やじうまロングレビュー

デスク上で手軽に涼む! 「USB扇風機」8製品を試す

by 山口 真弘
今回試用した8製品。2012年の新製品を中心に、大手量販店で入手可能なものをセレクトした

 今年もUSB扇風機の季節がやってきた。いまやすっかり一般的な製品として認知された感のあるUSB扇風機だが、今年はパソコンアクセサリメーカーはもちろん、異業種からの参入も例年になく多いようだ。それゆえ店頭での競争も激化しており、価格競争を前提にした単機能の製品と、付加価値付きの製品にはっきりと二極分化しつつある。市場が成熟し始めた証といえるだろう。

 付加価値のトレンドの1つとして、USB以外の電源による駆動が挙げられる。昨今の電力不足による停電への懸念から、いざという時にUSB以外の電源でも駆動できることをアピールしているわけだ。もともとパソコンのUSBポートから電源を拝借することで省エネに貢献するというセールストークで普及したUSB扇風機が、逆にUSBを使わずに駆動できることを売りにしているところに、トレンドの変化が感じられる。

 今回は、おもに2012年の新製品として発表された各社のUSB扇風機8製品を比較し、その特徴について紹介していく。利用シーンや求める機能、風量、静音性、そして価格に至るまで、USB扇風機に求めるものは人それぞれ。以下を参考に、自分にぴったりのUSB扇風機を見つけてもらえば幸いだ。

 

エレコム~AC変換アダプタが付属した雑貨ライクな小型USB扇風機

カラーバリエーションはブラックとホワイトの2色

 エレコムの「FAN-U18NAシリーズ」は、ワイヤー製の小型USB扇風機にAC変換アダプタを同梱し、USBに加えて家庭用コンセントでの利用も可能にした製品。風量調節はなし(オンオフのみ)で、上下方向の角度は自由に調整できる。


メーカーエレコム
製品名FAN-U18NAシリーズ
希望小売価格2,520円
購入場所yodobashi.com
購入価格1,680円

 これといって大きな特徴があるわけではないが、フットプリントが小さく設置しやすいこと、また風量のわりに駆動音が静かなことがメリット。なおAC変換アダプタが不要という場合、実売価格が1,000円を切る姉妹モデル「FAN-U18Nシリーズ」もラインナップされているので、こちらを選ぶのもよいだろう。

 

カラーバリエーションはブラックとホワイトの2色スイッチは背面。ケーブルは本体に直結されている。止めネジがやや無骨な印象AC変換アダプタが付属し、家庭用コンセントでも利用できる。アダプタのサイズがやや大きいのがネック

運転中の様子。騒音(参考値)は79.6dB。全体的に駆動音は静かで、正面以外でも風切り音はほとんど気にならない

・エレコム
http://www.elecom.co.jp/
・製品情報
http://www2.elecom.co.jp/accessory/cooling-sheet/fan-u18na/

 

エレコム~乾電池駆動も可能な折りたたみ式USB扇風機

カラーバリエーションはブラックとホワイトの2色。ただしファンはいずれもホワイトなので、ブラックモデルにおけるホワイトファンはややミスマッチな感がある

 エレコムの「FAN-U19Dシリーズ」は、フラットに折りたたむことができるUSB扇風機。単4電池×3本での駆動も可能なので、持ち歩いて出先で使えるほか、たたんで引き出しの中に入れておいても邪魔になりにくい。ファンが露出した構造だが、ファンそのものはビニール素材なので、手などに当たった場合でもケガをする心配はまずない。


メーカーエレコム
製品名FAN-U19Dシリーズ
希望小売価格1,890円
購入場所Amazon.co.jp
購入価格1,106円


 風量調節はなし(オンオフのみ)で、上下方向の角度は自由に調整できる。風量が大きい割にファンの騒音は低めで、オフィスでの利用にもじゅうぶん耐える。外出先から戻って汗をかいている場合など、強い風をピンポイントで浴びたい場合に向いている。

 気になるのは、本体を取り囲む周囲のパーツがそのままスタンドになる構造上、フットプリントが大きいこと。スタンドの最後部に電源ジャックがあるため奥行きが必要なことも注意したい。

電源コネクタは本体最後部にあり、もとのフットプリントが大きいことと合わせ、設置時に奥行きを取るのが難。単4電池×3本での駆動にも対応する角度は自由に変えられ、この写真のように折りたたむことも可能

