コヤマタカヒロの男の料理道具!



山善「ホームベーカリー YHB-M560」

~シンプルな日常使いにオススメの低価格ホームベーカリー

山善「ホームベーカリー YHB-M560」。最近の一斤タイプのホームベーカリーの中ではちょっと大きめの印象

 引っ越しや三女の出産などで間が空いてしまったこの連載。しかし、その間もこつこつといろんな調理道具を試していた。今回取り上げるのは、低価格のホームベーカリー、山善の「YHB-M560」だ。

メーカー山善
製品名ホームベーカリー「YHB-M560」
購入場所Amazon.co.jp
購入価格5,980円

 コヤマ家では著者が高校生の頃、約25年前の第一次ホームベーカリーブームの頃から、ホームベーカリーが愛用されており、毎週末には早起きした父親の焼いた手作りパンが食卓に並ぶなど、ホームベーカリーを長く楽しんできた。今現在も、2010年発売のティファールのホームベーカリー「ホーム&バケット」を常用しており、日常的に食パンを焼いて楽しんでいる。

 今回利用する、山善「YHB-M560」の一番の魅力はその安さだ。現在、大手メーカー製のホームベーカリーの価格は1万円~2万円が主流。お米からパンが作れる最上位機種だと、3万円を越える。そんな中、山善「YHB-M560」は約6,000円と非常にお買い得だ。そこで、その安さを踏まえた上で、ホームベーカリーとしての機能とパンの味を試していきたい。

 まず、基本機能を見てみよう。山善「YHB-M560」では、全16コースを用意。通常の食パンから、残った冷やご飯を入れた「残りご飯パン」や米粉パンなどを作ることが可能。また、パン以外のメニューとして、うどんパスタ生地やピザ生地、お餅、ジャムなども作ることができる。低価格とはいえ、機能は十分だといえるだろう。

本体フロントパネル部。上段に電源ボタン、液晶画面、スタートボタン、そして下段に、焼き色調整とタイマー設定、パンサイズボタンが並んでいる
付属のパンケース。一斤タイプなのでそれほど大きくはない。内側は、食材がこびりつかないようフッ素コーティングが施されている
計量カップと軽量スプーンも付属する

早速食パンを焼いてみる!

 では早速、基本となる食パンを焼いてみる。「YHB-M560」では0.5斤と1斤のパンが焼ける。今回はすべて1斤で焼いた。

 付属のパンケースに羽根を取り付け、水から順番に材料を分量通り入れていく。強力粉を最後に入れたら、中央に凹みを付けて、そこにドライイーストを投入。低価格機だけに、イーストや具材の自動投入機能などは搭載していない。このため、夏場などの気温の影響を受けやすいシーズンでは、後述のタイマー機能を使った調理は難しくなりそうだ。

 具材を投入したらメニューを設定。焼き色は、淡い、普通、濃いの3種類から選択できる。そして、「スタート」を押すことで、食パンなら約4時間で焼き上がる。

 標準モードで焼き上がったパンは、クラスト(パンの外側)は薄めでパリッとした食感。クラム(中の部分)は柔らかく、食感も非常によかった。頭の部分などを見ると若干、色が異なるところもあり、焼きムラが感じられたが、パン生地の膨らみに影響される部分でもあり、大きな問題とはいえないだろう。

標準モードで焼き上がった食パン。しっかりと膨らんでいるのがわかる。上側は部位によって若干焼きムラが強めだった。クラムもきめ細かな気泡ができている

 同じように「淡い」焼き色、「濃い」焼き色でも焼いてみた。「淡い」ではクラストの食感がさらにやわらかくなり、クラムもより白かった。対して濃いでは、クラストが明らかにしっかりとした色をしており、堅めの食感になっていた。焼きたてをすぐに食べるときは「濃いめ」が楽しいが、時間が経ってしまうとちょっと食べにくいかもしれない。

