やじうまミニレビュー

グリーンハウス「LEDランタン GH-LED10WBW」

~塩水を注いで点灯するLEDランタン
by 伊達 浩二


やじうまミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです


グリーンハウス「LEDランタン GH-LED10WBW」

 LEDを使った懐中電灯やランタンは、防災器具の定番として、本誌でも多数紹介されている。ただ、それらのほとんどは乾電池を電源とするものだ。乾電池には、3年から10年程度の使用期限があり、イザ! というときに、使用期限が切れていて使えない可能性がある。

 この問題があるので、手回し発電機を内蔵したLED照明器具やラジオが、防災用品として普及している。乾電池が消耗していても、使う前にハンドルを回して発電することで器具が使えるわけだ。

 別の手段としては、日本協能電子の「水電池 NOPOPO」のように、水を入れると使える電池もある。これは、水を入れない状態であれば20年間保存できるので、電池の交換のことは考えなくて良い。

 今回紹介するグリーンハウスのLEDランタン「GH-LED10WBW」は、水電池に似た手段を取っているが、2つ違いがある。1つは真水でなく塩水を使うこと。もう1つは、電池の形をしておらず、器具内に発電機構を内蔵していることだ。

本体に塩水を入れるだけで、LEDランタンが使えるという


メーカー名グリーンハウス
製品名GH-LED10WBW
希望小売価格オープンプライス
購入先Amazon.co.jp
購入価格3,875円

意外と大きな本体

 到着した箱は、ランタンという名前から想像していたよりもずっと大きかった。縦横とも30cm弱ぐらいあるのだ。

箱は大きめで、上下左右30cm弱ある梱包物一覧。本体と給水パックが、この製品のキモだ本体正面

 ランタン本体もかなり大きい。サイズは210×113×228mm(幅×奥行き×高さ)もあり、重さも乾燥状態で約680gある。手のひらに載るようなサイズではなく、据え置きで使う大きさだ。

 ちょっと大きめなので、持ち歩くときのために、本体の裏には、スライド式の取っ手がついている。ぶら下げてみると、本体はガランとした感じで、あまり中身が詰まっている感じはしない。

正面の下に電源スイッチがあるLEDは10個内蔵されている本体側面
背面にはスライド式の取っ手と壁に下げるためのフックが用意されている取っ手を上げた状態

 付属品は少なく、ランタン本体、給水パック、USBケーブル、紙1枚裏表の取扱説明書の4つだけだ。使うときには、これに塩水が必要だ。

 塩水は、海水でも良いと書かれているが、今回は、普通の食卓塩と水道水で作った。必要とされる塩水は、濃度が3~5%と指定されている。普段は、給水パックに塩16gを入れ、次に水350ccを入れて作るようになっている。

 塩は、給水パックのラインまで入れれば16gというが、パックの入り口が細くて、なかなか入れにくい。また、2度目の塩水を作るときは、袋の中身が乾いていないので塩がくっついてしまって量が分かりにくい。取扱説明書には、「塩16gの目安は、大スプーン1杯、またはペットボトルのキャップ2杯分」と書かれているので、それを参考にすると良い。クッキングスケールを持っている場合は、2つ折にした紙に塩を載せて計量してからパックに入れると、簡単かつ正確だ。

給水パック。注射液のパッケージに似ている塩を入れて斜めにすると分量が測れる
給水パックは底面が広がるので自立する給水パックに水を注ぐ
規定量まで水が入った状態。よく振って混合する給水パックからランタン本体へ注水する。こぼさないように注意が必要だ

 水は蛇口から給水パックに直に注いだ。パックを上下に振り、何度もよく振る。

 塩水ができたら、ランタン本体の上部にあるゴムキャップを取り、そこから塩水を注ぐ。この時に塩水をこぼすと、本体の背面の穴から簡単にランタンの中に入ってしまう。なにせ塩水なので、部品への影響が心配だ。くれぐれも取説通りに、給水パックの尖った部分を注水口に入れ、それからノブを緩めるという手順を守りたい。