運転中の様子。騒音(参考値)は84.7dB。数値としては高めだが、不快なモーター音はなく許容範囲という感。風量はかなり強く、むしろもう1段階弱くしたいと感じることもしばしば

・エレコム
http://www.elecom.co.jp/
・製品情報
http://www2.elecom.co.jp/accessory/cooling-sheet/fan-u19d/

 

サンワサプライ~磁石でスチール面に取り付けられるボックス型USB扇風機

カラーバリエーションはブラックとホワイトの2色。シグマA・P・Oがラインナップしていた「大」サイズの製品は用意されない

 サンワサプライの「USB-TOY71シリーズ」は、ボックス型の小型USB扇風機。昨年までシグマA・P・Oが販売していた製品に酷似しており、底面のマグネットでスチール面に取り付けられるほか、360度の回転が可能といった特徴もそのまま引き継いでいる。


メーカーサンワサプライ
製品名USB-TOY71シリーズ
希望小売価格2,919円
購入場所Amazon.co.jp
購入価格1,536円

 風量調節は強・弱の2段階だが、あまり風量はあるとはいえず、強にした状態でも30cmも離れれば風をほとんど感じないほど。ハードウェアの放熱のために長時間連続して弱い風をあてる用途ならありだろう。またUSBコネクタが本体上部から伸びているため取り回しが悪く、ケーブルをひっかけた際に本体の角度が変わってしまうこともしばしばだ。本体を天地ひっくり返して使ったほうがケーブルの取り回しがよくなるが、そうなるとスイッチが操作しにくくなるため、どっちつかずの感がある。

角度は360度自在に変えられる。ただし30度刻みなので、もうすこしこまめに変えたいと感じることもしばしば汎用のminiBタイプのケーブルを使用しているため市販の巻取ケーブルなどへの交換が可能。コネクタが本体上部にあるのは少し使いにくい

運転中の様子。騒音(強・参考値)は79.8dB。値は低めだがそのぶん風量も弱く、スポットで強い風を浴びたいという用途にはまったく向かない

・サンワサプライ
http://www.sanwa.co.jp/
・製品情報
http://www.sanwa.co.jp/product/syohin.asp?code=USB-TOY71BK

 

バッファロー~加湿機能が付属したタワー型USB冷風扇

カラーバリエーションはホワイトのみ。高さはA4サイズの長辺よりやや短い程度

 バッファローの「BSOTOS10WH」は、タワー型のUSB扇風機。本体下部のタンクに水を注ぐことにより吸気口のフィルタが湿った状態となり、夏は冷風扇、冬は加湿器として使えるのが売り。単4電池×4本でも駆動し、この場合の駆動時間は2~6時間とされる。


メーカーバッファロー
製品名BSOTOS10WH
希望小売価格4,000円
購入場所Amazon.co.jp
購入価格2,342円

 風量調節は強・弱の2段階。オモチャのような安っぽさはなく、オフィスに設置しても違和感はないが、風量は決して強いとは言えず、強にした状態でも30cmも離れれば風をほとんど感じないほど。風の強さではなく冷風をあてることで初めて涼める製品と言える。またモーターの駆動音は風量が弱でも相当うるさく、周囲に人がいる環境で利用するとクレームがつきかねない。外見がよく似た姉妹製品「BSOTOS09WH」と違い、自動首振りの機能がないのも要注意。

本体後部のタンクに水を注ぐことで夏は冷風扇、冬は加湿器として使える。ちなみにこのタンクは完全に取り外せないため、扇風機本体ごと水道の近くに持っていく必要がある。また当然ながら傾けると水がこぼれるので設置場所には配慮が必要スイッチは上面にあるため押しやすい。冷風扇機能を使う時はLEDが点灯する

運転中の様子。騒音(強・参考値)は67.9dBと、正面からの風切り音はそれほど大きくないが、モーターの駆動音とデスクへの振動はかなりのもので、数値以上に耳障りだ

・バッファロー
http://buffalo.jp/
・製品情報
http://buffalo.jp/products/catalog/supply/accessory/cooler/fan/bsotos10/

 

サンワサプライ~縦横両置きが可能、首振り対応のUSB扇風機

カラーバリエーションはブラックとホワイトの2色

 サンワサプライの「USB-TOY69シリーズ」は縦横両置きが可能なUSB扇風機。縦置きの状態ではタワー型として利用でき、横置きの状態ではディスプレイとキーボードの間の隙間などに設置することにより、場所を取らずに利用できる。


