家電製品ミニレビュー

日本協能電子「水電池 NOPOPO」

~20年間放置しても使用可、水で発電する防災用電池
by 藤山 哲人
日本協能電子「災害時用 水電池 NOPOPO」。事務用品メーカーのナカバヤシからも発売されている

 電池にはいろいろな種類がある。使い切りならマンガン電池やアルカリ電池、充電池ならニッカド(ニカド)電池にニッケル水素電池、リチウムイオン電池などなど。

 しかし家電Watch編集部の編集Sが「また藤山さんの大好物の電池見つけたので試してみてください」と書き添えて送ってきた電池は「水電池 NOPOPO(ノポポ)」だ。

 普通の乾電池は、製造後およそ5年が「使用推奨期限」として明記されているが、この水電池は20年間未満の長期保存が可能という。つまり災害用の持ち出しバッグに入れておけば、20年交換しなくてもいいというものなのだ。

 今回は、この水電池について、どのような特徴があり、どのような使い方があるのかを探ってみよう。


メーカー日本協能電子
製品名水電池 NOPOPO
購入店舗Amazon.co.jp
購入価格600円

こちらは普通の乾電池。使用推奨期限が印刷されている。NOPOPOの外観電池には「一般の乾電池ではありません」との注意書きがある

水を入れると電気が起きる科学の不思議

 さっそく、この水電池の使い方を、順を追って紹介しちゃおう。順といっても、2つしか手順は無いけれど……。

1)添付のスポイトで電池に水を入れる。えーーっ!

NOPOPOを使う際には、プラス極の側にある穴にスポイトで水を注ぎ入れる。スポイトを差した時に、硬くなってブスッ! と入らなくなった時が寿命らしい

 本製品は「水電池」の名のごとく、電池を使う際には水を投入する必要がある。プラス側の端子横にある穴に付属のスポイトを差し込む。穴は2つあるが、どちらに差し込んでもOKだ。

 ポイントは、先細りになったスポイトの先を、電池の中に「ブスッ」と挿すようにする点。しっかり差し込まないと、水が上手く注入できないのだ。利用する水は、フツーの水道水でもかまわないし、風呂水や泥水でもOK。しかもジュースやコーヒーでも大丈夫というから凄い!


2)水を入れると、ほのかに温かくなる。これで使用準備OK!

 水を入れて数分すると、ほんのわずかに電池表面が温かくなる。内部で何か科学変化している感じがするが、ここから先は、普通の電池と同様に機器へセットするだけだ。

 水を入れたNOPOPOを、電池1本式のLEDライトにセットしてスイッチON。見事に点灯した! ライトを振ったりしても水が逆流することもない。

水を入れて数分すると、ほんのわずかに温かくなる。なんか科学変化している感じがよく分かる。あとは普通の電池と同様に機器へセットちゃんと点灯しました

 ここで、普通の電池でも動くのに、なぜ水電池を使うのか、と疑問に思う人も居るだろう。水電池を使う、最も大きなメリットは、未使用なら長期間放置しても使えること。乾電池は長期間置いておくだけで、自然に電池がなくなってしまう「自己放電」という現象が発生する。そのため、使用推奨期限は、製造から5年ほどになっている。

 しかし、NOPOPOは、20年未満なら性能が変わらない。水さえ入れなければ長期の保存が可能な電池なのだ。梅雨時の湿気で電気が発生してしまうこともないらしい。

 さらに、電池が弱くなったら、もう一度水を注入すると3回ほど使えるとのこと。おまけに、乾電池とは成分が違い、有害物質が含まれていないため、完全に使用しきった後は、一般の燃えるごみとして捨てられる。乾電池として分別ゴミに出す必要もないのだ。


そもそも、何で水を入れるだけで発電するの?

