やじうまミニレビュー

分厚いお肉もスッと切れる! 越前打刃物職人が仕上げたテーブルナイフ

やじうまミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです
龍泉刃物「アシンメトリー SK01 ステーキナイフ」
越前打刃物の職人さんが、日本刀を作る技術を応用して開発した手作りのテーブルナイフは、注文してから5カ月後に、黒い化粧箱に入って我が家に届いた

 ジューシーなステーキや分厚いお肉がスっと切れ、ふっくらと仕上げた魚は身を崩さずに美しく切れるテーブルナイフがある。今回は、福井県で700年続く「越前打刃物」の職人さんたちが、日本刀を作る技術を応用して開発した、龍泉刃物の「アシンメトリー SK01 ステーキナイフ」を紹介しよう。

 このテーブルナイフは、2013年にフランスで開かれた料理コンクール「ボキューズドール」で3位に入賞したシェフが、越前市の刃物メーカー「龍泉刃物」に依頼して誕生したもの。あまりの切れ味の良さに、コンクールの審査員たちが持ち帰ってしまった、という逸話もあるほどだ。

 プロをも魅了する切れ味の秘密は、ステンレス刃物鋼を70層も積層し鍛え、砥ぎ上げられた刃にある。越前打刃物の日本の伝統技術を受け継ぐ職人さん達が、38の工程を施して一本一本丁寧に仕上げた手作りのものだという。

 いくつかのテレビ番組でも紹介され興味津津、誕生秘話から試行錯誤を繰り返した職人達の心意気や技など、知れば知るほどすっかり魅了されてしまった。大量生産品ではないのでとても高価だが、数カ月考えぬいても欲しい気持ちが変わらず、とうとう昨年の10月に注文。5カ月を経て、ようやく手元に届いた。

 なお、現時点では、メールや電話による予約販売は終了している。龍泉刃物のブログでは、2015年1月分までの納品が完了してから、公式オンラインショップで販売すると告知されている。

メーカー龍泉刃物
製品名アシンメトリー SK01 ステーキナイフ
希望小売価格19,800円(税込)
購入場所龍泉刃物
購入価格19,800円(税込)

 アシンメトリー SK01 ステーキナイフの全長は230mmで、刀身(とうしん)は90×20mm(長さ×幅)。手にして驚くのは、50gという軽さ。中空構造の柄は手にしっくりとなじみ、VG10/VG2のステンレス製の刀身は薄く、持った時のバランスがとても良い。

 ナイフの刃付けは片刃で、右手に持った時に刃が外側にくる。する、しないは別として、ナイフで皿のソースをすくって口に運ぶような使い方も考慮されているそうだ。刀身に浮かぶ波紋模様は「龍泉輪」と呼ばれ、硬質と軟質の刃物鋼を交互に70層積層して鍛え、磨き上げられて現れたものだという。

ナイフの全長は230mm、刀身(とうしん)は90×20mm(長さ×幅)。重量は約50gで軽い
刀身の表と裏には、越前打刃物職人の特殊な技から生れるまれる「龍泉輪」の模様が浮かぶ(上)。ナイフの刃付けは片刃で、先まで刃が続く(下)
よく切れる刃に、ふっくらと盛り上がった中空構造の柄。バランス良く手に馴染む
刀身の根元には、フランスはリオンで開かれた料理コンテスト名「ボキューズドール」(上)、柄には龍泉刃物を記す文字が刻印されている

 使用感は超越的と言っても過言でないほど、大満足! これまでのテーブルナイフの印象をはるかに凌ぐほど、気持ち良く切れる。

 牛ロースステーキ、分厚い皮付きの鶏もも肉のソテー、厚切りポークソテーで試したが、どれも簡単に、鮮やかに、しかも“静かに”サックリと切れてしまう。わずかの力で刃がスッと肉に入っていくので、肉汁も絞り出されずジューシーなまま。切り口の角も立っており美しい。

分厚い鶏もも肉のソテー。パリパリの皮と一緒に、肉が全く押しつぶされずに楽に切れる
牛ロースステーキを切り分けた様子。軽いストロークだけで、スッパリと肉が切れる
厚切りのポークソテーも、スジがあっても全く問題なく気持ちよく切れる
左から、牛、鶏、豚のそれぞれの切り口。肉が押しつぶされないので、ジューシーなまま。鶏肉は皮もスッパリと切れている

 今回、魚料理は用意しなかったが、その代わりに切るときに崩れやすいミルクレープを用意した。こちらも一切潰れずに、呆気なくスーッと刃が入っていくのが快感。切り口も芸術的と言いたくなるほど鮮やかだ。それならばと思い、ホイップクリームがたっぷり入ったシュークリームも切ってみたが、こちらもクリームがほとんどはみ出さずにあっさりと切り分けられてしまった。

 アシンメトリー SK01 ステーキナイフは、一般的なステーキナイフにありがちな無骨なイメージとは程遠く、龍泉輪が浮かぶ姿は優雅。食事はもちろん、デザートにもとても似合う。感心するのは、ナイフをテーブルに置いても刀身がテーブルに接しないところだ。最後まで気持ち良く食事を楽しめるよう、使い手を考慮した洗練されたデザインと言えるだろう。

デザートナイフでは、まず美しく切れないミルクレープも、文字通り一刀両断
シュークリームもお手の物。柔らかなホイップクリームがほぼはみ出さずに、シュー皮ごと見事に切れる
ナイフをテーブルに置いても、刀身はテーブルに触れない。なんとも嬉しい配慮だ

 気をつける点は、とにかくよく切れる刃がついているので、初めて使う人には一声かけた方がよいだろう。また、小さなお子さんの使用は避けたほうが無難。ステンレス製なので、一般的なカテラリーと同じように洗えるが、刃に直接触れないよう注意が必要だ。なお、切れ味が落ちた時、刃砥ぎは龍泉刃物に直接頼める。期間は1週間ほどで、費用は1本につき500円~600円だそうだ。

 1本2万円もする価格ゆえ、注文するまで相当躊躇した。だが、手にしてからは大変満足しながら食事を楽しんでいる。大きくて分厚いお肉を皿の上で切っても、わずかな力だけで押しつぶされずに切れるので、肉汁ごと美味しくいただける。また、皿の上で食べ物と格闘する事が無くなったので、ナイフを持つ手は全く疲れない。

 会話に花を咲かせながら、美しく盛り付けた食事を最後の一口まで堪能できる「アシンメトリー SK01 ステーキナイフ」を、食卓の名脇役として検討してはいかがだろうか。

藤原 大蔵