やじうまミニレビュー
分厚いお肉もスッと切れる! 越前打刃物職人が仕上げたテーブルナイフ
by 藤原 大蔵(2014/4/11 07:00)
ジューシーなステーキや分厚いお肉がスっと切れ、ふっくらと仕上げた魚は身を崩さずに美しく切れるテーブルナイフがある。今回は、福井県で700年続く「越前打刃物」の職人さんたちが、日本刀を作る技術を応用して開発した、龍泉刃物の「アシンメトリー SK01 ステーキナイフ」を紹介しよう。
このテーブルナイフは、2013年にフランスで開かれた料理コンクール「ボキューズドール」で3位に入賞したシェフが、越前市の刃物メーカー「龍泉刃物」に依頼して誕生したもの。あまりの切れ味の良さに、コンクールの審査員たちが持ち帰ってしまった、という逸話もあるほどだ。
プロをも魅了する切れ味の秘密は、ステンレス刃物鋼を70層も積層し鍛え、砥ぎ上げられた刃にある。越前打刃物の日本の伝統技術を受け継ぐ職人さん達が、38の工程を施して一本一本丁寧に仕上げた手作りのものだという。
いくつかのテレビ番組でも紹介され興味津津、誕生秘話から試行錯誤を繰り返した職人達の心意気や技など、知れば知るほどすっかり魅了されてしまった。大量生産品ではないのでとても高価だが、数カ月考えぬいても欲しい気持ちが変わらず、とうとう昨年の10月に注文。5カ月を経て、ようやく手元に届いた。
なお、現時点では、メールや電話による予約販売は終了している。龍泉刃物のブログでは、2015年1月分までの納品が完了してから、公式オンラインショップで販売すると告知されている。
メーカー | 龍泉刃物 |
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製品名 | アシンメトリー SK01 ステーキナイフ |
希望小売価格 | 19,800円(税込) |
購入場所 | 龍泉刃物 |
購入価格 | 19,800円(税込) |
アシンメトリー SK01 ステーキナイフの全長は230mmで、刀身(とうしん)は90×20mm(長さ×幅)。手にして驚くのは、50gという軽さ。中空構造の柄は手にしっくりとなじみ、VG10/VG2のステンレス製の刀身は薄く、持った時のバランスがとても良い。
ナイフの刃付けは片刃で、右手に持った時に刃が外側にくる。する、しないは別として、ナイフで皿のソースをすくって口に運ぶような使い方も考慮されているそうだ。刀身に浮かぶ波紋模様は「龍泉輪」と呼ばれ、硬質と軟質の刃物鋼を交互に70層積層して鍛え、磨き上げられて現れたものだという。
使用感は超越的と言っても過言でないほど、大満足! これまでのテーブルナイフの印象をはるかに凌ぐほど、気持ち良く切れる。
牛ロースステーキ、分厚い皮付きの鶏もも肉のソテー、厚切りポークソテーで試したが、どれも簡単に、鮮やかに、しかも“静かに”サックリと切れてしまう。わずかの力で刃がスッと肉に入っていくので、肉汁も絞り出されずジューシーなまま。切り口の角も立っており美しい。
今回、魚料理は用意しなかったが、その代わりに切るときに崩れやすいミルクレープを用意した。こちらも一切潰れずに、呆気なくスーッと刃が入っていくのが快感。切り口も芸術的と言いたくなるほど鮮やかだ。それならばと思い、ホイップクリームがたっぷり入ったシュークリームも切ってみたが、こちらもクリームがほとんどはみ出さずにあっさりと切り分けられてしまった。
アシンメトリー SK01 ステーキナイフは、一般的なステーキナイフにありがちな無骨なイメージとは程遠く、龍泉輪が浮かぶ姿は優雅。食事はもちろん、デザートにもとても似合う。感心するのは、ナイフをテーブルに置いても刀身がテーブルに接しないところだ。最後まで気持ち良く食事を楽しめるよう、使い手を考慮した洗練されたデザインと言えるだろう。
気をつける点は、とにかくよく切れる刃がついているので、初めて使う人には一声かけた方がよいだろう。また、小さなお子さんの使用は避けたほうが無難。ステンレス製なので、一般的なカテラリーと同じように洗えるが、刃に直接触れないよう注意が必要だ。なお、切れ味が落ちた時、刃砥ぎは龍泉刃物に直接頼める。期間は1週間ほどで、費用は1本につき500円~600円だそうだ。
1本2万円もする価格ゆえ、注文するまで相当躊躇した。だが、手にしてからは大変満足しながら食事を楽しんでいる。大きくて分厚いお肉を皿の上で切っても、わずかな力だけで押しつぶされずに切れるので、肉汁ごと美味しくいただける。また、皿の上で食べ物と格闘する事が無くなったので、ナイフを持つ手は全く疲れない。
会話に花を咲かせながら、美しく盛り付けた食事を最後の一口まで堪能できる「アシンメトリー SK01 ステーキナイフ」を、食卓の名脇役として検討してはいかがだろうか。