 でも、何で水を注ぎ入れるだけで発電するのか? そのしくみをザックリと説明しよう。

 NOPOPOを分解すると、中央部には、プラス極につながる炭素棒(炭)があり、その周りには紙のようなもので、粉状の二酸化マンガンを包んでいる。さらにその外側をマグネシウム合金が囲んでいる。

■■注意■■

・分解/改造を行なった場合、メーカーの保証は受けられなくなります。
・この記事を読んで行なった行為(分解など)によって、生じた損害は筆者および、家電Watch編集部、メーカー、購入したショップもその責を負いません。
・内部構造などに関する記述は記事作成に使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません
・筆者および家電Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。

こちらがNOPOPOの中身。一度使った電池なので、マグネシウム合金が化学変化てボロボロのさびた状態になっている紙袋の中には、電池を安定させるための二酸化マンガンが入っている。その中央には炭素棒(炭)がプラス端子につながっているNOPOPOを構成する部品と物質

 ここに水が入ることで、どのように電気が生まれるのか? 電池内に入った水は、紙袋を湿らせ、マグネシウム合金と水の間で科学変化が始まる。マグネシウムは水(H2O)の酸素(O)と結びつき、酸化マグネシウムに変化、錆びて腐食してしまう。ここで残った水素(H)が、二酸化マンガンと結びつくことで、電気が発生するというワケだ。つまり、水を入れ無い限り、2つの物質はまったく反応せず、安定した状態なので、長期間保存ができるというわけだ。

 この構造を理解するのは難しいかもしれないが、理科の授業や自由研究などで「木炭電池」を実験したことがある人なら、分かってもらえるだろう。木炭に塩水で浸したティッシュを巻いて、さらにその周りをアルミホイルで巻くと、木炭がプラス極になり、アルミホイルがマイナス極になるという電池だ。しばらく使っていると、アルミホイルは腐食(サビ)て溶けてしまうという点も、NOPOPOとソックリだ。

 もし興味のある人はネットで「マンガン電池」や「ボルタ電池」「木炭電池」のしくみを調べてみるといいだろう。

性能は普通の電池の方が圧倒的に上

 水電池が発電することはよく分かったが、電池のパワーは残念ながらイマイチ。LEDの明るさも、センサーから30cm離れた位置で79lx。乾電池に入れ替えて測定してみると、275lx。乾電池と比べると、明るさは1/3以下でしかない。

NOPOPOの照度は、センサーから30cm離れた位置で79lx。暗くて、足元を照らすのもままならない感じここで、普通のアルカリ電池(どんなな機器でもオールマイティに使える富士通のR SPEC)に入れ替えるアルカリ電池で測定してみると、約30cmの距離で275lx。これなら余裕で足元を照らせる

 さすがに電池1本式のLEDライトは暗すぎて実用的とは言えないので、電池3本のLEDライトで実験してみた。

 3本のNOPOPOを投入したLEDライトの明るさは、測定器から30cmのところで1,147lx。これなら足元どころか、数m先の闇も照らせる! 連続点灯させてみたところ、およそ19時間ほどは、実用的な明るさで点灯し続けた。

単3を3本使うLED懐中電灯を、急いで近所のホームセンターに買ってきたおお! これならNOPOPOでも十分明るいぞ30cm離れた位置の照度は1,147lx。実用的な明るさだ

 さすがに1日じゅう点灯していると明るさは落ちるが、再び水を注入すると、再び元の明るさに。こりゃ、不思議ですなぁ。

24時間点灯させ続けると、ほとんどLEDは光らない再び水を注入すると元の輝きに!

 こちらも乾電池に入れ替えて明るさを調べてみる。アルカリ乾電池に交換した明るさは、同じ距離で5,672lx。この数値は、NOPOPOの5倍に相当する。10m先の闇も明るくなるほどだった。

アルカリ乾電池に変えてテスト30cm離れた位置の照度は5,692lx! 光源が見られないほど眩しく輝く!

 こうしてみると、普段使う電池としては、乾電池の方が圧倒的に性能が上。NOPOPOは災害などの非常用として利用するのがいいだろう。


携帯用ラジオなら問題なく使える。でも豆電球タイプの懐中電灯は無理っぽい

 災害用としての利用となると、重要なアイテムがある。それは携帯ラジオだ。LEDライトは乾電池に比べかなり暗かったが、ラジオがちゃんと聞けるかどうかを調べてみた。

 LEDライトでは乾電池に比べ暗かったNOPOPOだが、AM・FMラジオの受信はまったく問題ない。またラジオをそのままつけっぱなしにしておいたところ、15時間も使えてビックリ!

アルカリ乾電池では、サザンオールスターズの桑田佳祐がパーソナリティの下ネタ満載の番組がバッチリ聞こえた電池をNOPOPOに替えてもバッチリ受信OK!

