【特別企画】
東芝科学館の夏休みイベントを見る

~昭和30年代の東芝ストアが“復活”


昭和30年代の店舗が復活、店内には“三種の神器”などレトロ家電が多数

東芝科学館3階「1号機ものがたり展示室」に再現された、昭和30年代の東芝ストア
 神奈川県川崎市の東芝科学館では、7月27日から8月27日まで、夏イベント企画展として「CHANGE! 家電が変われば暮らしも変わる!?~電機製品のむかしといま~」を開催している。

 このイベントは、冷蔵庫/洗濯機/テレビが“三種の神器”といわれた昭和30年代にスポットを当て、来館者に「家電製品がなかったら、どんな世の中になるのか」を提起することを狙ったもの。東芝の家電販売店「東芝ストア」の店構えを再現し、そのストア内で昭和30年代の家電製品を展示することで、当時の雰囲気を味わいながら家電の歴史を振り返ることができる。

 

昭和30年代の“三種の神器”と呼ばれた商品が展示されている。写真は1960年のカラーテレビ「D-21WE」と、1957年の洗濯機「VQ-3」1957年の冷蔵庫「GR-820」炊飯器は“三種の神器”には含まれない。写真左が日本初の炊飯器「ER-4」。右の「ER-5」は、NHKの「プロジェクトX」に取り上げられた

1964年のカラーテレビ「16WR」。東京オリンピックや紅白歌合戦など、カラーの番組が定着した頃の製品こちらは扇風機。羽根のガードのスキマが広いため、誤って指を差し込んでしまいそうだ

レジや電話も再現されている。電話は当然のことながらダイヤル式の黒電話店先にできたツバメの巣まで細かく再現されている当時の炊飯器、洗濯機、掃除機の広告チラシ

「電気消しゴム」や「ゴキブリ取り器」などユニークな製品も

子供たちが興味を持てるよう、“昭和30年代の東芝ストアのおじさんが現代にタイムスリップした”というストーリー設定が用意されている。写真は“おじさんが建物ごといなくなった”ことを報じる新聞
 さらに、来館した子供たちが昭和30年代の展示に興味を持てるよう、ストーリー性を持たせたイベント「未来へタイムスリップ~おじさんを救おう大作戦~」も同時に開催。昭和30年代の東芝ストアの「おじさん」が、今年の夏にタイムスリップしてしまい、そのおじさんを救うために子供たちが活躍する――というストーリーになっている。

 この企画では、昭和30年代に東芝が発売した「電池消しゴム」「ゴキブリ取り器」「ピアノラジオ」といったユニークな家電製品9点を、科学館内の3フロアにわけて展示。これを探しだし、横に置かれたスタンプを押して、9個貯まったら係員のところに持っていく。すると手紙を書く用紙が渡され、そこに自分が考えた家電製品とおじさんへの意見を書いて、タイムスリップボックスと呼ばれる箱に入れれば終了。記念品がもらえることになっている。

 夏休み期間中であることから、小学生が多数来場しており、「おじさん」は大忙しの様子だった。
スタンプラリーで用意された、昭和30年代頃のユニークな家電の数々。写真は1954年から1962年にかけて発売された和文タイプライター。漢字の活字がずらっと並んでおり、文書を作成、印刷できる。正確な発売年、価格は不明1957年発売の黒電話(マツダ電話)。“感度、音質がいいので、遠距離でも快適な通話ができる”というキャッチコピーが付いていた。当時の価格は6,000円。若草色、象牙色なども用意された先端の消しゴム部分を電池で動かして、その振動で文字を消す「電池消しゴム」。1961年の製品。電源は単二乾電池。当時の価格は780円
足元を温める「電気スリッパ」。赤のほか、茶色、緑も製品化された。1956年発売で、当時の価格は2,350円自動でゆで卵を作る「ゆで卵器」。卵を入れて蓋を閉じ、蓋のつまみ部分に水を入れる必要がある。1960年製で、当時の価格は1,000円ピアノの鍵盤に似た部分に好きな局を登録できることから名付けられた「ピアノラジオ」。1955年製で、当時の価格は10,550円
途中の計算式もプリントアウトできる「電卓」。昭和36年の製品で、価格は不明本体内部に流れる電気の力で、ゴキブリを感電させてしまう「ゴキブリ取り器」。1968年の製品で、当時の価格は1,700円掃除機のホースに差し込んで使用する「エアーバリカン」。カットした髪の毛は掃除機が吸い込むため、周囲に散らばらないという。これだけは1982年の商品。当時の価格は7,600円
これらのユニークな家電製品にはスタンプが用意されており、スタンプラリー形式で展示が楽しめるスタンプを集めたら、最後に自分が発明した家電製品と「おじさん」に宛てたメッセージを書いて、“タイムスリップボックス”に投函。記念品が貰える


