くというのは物理的に大開口を実現するだけでなく、強力吸引を“見える化”するという狙いもある。昨年の気流ロボットによって実現した汚れの撃退効果を、さらに上回る吸引を達成している」(田中氏)

 パナソニックは、子供の生活空間であり、大人でも就寝時に過ごすことが多い床上30cmに、花粉やダニのフン、死骸などがたまりがちなことに着目し続けており、今回の新製品では、それらの汚れを前方からの大開口によって吸引することを実現したというわけだ。

 実際、量販店店頭でも実際にビッグパネルが動作するものを用意し、来店客に対して、床上30cmを強く意識した大開口のメリットを訴求するという。

 さらに、ニオイやけむりなどは横の吸引口から効率よく吸い込むことができるようにしており、集塵フィルターでは、大面積化によって吸入効率を高めるとともに、上下部分には高速集塵を可能としたハイブリッド型フィルターを採用。吸い込んだ汚れも抑制でき、10年間交換不要としている。


省エネ性と操作性にも配慮


 そのほか、パナソニックの空気清浄機において、見逃せない要素としてあげられるのが低消費電力への取り組みと、操作性に配慮している点だ。

 低消費電力への取り組みでは、運転モードの1つとして設定されている「エコパトロール運転」機能があげられる。中運転で部屋全体の汚れを掌握。毎日の空気の汚れるタイミングを学習し、自動で最適な運転パターンを構築するもので、部屋が汚れる前に先回りして運転。「自動運転」モードに比べ約40%の消費電力の節約になるという。

 また操作性では、ナノイーモードやエコパトロール運転モードなどのボタンを用意。湿度の目安を表示で知らせるなどのパネル部の工夫を図ったほか、中運転から強運転に変えたときにも、12秒間をかけて徐々に強運転にシフトするため、音の変化が気にならないように工夫するといった工夫も凝らしている。

 ちなみに、パナソニックでは、9月から「エコナビ」による白物家電製品のエコ機能の強化を推進しているが、空気清浄機に搭載されたエコパトロール運転は、エコナビのなかには含まれていない。


“ナノイーは基幹技術”、今後は郡展開を狙う

 

パナソニックは、空気清浄機以外にも加湿器やナノイー発生機など、ナノイー製品を群展開する狙いがある。写真はナノイー製品群のイベントに出席した、歌手の森高千里さん
 パナソニックでは、白物製品における今年度の重要テーマの1つに、ナノイー製品の「群展開」がある。

 ナノイー加湿機の強化を図る一方、新たなジャンルとしてナノイー発生機や、ナノイー加湿ファンヒーターを追加。ナノイーによる空質製品のラインアップを一気に拡大しており、そのなかでもナノイー加湿空気清浄機は中核的役割を担う製品となる。

 同社では、ナノイー搭載の空気清浄機の年間出荷台数計画を32万台に設定。ナノイー発生機でも年間12万台を目標とし、さらに2009年度にはナノイー搭載製品全体で770億円、2010年度にはこれを1,000億円の事業規模に育てる考えを示している。

 田中氏は「主要量販店においては、ナノイー加湿空気清浄機をはじめとした、ナノイー製品による群展示を行ない、パナソニックの空質製品において、ナノイーが基幹技術であることを訴求していく」としている。

ハイブリッド式加湿器「FE-KXE07」にも、ナノイーの発生機能が備わっている10月発売のナノイー発生機「 F-GME15」は、ナノイーを放出することに特化した製品。そのため、空気清浄機ではない

 群展示による訴求によって、ナノイー空気清浄機におけるシェア拡大にも意欲を見せており、年末商戦では20%のシェア獲得に取り組む考えだ。

 今年の年末商戦は、ナノイーの認知度をさらに広げるためにも重要な商戦となる。その点でも空気清浄機の販売台数拡大は重要なのは明らかだ。パナソニックの基幹空質技術であるナノイーの広がりのためにも、空気清浄機の販売拡大が鍵になるといえよう。





2009年10月13日 00:00