 というわけで、ラジオでは乾電池の代わりとして十分使えるNOPOPOだったが、100円ショップで買ってきた豆電球式の懐中電灯は点灯せず。

 そのほかにプラレールやデジカメ、ストロボなどで試してみたが、豆電球式の懐中電灯と同様に使えずじまい。時計やリモコンなど、電気をほとんど使わない機器は動作させることができたが、いずれも災害時に使うものではないので、普通の乾電池を使うほうがいいだろう。

アルカリ乾電池では、豆電球式の懐中電灯が光った
NOPOPOでは、電池が弱すぎてまったく点灯できず。残念

電圧は2.0Vと高め、でも電流が乾電池の1/6。これがNOPOPOのパワーが弱い理由

 これまで「NOPOPOは電池が弱い」と表現してきたが、電圧や電流がアルカリ電池に比べてどう違うのか? 電気的な特性を見てみよう。

 まずは電圧だ。一般的な乾電池は1本で1.5Vとよく知られているが、水電池の場合はどうだろう?

乾電池は1.5Vと言われているが新品の電池に何もつなげない状態で電圧を測ると、たいてい1.6V程度なのだNOPOPOは2.0Vとかなり高め

当初、アルカリ乾電池を越える電池として期待されたパナソニックのオキシライド乾電池だが、さまざまな機器で不具合が発生、生産中止となった

 NOPOPOは、何も接続していない(無負荷)状態で電圧を測ると2.0Vもあった。乾電池を使う機器は1.6Vを最大として設計しているため、機器に負担をかける場合がある。高価な機器では利用しないほうがいいだろう。なにせ無負荷で1.7V(乾電池よりたった0.1V多いだけだが…)出る「オキシライド電池」は、さまざまな機器で発熱など相性の悪さが報告され、結局生産中止になってしまったぐらいだ。

 一方の電流だが、測定値の28mAというのは、AV機器のパイロットランプなど、低電力のLEDを点灯するにはちょうどいい電流。乾電池の176mAだと、こうしたLEDは電流が高すぎて壊れてしまうこともある。乾電池でLEDライトを点灯しても壊れないのは、数十mAまで電流を抑える回路が入っているためだ。

 このようにNOPOPOは、電圧は乾電池以上にあるものの、電流が乾電池の1/6しか流せず、豆電球やモーターなどを動かすことができないというわけだ。

アルカリ電池に豆電球をつなげて電流を測ると176mAとなった。豆電球が点灯するだけの電流が流れているということだNOPOPOは、およそ28mA。豆電球が点灯していないのに注目。乾電池のおよそ1/6の電流しか流せないようだ
 

ミニコラム:電圧と電流の関係をペットボトルで例えてみよう

 「“電圧が高いのに電流が少ない”ってことがイマイチ分からない!」という場合は、次の実験を見てほしい。写真は4Lのペットボトルに細い管と太い管をつなげたもので、細い管はNOPOPO、太い管は乾電池をイメージしている。

4Lのペットボトルに細い管と太い管をつなげたもの。これを電池だと思って欲しい。今は空だが水を入れれば、電池が満タンの状態だ管の太さに注目。水電池は管の細い左側、一般的な乾電池は管の太い右側だ

 太い管の“乾電池もどき”の場合、ブロック1個の高さから水を流すと、水車がクルクルと回りだす。このブロックの高さが“電圧”、水の流れが“電流”を表している(電圧は別名「電位差」とも呼ばれている)。

 そして水車は、豆電球やモーターといった機器を表す。ここでは水のエネルギーを回転運動に変換しているが、豆電球なら電気のエネルギーを光に、モーターなら電気のエネルギーを回転運動に変えている。ただ水車には、大きくて回りづらいため水を多く使う(=消費電力の大きい)ものもあれば、小さくて少しの水で回せる(=消費電力が小さい)ものもある。

 ここで、“乾電池もどき”のボトルに、もう1個ブロックを追加すると、水車は勢いよく回りだす。これは高さ(=電圧)が2倍になったからだ。つまり、電池を2本つないでモーターを高速に回転させているのと同じことになる。

ブロックの高さが電圧を示している。乾電池に例えるならこれは1.5V(1本分)の電圧ということだブロックを2つにして高さを増すと、電圧が高くなった状態になる。だから水車が勢いよく回りだすのだ

