家電製品ミニレビュー

ユニデン「DECT3188C/1.9GHzデジタルコードレス留守番電話機」

~ボタン1つで3カ所を呼び出せる専用子機で、老親宅に最適【訂正版】

減り続けている固定電話回線

ユニデン「DECT3188C/1.9GHzデジタルコードレス留守番電話機」。親機と専用子機の「安心コール」

 最近は「家電(いえでん)」と呼ばれる固定電話のない家庭が増えている。10年前の2003年には6,000万回線を超えていた固定電話回線は、現在は5,691万回線に減ってしまった。このうち約2,000万回線はIP電話やCATV電話に変っているので、NTTの加入電話だけでみると、約3,000万回線へと半減している。現在も微減が続いている。

 つまり、いま固定電話があるのは、以前から固定電話を保有していた家庭が多い。別の言い方をすれば、固定電話のある家庭の世帯主は、ある程度以上の年齢の方が多いと推定できる。周囲を見ると、世帯主が40歳以下の場合は、固定電話がない場合が多い。

 日常的な個人間の連絡は携帯電話に移行していても、何十年も使ってきた固定電話の電話番号は、簡単には廃止できないので、そのまま保有しているという家庭が多いのだろう。ご多分に漏れず、我が家もこのパターンで、固定電話の使用頻度はとても低いというか、ほとんどない。

 今年になって、そういう固定電話の用途として、新しい提案をしている製品がいくつか出てきている。今回は、その中からユニデンの「DECT3188C/1.9GHzデジタルコードレス留守番電話機」(以下、DECT3188C)という製品を紹介しよう。

【お詫びと訂正】初出時に、増加しているIP電話やCATV電話の数字をカウントせず、固定電話の減少幅を実際よりも大きなものとして記載されておりました。お詫びして訂正させていただきます。

メーカー名ユニデン
製品名DECT3188C/1.9GHz デジタルコードレス留守番電話機
希望小売価格オープンプライス
購入先Amazon.co.jp
購入価格14,230円

専用子機「安心コール」が付属

 DECT3188Cの親機と子機は、現在のコードレス電話機として十分な機能を持っている。まず、親子間の通信は最新の「DECT(デクト)方式」で、無線LANや家電などとの干渉がほぼない。実際に子機を使っての通話品質は高く、良好な会話ができた。

 ほかにも、留守番電話機能や通話録音機能を標準装備。さらに、3.5インチの大型バックライト液晶(親機)、オレンジ色のバックライトが点く数字キー、漢字が使える電話帳とそれを利用した着信音の鳴り分け、ナンバーディスプレイ対応や迷惑電話防止機能など、ひと通りの機能は揃っている。

外箱は小さめで、中には電話機やACアダプターがぎっしり詰まっている
箱の中身。3台の電話機とそれぞれのACアダプターが入っている。これ以外に取説や細かい部品もある。これで実売15,000円前後ならお買い得な印象
細大の特徴は、専用子機の「安心コール」が付いている点。あらかじめ通話先を指定しておくことで、ボタンを押すだけで通話できる

 しかし、DECT3188Cの最大の特徴は、一般的な子機とは別に付属してくる「安心コール」と呼ばれる子機の存在だ。

 「安心コール」は、手のひらに入るほどの大きさだ。マイクとスピーカーは内蔵されているので、通常の子機同様に通話ができる。

 しかし、安心コールには、「安心コール」と大きく書かれた赤いボタンが1つしかない。つまり、電話機(子機)には必ずある数字キーが付いていない。

 では、誰とどうやって話すのか。実は、安心コールが呼び出す通話先は、あらかじめ親機で3つまで登録できる。呼び出す順序も指定できる。

 また、内線も呼び出すことができる。この場合は、親機ともう1台の子機の両方が同時に呼び出される。

 そして、「内線だけ」、「内線を呼んでダメだったら外線」、「外線だけ」のいずれかが選択できる。

ニュースリリースに添付されていた動作説明図。内線と3つの外線を組み合わせて、順番に電話をかけてくれる

コンパクトな本体、専用設計の子機

 とりあえず、実機に触ってみよう。

 親機はこの手の多機能電話としてはコンパクトだ。液晶は大きめで角度も変えられる。数字キーは大きめだしバックライト付なので、少し暗い場所でもはっきり数字がわかる。表示はすべて日本語で分かりやすい。