淡いモードで焼いた食パン。クラスト上部は焼き色がかなり薄めだが、側面の色目はそれほど差がない。ただし、標準モードと比べて、クラストもかなり柔らかかった
濃いモードを選んだ食パン。しっかりと色づいているのがわかる。側面には、わずかながら焦げのような色も。焼き上がりの色も非常時香ばしく、焼きたてを美味しく楽しめた

ご飯パン、米粉パン独特のもっちり感も楽しめる

通常のレシピにプラスしてご飯を用意。軽く水洗いしておくと間違いがない

 続いて、ホームベーカリーならではの楽しみとなる、ご飯入りのパンだ。「YHB-M560」では、残りご飯を使ったパンのほか、米粉パンをグルテン入り、なしそれぞれで作ることができる。

 「残りご飯パン」は、通常の食パンの材料として冷やご飯を使ったもの。一膳分の冷やご飯があれば、簡単に作ることができる。

 実際に作ってみたが、1度目はあまり膨らまずに失敗してしまった。そこで、メニューの注釈に小さく書いてあった「冷やご飯は、ざるにとって水でほぐしておくと混ざりやすくなります」という注意を実行。冷やご飯をほぐしてから入れたところ、しっかりと膨らんでくれた。

 見た目は通常の食パンとほとんど変わらないのだが、食感はもっちり。ご飯入りのパンならではのモチモチした味わいが楽しめた。家族には、通常の食パン以上の評判で、「YHB-M560」を使っている間、何度かリクエストされるほどだった。

焼き上がりは通常の食パンと変わりないが、食感は全く別物。通常のパンとは異なるモチモチさと、ご飯ならではの甘さが味わえる
市販の米粉パン用の粉を利用。これは、小麦グルテンを全く含まないタイプ。グルテン入りレシピも別途用意されている

 続いて、小麦粉を一切入れない米粉パンに挑戦する。用意したのはグルテンなしのパン用の米粉。これなら小麦アレルギーの方でも食することが可能だ。

 米粉パンは、発酵工程が短いこともあり、通常の食パンの約半分の2時間で焼き上がる。パンの大きさこそ、通常の2/3ほどだが、その分、クラムはみっちりしており、普通のパンとはまた異なった食べ応えで、黒パン(ライ麦パン)をしっとりさせたような食感だ。ただし、酸味はなく甘みが強め。

焼き上がりの膨らみは小さめで、食感はパンよりもケーキ寄りだった

レシピにはないリッチパンに挑戦!

 ここまでの基本機能を使う上で、低価格機ゆえの不満はほとんど感じることがなかった。あえて細かいところを挙げるとすると、具材の自動投入機能がないため、タイマー利用時に具入りパンを焼くことができないことだ。通常動作のときでも、具材投入時に鳴るミックスコールの音が小さく、至近距離にいないと気付かないこともあった。

 また、タイマー機能は、焼き上がりまでの時間を入力するタイプなので、10時に焼き上がるようにしたいと思った場合、現在の時間から設定時間を計算しなければならないのが面倒だった。しかし、これらは低価格機だと思えば、十分に割り切れる部分だ。

 もう一つ、最新のホームベーカリーに搭載されていることが多いのが、リッチパンのレシピだ。残念ながら、「YHB-M560」のレシピには該当のメニューが掲載されておらず、コースもない。そこで、ネット上にあったレシピを参考に、勝手にリッチパンを作ってみた。バターを通常の4倍の40g投入。また、水の代わりに牛乳と卵を使った。

 この状態で通常の食パンコースで焼いたのが下の写真のパンだ。焼き上がりは通常の食パンと何も変わらない。若干膨らみすぎたらしく、パンの上部はフタとくっついていた。断面は、明らかにリッチパンらしい、バターの色が出ていた。バターの香りも非常に強く、風味も豊か。クラストはザクザクとした食感で、クラムはきめ細かく膨らんでいた。レシピをさらに微調整することで、好みの味わいにできそうだと感じられた。

バターをたっぷり入れて焼いたオリジナルのリッチパン。見た目はわからないが、切ると断面の色とバターの香りが普通のパンと全く異なっていた。非常に贅沢なパンとなった

1時間半で手打ちパスタも楽しめる!