 さて、今度は細い管の“水電池もどき”を見てみよう。こちらは管が細いため、水の流れは少なくなり、太い管では余裕で回せた水車も回せなくなる。つまり電圧(ブロックの高さ)が同じでも、管が細く電流が流れにくいので、NOPOPOは豆電球やモーターを動かせないということだ。

 ただブロックを2つにしてやると、辛うじて水車を回せる。

ブロック1個の高さでは、水車を回すことができない。NOPOPOで豆電球が点灯できなかったのは、乾電池と同じ1.5V(実際には2.0V)でも、電流(水の流れ)が足りないからだブロックを2つにすると、ゆっくりと水車を回せるようになった
 序盤のLEDライトの件を思い出してほしい。電池1本のLEDライトにNOPOPOを入れたときは、辛うじて光る程度だったが、電池3本のLEDライトにNOPOPOを入れたら、実用に耐えるほど光った。これはブロック2個を置いて、ようやく水車を回せた原理とほぼ同じことなのだ。

 とはいえ、太い管のボトルに比べると、水車の速さはかなり遅い。電池3本のLEDライトに乾電池を入れると眩しいぐらいに輝いたが、NOPOPOだと1/5程度暗くなったのは、電流が乾電池に比べて圧倒的に少ないというのが原因というワケだ。


水電池NOPOPOを災害用として使うポイント

 パワーは弱いものの、長期間放置しても使えることを考慮すれば、NOPOPOはあくまでも災害時の非常用電池として使うのが有効だろう。実際に市役所などが災害用の電池として備蓄物資として購入しているという実績もある。

 しかし、豆電球式の懐中電灯などNOPOPOで駆動できない機器もあるので、次の点に注意し、災害用の電池として備蓄しておくといいだろう。

・600円で乾電池12本相当。でも安い乾電池の代用には使えない

 電池が弱くなったら水を注入すれば、3~4回繰り返し使えるので、乾電池9~12本相当で600円という計算になる。しかし性能は乾電池に劣り、動作しない機器も多々ある。コスト面で乾電池の代わりに選んではいけない。

・懐中電灯は必ずLED式のものを用意すること。また、動作チェックをしておく

 豆電球で光るタイプの懐中電灯は点灯できないので、必ずLED式にする。NOPOPOでも十分に明るく光るかをあらかじめ調べておくのが良いだろう。

・小型ラジオも動作チェックを

 NOPOPOは単3サイズしかないので、小型ラジオは必ず単3を使うものを選び、あらかじめNOPOPOで動作するかを調べておきたい。筆者が電気店やDIY店を見てきた限り、小型ラジオは価格が安いければ安いほど、使う電気が少なく、NOPOPOが使えそうだった。

 また、NOPOPOと利用する機器をセットにしておけば、慌てることもないだろう。

・一度使ったNOPOPOは、長期間入れっぱなしにしない

パッケージが古いNOPOPOだが、電池ボックスに入れたまま放置しておいたら、膨張して破裂していた。ちなみに黒い粉は二酸化マンガン、それを囲むような白い粉は酸化マグネシウムだ

 実は筆者、数年前に面白そうだなと思って、この水電池を個人的に購入していた。しかし、使ったあとそのまま1年放置しておいたら、左の写真のようになってしまった。

 ショッキングな写真かもしれないが、これは爆発したわけではなく、徐々に膨張してパッケージも裂けてしまったようだ。機器の中に入れっぱなしにしておくと、電池が取り出せなくなったり、機器が変形する恐れがある。

 なお、NOPOPOとLEDライトやラジオがセットになった商品も、市場にはたくさん出ている。これを選んでおけば間違い無いだろう。

 パワーの弱さについてさんざん指摘してしまったが、備蓄しておいても自己放電が発生しないのは、防災用品としては大きなメリットだ。普通の乾電池だと使用推奨期限の5年に一度は買い換えが必要になり、20年備蓄すると、4回の交換が必要だ。

 その点NOPOPOなら、初期購入費の600円で20年持つので、災害用の乾電池としてランニングコストがかなり安くなる計算だ。また電池が弱くなったら再び水を入れると3~4回繰り返して使えるのもうれしい。東北関東大震災後に乾電池が店から消えてしまったことを思い起こせば、電池の重要性は再認識できるだろう。

 もしもの時のためにぜひ買い揃えて、災害時の持ち出しバッグに入れておきたい。






2011年8月3日 00:00