きっかけはテレビドラマ

 今回のイベントの最大の特徴は、昭和30年代の東芝ストアを再現し当時の雰囲気を再現している点だ。

 東芝科学館 館長附の荘司金秋氏によれば、「TBS系で放映しているドラマ『官僚たちの夏』の資料として、東芝科学館から、昭和30年代の当社の電化製品を32点、広告チラシなどを19点を貸し出したという経緯もあり、それにあわせて、昭和30年代にテーマを当てる企画案が持ち上がった。今年2月からプロジェクトチームを作り、企画を練ってきた」とのこと。そのなかで、昭和30年代の東芝ストアを再現するという案が出てきたという。

昭和30年代が舞台のテレビドラマ「官僚たちの夏」(TBS系)に、当時の家電や広告チラシを貸し出したことかきっかけとなった東芝科学館 館長附の荘司金秋氏

 再現するに当たって、荘司氏は「当時の東芝ストアの写真を探しだし、それをもとに再現した。赤い看板、赤い旗という東芝ストアのイメージを生かすことにも苦心した」とのこと。かつての東芝ストアの佇まいは、50歳代以上の人たちとって、懐かしさを感じるものとなるだろう。

 荘司氏は、本イベントを開催する意図について「昭和30年代は家電製品が多くの家庭に広がっていった時期。メーカー側も要望があればどんなものも作ろうという姿勢が見られていた。また、主婦が家事労働から解放されはじめた時期でもあり、女性の自由な時間ができ始めたタイミングでもあった。そうした勢いのある時代を感じていただき、家電製品がなかったらどんなことが起こるだろうということも考えてもらいたい」と話す。

 また、「来館した子供たちに家電製品の素晴らしさを体感してもらうと同時に、一緒に来館する30歳代のお母さん、お父さんにも、昭和30年代の家電製品を知ってもらい、そこでどんなことが起こっていたかに触れていただきたい」と、子供だけでなく親子で楽しめるイベントであることをアピールした。

 

天体望遠鏡の組み立てなど、夏休みイベントを多数開催

川崎市幸区にある東芝科学館。東芝研究開発センターの敷地内にある。交通アクセス、休館日などは本文中を参照されたい
 8月12日には特別講演として、東北芸術工科大学准教授の和田菜穂子氏が「昭和のニッポンの水まわりと暮らし」と題して、むかしといまの水まわりの電気製品について講演を行なう。東芝科学館が所蔵する懐かしい電気製品も展示される予定だ。同講演は午前11時と午後2時30分からの2回で、定員は各回50人。

 このほかにも夏休みイベントとして、天体望遠鏡やピンホールカメラを制作する工作教室や、パソコン教室や実験教室を随時開催している。なお、これらのイベントに参加するには事前の予約が必要となっているが、キャンセルが出た場合には当日参加が可能となっている。

 東芝科学館では、これらのイベントを通じて、企画展開催中の1カ月間で7,000人の来館を見込んでいるという。

 東芝科学館の所在地は神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地。川崎駅、武蔵小杉駅、五反田駅からバスに乗り、「東芝科学館前」にて下車、徒歩1分のところにある。受付時間は9時から16時45分まで。入館は無料。夏休み期間の休館日は、毎週日曜日と8月14~16日、8月30~9月6日。

もちろん常設展も見学できる。“日本初の冷蔵庫”などレトロな家電製品や、最新の科学技術が体験できるコーナーが用意されているこちらは東芝の最新家電



東芝科学館
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アクセス情報
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(大河原 克行)

2009年8月3日 00:00