メーカーサンワサプライ
製品名USB-TOY69シリーズ
希望小売価格4,179円
購入場所Amazon.co.jp
購入価格2,667円

 風量調節は強・弱の2段階で、60度の自動首振りにも対応するなど、機能の充実度という点においては今回紹介している製品の中でも出色。風量は極端に強いわけではないが、汗をかいている時に急いで涼みたいという場合にも充分に実用的なレベルだ。気になるのは風量強・弱のボタンの見分けがつきにくいことと、縦置きではデスクに振動が伝わりやすいこと。実売ベースで3,000円を超える価格もネックになりそうだ。

縦向きに設置することも可能だが、ゴム足ではないため、振動で置き場所がずれることもしばしばスイッチは横置き時の右側面にある。自動首振りにも対応している

運転中の様子。騒音(強・参考値)は67.2dB。モーターの駆動音はそこそこ大きいが、前述のバッファローBSOTOS10WHに比べると耳障りな振動があまりなく、まだなんとか耐えられるレベル

・サンワサプライ
http://www.sanwa.co.jp/
・製品情報
http://www.sanwa.co.jp/product/syohin.asp?code=USB-TOY69BK

 

グリーンハウス~乾電池駆動にも対応したタワー型USB扇風機

カラーバリエーションはホワイトのほか、ブラック、ブルー、ピンク、ブラウンの計5色。今回紹介しているタワー型製品の中ではもっともサイズが大きい

 グリーンハウスの「GH-USB-FANTBシリーズ」は、タワー型の扇風機。高さ345mmとかなり巨大なボディが特徴で、単3電池×4本での駆動にも対応している。


メーカーグリーンハウス
製品名GH-USB-FANTBシリーズ
希望小売価格オープンプライス
購入場所yodobashi.com
購入価格1,980円

 風量調節は3段階+MAXの計4段階で、風量1では運転音がほとんど聞こえない状態での微風、MAXではそこそこの騒音があるかわりに強い風と、きめ細かに切り替えられるのが特徴。送風口が大きいため、広い面積にわたって風を浴びたい場合に適するだろう。自動首振りには対応しておらず、台座部分をひねって左右方向に変えられるだけの機構はやや疑問を感じる。

スイッチは本体下部にあり、LEDで運転モードを判別できる。3段階切替とMAXのボタンが別々に用意されているのは珍しい。押すたびに「ピッ」と鳴る操作音をオフにできないのはややストレスだ単3電池×4本でも駆動する。自動首振りには対応しない

運転中の様子。騒音(MAX・参考値)は81.3dBと大きいが、バッファローBSOTOS10WHに比べるとモーターの振動があまり響かず、体感値としてはこちらのほうが静か。弱にした時は運転音がほとんど聞こえず、むしろ静音性は優秀なレベルといえる

・グリーンハウス
http://www.green-house.co.jp/
製品情報
http://www.green-house.co.jp/products/pc/usbvariety/fan/gh-usb-fantb/

 

わがんせ~アロマに対応したミニタワー型のファン

上部および送風部はブルーとピンクのカラーバリエーションがある。オフィス用というよりもどちらかというとホームユース向けだろう

 わがんせの「plage(プラージュ)」は、アロマオイルもセットできるミニタワー型のファンだ。ほかのタワー型製品が30cm前後と大きいのに比べ、本製品は高さ22cmとかなり手頃で設置しやすく、デスクまわりでも邪魔になりにくい。


メーカーわがんせ
製品名plage(プラージュ)RJ848シリーズ
希望小売価格不明
購入場所Amazon.co.jp
購入価格2,230円

 風量調節はなし(オンオフのみ)で、上下方向の角度は80度の範囲で自由に調節できる。風量はそこそこあるが、モーターの駆動音がやや大きく、またデスクに振動が響きやすいのが残念。風量が弱いかわりに駆動音を抑えたモードがあればと惜しまれるところだ。なお、単4電池×4本での駆動にも対応している。

上部のトレイを外してアロマオイルをセットできる。ちなみにこの上部のトレイは電源のオンオフスイッチも兼ねている珍しい構造単4電池×4本でも駆動する


運転中の様子。騒音(参考値)は82.9dBと、モーター音がかなり耳障り。背面の吸気部が広く開いていることから、本体後方にもモーター音が響きやすく、ほかに人がいるところでの利用はおすすめしにくい
・わがんせ
http://www.waganse.jp/