 安心コールの設定が「安心コール」キー1つで呼び出せるのは使いやすい。ただ、機能キーがどうしても多くなってしまうのでキーが小さくなりがちで、ちょっとちまちました感じはある。

 受話器と本体の間はケーブルでつながっている、一般的なタイプだ。

 子機は、「安心コール」ボタンがある以外は、ごく一般的な形をしている。こちらも表示はすべて日本語だ。液晶が大きめなのと、着信履歴が呼び出しやすいのは、携帯ユーザーにも使いやすいだろう。

 バッテリーは内蔵のニッケル水素電池。専用の充電台が付属しており、充電時間は約15~20時間で、連続待受時間は約125時間だ。

親機の外観。大きめの液晶と、光る大きな数字キーが特徴
すっきりとした操作部分。ワンタッチダイヤルなど一部の機能キーが小さすぎなのが惜しい
通話の様子。受話器は有線接続で、ちょっと小ぶりだ
親機の側面。液晶は見やすい角度に起こすことができる
専用充電台に置いた子機。こちらにも「安心コール」ボタンがある

 安心コールは、さきほど述べたようにボタンが1つだけ、マイクとスピーカーを内蔵したコンパクトな子機だ。スゴイのは、こっちのバッテリーはニッケル水素電池ではなく、コストの高いリチウムイオン電池なのだ。充電時間は約3時間と短いが、充電時間を短くすることで、いつでも持ち歩けるようにするという設計だ。連続待受時間も約72時間とやや短いが、それでも丸3日持つ計算だ。

安心コールの本体はごく小さい
本体背面。内蔵電池は繰り返し使えるリチウムイオンだ
専用充電台に置いた状態
子機と大きさを比べた写真
親機と大きさを比べた写真

用例1:離れて暮らす老親の非常時連絡用

 安心コールの用途がイメージしにくいと思うので、具体的な例を挙げてみよう。

 たとえば、自宅で一人暮らしをしている高齢者のAさんに「自宅にいるときは、これを持っていてね」と言って、安心コールを持ってもらう。そして、Aさんが体調不良や転倒などで緊急に連絡を取りたい事態が発生したときは、安心コールのボタンを押してもらう。

 一人暮らしなので、内線は呼ばず「外線だけ」という設定にしておくと、安心コールは登録されていた順に3カ所に電話をかける。たとえば、Aさんの長男の携帯電話、Aさんの長女の携帯電話、いつもお願いしているヘルパーさんの携帯電話という順だ。

親機に用意された「安心コール」の設定画面。安心コールのボタンが押されたときに、どこに接続するか選択できる
自動接続する外線番号は3つまで登録できる
登録は電話番号を入れるだけなので簡単だ。あとで順番を入れ替えることもできる

 良くできているのは、受け手側に「安心コールからの着信です」というアナウンスが流れ、受け手が「#」キーを2回押す動作をしたときにだけ電話をつなぐことだ。これは、留守番電話サービスなどにつながってしまい、緊急の連絡ができないという状態を避けるための仕組みだ。

 Aさんの長男を1分間呼び出しても接続できず不在だと判断すると、Aさんの長女に電話がかかる。ここで長女が#キーを2回押すと、安心コールと通話ができる。安心コールを受ける長女の側も、音声ガイドを受けた時点で安心コールからの呼び出しだということがわかっているので、Aさんからの緊急な用件であるということがすぐにわかる。すぐに「どうしたの、大丈夫!?」と声をかけることができるし、対策もとりやすくなる。

用例2:2階で寝ている病人の連絡用

 たとえば、小学生のB君が熱を出して寝ているとする。昨日、病院には連れて行き、一般的な風邪と診断された。とりあえずは一安心だが、数日の静養は必要だ。

 B君は自宅2階の自分の部屋で寝ているので、枕元に安心コールを持たせておく。

 安心コールの設定は、「内線を呼んでダメだったら外線」というパターンだ。外線の呼び出し順は、B君のお母さんの携帯、B君のお父さんの携帯の順にしておく。連絡先は必ず3カ所ではなく、1つだけ、2つだけでも良い。

