家電製品ミニレビュー
クラシックな剃り味を楽しむポータブルシェーバー
by 伊達 浩二(2013/10/17 00:00)
フィリップスの「PQ217」は、ちょっと変わったポータブルシェーバーだ。出張や旅行を主な用途とするポータブルシェーバーは、他社からもたくさん出ているが、この製品だけが、かなり異なった「クラシック」な印象を受ける。ここでクラシックと言っているのは、伝統という意味でもあり、古臭いという意味でもある。
これまでに紹介してきた何台かのポータブルシェーバーとは、かなり異なる考えに基づいた製品なのだ。
メーカー | フィリップス |
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製品名 | ポータブルシェーバー PQ217 |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 2,372円 |
フィリップス独自のシェービングシステムを採用
PQ217の外観上の特徴は、2つの丸い刃だろう。1つ1つの刃は外刃の中で内刃が回転する「回転式」なのだが、それが2つ並んでいる。これは、「2ヘッド」というフィリップスが1951年に発表した画期的なアイデアで、当時主流だった1ヘッドの回転式に比べて、ヒゲ剃りにかかる時間を短縮する効果があった。
このあともフィリップスのシェービングシステムは、回転する刃を3ヘッドに増やすなど、さまざまな改良を加えていくのだが、PQ217は持ち運ぶための製品なので2ヘッドに留まっており、上位機種のようにすべての技術が投入されているわけではない。
しかし、2ヘッドではあっても、フィリップスのシェーバーは、現在主流である往復式(内刃が往復運動をする)製品とは、だいぶ剃り味が異なっている。
往復式のシェーバーが、外刃が膨らんでいる「線」の部分で剃るのに対し、PQ217ではどこか1点や線ではなく、「面」で剃る感じなのだ。
シェーバーの動かし方も、往復式の製品がヒゲに逆らうように直線的に動かすのに対して、PQ217では本体を回すようにしながら使う。PQ217を肌に軽く押し当てながら、グルグルと回していると、ヒゲが剃れているのだ。
シェーバーの動かし方の基本から異なるので、取扱説明書には「フィリップスのシェーバーを初めてお使いの方は、剃り方に慣れるまで2~3週間かかることがあります」とまで書かれている。
もちろん、新しい使い方を学ぶだけの理由はある。私の叔父の一人は、ヒゲが柔らかい癖っ毛で肌が弱いという性質だったので、フィリップスのシェーバーを長年愛用していた。「T字カミソリでは肌が負けるし、フィリップス以外の電気カミソリでは、ロクにヒゲが剃れない」とまで言っていた。
話が逸れてしまったが、今回使用したPQ217は、実売2,000円ちょっとの安価な製品でありながら、曲がったヒゲに強く、肌に優しいというフィリップスのシェービングシステムの特徴は引き継いでいる。例えば、アゴの下の、首のヒゲの生え際あたりは、まちまちな角度のヒゲが残りやすいものだが、PQ217を使っていると、剃り残すことがない。つまり、この製品は、樹脂製ボディの安物ではあるが、フィリップスのシェーバー技術の伝統の正当な末裔なのだ。
ただし、PQ217はフィリップスの上位機種に比べると、深剃りが苦手な印象だ。朝に剃ってから、夕方までにヒゲが伸びて、ザラザラとした感触を感じることが多い。出張先であれば、朝に剃って夜にも出かけるとすれば、どこかの洗面台で、もう一度ヒゲを剃っておきたい。もちろん、これはヒゲの濃い私の感触であり、個人差はある。
2ヘッドシステムの、もう1つの魅力として、振動が少ないことも揚げられる。安価な往復式のシェーバーでは内刃の移動に伴なう大きめの振動があるので、ぐっと握る必要がある。しかし、PQ217は回転運動だけなので、電源スイッチを入れても小さな音しかしない。もちろん、PQ217とて、ヒゲを剃り始めれば、ヒゲを刃で切るそれなりの音はするが、往復式に比べれば、ずっとおとなしい。
充電の面倒さと、水洗いできないのが欠点
と、ここまではPQ217の良い点を書いてきたのだが、実際に使っていると、いくつか気になる点もある。
まず、電源周りのことを書こう。
PQ217の電源は、ニッケル水素電池だ。ただし、充電システムは、便利とは言えない。まず、充電時間が約8時間と長い。さらに、充電時には必ず、本体に電源コードを繋がなければいけない。最近の充電式シェーバーでは、本体内にプラグを内蔵しており、直接コンセントに繋げられるプラグイン式の製品が多いので、電源コードが必須なのは面倒に感じる。
また、満充電時の使用時間は約30分だ。私の場合、2泊3日の旅行に持って行くと、3日目は刃の回転が弱くなってくる。つまり4日以上の旅行に行く際には、充電用の電源コードも持っていく必要がある。PQ217には、シェーバー本体を収納するポーチが付属しているのだが、このポーチはシェーバー本体しか入らず、電源コードは入らないのも惜しい。
使い方によっては、PQ217の弟分で、単三乾電池2本で動く「PQ208」(実勢価格2,000円以下)の方が、良い場合もありそうだ。
もう一つは、掃除についてだ。
ポータブルシェーバーでは、本体が防水構造になっていて、外刃と内刃も洗える製品が多い。使い終わった後で、刃を水で流して、自然乾燥させておくことができる。
しかし、PQ217とPQ208は、両方とも本体が防水構造になっていない。刃の掃除をするときは、付属のブラシを使用する。このブラシが良くできているので、掃除自体は楽しいのだが、やはり蛇口でジャーっと流して終わりというライバルたちの簡便さに比べると面倒だ。
伝統を引き継ぎつつ、モダンになってほしい
PQ217は、2ヘッド方式という独自のシステムが最大の魅力であり、フィリップスの剃り方に慣れている人が出張先に持っていく製品としては、「PQ217」か下位モデルの「PQ208」が妥当な選択肢だろう。一定の制約はあるものの、きちんと伝統を受け継いだ製品だ。
また、肌が弱いとかヒゲが癖っ毛などの理由で、フィリップスのシステムに興味があって、試してみたいというユーザーの選択肢でもある。ただ、この場合は、より安価なPQ208で良いかもしれない。
一方、ポータブルシェーバーというジャンル全体から見ると、充電システムや、洗浄システムが古臭い。電源コードが必要な点については、ワールドワイドで売られる製品なので、電源プラグの形が制約されるプラグイン式を採用しにくいのはわかるが、電源コードの長さやポーチの形状など、もう少し工夫の余地があると思う。
もう少し、これらの要素を完了すれば、フィリップス独自のシェービングシステムの魅力を、多くの人に伝えられる製品になるのではないだろうか。