 最後に「YHB-M560」を使ってパン以外のメニューにも挑戦してみよう。

 まずは手打ちパスタだ。強力粉とデュラムセモリナ粉をブレンドして「YHB-M560」でこねてもらう。約15分ほどでできあがるので、ラップをして一時間ほど寝かせてから、麺棒でのばして切り湯がくだけ。

 利用するのはこねる工程のみだが、ここを手でやろうとすると、1回こっきりでやらなくなってしまうもの。しかし、一番大変なこね行程を「YHB-M560」がやってくれれば、面倒くささもなくなるのだ。

 できあがったパスタは非常にモチモチしていて、乾麺とは全く違った食感が楽しめた。伸ばして切るだけと、手間もほとんどかからないため、「YHB-M560」があれば日常的に楽しめそうだ。

パスタ・うどんコースでパスタを打つ。通常の小麦粉のみのレシピが掲載されているが、ここではデュラムセモリナ粉をブレンドした
事前にしっかり混ぜておいた小麦粉と卵、水などを投入する
15分ほど混ぜ合わせたところ。生地はまだ安定していないので、ラップして1時間ほど寝かす
まな板に打ち粉をたっぷりと振って伸ばしていく。ここで限界まで伸ばすのが麺打ちのコツかもしれない。そして適度な太さにカットする
大量に涌かしたお湯に打ち粉を払ってパスタを投入。手打ちパスタはくっつきやすいのでしっかりと混ぜる
ちょっと太めだが、手打ちパスタが完成。ミートソースと和えるだけでもモチモチしていて非常に美味しい
「YHB-M560」で焼いたパンの上にジャムをのせたところ

 そして最後がジャム作りだ。スーパーで紅玉を見かけたため、林檎ジャムを作ることに。林檎2つを薄くスライスし、大量の砂糖とともにパンケースに投入。あとはコースをセットして待つだけだ。

 鍋で作るときのように、焦げ付かないように混ぜ合わせる必要もなく、簡単にリンゴジャムができあがった。甘さを調整すれば、アップルパイの中身なども簡単に作れそうだ。

リンゴをスライスして、パンケースに投入。さらに大量の砂糖を入れてスイッチをいれる
羽根の回転により、まぜながら加熱することが可能。約1時間20分で完成だ

低価格機と思えないほどに楽しめる

 仕事柄、ホームベーカリーは各社のハイエンドモデルや最新機種を使うことが多い。そのため、正直言って低価格機の実力を甘く見ていたようだ。通常、食パンのできはもちろんのこと、ご飯パンや米粉パン、そしてパン以外の調理メニューなども、上位機とそれほど大きな差は感じなかった。

 もちろん、上位機では当たり前のイーストや具材の自動投入機能は搭載せず、またより美味しいリッチパン、プレミアムパンが作れるレシピなども用意されていない。それらを求める方には、物足りない部分もあるかもしれない。しかし、シンプルに日常使いができる食パンを焼きたいなら、「YHB-M560」でも十分だ。

 初めてホームベーカリーを購入するデビューユーザーはもちろん、機能面で割り切れるなら長くホームベーカリーを使っているような中上級者にも、おすすめできる。


コヤマタカヒロ

1973年生まれ。大学生の頃にライターデビューをして現在17年目。パソコンからAV機器、デジタルガジェット、白物家電などの電気が流れる製品と、その関連サービスを中心に執筆活動を展開する雑食系のデジタルライター。一般商品者目線で、最新テクノロジーを伝え、完成品はできる限り自分で試して記事にすることを信条にしている。