 こうしておけば、B君が安心コールで呼び出しをかけたときに、家族の誰かが家の中に居る場合は、内線を取れば良い。インターフォンかナースコールのような感覚だ。

 また、誰もいない状態であっても、携帯電話に呼び出しがかかるので、安心して外出できる。看護が必要な病人が居ても、スーパー等への買い物へ出なければならないことが、よくあるものだ。

用例3:ともかく家族に連絡がとれる緊急装置

 子供やお年寄りが一人で居ることがある家庭では、安心コールを“何か起きた際の緊急連絡装置”として、使えば良い。

 例えば、高齢者家庭では、トイレや風呂、洗面所などは事故が起こりやすい場所であり、気分が悪くなったり倒れたりする可能性がある。安心コールは防水ではないので、風呂場には置けないが、トイレや洗面所に置くことはできる。非常ベルの代わりとして、こういう場所に置いておくのも有効だ。

 お留守番をしている子供に、何かあった場合の連絡にも向いている。「どうしても困ったときには、これを押しなさい」と言って、目につきやすいところに置いておけば良いだろう。

親機や外線からも安心コールに掛けられる

 ここまでは、安心コールから呼び出して通話する方法を紹介したが、安心コールにはほかにも機能が用意されている。

 例えば、親機および子機の「安心コール」ボタンを押すことで、安心コールを呼び出して会話をすることができる。この場合、安心コールの呼び出し音が鳴るので、ボタンを押せば通話できる。広い家とか、2階建ての家では、インターフォン代わりになるだろう。

 また、親機または子機で受けた外線を、安心コールに転送することもできる。この場合、通常の子機のように会話ができる。ただし、安心コールには外線電話の通話制限機能があり、外線の切り忘れがないように約10分後に外線を切ろうとする。

 通話が9分30秒を越えると、もうすぐ通話が切れる旨のメッセージが流れ、そこで外線側が#キーを押せば、通話が続けられる。ちょっと面倒ではあるが、外線電話がかかってきたときに安心コールの呼び出し音が鳴らない仕様であることも考えると、安心コールを持つ人を、外の世界(外線)から少し隔離して保護しようという意図が感じられる。

 なお、1台の親機には、8台までの子機と、4台までの安心コールが登録できる。増設用の子機と安心コールは1台単位で販売されている。

本体にはストラップホールがあり、ストラップを通すことができる。家庭内で常時持ち歩くときは首から下げるタイプが良いだろう
安心コールのリセット機能は尖ったもので押すため、専用のピンが付属している

固定電話を非常通信装置に

 DECT3188Cは、安心コールという専用の子機を開発することで、固定電話に非常時の通信装置という機能を追加した。

 安心コールのボタンを押すだけで、内線と外線を順番に呼び出すことができるなど、よく考えられた仕様になっている。とりあえず、遠く離れた実家に老いた両親が住んでいるような状況であれば、検討してみたくなる製品だ。

 無い物ねだりを言えば、たとえば親機がない環境でも安心コール単体で呼び出しができるように携帯電話機能をもたせたり、手持ちの携帯電話と連携して動くと便利なのに、とは思う。また、安心コールを防水にして、お風呂に入るときでも持ち歩けるようにするとか、本人が倒れたりした場合に自動的にコールするとか、欲しい機能は思いつく。

 ただ現状でも、よくできた面白い製品であることは間違いない。設定の手間を考えれば、今の機能は1つの落とし所であることは間違いない。少なくとも、狭い日本市場の、さらに狭い固定電話市場に投入される製品とは思えないほど、かなり本気で考えられた力の入った製品だ。それは、安心コールの機能を考えて、リチウムイオンバッテリーを選択していることからもわかる。

 製品情報ページからは、取扱説明書のPDFファイルもダウンロードできるので、ご興味のある方は、詳しい機能をご覧になることをお勧めしたい。きっと面白い使い方が見つかるだろう。

伊達 浩二