無事に塩水が入り、電源スイッチを入れるとLEDが点灯するLEDは、洗面台などのコーナーを照らすぐらいの明るさだ

 塩水を注ぐと発電が始まる。本体の電源スイッチを入れると、正面にあるLEDが点灯する。LEDは10灯あるが、全部点灯するか消灯するかの選択のみで、明るさの調整はできない。1つ1つのLEDは小出力のもので、10個あっても、すごく明るいというほどではない。洗面台やトイレぐらいのスペースで使うのには向きそうだ。明かりは横方向に照らすので、ランタンというよりも、懐中電灯型の明かりだと思った方が良い。

背面下部に電源出力端子がある。ここに付属のUSBケーブルを接続する付属のUSBケーブルの先に、各機器に合致したケーブルをつないで使用する

 発電した電気は、LEDを点灯するだけではなく、付属のUSBケーブルを使用して、USB機器を充電できるとしている。ただし、出力電力は4.5V、出力電流は約40mAと、USBの規格よりも小さいため、スマートフォンなど、高い電流値を必要とする機器には充電できない。実際、手元のiPhoneやUSBバッテリーを繋いでみたが、充電できなかった。ある程度、限界のある機能と考えて、過信しない方が良いだろう。

炭素とマグネシウムを使った電池

 このランタンがどうして塩水で発電できるかというと、マグネシウムと炭素を電極した電池を内蔵しているからだ。この2つの電極の間を塩水で埋めることで、電池として動作する。

電池の構造発電までの作業手順。上のほうに「塩水は約8時間ごとに必ず交換してください」とある。もちろん、排水を飲んではいけない

 当然、ある程度使用していると、マイナス(-)極のマグネシウムから、塩水へイオンが溶け出しきって飽和してしまう。その時間が約8時間なので、連続して使用する場合は、8時間ごとに塩水を交換する必要がある。それを超えると、「金属棒(電極)が溶けてタンク内に沈殿し、固まることがある」という。排水は底部のゴムキャップを外して行なう。

 塩水を交換すれば、また発電が始まるが、最終的にはマグネシウムの電極からイオンがなくなってしまう。その寿命は約120時間とされている。それだけ使ったら、今度はマグネシウムの電極を交換する必要がある。交換用の電極は、別売で「GH-MGWR17」という型番で980円で販売されている。

 つまり、ある程度、ちゃんと使おうとすると、それなりに手間がかかる製品なのだ。

本体脇にある電極の交換部分電極はプラスネジで固定されている
電極を抜き出したところ電極は約13cmぐらいある大きなものだった

 

電池の仕組みを知る楽しさ

 この製品をまじめな防災用品として捉えると、物足りない点は多い。真水を用意できても、塩水を用意するのはそれなりに手間がかかる。急いでいるときに、すぐに塩水を用意してランタンを使える自信がない。

 メーカー側でも、それは分かっていて、あからじめ給水パック内に塩だけ入れて保存しておくという方法を提案している。しかし、8時間LEDランタンを使用したら、また塩水を作らなければならない。その時に、塩や水が用意できるかと考えてしまう。

 例えば、別に単三乾電池も入るようになっており、塩水がなくてもLEDランタンとして使えると、防災用品としての完成度は上がったと思う。塩水が作れればそちらで発電し、準備できなければ乾電池で使うという使い分けができる。

 しかし、防災用品として弱点があるにしても、「塩水を入れると明かりが点く」という、この製品の特徴は魅力的だ。とりあえず試してみたいし、塩水を入れただけで、ちゃんとLEDが点灯するとうれしい。

 たとえば、家族連れなどで海に遊びに行くときに持参し、海水を汲んで注ぐだけで明かりが点けば、ウケは取れるだろう。この製品の取扱説明書は、ごく実用的なものだが、もっと電池の構造を学ぶ要素を取り入れて解説を増やすと、より魅力的な製品になりそうだ。いっそ、このLEDランタンの電池の仕組みをそのまま利用して安価な学習キットはできないものだろうか。





2012年 10月 16日   00:00