・製品情報(楽天市場内)
http://item.rakuten.co.jp/waganseshop/cc467/

 

ミヨシ~ボックスタイプのUSB扇風機

カラーバリエーションはブラックとピンク、さらに「カモフラージュ」と名付けられた迷彩柄が用意されている。乾電池駆動のための電池ボックスが付属する

 ミヨシの「USF-05シリーズ」は、直方体形状のUSB扇風機。背面下部から吸気し、前面上部から送風する構造だ。このクラスの製品としては珍しく運転時にLEDが点灯するので、ステータスが見分けやすい。また乾電池ボックスが付属しており、USBケーブルをつなぐことで単3電池×3本による運転も行える。


メーカーミヨシ
製品名USF-05シリーズ
希望小売価格オープンプライス
購入場所ヤマダ電機WEB.COM
購入価格1,480円

 風量調節は3段階で、上下方向の送風角度の調整が可能。角度は実測値で60~70度といったところだろうか。運転時の駆動音がかなり騒々しく、静かに運転しようと風量を弱にすると50cmほど離れた位置からはほとんど風を感じないなど、ややどっちつかずな印象。また吸気口および電源ジャックが背面にあるため、せっかくのボックスタイプながら壁にぴったりくっつけて置けないのは惜しい。

スイッチは本体下部に備える。LEDは4段階ぶんあるが、実際の風量調節は3段階。「ピッ」と鳴る操作音をオフにできないのはネック背面下部から吸気する構造。壁にぴったりくっつけて置けないのがやや残念

運転中の様子。騒音(参考値)は89.0dBと、他製品を圧倒するレベル。タクトスイッチの音も含めて安っぽさは否めない。ちなみに吸気口のある背面は正面よりもさらに音が大きい

・ミヨシ
http://www.mco.co.jp/

 

総評~付加価値よりも基本的な風量および静音性がポイント

 昨年まではどのUSB扇風機も甲乙つけがたく、ほとんどの製品がなにかしらの利用シーンに落とし込むことができたが、今年については優劣がはっきりしている。根本的に風量が足りないもの、騒音にまったく配慮していないものを除外すれば、合格点が付けられる製品は半分といったところだ。選び方のポイントとしては「付加価値ばかりに目を奪われるな」ということになるだろう。

 まず、周囲が気にならない静音性を維持しつつ、実用レベルの風量を得たい場合は、エレコムの「FAN-U18NAシリーズ」「FAN-U19Dシリーズ」のいずれかを推す。どちらも自動首振りや風量調整といった付加機能はないが、大きな欠点もなく実用性は高い。過去に取り扱った「FAN-U17WH」なども含めて、同社のUSB扇風機は全体的に駆動音が静かな傾向にあるようだ。また、本文でも述べているように、AC変換アダプタが付属しない製品もあるので、候補としたいところ。「FAN-U19Dシリーズ」は風量が強いが、フットプリントが大きなことだけは気をつけたい。

 機能の多さを求めるのであれば、サンワサプライの「USB-TOY69シリーズ」もおすすめだ。自動首振り、風量調整に加えて縦横両置きに対応と、利用シーンを問わず使用できるのがよい。ネックになるのは3,000円を超える実売価格だろう。縦置きで使用する場合はデスクに振動が響きがちなので、自前でゴム足を用意して取り付けたほうがよい。

 サイズの大きさに目をつぶることを条件に、グリーンハウスの「GH-USB-FANTBシリーズ」も悪くない。実際、ディスプレイの横に並べてしまえばそれほど巨大という印象はなく、オフィスでディスプレイと並べて設置するなら悪くないチョイスだ。安定感もあり、ほかのタワー型にありがちな不快なモーター音も最小限にとどめられている。ただ機能面ではこれといった特色がないのも事実で、せめて自動首振り機能があればもう少し強く推薦できただろうにと惜しまれる。

 以上、おもに今年発売されたUSB扇風機8製品を紹介したが、量販店ではこれ以外にも昨シーズン以前から引き続き発売されている製品、また形状がオーソドックスすぎるが故に今回取り扱うに至らなかった製品など、多数のUSB扇風機が販売されている。今回のレビューからも分かるように品質や機能はピンキリで、とくに風量および騒音については、実際に動作している様子を見なければなかなか分からない。中規模以上の量販店ではデモコーナーが設置されていることも多いので、なるべく自分の目でチェックしてから購入されることをお薦めする。






2012年6月5日 00:00